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英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク

作者:sorano
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外伝~祝賀会の夜~後篇

~グランセル城・空中庭園~





「………ヨシュアさん。」

2人を見守っていたヨシュアにある人物――クローゼが近づいて来て声をかけた。

「……クローゼ。大変だったみたいだね……」

「……あ……………えっと、少しだけ……王太女になってから、取材を受けることが多くなってしまって……」

ヨシュアの優しい微笑みに一瞬見惚れていたクローゼは呆けた声を出した後、苦笑しながら答えた。

「うん。この所、あちこちの雑誌でクローゼの写真を見かけるから。そうじゃないかなって思ってたんだ。」

「あ、あはは………」

「もう少ししたら、取材も下火になると思う。それまでは大変だと思うけど……」

「はい、わかってます。私はもう、決心しましたから。みんなを守るんだって……だから、こんなことくらいで挫けるわけには行きません。」

ヨシュアの労いに頷いたクローゼは優し気な微笑みを浮かべて自身の決意を語った。



「そうか……やっぱり君は強いな。」

「そんなこと、無いです。本当はいつも、自信があるわけじゃないんです。なのに、いつも無茶ばかりしてしまって……」

「うん、でも………初めて会った時も君はあの孤児院にいて、クラムを守ろうとしていた。……クローゼ、君の強さは本物だと思うよ。」

「あはは……ありがとうございます。……そ、そういえばそんなこともありましたよね。…………」

ヨシュアに微笑まれたクローゼは微笑んだ後苦笑したが、すぐに考え込み始めた。

「(今なら、いいかな………?)…………」

「………クローゼ?」

考え込んでいるクローゼの様子を見守っていたヨシュアはクローゼの様子がいつも違う事に気付いて声をかけた。

「……あの、ヨシュアさん。………少し、お時間をいただけませんか?お話したいことがあるんです。」

「え……えっと……うん、いいけど………」

決意の表情で自分を見つめるクローゼの言葉にヨシュアは戸惑いながら頷いた。



「……こちらに………」

ヨシュアの答えを聞いたクローゼは静かな足取りで人気のない場所へと向かった。

(……気のせいかな……何か怒ってるみたいだけど……えっと、エステルはまだ………)

クローゼの様子に戸惑っていたヨシュアはエステルの姿を探して、最後にエステルがいた場所を見た。そこではエステルとジョゼットが早食い競争をしていた。

(……まあいいか。盛り上がっているみたいだし。……クローゼ……何か怒らせる事でもしてしまったかな……)

エステル達の様子を呆れた表情で見ていたヨシュアは考え込んだ後、静かな足取りでクローゼを追っていった。



ヨシュアがクローゼに近づくと、クローゼはテラスで一人、外を見つめていた。

「……あの、クローゼ。えっと、話って……?」

「…………………………」

クローゼに声をかけたヨシュアだったが、クローゼは何も答えず黙り込んでいた。

「あ、あの………何か気に障ったのなら謝るけど………」

「………………私…………」

ヨシュアに声をかけられたクローゼは少しの間黙った後、頬を染めて呟き、やがてヨシュアに振り向いて決意の表情で自分の気持ちをヨシュアに伝えた。

「ヨシュアさんのことが好きです。」

「………えっ………?」

クローゼの突然の告白にヨシュアは呆けた後、信じられない表情をした。



「…………………」

「え、えっと…………」

「………………」

「その………それって………」

「…………………」

ヨシュアは信じられない表情でクローゼにある事を確認しようとしたが、クローゼの真剣な様子を見てクローゼの告白は愛の告白である事を悟ると肩を落として自分の気持ちを伝えた。

