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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
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第106話

~1年Ⅶ組~



「―――言った通りの意味です。戦闘能力や身体能力は勿論、政治、経済、導力技術を含めた全ての分野においてレンさんは”天才”なんです。」

「レンはその分野の勉強をすれば、僅かな期間で全て理解して完全にマスターするんです。」

「ええっ!?」

「な、何それ!?幾ら才能があると言っても、導力技術なんて数年学んでやっと扱える技術よ……!?」

ツーヤとプリネの説明を聞いたエリオットは驚き、アリサは信じられない表情で声を上げ

「そう言えばフィーはレン姫の事を知っている様子だったが……」

ある事に気付いたラウラはフィーを見つめた。



「ん……レン皇女は”殲滅天使”の二つ名で猟兵達の間で有名で、恐れられていたから。」

「”殲滅天使”……?」

「何なんだその物騒な二つ名は……」

フィーの答えを聞いたガイウスは首を傾げ、マキアスは表情を引き攣らせた。



「天使のような可憐な容姿を持ちながら、笑いながら敵を”殺す”事から”殲滅天使”の異名で呼ばれ始めたって聞いている。」

「わ、笑いながら人を殺す……ですか……?」

「そ、そう言えばヘイムダルの時も楽しそうに戦っていましたよね……?」

フィーの説明を聞いたセレーネは信じられない表情をし、エマは不安そうな表情でプリネを見つめた。



「ええ……―――――レンは”敵を殺す事に喜びを見出している”んです。」

「勿論その”敵”はメンフィル帝国の”敵”―――例えば敵国の軍人や強盗や盗賊と言った”犯罪者”等ですから、何の罪もない人―――例えば敵国の民等には一切手を出していませんよ。」

「でも、確かメンフィル帝国の皇族の中で最も残虐な性格をしている皇女って噂だけど。」

プリネの説明を捕捉したツーヤの説明を聞いたフィーは尋ね

「も、最も残虐な性格をしている皇女って……」

「―――否定はしません。あの娘がマーシルン皇家の中で、敵に対して全く容赦しない性格なのは事実ですから。」

不安そうな表情をしているエリオットの言葉を聞いたプリネは静かな表情で答えた。



「……レン姫は一体何歳から戦場に出ているのだ?」

「確かレンが初めて戦場に出たのは……賊の退治の時に隠れてついて行って参加した時ですから、8歳だったと思います。」

「は、8歳!?」

「そ、そんな幼い頃からあんな物騒な大鎌を振り回して命のやり取りをしていたの!?」

ラウラの質問に答えたプリネの説明を聞いたリィンは驚き、アリサは信じられない表情で声を上げた。



「ええ。お父様達があの娘を引き取って僅か半年であの大鎌の扱いを完全にマスターし、魔術もある程度マスターしていましたから。」

「……一体どういう経緯があって、平民のレン姫を養子にしたんだ?」

プリネの答えを聞いてある事が気になったマキアスは不思議そうな表情で尋ねた。



「詳しい事は色々と事情があって説明できないのですが……―――あの娘は過去、とある犯罪組織に誘拐され、長期間人体実験をされたんです。」

「なっ!?」

「人体実験ですって!?」

プリネの答えを聞いたラウラとアリサは血相を変え、他の者達も驚きの表情をしていた。



「プリネさん、いいんですか?その事を話してしまって……」

「ええ。セドリック皇子の件でレンの事が誤解されたままにする訳にはいかないしね。」

ツーヤに尋ねられたプリネは静かに頷き

「あの、プリネさん……先程ある犯罪組織が人体実験をレン姫にしたと説明しましたが……」

「一体どんな犯罪組織なんだ!?そんな犯罪組織、国際犯罪組織と言ってもおかしくないぞ!?」

エマは真剣な表情でプリネを見つめ、マキアスは厳しい表情で声を上げた。



「……――――”D∴G教団”。数ヵ月前、クロスベルで大事件を起こした組織です。」

「”D∴G教団”……!」

「”空の女神”の存在を否定し、悪魔を崇拝したと言われている宗教組織か。」

「……空の女神を……」

「……あの組織か。」

プリネの話を聞いたリィンは驚き、ユーシスは目を細め、ガイウスは信じられない表情をし、フィーは静かに呟いた。



「かつてレンはその組織に誘拐されて、数々の人体実験を施され……その組織の壊滅の為に各国と連携して動いたお父様達が救出した際、”地獄”すら生温い光景だったと聞いています。」

