英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)
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第91話
~リベール王国・王都グランセル・国際空港~
「ここがリベール王国……」
「わたしも初めて来た。リベールは猟兵団の運用を法律で禁止しているから、リベールでの仕事はなかったし。」
飛行船から降りたアリサは目を丸くして周囲を見回し、フィーは興味ありげな表情で周囲を見回し
「えっと……この後ロレント市に行きますから、国内線に乗るんですよね?」
「ええ。じゃあチケットを買って来るからちょっと待ってて。」
リィンに尋ねられたサラ教官は頷いてどこかへと去って行った。
「……列車はないのか?」
サラ教官が去った後ガイウスは不思議そうな表情で仲間達に尋ね
「ああ。リベール王国は起伏の激しい地形の関係で列車はなく、また導力車もあまり運用されていないそうだ。」
「その代わりに飛行船を定期運用していると聞いている。だから、飛行船はエレボニアと違って、頻繁に来ているそうだ。」
ガイウスの疑問にマキアスとユーシスが答えた。
「あっ!あの飛行船って、”アルセイユ号”じゃない!?」
その時美しい白の飛行船を見つけたエリオットは声を上げて飛行船を見つめた。
「間違いない、”アルセイユ号”だ……!」
「”白き翼”の異名を持つリベール王家が所持する高速巡洋艦ですね。」
「とっても綺麗な船ですね……」
”アルセイユ”を見たマキアスは声を上げ、エマは自分が覚えていた知識を思い出し、セレーネはうっとりとした様子で”アルセイユ”を見つめた。
「フフ、”アルセイユ”を見ていると何だか”リベールの異変”の時を思い出すわね。」
「ええ……エステルさん達は”アルセイユ”で”リベル=アーク”に向かいましたからね……」
そしてプリネとツーヤが懐かしそうな表情でアルセイユを見つめていたその時
「あら……?プリネさんにツーヤちゃんじゃないですか。」
青を基調とした凛とした女性騎士と共に一人の貴族の娘がリィン達に近づいてきた。
「え……」
「貴女は……!」
「クローディア王太女殿下……!」
「お久しぶりです、クローゼさん。」
娘の顔をよく見たリィンは呆け、ラウラとユーシスは血相を変え、ツーヤは微笑み
「ええっ!?ク、クローディア王太女殿下っていったら……!」
「リベール王女にして、次期リベール女王ですね。」
ユーシスの言葉を聞いたエリオットは驚き、エマは目を丸くして娘を見つめ
「フフ……―――初めまして。リベール王国、王太女のクローディアと申します。以後お見知り置きをお願いします。」
「―――リベール王国親衛隊隊長ユリア・シュバルツ准佐だ。以後お見知り置きを。」
娘――――クローディア姫と女性騎士―――ユリア准佐はそれぞれ自己紹介をした。
「も、申し遅れました!俺達はトールズ士官学院の”Ⅶ組”に所属する者です。」
「トールズ士官学院の”Ⅶ組”…………なるほど、貴方達がオリヴァルト皇子が結束したという特別クラスの士官学院生達ですか。」
リィンが慌てた様子で申し出るとクローディア姫は目を丸くした後リィン達に微笑んだ。
「え…………」
「殿下は我々の事をご存知なのですか?」
クローディア姫の言葉を聞いたアリサは呆け、ユーシスは驚きの表情で尋ねた。
「フフ、話だけは聞いています。この間もエステルさん達が手紙で貴方達と出会った事を書いていましたし。」
「エ、エステルさん達がですか……!?」
「リベール王家とまで仲がいいなんて、さすがだね。」
クローディア姫の話を聞いたマキアスは驚き、フィーは目を丸くし
「フフ、エステル君達はリベールの異変を解決した立役者であると同時に殿下にとっても大切な友人なのでね。よく連絡を取り合っているんだよ。」
ユリア准佐が微笑みながら説明した。
「それで本日は一体どういった用件でリベールに来訪したのですか?」
「実は――――」
そしてプリネはクローディア姫にリベールに来た理由を説明した。
「そうですか。フフ、それにしても……まさかツーヤちゃんの学生服を見る事ができるとは思いませんでした。」
「えっと……どこか変ですか?」
「フフ、とても似合っていますよ。そして貴女がツーヤちゃんの話にあったツーヤちゃんの妹ですか……貴女を見ていると何だか昔のツーヤちゃんを思い出しますね。」
ツーヤに微笑んだクローディア姫は懐かしそうな表情でセレーネを見つめた。
「クローディア殿下は昔からお姉様と親しかったのですか?」
