英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)
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第60話
~トールズ士官学院・1年Ⅶ組~
「うーん、そろそろ本格的に暑くなってきそうな雰囲気ね。そして夏と言えばビールの季節!明日は自由行動日だし、帝都にあるビアガーデンでもハシゴしに行っちゃおうかしら♪」
サラ教官の話を聞いたリィン達全員は冷や汗をかいて呆れ
「まあ、別に構いませんが……」
「ダンディな中年紳士とやらと一緒に行けるアテでもあるのか?」
リィンは戸惑いながら頷き、ユーシスは呆れた表情で指摘した。
「むぐっ……言ってくれるわね。って、そうだ!プリネ、”臨時領主”の権限とかでケルディックの”風見亭”のおばちゃんにあたしが激安の値段で地ビールの飲み放題ができるように頼んでよ~。あたしとあんたの仲でしょう~?」
「え、えっと……冗談ですよね?」
「というか領主を何だと思っているんですか……」
「生徒におごりを期待するなど、教官としてのプライドすらもないのか?」
そしてある事を思いついたサラ教官に見つめられたプリネは表情を引き攣らせ、ツーヤは疲れた表情で溜息を吐き、レーヴェは呆れた表情で指摘した。
「むぐっ、相変わらず余計な一言が多い生意気な後輩ね。ま、それはともかく次の水曜日は実技テストよ。もう慣れてきたと思うけど一応、備えておきなさい。」
「はい、わかりました。」
「ということは来週末に”特別実習”があるわけね。」
サラ教官の話にエマは頷き、今まで実技テストの後に特別実習がある事を思い返したアリサは呟き
「ふう……前回からそんなに経っていない気がするんだが。」
「「……………………」」
マキアスは疲れた表情で溜息を吐き、ラウラとフィーは黙り込んでいた。
「でも、そっか……そうなると今年は帝都の夏至祭に行けないなぁ。」
「”夏至祭”というと……」
「6月に帝国各地で開かれる季節のお祭りみたいなものかな。」
「七耀教会というより、精霊信仰の伝統がベースになっているらしいわね。」
エリオットの呟きを聞いて疑問に思ったリィンとアリサが説明した。
「故郷のノルドでも似たような祭はあったな。だが、どうして帝都の夏至祭は6月ではなく7月なんだ?」
「そうそう、あたしも前から不思議に思ってたのよね。それで、どうしてなの?」
「ふう……貴方は一応、教官でしょう?」
ガイウスに続くように首を傾げたサラ教官の様子を見たマキアスは呆れた表情で指摘した。
「たしか”獅子戦役”が由来だと聞いているが……」
「ええ、ドライケルス大帝が内戦を終結させたのがちょうど7月だったらしく……そのお祝いと合わせて一月遅れで夏至祭が開かれたのがきっかけだと言われていますね。」
「へ~、なるほどねぇ。そういえばトマス教官がそんなことを言ってたっけ……話が長くなりそうだから途中で失礼しちゃったけど。」
「まあ、気持ちはわからなくはないですけど……」
「あの先生、歴史談義になるとすっごく話が長くなるもんねぇ。」
「けっこうウザい。」
サラ教官からある教官の名が出てくるとリィンとエリオットは苦笑し、フィーはジト目で呟いた。
「夏至祭で思い出したが……確か今年の夏至祭はメンフィル帝国のVIP達が特別に招待されているらしいな。」
「もしかしてプリネさん達のように国家間の関係修復の為ですか?」
ある事を思い出したユーシスに続くようにエマはプリネに尋ねた。
「ええ、そう聞いています。」
「招待に応じて参加するメンバーを知ったら驚きますけどね……」
「フッ、確かにそうだな。正直、豪華メンバーと言ってもおかしくない面々だからな。」
エマの疑問にプリネは頷き、苦笑するツーヤの言葉にレーヴェは静かな笑みを浮かべて頷いた。
「豪華メンバーって……」
「やっぱり皇族の方達なのかしら?」
レーヴェの言葉が気になったエリオットは目を丸くし、アリサは尋ねた。
「はい。参加する方はお父様、お母様、イリーナ様、そしてリフィアお姉様とレン。お父様達の護衛としてファーミシルス大将軍とエヴリーヌお姉様が来ると聞いております。」