「じ、”地獄すら生温い光景”ですか……?」

プリネの話を聞いたセレーネは不安そうな表情をし

「――リウイ陛下達が人体実験をされた子供達が集められていると思われる場所に踏み込んだ際、そこには”人としての原形すら残していない”死体の山で、その中にレンさんだけが生きていたんです。」

「ひ、”人としての原形すら残していない”って……」

「外道が……!」

「………なんで………なんでそんな連中が存在を許されてるんだ………ッ!!」

「……吐き気がしてきたわ………」

ツーヤの説明を聞いたマキアスは表情を青褪めさせ、ラウラとリィンは怒りの表情で声を上げ、アリサは厳しい表情で呟いた。



「―――幸か不幸か、”教団”の人体実験を受けても生き残っていたレンはお父様達に救出された後、お父様達の事を”自分の本当の親だと思いこんだ”事がきっかけで、お父様とお母様がレンを養子として引き取ったと聞いています。」

「”自分の本当の親だと思いこんだ”って……」

「……レン姫のご両親は死去されたのか?」

プリネの説明を聞いたエリオットは信じられない表情をし、ガイウスは静かな表情で尋ねた。



「いいえ、今も生きていますよ。レンさんは自分の産みの親を”自分を捨てた偽物の両親”として憎んでいたんです。」

「じ、”自分を捨てた偽物の両親”って…………」

「……一体何があったのだ?」

ツーヤの話を聞いたアリサは驚き、ラウラは複雑そうな表情で尋ねた。そしてプリネとツーヤはレンの両親の事情――――相場に手を出して莫大な借金を背負い、レンを借金の魔の手から守る為に信頼できる知り合いに預けたが、運悪く”D∴G教団”の手によってレンが誘拐され、そこから地獄を味わい続けたレンは産みの両親を”偽物の両親”として憎んでいた事を説明した。



「それは……」

「幾つもの不幸な偶然が重なったのですね……」

「………………」

事情を聞き終えたリィンとエマは複雑そうな表情をし、ユーシスは目を伏せて黙り込み、他の者達もそれぞれ重苦しい空気を纏っていた。



「あ、勘違いしないで下さいね?確かにレンさんは自分の本当の両親を憎んでいましたけど、それは過去の話です。」

「ええ。自分の本当の両親が今でも自分を愛してくれている事や、両親が望んでレンと離れ離れになった訳ではない理由も全てある方達のお蔭でレン自身が理解し、本当の両親をもう憎んでいませんよ。」

