| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第43話

~トールズ士官学院・グラウンド~



「!?へ、陛下!?」

男性―――リウイの姿を見たリィンは信じられない表情で声を上げ

「へ……」

「へ、陛下って事はまさか……」

リィンの言葉を聞いたエリオットとマキアスは呆け

「なっ!?あ、貴方は……!」

「”英雄王”―――リウイ・マーシルン皇帝陛下……!」

「…………………」

ラウラとユーシスは驚きの表情で声を上げ、パトリックは口をパクパクしてリウイを見つめ

「ええっ!?そ、その名前って確か……!」

「ぜ、前メンフィル皇帝にして現メンフィル大使を務めている方ですね……」

「ん。それとプリネの父親。正直、何でそんな大物がこの学院にいるのか、意味不明だけど。」

ユーシスの言葉を聞いたアリサは驚き、エマは信じられない表情でリウイを見つめ、フィーは頷いた後目を丸くしてリウイを見つめた。



「あらま。まさか貴方程の大物が学院に姿を現すなんて。今日は理事会がある日でしたっけ?」

一方サラ教官は目を丸くしてリウイを見つめて尋ね

「いや、ヴァンダイク学院長が俺に提案している”闇夜の眷属”の留学についての話し合いでこの学院に訪れて、その帰りにこちらに寄っただけだ。」

尋ねられたリウイは静かな表情で答えた。

「へ……」

「サ、サラ教官!?い、今理事会と仰っていましたが……」

「も、もしかして……!」

リウイの答えを聞いたエリオットは呆け、マキアスは信じられない表情でサラ教官に視線を向け、ある事に気付いたアリサは驚きの表情でリウイを見つめ

「―――お前達の予想通り、リウイ陛下は4人いる”常任理事”の一人だ。」

「―――メンフィル大使、リウイ・マーシルン。現在はトールズ士官学院の常任理事も務めている。プリネ達に普通のクラスメイトとして接している事には感謝している。」

レーヴェが静かな表情で答え、リウイは名乗った後”Ⅶ組”の面々を見回した。一方レーヴェの答えを聞いたプリネとツーヤ、サラ教官を除いたその場にいた全員は黙り込み



「ええええええええええええええええええええっ!?」



やがて我に返ると大声を上げて驚いた!

「きょ、きょきょきょ、教官!?これは一体どういう事ですか!?」

「だからレーヴェが言った通り、目の前にいるリウイ陛下がユーシスのお兄さんと同じ常任理事の一人よ。」

混乱した様子のマキアスに尋ねられたサラ教官は苦笑しながら答え

「プ、プリネ達は知っていたの!?」

アリサは驚きの表情でプリネとツーヤに尋ねた。



「ええ。入学する前から既に知っていましたよ。」

「あたし達がトールズ士官学院に留学する条件の一つがリウイ陛下が常任理事の一人になる事ですから。」

尋ねられた二人はそれぞれ答え

「そ、そうだったんですか!?」

「一体何故そのような条件を……」

二人の答えを聞いたリィンは驚いて信じられない表情をしているラウラと共にリウイを見つめ

「というか常任理事は理事会の関係でそれぞれ常任理事全員が誰なのか把握しているはずですから、同じ常任理事の一人であるルーファスさんもリウイ陛下が常任理事の一人である事は当然知っているはずですが……」

「何!?兄上が常任理事である事を明かした時もそんな話は聞いていないぞ!?」

苦笑しながら言ったツーヤの言葉を聞いたユーシスは驚いた。



「もしかしたらユーシスが驚くのが見たくて黙っていたかも。」

「ア、アハハ……確かに実際ユーシスさんを驚かせる為に自分が常任理事の一人である事を黙っていましたものね……」

「兄上……」

そしてフィーとエマの推測を聞いたユーシスは疲れた表情で溜息を吐いた。



「……兄様は驚きすぎです。陛下のご息女であるプリネ姫が留学しているのですから、何らかの形で陛下もトールズ士官学院に関わっていてもおかしくないのですよ?」

「いや、そんな事を言われても……って、エリゼ!?何でリウイ陛下と一緒に……」

呆れた表情のエリゼに指摘されたリィンは疲れた表情で答えかけたが妹の一人が目の前にいる事に驚いてエリゼを見つめ

「へ……」

「に、”兄様”って事はもしかして……」

二人の会話を聞いたエリオットは呆け、アリサは目を丸くしてエリゼを見つめ

「―――お初にお目にかかります。リィン・シュバルツァーの妹、エリゼ・シュバルツァーと申します。いつもリィン兄様のお世話をして頂いてありがとうございます。」

エリゼは両手でスカートを摘み上げて上品に会釈をして自己紹介をした。



「リ、リィンの妹さん……」

「その妹がどうして”英雄王”と一緒にいるの?」

エリゼの自己紹介を聞いたマキアスは呆け、フィーは尋ねた。

「……本来なら俺の専属侍女長であるペテレーネが付き添う事になっていたのだが生憎教会関連の仕事で時間が無かった為、休暇の所を悪いと思ったのだがリフィアの専属侍女長であるエリゼに付き添ってもらったという訳だ。」

「ええっ!?エ、エリゼがリフィア殿下の専属侍女長!?エ、エリゼ、一体いつそんな大役に任命されたんだ?俺が士官学院に入学する頃はリフィア殿下の専属侍女に任命されただけじゃなかったか?」

リウイの説明を聞いたリィンは驚いた後信じられない表情でエリゼを見つめ

「……殿下お付きの専属侍女は私一人の為当然殿下の専属侍女長は存在せず、その為私が殿下唯一の専属侍女に任命された時に、恐れ多くも殿下の専属侍女長を務める事になったのです。」