「た、確かにそのメンバーなら豪華メンバーと言ってもおかしくないな…………」
「……そうなのか?」
「うん……プリネの両親は勿論、”英雄王”の正妃の”聖皇妃”やメンフィル皇帝の跡取りの”聖魔皇女”は凄く有名だもん。」
プリネの説明を聞いたリィンは表情を引き攣らせ、ガイウスの疑問に頷いたエリオットはガイウスに説明し
「”空の覇者”の異名を持つファーミシルス大将軍と”魔弓将”の異名を持つエヴリーヌ殿は一人でエレボニア帝国軍を壊滅させたとの逸話がある程の相当な腕前の武人だと聞いている。」
「ひ、一人で軍隊を壊滅に陥らせたって……」
ラウラの話を聞いたアリサは表情を引き攣らせた。
「正直、普通なら夢物語だと思うけどバリアハートの時に見せたエステルさん達の強さを思い返せば、実際本当の話に聞こえてくるんだよな……」
「”人間”の”ブレイサーロード”達ですらあの強さなのだから、そいつらを越える”空の覇者”達なら一人で軍隊を壊滅させたという噂が真実であるとしか思えん。」
「ア、アハハ……確かにそうですね。」
「たったあれだけの人数でわたし達を守りながら領邦軍を壊滅に陥らせた上、生身で戦車や装甲車まで破壊したもんね。一体どんな、非常識な体験をしたのか今でも気になるくらい。」
疲れた表情のマキアスの言葉に同意したユーシスの言葉にエマは苦笑しながら頷き、フィーは呆れた表情で呟いた。
「レン姫で思い出しましたけど……別れ際にレン姫はプリネさんの事を”お姉様”と言っていましたが……」
「ええ、レンは私の妹です。まあ、血は繋がっていませんが……」
ある事を思い出したエマに尋ねられたプリネは頷き
「血は繋がっていないって……まさか養子なのか?」
「はい。様々な複雑な事情があって孤児になったレンはお父様とお母様の娘として引き取られたんです。ちなみに引き取られる前のレンの身分は”平民”ですよ。」
「ええっ!?じゃ、じゃあ皇族が”平民”を養子にしたの!?」
「お、俺もその話は初めて聞いた……確かにレン姫は養子で知られていたけど……」
マキアスの疑問に答えたプリネの話を聞いたエリオットとリィンは驚き
「……まあ、孤児から大貴族になったツーヤという例もいるのだから、メンフィルならあり得てもおかしくないと思うが。」
「アハハ、確かにそうですね。」
冷静な様子のユーシスの言葉にツーヤは苦笑しながら頷いた。
「はいはい、私語はHR後にして。とにかく、暑くなりそうだし、夏バテには注意しておきなさい。ま、寮の優秀な管理人さんが美味しい料理を作ってくれるから心配いらないかもしれないけど~。」
(やっぱりシャロンさんと何かあるみたいだな……?)
(うーん、そうみたいね。シャロンに聞いても『何でもありませんわ』とかはぐらかされるけど……)
サラ教官の含みのある言葉を聞いたリィンに視線を向けられたアリサは頷いた。
「それじゃあ、HR終了。マキアス、挨拶して。」
「わかりました。起立―――礼。」
そしてHRが終わり、リィン達がそれぞれ談笑している中、一人で机に座っていたフィーは突如立ち上がって教室から出た。
「あ、フィーちゃん……」
フィーの行動に気付いたエマは目を丸くし
「……………………」
ラウラは真剣な表情で黙って去って行くフィーを見つめた。
「えっと……私ちょっと追いかけてみますね。」
「あ、それなら私も付き合います。」
「うん、お願い。」
「わかりました。」
そしてエマとプリネはフィーの跡を追って教室から出た。
「……ふう、ラウラもちょっとは折れなさいよ。貴女の方が年上なんだし。」
「ええ……それに人それぞれに様々な事情がある事はわかっているでしょう?」
「うん……それはその、わかってはいるのだが……」
アリサとツーヤの指摘にラウラは複雑そうな表情で頷いた。
「……相変わらずか。」
「水錬の勝負の檻でも揉めていたようだが……」
一方女子達の様子に気付いたリィンとガイウスはアリサ達を見つめ
「フン、先月の実習も今ひとつだったそうだな?」
ユーシスはマキアスに尋ねた。