仲間達の様子を見たツーヤとプリネは優しげな微笑みを浮かべて説明し

「まあ……!それはよかったです……!」

「そのレン姫の誤解を解いた人達って一体何者なんだ?」

二人の話を聞いたセレーネは表情を明るくし、リィンは尋ねた。

「―――”D∴G教団襲撃事件”に加えてマクダエル市長の暗殺を未遂に防いだクロスベル警察・分室――――”特務支援課”です。」

「ええっ!?け、警察の人達が!?しかもクロスベルの!?」

「”特務支援課”……前にツーヤが言っていたアレか。」

微笑みながら答えたプリネの答えを聞いたアリサは驚き、フィーは静かに呟き

「フィーはその”特務支援課”とやらを知っているのか?」

フィーの言葉を聞いたラウラは不思議そうな表情で尋ねた。

「ん。ツーヤから聞いた話なんだけど―――――」

そしてフィーはツーヤやプリネと共に”特務支援課”の説明をした。



「市民の安全を第一に考え、様々な要望に応える部署って……」

「まるっきり”遊撃士”と同じだよね?」

「というか僕達と同じような事をしていないか?」

説明を聞き終えたリィンは冷や汗をかき、エリオットとマキアスは表情を引き攣らせ

「確かにな。」

「アハハ……えっと……でも、民の安全を考えているのですから、とても素晴らしい考えだと思いますよ?」

呆れた表情で頷いたユーシスの意見を聞いたセレーネは苦笑しながら言った。



「ちなみに”特務支援課”のリーダーをしているロイドさんの年齢は18歳ですよ。」

「ええっ!?18歳!?」

「オレ達の一つ年上なのに、そんな凄い事件を解決したのか……」

「一体どんな方なんでしょうね……」

ツーヤの説明を聞いたアリサは驚き、ガイウスとエマは目を丸くしていた。



「フフ……ロイドさんはもしかしたら私やツーヤにとっても将来親戚になるかもしれない人ですから、私達にとっても他人事じゃないわね、ツーヤ。」

「アハハ、そうですね。」

「へ……」

「プ、プリネ達の親戚に将来なるかもしれないって……」

「まさかメンフィルの皇族の女性と恋仲なのか?」

微笑みながら言ったプリネの推測を聞いたツーヤは苦笑し、二人の会話を聞いたリィンは呆け、エリオットは信じられない表情をし、ユーシスは驚きの表情で尋ねた。



「ロイドさんはイリーナ様の妹であり、同じ”特務支援課”に所属しているエリィさんと恋仲なんです。」

「ええっ!?」

「イリーナ皇妃の……」

「イリーナ皇妃と言えば、確かマクダエル議長の孫娘だから……もしかしてマクダエル議長の暗殺を未遂に防いだ事がきっかけになったのか?」

プリネの答えを聞いたアリサは驚き、ラウラは目を丸くし、考え込んでいたマキアスは尋ねた。



「フフ、どうでしょうね。さすがに恋仲になった経緯までは聞いていませんから。」

「……まあ基本良い人なんですけど、あるとんでもない欠点があるんですよね……」

「”とんでもない欠点”?」

苦笑しながら言ったツーヤの説明を聞いたリィンは首を傾げた。



「え、えっと……リィンさんと同じ鈍感かつ”危険人物”と言えば、わかるかと……」

リィンの様子を見たツーヤは冷や汗をかきながらリィンを見つめ

「へ?お、俺っ!?というか俺のどこが鈍感で”危険人物”なんだ!?」

(なるほどね♪今の話を聞いてどんな人物なのかわかっちゃったわ♪)

(ふふふ、ご主人様と比べるとどちらが上なのでしょうね?)

(ア、アハハ……リィン様、今の状況になってまだ、鈍感って気付いていないんですか……)

見つめられたリィンは呆けた後慌て始め、ベルフェゴールとリザイラは興味ありげな表情をし、メサイアは冷や汗をかいて苦笑した。



「……なるほど。今の話を聞いてどんな人物なのか大体把握できたわ。」

「フッ、まさに似た者同士だな。」

「アハハ、リィンならその人と話が合うかもね。」

「え、えっと。元気を出してください、お兄様。」

一方仲間達が納得した様子でリィンを見つめる中、アリサはジト目でリィンを見つめ、ユーシスはからかいの表情になり、エリオットは苦笑しながら言い、セレーネは言い辛そうな表情で言った。

「ちょっ!?どういう意味だよ!?というか何でみんなも納得しているように俺を見るんだよ!?」

アリサ達が自分を注目している中、リィンは慌てた様子で反論したが

「ギロッ。」

「う”……」

アリサに反論を許さないかのようにギロリと睨みつけられ、黙り込んだ。



「え、えっと……話を戻しますが、どうしてレン姫は誤解が解けたにも関わらず、ご両親の元へ帰らないんですか?」

そして空気を変えるかのようにエマは苦笑しながらプリネを見つめて質問した。

「―――レン自身の希望です。かつての自分は”死に”、今の自分はマーシルン皇家の皇女の一人として”生きる”事を”答え”として出したレンは今後メンフィル皇女としてメンフィルの為に生きて行く”道”を決めたのです。」

