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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
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第59話

7月17日―――



―――7月中旬。トリスタの街は初夏を迎え、士官学院では学生服が夏服へと切り替わっていた。リィン達もようやく学院のハードなスケジュールに慣れ、夏の盛りの前、まだ暑すぎず過ごしやすく気持ちのいい日々……そんな季節ならではの授業も始まっていた。



~トールズ士官学院・ギムナジウム・プール~



「さーて、ウォーミングアップはこのくらいかしら。」

競泳用水着に着替えたサラ教官は同じく競泳用の水着に着替えているレーヴェと共に競泳用水着になっているリィン達を見回した。

「士官学院におけるこの授業はあくまで”軍事水練”……溺れないこと、溺れた人間の救助、蘇生法なども学んでもらうわ。人口呼吸もそうだけど……まずはリィンとアリサあたりで試してもらおうかしら♪」

「サ、サラ教官ッ……!」

「あのですね……」

からかいの表情のサラ教官の言葉にアリサは顔を真っ赤にしてサラ教官を睨み、リィンは呆れた。



「冗談よ、冗談。でも、やり方だけは教えるからいざという時は躊躇わないように。異性同士でも同性同士だったとしてもね♪」

「……わかっているとは思うが命に関わる事だから、必ず覚えて置くように。」

「むむっ……」

「……当然。」

「まあ、何といっても人命に関わることですし。」

「そうですね……」

「まあ、そういう事態に陥らない事が先決ですけどね。」

サラ教官とレーヴェの言葉にマキアス、フィー、エマ、プリネ、ツーヤはそれぞれ頷いた。



「そのあたりの講義が終わったら一度タイムを計らせてもらうわ。レーヴェ、ラウラ、手伝ってちょうだい。」

「ああ。」

「承知した。」

そしてリィン達はサラ教官とレーヴェの、ラウラの計測によって、次々と泳ぎ始めた。



「次、ガイウス。位置について―――始め!」

サラ教官の言葉を合図にプールに飛び込んだガイウスは泳ぎ始め

「よし、次はエマか。位置について―――始め!」

そしてラウラの言葉を合図に今度はエマがプールに飛び込んで泳ぎ始め

「――次、ルクセンベール。位置について―――始め!」

更にエマがある程度進むとレーヴェの言葉を合図にツーヤがプールに飛び込んで泳ぎ始めた。



「へえ、ガイウスもけっこう速いんだね?」

「ああ、夏は高原にある湖で泳いでいたらしいからな。」

一方既に泳ぎ終えたエリオットとリィンはクラスメイト達が泳いでいる様子を見守り

「うーん、エマも意外と泳ぎが上手っていうか……それ以上に何ていうか羨ましくなってくるわね。」

「ア、アリサさん……」

アリサが呟いた言葉を聞いてある事を察したプリネは苦笑した。

「うわっ!ツーヤ、速っ!!もうエマを追い抜かしているよ……!」

「フフ、ツーヤは”水竜”ですからね。本来”水竜”は水の中での戦いを得意としていますから泳ぎは大得意ですよ。」

ツーヤの泳ぎの速さを見て驚いているエリオットにプリネは微笑みながら説明し

「そ、そう言えばツーヤさんは”竜”だったな……」

「うーん、エマも羨ましいけどツーヤは更に羨ましいわね……一体どうやったらあのスタイルになれるのよ…………」

説明を聞いたリィンは苦笑し、アリサはツーヤを見つめて呟いた。



「羨ましい……?って、ああ。」

アリサが呟いた言葉を聞いてある事に気付いたリィンはアリサを見つめ

「り、理解しなくていいのっ!ていうか、女の子の水着姿をジロジロ見るんじゃないわよっ!」

「いや、凝視したけじゃ……」

ジト目のアリサに睨まれ、疲れた表情で答え

(うふふ、それなら大丈夫よ♪ご主人様は私達の裸に見慣れているから、水着姿なんて”今更”じゃない♪)

(ふふふ、それぞれがご主人様を襲った時に毎回見せる慌てているご主人様のあの様子のどこが見慣れているのですか?)