「ああ……結局あの二人は最後まであんな調子だったな。―――なあリィン、君の方で何とかできないか?」
「何とかしたいとは俺も思っているけど……また、どうして俺なんだ?」
マキアスに尋ねられたリィンは戸惑いながら尋ね返した。
「いや、普通に適任だろう。」
「フッ、生徒会の手伝いをするお人好しでもあるからな。」
「いや、別にそこまで大した事はしてないんだが……」
ガイウスとユーシスの言葉に謙遜していたリィンはずっと黙っているエリオットに気付いた。
「……?エリオット、どうした?」
「わわっ、な、何?あ、そっか……うん。僕もリィンは適任だと思うよ。マキアスとユーシスの仲直りにも一役買ったみたいだし。」
「じょ、冗談じゃない!」
「仲直りなど、お花畑な妄想は止めてもらおうか?」
エリオットの答えを聞いたマキアスは驚き、ユーシスはエリオットを睨んだ。
「あはは、息ピッタリだし。えっと……そろそろお先に失礼するね。部活に行かなくちゃだから。」
「ああ、吹奏楽部か。」
「フン……そろそろ俺も行くか。」
「おっと、僕も部長に呼ばれているんだった。」
「皆、また後でな。」
その後クラスメイト達はそれぞれの部活に向かい、リィンは暇潰しに校舎内を歩き始めた。
リィンがグラウンドを歩いていると物陰から聞き覚えのある女子の声が誰かと会話をしている様子が聞こえてきた。
~グラウンド~
「……わからない。ノルドの地では”資質”を見せる事は無かったけど……」
「……ああもう、アタシもついて行けばよかったわ。どう考えても…………機能…………高いし。」
「…………でも………………」
「それに…………だったかしら?”怠惰”の魔王といい、連中は一体何を考えて……………に…………いるのよ…………」
(……?聞き覚えがあるような。)
耳に聞こえてきた会話の一人から聞き覚えのある女子の声を聞いたリィンは声が聞こえた方向に近づいた。
「「誰!?」」
するとそこには驚いた様子のエマが他の声と一緒にリィンを見つめた。
「―――すまない。邪魔しちゃったみたいだな。って―――なんだ、委員長か。あれ、その黒猫は…………」
エマの傍にいた黒猫に気付いたリィンは黒猫を見つめ
「…………………………」
(あら?あの猫は純粋な猫じゃないわね。)
(ええ、使い魔の類いでしょうかね。)
黒猫はリィンをジッと見つめ、ある事に気付いたベルフェゴールとリザイラは目を丸くした。
「……リィンさん……い、いつからそこに……?」
「いや、すぐそこで誰かの話し声が聞こえたからどこからだろうと思って……あれ……?今、委員長がここで話してたんだよな?いったい誰と話していたんだ?」
エマの傍に誰もいない事に首を傾げたリィンはエマに尋ねた。
「ええっ、それは……―――そうそう、ARCUSでお友達と話していたんですっ!べ、便利ですよね~、通信機能!」
尋ねられたエマは答えに詰まった後ある事を思いついてすぐにARCUSを取り出して説明した。
「はは、確かに。あ、邪魔したみたいだけどかけ直さなくていいのか?」
「あはは……大丈夫です。もう話は終わっていたので。ええもう、まったくもって気にしなくても大丈夫ですから!」
「わ、わかった。しかし……やっぱりその猫、委員長も知ってたみたいだな?ひょっとして委員長が飼っている猫だったりするのか?」
「……………………」
リィンの疑問を聞いた黒猫は鳴き声もせず黙り込み
「い、いえ、その……飼っているというよりお目付け役というか……」
エマは答えに困り、ブツブツ呟いた。
「お目付け役?」
「―――じゃなくて!そう、お友達なんです!この学院に入ってから何度も遭遇して……チーズとかミルクをあげてるうちになつかれちゃったみたいで……あはは。」
「はは、そうだったのか。うーん、今日は大人しいけど機嫌がいいのかな?」
「……にゃあ。」
リィンに見つめられた黒猫は一鳴きし
「あはは、そうみたいですね。……よいしょっと。えっと、街の子みたいなので私が外まで連れて行きますね。教官方に見つかったら問題になるかもしれませんし。」
「あ、ああ……?(大丈夫だとは思うけど……)」
黒猫を抱き上げたエマの答えにリィンは戸惑いながら頷いた。