「”道”……」

「とてもわたしより年下とは思えないね。」

「……幼い頃からそのような考えができるのも、もしかすれば過去の壮絶な経験が関係しているかもしれないな……」

「…………………」

プリネの説明を聞いたリィンは呆け、フィーとラウラは静かに呟き、ガイウスは目を伏せて黙り込んでいた。



「そう言えば……サラさんとレーヴェさん、遅いですね?もうHRの時間は過ぎていますけど。」

そして話が途切れるとある事に気付いたセレーネは首を傾げて呟いた。

「言われてみれば……15分も過ぎているな。」

セレーネの言葉を聞いたガイウスは時計の針を見つめて頷き

「まったく……まさか寮で寝坊してたりとかしてないわよね?」

「いかにもありそう。」

アリサの意見にフィーは呆れた表情で頷いた。



「うーん、否定できないのがちょっと厳しいけど、レオンハルト教官は確実に違うと思うよ。」

そしてエリオットが苦笑しながら言ったその時

「コラコラ、”今日は”違うわよ。」

扉が開いてサラ教官が教室に入って教卓の前に来た。



「サラ教官。」

「おはようございます。」

「おはよ、みんな。」

そしてリィン達は席についた。



「で、遅れたのにちゃんとワケがあってね。―――今日はみんなに新しい”仲間”を紹介するわ。」

「え……!」

「編入生……」

「ほ、本当ですか!?」

サラ教官の口から出た予想外の発言にリィン達はそれぞれ驚きの表情でサラ教官を見つめた。

「それじゃ、入って来て。」

「うーッス。」

そしてサラ教官が廊下を見つめて言うとなんとクロウが教室に入ってきた。



8:45―――



~トリスタ~



それぞれの教室でホームルームが始まっている中、学院の校門に来た一台のリムジン車が停まった後ドアが開き、そこからある人物達が出て来た。

「はい、到着よ。エヴリーヌお姉様の荷物は寮に送っておいたわ。それでこれがエヴリーヌお姉様の鞄よ。」

「ん。送ってくれてありがと。」

リムジン車が出て来たレンは”トールズ士官学院の夏用の学生服を身に纏うエヴリーヌ”に鞄を渡した。



「やれやれ……まさか本当に編入して来るとはな……」

その時呆れた表情のレーヴェが2人に近づき

「うげっ。何でお前が迎えに来るの。」

レーヴェの顔を見たエヴリーヌは嫌そうな表情をした。



「うふふ、エヴリーヌお姉様はメンフィル帝国の客将なんだから、メンフィル帝国軍に所属しているレーヴェが迎えに来て当然でしょ?」

その様子を見ていたレンは小悪魔な笑みを浮かべながら答え

「学院に来て早々、こいつの顔を見るとか一気にやる気が失せてきたよ……」

エヴリーヌは嫌そうな表情で溜息を吐いた。



「……それ以前に俺は戦闘以外には何の興味も示さず、一日のほとんどを自堕落な生活を送っていたお前が授業をまともに受けられるとは思えないのだが。」

「フン、エヴリーヌはプリネのお姉ちゃんなんだから、そのくらいできて当然だよ。」

「うふふ、レンがしっかりエヴリーヌお姉様に色々な勉強を教えてあげたから大丈夫よ♪エヴリーヌお姉様、プリネお姉様の為に一杯頑張ったのよ♪」

疑惑の目で自分を見つめるレーヴェを見たエヴリーヌは鼻を鳴らして答え、レンが小悪魔な笑みを浮かべて説明した。

「……ならいいが。―――行くぞ。」

「お前がエヴリーヌに指図しないで。じゃ、行ってくるね。」

そしてレーヴェとエヴリーヌは学院に向かい

「ええ、行ってらっしゃい♪楽しい学院生活を送ってね、エヴリーヌお姉様♪」

その様子をレンは小悪魔な笑みを浮かべて見守った後、リムジン車に乗ってトリスタから去って行った。 
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