英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)
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第92話
~メンフィル大使館~
大使館に到着するとプリネとツーヤが前に出て見張りの兵士達に話しかけた。
「!!プリネ姫!ルクセンベール卿!」
「お帰りなさいませ!」
二人の姿を確認した兵士達はそれぞれ敬礼し
「お疲れ様です。」
「既に知らされていると思いますが、後ろの方々は私達が通っている学院の実習の関係で本国に行く為に来ました。」
「ハッ!話は聞いております!」
「どうぞお通り下さい!」
プリネの話を聞いた兵士の二人は敬礼をした後門を開き
(こ、こうして見るとやっぱり二人は凄い身分の人って事が改めてわかるわよね……)
(アハハ……確かに。)
(…………これ程の結界を常に展開しているなんて……一体どれほどの術者なのかしら……?)
その様子を見守っていたアリサは冷や汗をかき、エリオットは苦笑し、大使館を中心に覆っている結界に気付いたエマは真剣な表情をした。そしてリィン達が大使館内に入ると専属侍女長の服を身に纏ったエリゼが玄関でリィン達を待っていた。
「―――お待ちしておりました。」
「へ……」
「エ、エリゼ!?どうしてエリゼがここに……」
エリゼに会釈されたマキアスは呆け、リィンは驚いて尋ね
「もしやお前が俺達を異世界に案内してくれるのか?」
ある事に気付いたユーシスは尋ねた。
「はい。当初の予定では常任理事を務めているリウイ陛下が案内する事になっていたのですが、生憎陛下は政務の関係で多忙の身の為、不肖の身ですが私が案内する事になりましたのでよろしくお願いします。」
「はい、お願いします。」
「よろしく頼む。」
エリゼの言葉にセレーネとラウラは頷き
「まあ、常にプレッシャーを放っている”英雄王”に案内されるより、エリゼに案内された方が、断然いいわよね♪」
「きょ、教官!何て事を言うんですか……!」
「侮辱罪で捕まっても知らんぞ。」
からかいの表情で言ったサラ教官の言葉を聞いたマキアスは慌て、ユーシスは呆れた表情で答え
「でもサラの言う事も一理あるかも。」
「フィ、フィーさん……」
「アハハ……」
サラ教官の言葉に頷いたフィーの言葉を聞いたツーヤは冷や汗をかき、プリネは苦笑した。そしてリィン達はエリゼの案内によって、館内のとある広間に通された。
~異世界移動の間~
「ここは一体……」
「何もないよね……?一体ここからどうやって異世界に行くの?」
周囲を見回したマキアスとエリオットは戸惑いの表情をし
「あの渦から今まで感じた事のない”風”を感じるが……」
「………………」
中心部にある巨大な渦から放つ異様な雰囲気に気付いたガイウスは静かに呟いて考え込み、エマは真剣な表情で渦を見つめた。
「―――ここが一般開放されている異世界移動の転移門の間だ。俺やエリゼも何度もここを利用して異世界移動したよ。あの渦―――転移門によって異世界に行けるんだ。」
「え……じゃあ、あの渦に入れば異世界に……」
リィンの説明を聞いたアリサは呆けた表情で渦を見つめ
「”一般開放”という事は他にもあるのか?」
ある事が気になったラウラはエリゼに尋ね
「はい。皇族の方達が使う転移門は勿論、多くの兵士達を移動させる専用の転移門等、様々な用途の為に別の場所にも異世界移動ができる転移門があるんです。」
「なるほどな……」
エリゼの答えを聞いたユーシスは納得した様子で頷いた。
「それでどうやったら異世界に行けるの?」
「ふふっ、あたしが手本を見せてあげるわ。」
フィーの疑問を聞いたサラ教官は渦に近づいた。するとサラ教官の姿は消えた!
「ええっ!?」
「き、消えた……」
その様子を見ていたエリオットとマキアスは驚き
「フン、既にベルフェゴールやリザイラが転移しているのを何度も見ているのだから、今更驚く事もあるまい。」
ユーシスは鼻を鳴らした後堂々と歩いて渦に近づいてその場から消え、ユーシスに続くようにリィン達も次々と渦に近づいて、その場から消えた!