「―――そうだ委員長。」
「……!」
そして去って行くエマを呼び止めたリィンの言葉を聞いた黒猫は警戒し
「な、なんでしょう?」
エマは焦りながら尋ねた。
「その子の名前、知っていたりしないかな?街の人が飼ってるんだとしたら名前があると思うんだけど。」
「ああ、確かにそうですね……えっと…………」
リィンの疑問を聞いたエマは頷いた後考え込み
「…………………」
黒猫はリィンから視線を逸らして黙り込んだ。
「ふふっ……―――この子の名前は”セリーヌ”っていいます。」
「…………!」
そしてエマが呟いた名前を聞いた黒猫―――セリーヌは目を見開き
「へえ……!セリーヌ、セリーヌか。うん、すごく良い名前だな。艶やかで綺麗な毛並みにピッタリの名前というか。それに”セリーヌ”って名前は確かリウイ陛下とイリーナ皇妃の間に産まれた皇女殿下の名前でもあるんだ。」
「……………………
「まあ……そうだったんですか。”英雄王”と”聖皇妃”の間に産まれた皇女殿下と同じ名前だなんて、光栄な事ですね。」
リィンの称賛の言葉を聞いてリィンから視線を逸らし、エマは微笑み
(うふふ、さすがご主人様ね♪)
(獣相手で、よくあそこまでの賛辞が自然と口から出てきますね……)
ベルフェゴールはからかいの表情になり、リザイラは静かな笑みを浮かべていた。
「ああ、ってことはやっぱりメスなのか?」
「ふふっ……ええ、女の子ですよ。―――それじゃあセリーヌ。行きましょうか。」
「…………ニャア。」
そしてエマはセリーヌを抱いたままその場から去って行き
(うーん、俺もできればもっとお近づきになりたいけど……まあ、見かけたら新鮮なミルクでもご馳走するか。)
リィンもエマ達に続くようにその場から去った。
「フウ………………」
人気のない所までセリーヌを運んだエマは周囲を見回して安堵の溜息を吐き
「全く……どうして私の名前を教えるのよ!?」
セリーヌはエマを睨んでなんとしゃべった。
「ふふっ、いいじゃない。リィンさん、すごく褒めてくれたし……」
「フン、あの子もよく平然とあんな言葉を口にできるわね。」
エマに微笑まれたセリーヌは鼻を鳴らして呆れた様子で答えた。するとその時
「うふふ、それはご主人様だからこそよ♪」
「「!!」」
なんとベルフェゴールとリザイラが転移魔術でエマとセリーヌの前に現れた!
「ベ、ベルフェゴールさんにリザイラさん………ど、どうしたんですか、一体……」
二人を見たエマは大量の冷や汗をかきながら二人を見つめ
「……………………」
セリーヌは警戒の表情で二人を睨んだ。
「ふふふ、その猫―――セリーヌでしたか?”彼女”の存在が少し気になりましてね。」
「あ、ご主人様には適当に誤魔化して来たから、心配いらないわよ♪」
「え、えっと……何の事でしょうか?」
二人の話を聞いたエマは大量の冷や汗をかきながら尋ね
「誤魔化しても無駄よ。その猫――――”唯の猫”じゃないわよね?」
「使い魔如きが私達の目を誤魔化せるとお思いですか?」
尋ねられた二人はそれぞれ口元に笑みを浮かべて答えた。
「誰が使い魔よ!?馬鹿にするのも大概にして!」
「セ、セリーヌ!」
そして二人を睨んで怒鳴ったセリーヌの様子を見たエマは慌て
「その二人を誤魔化そうと思っても無駄よ。相手は”魔王”に”精霊王”。そんな存在にアタシの正体が誤魔化せるわけないわ。」
「あら、開き直っちゃったわね。」
「ふふふ、正しくは”精霊王女”ですけどね。」
冷静な様子で答えたセリーヌの言葉を聞いたベルフェゴールは目を丸くし、リザイラは静かな笑みを浮かべて答えた。
「ちょうどいいわ……アンタ達に聞きたい事があったから、この際聞かせてもらうわ。」
「あら、何かしら?」
「―――どうしてアンタ達みたいな”超越した存在”が自分達と比べると圧倒的に格下の存在であるあの子―――リィンに従っているのよ?」
「何だ、そんな事。私はご主人様が女性関係で面白い出来事ばかり起こしてくれるだろうから、契約したのよ♪」
「ええっ!?」
「ハアッ!?そんなふざけた答えで納得すると思っているの!?」