からかいの表情のベルフェゴールの念話にリザイラは静かな笑みを浮かべて答えた。



「あはは、みんなスタイルがよくて目のやり場に困っちゃうよね。僕以外の男子も……リィンとか引き締まってるしなぁ。やっぱり軍人をやっているだけあって、鍛えられているよね。」

「そ、そうか?」

エリオットに羨ましがられたリィンは戸惑いの表情でエリオットを見つめた。

「ま、まあ……さすがに鍛えてるって感じはするわね。エリオットは……うーん。変に鍛えない方がいいと思うわよ?」

「フフ、確かにそうですね。」

「えーっ?」

一方アリサとプリネの意見を聞いたエリオットは不満そうな表情をし

(確かに筋骨隆々のエリオットはちょっと見たくない気が……)

リィンは苦笑しながら心の中で二人の意見に賛成した。



「あれっ……?リィン、左胸のところ、何かケガでもしたの?」

「えっ……ホントだ。うっすらとだけど……」

「アザのようにも見えますが…………」

「……ああ。これは昔からあるアザさ。ずいぶん昔のものみたいでいつ出来たか覚えてないんだ。」

エリオット達に傷にも見える左胸のアザを見つめられたリィンはアザを見つめて答えた。



「そうなんだ……」

「うーん、よく見たら細かい傷跡もいっぱいあるし。……いいなぁ。男の身体って感じがするよ。」

「うーん、そういうもんか?」

「だから貴方には似合わないから諦めなさいって。」

「フフ、そうですね。体質も関係していますし。」

一方リィン達のように泳ぎ終えたマキアス達も談笑していた。



「くっ、まさか同じタイムだったなんて……つくづく君とは張り合う運命らしいな?」

「フン、俺は別に張り合っているつもりはないが。今のも単に流しただけだからな。」

マキアスに睨まれたユーシスは鼻を鳴らしていつものような澄ました表情で答え

「ぼ、僕だって本気を出したわけじゃないな!」

ユーシスの答えを聞いたマキアスはユーシスを睨んで答えた。



「あはは……」

「……やれやれ。」

二人の様子を見たエマは苦笑し、フィーは呆れ

「ふむ、少しばかり泳ぎ足りない気分だな。」

「そうですね。あたしも泳ぐのは久しぶりだし、もう少し泳ぎたいですね。」

ガイウスの意見にツーヤは静かな笑みを浮かべて同意した。



「それじゃ、ラウラの分はあたしが計るとしますか。いつも部活で計ってるだろうから必要ないかもしれないけど。」

「いや、お願いする。」

一方全員のタイムを計り終えたラウラは台へと上がった。



「ラウラが泳ぐみたいね……」

「さすがは水泳部……サマになっていますね。」

「位置について―――始め!」

サラ教官の言葉を合図にラウラはプールに飛び込み、力強い泳ぎを始めた。



「うわあっ……!」

「速い……!」

「な、なんだ。あのスピードは……!」

「……やるな。」

「ええ……」

ラウラの泳ぎを見学していたクラスメイト達はそれぞれ驚きの表情で見つめていた。



「……ふう……」

そして泳ぎ終えたラウラは一息ついた。

「見事だな。」

「ええ、本人の身体能力も関係しているでしょうね……」

「……………………」

ガイウスとプリネは感心し、フィーは黙ってラウラを見つめ

「20秒02――――さすがにやるじゃない。よーし、こうなったらあたし達も参加するわよ~!それぞれ任意の相手と組んで勝負と行きますか!」

「また、いきなりですね。」

「うーん、勝負かぁ。」

サラ教官の提案を聞いたリィンは呆れ、エリオットは不安そうな表情をし

「……おい。”達”という事は俺も入るのか。」

レーヴェは呆れた表情でサラ教官に尋ねた。