~異世界”ディル・リフィーナ”・レスペレント地方・ブレアード迷宮最下層・異世界移動の間~
「えっと……ここが異世界なんだよね?」
「どこかの建物の中なのかしら?」
異世界移動したエリオットとアリサは周囲を見回して戸惑い
「はい。ここは遥か昔にレスペレント地方に作られた地下迷宮――――”ブレアード迷宮”です。」
「”ブレアード迷宮”はレスペレント地方全土とアヴァタール地方の一部にも届いている大迷宮なんです。ちなみに今のこの階層は”ブレアード迷宮”の最下層―――地下100階です。」
「ち、地下100階!?」
「え、えっと……どうやって地上まで移動するんですか?」
プリネとツーヤの説明を聞いたマキアスは驚き、エマは表情を引き攣らせ
「まさか今から歩いて地上に行くんじゃないよね?」
「だとすると、相当時間がかかるだろうな……」
「100階も階段を登ったら、凄く疲れるでしょうね……」
ジト目のフィーに続くようにガイウスはその場で考え込み、セレーネは疲れた表情をした。
「ハハ、大丈夫だよ。ちゃんと地上とここを結んでいる転移門があるから、そこに行けばすぐに帝都ミルスに到着するよ。」
仲間達の様子を見たリィンは苦笑しながら説明し
「ふふっ、何だったら希望する子達は今から徒歩で向かう?あたしもちょっとだけこの迷宮を探索させてもらったけど、旧校舎の地下にいる魔獣達とは比べ物にならないくらい歯ごたえのある魔物達だらけで、修行の場としてピッタリの場所よ♪特に最下層であるこの階層にいる魔物達はとんでもない強さよ~。このあたしでもちょっとだけ苦労したし。」
からかいの表情で言ったサラ教官の言葉を聞いたリィン達は全員冷や汗をかいた。
「断固、お断りだな。」
そしてユーシスが仲間達を代表するかのように呆れた表情で答え
「それ以前に迷宮を徘徊している魔物は階層が深くなればなるほど、強い魔物がいますから危険すぎますよ……」
「というか、地下100階にいる魔物達を”ちょっとの苦労”で倒せるサラ教官も相変わらず凄いですね……」
プリネは疲れた表情で答え、ツーヤは苦笑していた。その後リィン達はエリゼの案内によって地上と結ぶ転移門に入って、帝都ミルスに到着した。
~メンフィル帝国・”聖魔の帝都”ミルス~
「うわ~……っ!」
「ここが異世界か……」
「初めて見る物が一杯だね。」
「うむ。まるで伝承の世界に来た気分だな……」
メンフィル帝国の帝都の今まで見た事のない光景にエリオットは声を上げて驚き、ガイウスとフィー、ラウラは興味ありげな表情で周囲を見回し
「凄い……!街中にたくさんの異種族がいるわ……!」
「翼が生えている方、獣耳や尻尾がある方と、本当に色々な種族の方達がいますね……」
街中を歩いている異種族達を見たアリサは驚き、エマは目を丸くし
「ええっ!?あ、あちらの女性の方、下着姿のような服装で街中を歩いていますが……」
「アハハ……あの女性は睡魔族だね。」
「”睡魔族”…………――――そう言えば以前プリネがベルフェゴールの時に説明してくれたが……あれは本当だったのか。」
「も、もしかして信じていなかったんですか……?」
「そりゃあね~。あんな格好は、男を誘惑する事を趣味としているようにしか思えないベルフェゴール(あの女)だけしかしないと思っていたしね。あたしも最初見た時は驚いたわ。」
「ううっ、目のやり場に困るな……」
街中を歩いている睡魔族の女性に気付いて驚いているセレーネにツーヤは苦笑しながら説明し、静かな表情で呟いたユーシスの言葉を聞いたプリネは表情を引き攣らせ、サラ教官は苦笑し、マキアスは疲れた表情をした。
「ミルスか……郷じゃないのに何だか懐かしい気分だな……」
「ふふっ、私達は数年間ここで過ごしましたから、第2の故郷と言ってもおかしくないですものね。」
懐かしそうな表情をしているリィンの言葉を聞いたエリゼは微笑み
「――――それでは改めまして。ようこそ、”聖魔の帝都”ミルスへ。」
そしてリィン達を見回して会釈をした後、微笑んだ。
その後リィン達はエリゼの案内で城に向かい始めた。
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