ベルフェゴールの答えを聞いたエマは驚き、声を上げたセリーヌはベルフェゴールを睨んだ。
「あら、私が司る”大罪”を忘れたのかしら?」
「”怠惰”……なまけてだらける罪ですが……それがどうかしたんですか?」
「そ。私は気持ちいいコトをする事と面白いものが見れればそれでいいのよ♪」
「………………」
「とても”魔王”のいう事とは思えないわね……」
「ふふふ、”色欲”の大罪も司れるのではないですか?」
ベルフェゴールの答えを聞いたエマは信じられない表情で絶句し、セリーヌは呆れ、リザイラは静かな笑みを浮かべ
「そ・れ・に♪ご主人様は”唯の人間”じゃない事くらい、私達はとっくにわかっているわよ?私達がご主人様に従っているのはそれも理由だわ。人ではない”力”を持つ人がどんな未来を描くのか、それぞれ魔王として……精霊王女として気にならない訳がないでしょう?」
「「……………………」」
そして口元に笑みを浮かべたベルフェゴールの言葉を聞いたエマは複雑そうな表情で黙り込み、セリーヌはベルフェゴールとリザイラを警戒していた。
「ふふふ、そう警戒しなくても私達はそれぞれの理由でご主人様に従う事を決めましたからご主人様に危害を加える事はありませんし、貴女達が秘密にしている事に干渉するつもりもありません。」
「そ、そうなんですか……?」
リザイラの答えを聞いたエマは戸惑い
「ええ、だって面倒だし。それに貴女達はご主人様に危害を加えようとは思ってないでしょう?」
「はい。それは絶対に断言できます。」
ベルフェゴールの問いかけにエマは静かな表情で頷いた。
「そ。私達が確認したことはそれだけだったから、その答えで十分だわ。」
「邪魔をしましたね。」
「あ、あの。私達の事、黙っていてくれる代償とかを払わなくていいのですか……?」
ベルフェゴールとリザイラが去ろうとしたその時エマは不安そうな表情で尋ねた。
「そうね………………じゃあ、ご主人様に抱かれるとか言ったら抱かれる?”処女”を抱くご主人様の様子を見るのも面白そうだし。」
「ええっ!?そ、それって…………!」
「ふふふ、いかにも睡魔らしい代償ですね。」
「…………………………」
そしてベルフェゴールが口にした条件を聞いたエマは顔を真っ赤にして混乱し、リザイラは静かな笑みを浮かべ、セリーヌはベルフェゴールを睨んだ。
「うふふ、冗談よ、冗談。私達の身体を何度も味わっても初心なままのご主人様じゃあ、好きでもない娘を抱くなんてさすがに無理でしょうしね。」
「フフ、そうですね。まあ、そこが良い所でもあるのですけどね……」
「え”。あ、あの……」
二人の話を聞いて何かを察したエマは表情を引き攣らせた後真っ赤になった顔で二人を見つめ
「……その言い方だと、彼はアンタ達を抱いた風に聞こえるのだけど。まさかとは思うけど………」
セリーヌは信じられない表情で二人を見つめた。
「ええ。まあ、私達が嫌がるご主人様を犯しているんだけどね♪」
「ふふふ、その言葉には少し語弊があるかと。ご主人様は私達の行為を受け入れている……唯それだけの話です。」
「……………………」
二人の説明を聞いてある事を察したエマは真っ赤な顔で固まり
「……呆れたわ。アンタ達ほどの存在が何でそんな事をしているのか、理解できないわ……」
セリーヌは呆れた表情で二人を見つめた。
「うふふ、言ったでしょ?私は気持ちいいコトをするのが好きだって♪ご主人様の精気ってとっても美味しくて最高だわ♪それじゃあね♪」
「ふふふ、それにこれはご主人様の為でもあるのですよ?私達の力を分け与えてあげる事で力を得て強くなる一番効率的な方法なのですから。―――失礼します。」
そして二人はそれぞれ転移魔術でその場から消え
「………………………」
「……今の話から推測すると、あの子はその身に”魔王”と”精霊王”の力を宿しているって事よね?その事によってアタシ達の”目的”に支障が出ないか心配ね…………」
エマは真っ赤な顔で固まり続け、セリーヌは真剣な表情で考え込んでいた…………
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