| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第81話

同日、23:00――――



その後説明を聞き終えたリィン達はサラ教官と共に自分達が宿泊している元ギルドの建物に戻った。



~遊撃士協会・ヘイムダル東支部跡~



「いや~、懐かしいわねぇ。1年半くらい前までは週一くらいで来てたんだけど。」

「そうなんですか……」

「それじゃあ僕なんか顔見知りだったとしてもおかしくなかったんですね。」

建物の中を懐かしそうな表情で見回すサラ教官の言葉を聞いたリィンとエリオットはそれぞれ目を丸くした。



「あ、君のお姉さんとは知り合いだったりするわよ。フィオナさんでしょ?ピアノの講師をしている。」

「ええっ、そうなんですか?あ、そう言えば知り合いがギルドにいるって……」

「教官の事だったんですか……」

「フフ、不思議な縁ですね。」

「そうね。まあ、遊撃士は市民達と密着している職業だから、知り合い同士でもおかしくないけど……」

サラ教官とフィオナが知り合いである事を知ったエリオットとマキアスは驚き、セレーネとツーヤは微笑んでいた。



「ふむ……サラ教官。事情がわからないのだがなぜギルドは帝都からの撤退を?」

「確かにそれは気になっていました。”支える籠手”の紋章……以前はもっと活動してましたよね?」

そしてラウラの疑問に頷いたリィンはサラ教官を見つめて尋ねた。

「んー、まあそうね。……聞いたと思うけど、直接の原因は帝都各地の支部が爆破された事でね。当時対立していた―――今もしてるけど、とある連中に雇われた猟兵団の仕業で……頼りになる助っ人も来てくれたからその猟兵団を叩き潰すことはできたけど帝国政府から目を付けられちゃってねぇ。以来、露骨に圧力をかけられて大幅に活動を制限されているのよ。帝都にあった支部もご覧の通り、再開の目途すら立っていない状況ね。」

「そうだったんですか……」

「……少し酷いですね。遊撃士の方達を追い出すなんて。」

サラ教官の説明を聞いたエリオットは驚き、セレーネは辛そうな表情をし

「……その、もしかして。」

ある事を察したマキアスは複雑そうな表情でサラ教官を見つめた。



「フフ、帝都庁の管理とは言え君のお父さんはほぼ無関係ねぇ。”お友だち”は大いに関係あるけど。」

「知事閣下の”お友だち”……」

「……帝国政府代表。ギリアス・オズボーン宰相。」

「ええ、それと彼の肝煎りである”帝国軍情報局”ね。さっきの”鉄道憲兵隊”とは兄弟みたいな組織と言えるわ。」

サラ教官の説明を聞いたリィン達は黙り込み

「……ねえ、サラ。もしかしてその雇った猟兵団の依頼主って”身喰らう(ウロボロス)”?」

フィーが静かな口調で尋ねた。



「ええ、恐らくね。ちなみに君達は”身喰らう(ウロボロス)”の事について、もしかしてフィーかツーヤから聞いているのかしら?」

「はい。何でも”リベールの異変”を起こした裏組織だとか。」

「後はレオンハルト教官が以前その組織で”剣帝”という異名の”執行者(レギオン)”の位についていた事は聞いている。」

「そっか。さっきの説明にあった”とある連中”が”身喰らう(ウロボロス)”でね。あの件に数人の”執行者(レギオン)”が関わって、あたし達の行動を妨害していたのよ。」

リィンとラウラの言葉に頷いたサラ教官は説明を続けた。

「も、もしかしてその時レオンハルト教官も……?」

サラ教官の説明を聞いてある事に気付いたエリオットは不安そうな表情をした。

「いいえ。当時のあいつはリベールの異変を起こす準備の関係でリベールで暗躍していたから、直接関わってはいないけど……帝都各地の支部の爆破をした猟兵団の連中を鍛え上げたのがレーヴェだったのよ。」

そしてサラ教官とレーヴェの因縁を聞かされたリィン達は黙り込んだ。



「ま、そんな感じで無職になったあたしをヴァンダイク学院長が拾ってくれたのよ。去年の春から、武術教官として働いて君達の担任にも抜擢されたってわけ。まあ、今でもギルドの手伝いはしててその関係でこの子を連れてきたんだけど。」

リィン達に説明したサラ教官はフィーに近づいてフィーの頭を軽く叩いた。

「サラ、ウザったい。」

ジト目で答えたフィーの言葉を聞いたリィン達は冷や汗をかいた。



「そうだったんですか……」

「ちなみにその、ギルドを襲った猟兵団というのは……?」

「ああ、この子のいた団とは別物よ。”ジェスター猟兵団”っていう正直、低ランクの猟兵団だったわ。」

「そうですか……」

「ラウラ、心配してくれた?」

サラ教官の説明を聞いてどこか安堵している様子のラウラを見たフィーは首を傾げて尋ねた。



「いや、まあ別物というのはわかっていたが……」

「はは、しかしフィーの古巣はかなりの大物だったんですね?」

「”西風の旅団”………喰わせ者として知られた団長、”猟兵王”に率いられた多彩なスペシャリストを擁した集団。中世から続く狂戦士(ベルゼルガー)の末裔、”赤い星座”とは双璧だったわね。あたしも現役の頃は相当苦労させられたもんだわ。」