「ええ。―――――プリネさんも、私のように掛け替えのないご学友ができて何よりです。」
「ありがとうございます、クローディア姫。こうやって学生服を着ているとジェニス王立学園で一緒に学んでいた時を時折思い出しますよ。」
「そうですね……あの頃は私にとっても、掛け替えのない時間でした……」
プリネの言葉に頷いたクローディア姫は懐かしそうな表情をした。
「……殿下。そろそろ……」
するとその時ユリア准佐がクローディア姫に話しかけ
「あっと、そろそろ城に戻る時間でしたね……――――それでは私達はこれで失礼します。皆さんの学生生活が実りある生活である事を心から祈っていますね。」
そしてクローディア姫はリィン達に微笑んだ後ユリア准佐と共にその場から去った。
「は~~~っ……!き、緊張した~。」
「まさかクローディア殿下とこんな所で会えるとは予想外だったぞ……」
二人が去るとエリオットとマキアスは疲れた表情で溜息を吐き
「フフ、6月から連続で王族の方達と出会っているな。」
「アハハ……確かにそうですね。」
「素敵な方だったわよね、クローディア殿下……」
静かな笑みを浮かべるガイウスの言葉にエマは苦笑し、アリサは羨望の眼差しでクローディア姫達が去って行った方向を見つめ
「まさに噂通りの聡明な姫君だったな……」
「うむ。」
ユーシスの言葉にラウラは頷き
「わたくし、クローディア殿下のような立派な淑女になりたいです、お姉様!」
「フフ、セレーネならきっとなれるよ。」
憧れの表情で言ったセレーネの言葉にツーヤは微笑んだ。その後戻ってきたサラ教官が購入したチケットによってリィン達は飛行船でロレント市に向かい、ロレント市に到着後、ロレント市で昼食を取った後ロレント市を出て街道にあるメンフィル大使館に向かっているとある人物がリィン達に近づいてきた。
~ロレント郊外・エリーズ街道~
「おや?随分懐かしい顔がいるな。」
リィン達に近づいてきた男性はサラ教官を見つめて口元に笑みを浮かべ
「カシウスさんじゃないですか!お久しぶりです!」
サラ教官は驚いた後懐かしそうな表情をした。
「カ、”カシウス”ってまさか――――」
「かの”剣聖”カシウス・ブライト卿ですか……!?」
サラ教官が口にした名前を聞いたマキアスは信じられない表情をし、ラウラは驚きの表情で男性を見つめた。
「ハッハッハッ!その口ぶりだとどこかの貴族のお嬢さんのようだが、俺は大出世をしたエステル達みたいに”卿”なんて呼ばれる程偉くはないぞ。俺は唯の軍人だ。」
男性は豪快に笑った後苦笑しながらラウラを見つめ
「またまたご冗談を~。リベール王国軍の総大将をやっているカシウスさんが”唯の軍人”な訳がないでしょう~?」
「た、確かに……」
「フフ、相変わらずのようですね。」
サラ教官やツーヤ、プリネは苦笑した。
「そんな事はありません!カシウス卿のご高名はかねがね聞いております。父上もいつか、カシウス卿に直に会って剣を合わせたいと仰っていました。―――申し遅れました。私の名はラウラ・S・アルゼイド。ヴィクター・S・アルゼイド子爵の娘です。以後お見知り置きをお願いします。」
「ほう?かの”光の剣匠”殿の……フフ、さすが”光の剣匠”殿のご息女だな。その年でそれ程の腕前の女子は滅多にいないぞ。」
「いえ、そんな。カシウス卿のご息女であるエステル殿と比べれば、私はまだまだ精進が必要です。」
「フウ、その謙虚さをエステルがちょっとでも見習ってくれたらいいのだがな…………おっと、自己紹介が遅れたな。――――リベール王国軍准将カシウス・ブライト。よろしくな。」
謙遜している様子のラウラを見た男性――――カシウス准将は疲れた表情で溜息を吐いた後自己紹介をして笑顔を見せた。
「は、初めまして。リィン・シュバルツァーです。カシウス准将のご高名はかねがね聞いております。」
「アリサ・ラインフォルトです。よろしくお願いします。」
「えっと……エリオット・クレイグです。」
「初めまして。エマ・ミルスティンです。」
「マキアス・レーグニッツです。エステルさん達にはお世話になりました。」
「―――ユーシス・アルバレア。お見知り置きを願おうか。」
「フィー・クラウゼル。よろしく、”剣聖”。」
「ガイウス・ウォーゼルです。以後お見知り置きをお願いします。」
「ツーヤお姉様の妹、セレーネ・アルフヘイムと申します。よろしくお願いします。」
カシウス准将が自己紹介をするとリィン達もそれぞれ自己紹介をした。