「当然じゃない。水の上ならさすがの”剣帝”もどうかしらね~?」

「フン、浅はかな考えだな。”水錬”等当然、強化プログラムにもある。俺の予想では本気を出したヨシュアにも負けると思うが?」

からかいの表情のサラ教官の言葉を聞いたレーヴェは呆れた後口元に笑みを浮かべてサラ教官を見つめ

「へえ?それなら見せてもらおうじゃない、”強化プログラム”とやらで覚えた泳ぎとやらを……!」

「レ、レーヴェ……」

(レーヴェさんもどうしてこう、不必要に挑発するんでしょう……)

レーヴェの挑発とも取れる言葉を聞いて顔に青筋を立てて不敵な笑みを浮かべるサラ教官の様子を見たプリネとツーヤは表情を引き攣らせていた。



「フン、どうやら白黒つけられそうだな?」

「の、望むところだ!」

「うーん……私はエマあたりとかしら?」

「ふふ、そうですね。タイムも近いみたいですし。」

他のクラスメイト達も次々と組む相手を決めていた。



「ラウラさんはどなたと組みますか?」

「やっぱりツーヤかな?タイムもラウラより凄かったし。」

「……いや。そういう事なら私はフィーとの勝負を希望したい。」

プリネとエリオットに尋ねられたラウラはフィーを見つめ

「……わたし?」

見つめられたフィーは首を傾げた。



「ラ、ラウラさん?」

「でも、先程のタイムではかなり開きが……」

ラウラの指名にツーヤとエマは戸惑い

「面白そうじゃない。それじゃあ、一組決定!始めましょうか!」

その後順序それぞれのペアが競争し、サラ教官とレーヴェの競争は凄まじい速さの攻防となり、最終的にレーヴェが勝ち、本気で悔しがるサラ教官をリィン達が呆れた様子で見つめていた頃、ラウラとフィーが競争を始めようとしていた。



「「……………………」」

プールを目の前にラウラとフィーは黙り込み

「え、えっと……それじゃあいいかしら?」

二人の様子に戸惑ったアリサは尋ねた。

「いや……―――フィー。次は本気を出さないか?」

「え。」

「ラ、ラウラさん?」

「……なんで決めつけるの?」

ラウラの問いかけにクラスメイト達が戸惑っている中フィーはラウラを見つめて尋ねた。



「見くびらないでもらおう。……力の使い方を見ればわかる。先程のタイム、そなたの本気ではないはずだ。」

「……………………」

ラウラの指摘にフィーは何も答えず黙り込み

「―――まあ、それが礼儀じゃない?」

「………サラ。」

「ここはアンタが生きてきた”戦場”とは違うわ。共に競い合い、高め合うための場所よ。それくらいはもう、わかってるんでしょう?」

「不必要に力を見せつけない理由は理解しているが、これも”授業”だ。水錬くらいは本気でしろ。」

「…………………………」

サラ教官とレーヴェの指摘を聞き、ラウラを見つめて頷いた。

「……よし。それでは始めよう。」

その後競争を始めた二人は激しい攻防をし、ほぼ同着としか思えない速さでプール台にタッチし、僅かな差でラウラが勝利した。



「はあはあ……さすがだね。」

「ふう……そなたの方こそ。……なのにどうしていつも本気を出さない……?」

息を切らせているフィーに感心されたラウラはフィーを感心した後真剣な表情で尋ねた。

「………………別に……めんどくさいだけ。第一それを言ったらプリネとツーヤだってそうじゃん。あの二人は”わたし達に合わせて手を抜いて戦っている”し。要するにわたしもそれと似たようなもの。」

「……やはり我らは”合わない”ようだな……」

そしてフィーの答えを聞き、フィーから視線を外して厳しい表情で呟いた…… 
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