「ご、ごめん………君の気持ちは……その………嬉しいけど………」

「ふふっ………いいんです、何も言わなくっても。ただ、気持ちに区切りをつけたかっただけですから。」

申し訳なさそうな表情をしているヨシュアにクローゼは微笑みながら答えた後、ヨシュアに背を向けた。



「きれいな星空、ですね………」

「あの、えっと…………」

突然話を変えたクローゼにヨシュアは戸惑った後、言い辛そうな表情でクローゼの告白を聞いて疑問に思っていた事を訊ねた。

「君がいつから……その………」

「………ヨシュアさん。もし、ヨシュアさんがエステルさんより先に私と出会っていたら………エステルさんとじゃなく……私と………でしたか?」

「……ううん……それは……無いと思うな。……ごめん、クローゼ。」

「……それでいいんです。ヨシュアさんを独占したいって気持ちもウソじゃないんですけど……たとえそうなっても、それは私の求めているものじゃない。……私はやっぱりエステルさんとヨシュアさん……お2人の事が好きですから。」

ヨシュアに謝罪されたクローゼは失恋したにも関わらず一切取り乱さずに自分の気持ちを口にした後振り返ってヨシュアを見つめた。

「だから最後に、ヨシュアさんの困った顔を見てみたかったのかな。ふふっ……さっきのヨシュアさんの顔……今までで一番、素敵でした。」

「あ……えっと………クローゼもけっこう人が悪いよね。」

クローゼの行動の真意を聞いたヨシュアは戸惑った後、呆れた表情でクローゼを見つめた。



「ふふ、こんなにはしゃいでしまったのは久しぶりです。」

ヨシュアの指摘を聞いたクローゼは微笑んだ後、ヨシュアに近づいてヨシュアに背を向けた状態で横に並んで尋ねた。

「それで……ヨシュアさん、何を悩んでいるんですか?」

「えっ……!?」

クローゼに心の奥底に秘めていた事を指摘されたヨシュアは驚いてクローゼを見つめた。

「ふふ……そのぐらいわかりますよ。私、勘は良い方ですし、さっきも………取材を受けている間もヨシュアさんのことはずっと見てたんですから。」

「……えっと。さすがにそれは照れるんだけど……」

「あ、あはは………」

ヨシュアの言葉を聞いたクローゼは苦笑していたがすぐに気を取り直して話を再開した。



「……ヨシュアさん、何か隠してますよね。また一人で何かしようとか考えてませんか?」

「………はあ、ホント鋭いなぁ………姉さんやレーヴェにも気づかれなかったのに…………………エステルも時々そうだけど……」

「ふふっ、女の子ですから。それにカリンさんも内心気付いていると思いますよ?ヨシュアさんのお姉さんなんですから。……さあ、観念して白状してください。」

「……悩みって言うほどのことじゃないんだけどね……僕は……そうだな、来月までにはリベールを離れようと思っているんだ。」

「えっ……!?ど、どうして……ですか?もう平和になったのに……」

ヨシュアが口にした予想外の話に驚いたクローゼは戸惑いの表情でヨシュアを見つめた。

「うん、平和になったからね。”結社”もリベールからは完全に手を引いたみたいだし、各地の復興も順調だ。……だから、旅に出ようと思うんだ。



僕は……今では自分のことを一人の人間として考えられる。もう壊れた人形じゃない。エステルが、みんながそう望んでくれたから……



だけど、人間になってしまうと今度は心が痛むんだ。僕はこれまでに目を覆いたくなるような罪をたくさん犯してきたから。」

「……あ………」

ヨシュアの話を聞いたクローゼはヨシュアの過去――”漆黒の牙”として多くの人々の命を奪い続けていたヨシュアの過去の話を思い出して声を上げた。

「……だから、その償いをするために。そして本当の意味で強くなるために。僕はこれから、大陸各地を回ろうと思うんだ。」

「そう、だったんですか………でもそれでは、エステルさんとは………」

「うん、しばらくは……いや、かなり長い間、会えなくなってしまうと思う。……だからエステルにどう伝えらればいいのか迷ってて……」

「………はあ。ヨシュアさんも……相変わらずですね。」

考え込んでいるヨシュアにクローゼは呆れた表情で溜息を吐いて指摘した。

「え……?」

「……そんなの、自分の言葉で伝えるしかないじゃないですか。エステルさんのことを信じているなら、打ち明けて下さい。どんな言葉でもいいんです!自分の言葉で、話して下さい!」