「”光の剣匠”の娘と”ラインフォルトグループ”の会長の娘に、帝国軍で”猛将”と称えられている”紅毛のクレイグ”や”革新派”の有力人物である帝都知事の息子に”貴族派”の有力人物である”四大名門”の息子、それに”西風の妖精”か。話には聞いていたが、ずいぶんと変わったメンバーだな?まとめるのも大変だったんじゃないか?」
リィン達が名乗り終えるとカシウス准将は目を丸くしてサラ教官を見つめ
「ええ、それはもう大変でしたよ。特に中々仲直りをしない連中にはホント、苦労させられましたよ。」
サラ教官は疲れた表情で答えた後ジト目でリィン、アリサ、マキアス、ラウラ、ユーシス、フィーを見回し
「ハハ……」
「うっ……」
「その節は迷惑をかけて申し訳ないと思っている。」
「わ、私とリィンはそんな仲が悪くありませんでしたし、すぐに仲直りしましたよ!?」
「フン、常に俺達に迷惑をかけている元凶がそんな事を言えると思っているのか?」
「……だね。というか、サラはほとんどリィンに投げっぱなしだったしね。」
リィンは苦笑し、マキアスは唸り、ラウラは静かな表情で答え、アリサとユーシス、フィーは反論し
「後、あたしにも毎回投げっぱなしでしたよね……!?」
「お、お姉様……?どうされたのですか……?」
「アハハ……ツーヤが特に毎回苦労させられていたから仕方ないわ……」
顔に青筋を立てて口元をピクピクさせてサラ教官を見つめるツーヤの様子にセレーネは戸惑い、プリネは苦笑していた。
「フム……リィン、だったな?”シュバルツァー”とはもしやエリゼの……」
その時ある事に気付いたカシウス准将はリィンを見つめ
「はい。エリゼは俺の妹になります。准将程の方が妹を鍛えて頂き、今でも感謝しております。」
カシウス准将に見つめられたリィンは会釈をした。
「な~に、俺の方も可憐なお嬢さんに教える事ができるという滅多にない体験ができたし、シード達にもいい刺激になったからお互い様だ。あれほどの兄想いの可憐なお嬢さんを妹を持つなんて、幸せ者だな。」
「ハハ……俺には勿体ないくらいの妹ですよ。」
笑顔のカシウス准将に見つめられたリィンは苦笑しながら答えた。
「?カシウスさん、今シード大佐達の話を出しましたが……」
「もしかしてエリゼさんはユリア准佐達とも剣を合わせているのですか?」
その時ある事に気付いたツーヤとプリネはそれぞれ目を丸くして尋ねた。
「ああ。どうせなら俺が剣を教えた弟子同士、良い刺激になると思ってな。時間がある時にシードとユリアは勿論、リシャールにもエリゼと直に剣を合わせてもらっているし、モルガン将軍とも模擬戦をした事もあるぞ?」
「ええっ!?エ、エリゼがカシウス准将の弟子達と……!?」
「それにリベールのモルガンと言えば、”武神”の名で有名なリベール軍のトップだな。」
「ど、道理で対人戦なのに滅茶苦茶強いわけだな、エリゼ君は……」
「フフ、そのような環境で自らを鍛える事ができるとは一人の剣士としてエリゼが羨ましいな……」
カシウス准将の話を聞いたリィンは驚き、ユーシスは静かな表情で答え、マキアスは冷や汗をかいて表情を引き攣らせ、ラウラは静かな笑みを浮かべた。
「うかうかしていたら、マジで妹に追い抜かれるでしょうね~♪」
「うっ……」
「というか、もう追い抜かれていると思うんだけど。」
「フィ、フィーちゃん……」
サラ教官にからかわれて疲れた表情で唸るリィンの様子を見たフィーは呆れた表情で呟き、フィーの言葉を聞いたエマは冷や汗をかいた。
「おっと、そろそろ戻らないとレナにどやされるな。今エレボニアは色々と大変な状況だと聞いているが、無理はするなよ、サラ。プリネ姫とツーヤも自分達の力を過信して、痛い目に合わないようにな。」
「はい、心配してくれてありがとうございます。でも自己管理はしっかりしているので大丈夫ですよ。」
「はい、ご忠告ありがとうございます。」
「あたし達の事も心配して頂き、ありがとうございます。」
カシウス准将の言葉にサラ教官とプリネ、ツーヤはそれぞれ頷き
(とても自己管理ができているとは思えないわよね……)
(休日は朝から酒を飲んでいる癖によく言えるな……)
カシウス准将の言葉に答えたサラ教官の答えを聞いたアリサとユーシスは呆れた表情をし
「何か言ったかしら?」
二人の小声を聞いたサラ教官は顔に青筋を立てて笑顔でリィン達を見つめ、リィン達は冷や汗をかいた。
その後カシウス准将と別れたリィン達はメンフィル大使館に到着した。
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