「……よく言う。色々邪魔したくせに。」

疲れた表情で答えたサラ教官の言葉を聞いたフィーはジト目で指摘し、リィン達は冷や汗をかいた。

「あはは……それにしても、人生っていうのはわからないですね。フィーさんのように”闘神の息子”で知られていた有名な猟兵も今ではフィーさんと似たような事をしていますから。」

「あー、そう言えばそうだったわね。」

「……”闘神の息子”がわたしみたいにってどういう事?」

ツーヤの言葉に苦笑しながら頷いたサラ教官の様子が気になったフィーは首を傾げて尋ねた。



「”赤い星座”に所属していた”闘神”バルデル・オルランドの息子である”闘神の息子”ランドルフ・オルランド―――今はランディ・オルランドと名乗って”特務支援課”に所属しているわ。」

「”特務支援課”とはクロスベル警察が立ち上げた”市民の安全を第一に考え、様々な要望に応える部署”―――要は遊撃士のような事をする部署なんです。」

「というかまるっきり遊撃士のパクリじゃん。にしてもあの”闘神の息子”が遊撃士の真似事をしているなんて、正直想像できないんだけど。」

サラ教官とツーヤの説明を聞いたフィーはジト目で呟き

「フフ、あたしはランディさん自身に会った事がありますけど……わりと今の仕事を気に行っている様子でしたよ?」

「そう言えばツーヤはプリネ達と共にクロスベルで起こった例の”教団”によるクロスベル襲撃事件の際、クロスベルを防衛したんだったわねぇ。」

「あの事件か。クロスベル防衛に”六銃士”どころか”英雄王”達まで関わっていた事は聞いているけど、プリネとツーヤも関わっていたんだ。」

そしてツーヤの話にそれぞれ納得している様子のサラ教官とフィーを見たリィン達は再び冷や汗をかいた。



(な、何だかとんでもなく遠い世界の話のような気が……)

(あはは……小説の中の話みたいだね。)

(お姉様、凄いです!)

疲れた表情で呟いたマキアスの小声にエリオットは苦笑し、セレーネは尊敬の眼差しでツーヤを見つめていた。

「いずれにせよ……今日話に出たテロリストは”猟兵団”とは別物よ。」

「……やはりそうですか。」

「ええ、猟兵団は基本的にミラと戦いそのものが目的よ。だけど、ノルドに現れたその”ギデオン”という男……何か深く暗い情念で動いているとしか思えない。」

「深く暗い情念……」

「ほ、本人を見ていないので何とも言えないが……」

「確かに、執念深い何かを感じさせる人物ではあるな。」

「一体何があって、そのような性格になっているのでしょう……?」

サラ教官の推測を聞いたエリオットとマキアスは呆け、ラウラは頷き、セレーネは不安そうな表情をした。



「ああ……実際にそんな感じの男だった。となると、明日の巡回は気合いを入れる必要がありますね。」

「ま、気休め程度だろうけど協力するからには頑張りなさい。色々あってチームワークも高まったみたいだしね。―――それじゃ、今日は遅いし、レポートを書いたら休むこと。あたしは一足先に空いてる部屋で休ませてもらうから♪」

そしてサラ教官は2階に上がって行った。

「あ……」

「まったく、どんな時でもサラ教官は変わらないな……」

「……そっかな。」

呆れた表情で呟いたマキアスの言葉を聞いたフィーは静かに答えてリィン達を自分に注目させた。



「……いつもよりも口数が少し多い気がした。ちょっと無理してるような。」

「言われてみれば……」

「た、確かに普段よりも素直に色々教えてくれたような……」

「やっぱり元の職場に来て少しナーバスになったのかな?」

「……そうかもしれないな。まあ、俺達の立場で心配するのも生意気だろう。せめてB班共々、明日は出来るかぎりの働きをしよう。」

「うん、そうだな。」

「レポートをまとめたら早めに休むとするか。ツーヤは先にセレーネと共に休んでいてくれ。昨日は一人で任せた分を返したいし。」

「わかりました。それじゃあ行くわよ、セレーネ。」

「はい、お姉様。それではみなさん、おやすみなさい。」

その後レポートを書き終えたリィン達は明日に備えて休み始めた。



同日、25:00――――



~ヘイムダル港~



市民達が寝静まっている深夜の中を一人のフードの人物が港のある場所に歩いた後、両手を広げて宣言した。

「―――時は至った。今こそ我らが鉄槌をもって(あか)き都の眠りを覚ます刻だ。」

「―――応。」

フードの人物の周囲には多くの市民や整備員、労働者等数十名に到る一般市民にしか見えない怪しげな男達がいた。



「同志”G”……全ての準備は完了している。」

「だが、肝心の貴方の手勢は余りにも少ない……」

「せめてあと数名くらい他から回すべきではないか?」

「なに―――心配は無用だ。この”笛”さえあれば鉄道憲兵隊やメンフィル軍も恐れるに足りん。明日はとうとう”我々”の名前を世間に知らしめる時―――頼もしき同志たちよ、力を尽くしてくれたまえ……!」

そしてフードの人物―――ギデオンはフードを取って懐から笛を取り出して周囲の男達を見回して号令をかけ

「おおっ……!」

ギデオンの号令に男達は力強く頷いた。



そして翌日………… 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