呆けて自分を見つめているヨシュアにクローゼは活を入れた。



「あ……」

「……それが……好きな女の子に対する男の子の義務でしょう?」

「………うん……君の言う通りだ。本当に僕は……ダメなヤツだな。こんな単純で当たり前のことも気付かないなんて……」

クローゼに微笑まれたヨシュアは考え込んだ後、静かな笑みを浮かべて頷いた。

「ふふ、そこがヨシュアさんのヨシュアさんたる由縁ですから。……そういうところも含めて好きでしたけど………」

「……っ……だから、からかわないでよ………」

「うふふ……大丈夫、エステルさんならきっとわかってくれますから。それに……こっとエステルさんなら……」

呆れている様子のヨシュアの指摘を聞いたクローゼは微笑んで静かな口調で話を続けようとしたその時

「ヨシュア~!」

エステルが二人に近づいてきた。



「あ、いたいた。ヨシュア、ほらこれ!ジョゼットのゴーグル。フフン、戦利品としてブン取ってやったわ!!」

「えっと……楽しんでいただけているようで何よりです。」

「エステル、後でちゃんと返しときなよ。」

完全に空気を壊したエステルをクローゼは苦笑しながら見つめ、ヨシュアは呆れた表情でエステルに指摘した。

「ええ~~~~っ……どーしよっかなぁ~……?……って………あ……あれ………?」

ヨシュアの言葉を聞いて自慢げに胸を張って考え込んでいたエステルだったが、ヨシュアの隣にいるクローゼに気付いて戸惑った。

「えっと……ええっと……あ、あの……ク……クローゼ……?」

二人の様子を見て、何かに気づいたエステルは言い辛そうな表情でクローゼを見つめ

「くすっ………私、そろそろ戻りますね。……エステルさん。ヨシュアさんはお返しします。」

「へ……?」

クローゼは静かな足取りで二人から離れ始めた。

「クローゼ……」

ヨシュアに呼び止められたクローゼは足を止めた後、首を傾げてヨシュアを見つめた。



「こんな時に何て言ったらいいのかわからないんだけど……ありがとう。今夜、この場所で君と話すことができて……本当に良かった。」

「………あ………ふふ………どういたしまして。それでは……みなさん、よい夜を。」

そしてヨシュアの言葉を聞いたクローゼは呆けた後、優しい微笑みを浮かべ、どこかへと去って行った。

「え、ええっと……あ、あのー………あ、あのさ、ヨシュア。……えーっと、クローゼと……そ、その…………何の話をしてたの?」

クローゼのヨシュアに対する気持ち、そして2人きりで話していた状況を思い出したエステルは顔を赤らめて恐る恐る訊ねた。

「うん、ちょっとね……活を入れられた、のかな。」

「そ、そうなんだ。ふーん………」

(……この5年間、エステルは僕の事を信じてくれていた。僕も………僕もエステルの事を、同じように信じているから………)

「……活??」

優しげな微笑みを浮かべて考え込んでいるヨシュアに気づかず、クローゼの行動を考え込んでいたエステルは我に返ると驚いた表情で振り返ってヨシュアを見つめた。



「……エステル。君に……聞いて欲しいことがあるんだ。」

「……え………………うん、なに?」

ヨシュアの言葉に驚いたエステルだったがすぐに気を取り直して優しい微笑みを浮かべて訊ねた。

「うん……実はね……」

ヨシュアが答えようとしたその時、何かが上がる音がして、二人が空を見上げると、夜空を輝かすかのように花火が連発していた。

「わあ……綺麗……!」

エステルがはしゃいでいる中、また新たな花火が夜空に打ち上げられた。

「あ、ほらまた……」

エステルは次々と打ちあがる花火にはしゃいでいた。そして花火が終わった頃にヨシュアは口を開いてこれからの自分の事をエステルに伝え始めた。





――……あのね、エステル…………………―― 
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