「……………………」

エリゼの説明を聞いたリィンは口をパクパクした。



「リフィア殿下というと現メンフィル皇帝シルヴァン陛下の娘にして確か次期メンフィル皇帝となるメンフィル皇女だったな。」

「ええ。」

ユーシスに尋ねられたプリネは頷き

「ほう……正直、驚いた。私達と大して変わらない年齢でありながら、そのような大役を務める事ができるとは。」

「恐縮です。」

ラウラに感心されたエリゼは会釈をした。



「―――さてと。先程の話に戻るが……”四大名門”の血を引く者として、先程の罵倒は”四大名門”の”貴族”として相応しくない発言だと思うが?」

そしてリウイは目を細めてパトリックを睨み

「う……あ…………」

リウイに睨まれたパトリックは恐怖の表情で身体を震わせ

(うわっ、さすがのパトリックも相手が相手だから、何も言えないね……)

(ちょっとでも”英雄王”の怒りを買ったら、下手したら実家まで被害を受ける事になるだろうしね。)

(フン、自業自得だな。)

その様子を見ていたエリオットは冷や汗をかき、フィーは静かに呟き、ユーシスは鼻を鳴らしてリウイを恐れるパトリックを見つめていた。



「―――ガイウス・ウォーゼル。先程お前の問いに関してだが俺なりの答えもあるが、聞くか?」

「……”貴族”を束ねる”皇”の答えも聞けるのならば、是非お願いします。」

リウイに視線を向けられたガイウスは静かな表情で頷いた。

「いいだろう。俺の答えは”貴族”とはその者が為した功績を称え、”皇”が授ける”称号”もしくは民達自身が選ぶ”指導者”だ。」

「”称号”……”指導者”……」

「―――血、家柄、伝統。確かに貴族ならば重視される部分だが……そんな物は所詮、親……いや、先祖の七光りだ。真の貴族とは己の力で民を導き、守る存在だ。――お前達エレボニア帝国民にとって解かりやすい例で言えば、皇位継承権は低い立場でありながら戦乱に満ちたかつてのエレボニア帝国を平和に導き、”獅子心皇帝”ドライケルスだ。」

「あ……!」

「そ、そう言えば元々ドライケルス大帝は皇帝になる資格はなかったって、話よね……?」

「ああ……皇位継承問題で戦乱に満ちたエレボニア帝国を平和へと導いた事から、民達はドライケルス大帝が皇位継承する事を望んだと聞いている。」

ガイウスに答えたリウイの説明を聞いたエリオットは目を丸くし、アリサの言葉にラウラは静かな表情で頷いた。



「……なるほど。つまり”貴族”とはオレ達”ノルドの民”で言えば族長と同じ立場のような人達ですか。」

「そう捉えてもらって構わん。まあ、先祖が為した偉業や民を率いる者としての義務を忘れ、過去の栄光を誇っているだけの貴族達の方が圧倒的に多いがな……」

「「「……………………」」」

ガイウスの言葉に答えたリウイの話を聞いたマキアスは真剣な表情で黙ってリウイを見つめ、ユーシスとラウラはそれぞれ目を伏せて黙り込んでいた。

「……ありがとうございます。勉強になりました。」

「いや、こちらこそ過去の栄光を誇っている愚かな貴族共への興味深い指摘を聞かせてもらい、楽しませてもらったからお互い様だ。」

ガイウスに会釈をされたリウイは静かな笑みを浮かべた後すぐに目を細めてパトリック達を睨んだ。



「―――勿論、先程のような罵倒、”貴族”だからと言って到底許される発言ではない。」

「ヒッ……!」

そしてリウイに再び睨まれたパトリックは悲鳴を上げ

「リィン・シュバルツァーとツーヤ・ルクセンベールに対する罵倒は俺の耳にも聞こえてきた。先程の発言―――”メンフィル帝国の貴族に対する罵倒”は”メンフィル帝国の皇族”としても見逃せんな。」

「あ……あ…………」

(自分の敗北を認めず、相手を確認せず愚かな発言をした奴の自業自得だな。)

リウイの殺気を受けたパトリックは身体を震わせ、その様子を見ていたレーヴェは目を伏せ

「お、お父様。そのくらいにしておいてあげてください!」

「あたし達はあまり気にしていませんし、そんなに怒らないであげて下さい……!」

その様子を見ていたプリネとツーヤは慌てた様子でリウイを諌めようとしていた。



「――サラ・バレスタイン。”実技テスト”は既に終えているのか?」

「え、ええ。さっきの模擬戦で終了ですが………それが何か?」

リウイに尋ねられたサラ教官は目を丸くした後戸惑いの表情で尋ね

「ならば今から”特別講習”として、お前達に見せてやろう。―――実力で民達の信頼を勝ち取り、敵対した国全てを吸収し、大国へと発展したメンフィル帝国の力を血と家柄、伝統を重視しているそこの小僧を相手にな。」

尋ねられたリウイはパトリックに視線を向けて答えた。



「ええっ!?」

「そ、それってもしかして……」

「……公開処刑といってもおかしくない。どう考えても相手が悪すぎる。」

リウイの答えを聞いたエリオットは驚き、ある事を察したアリサは不安そうな表情をし、フィーは静かに呟いた後恐怖の表情で身体を震わせているパトリックを見つめ

「他国の貴族―――それも皇族と義理の親娘関係であるツーヤを侮辱したことを考えれば、死罪の判決が降されてもおかしくはあるまい。」

「それはそうだが……幾ら何でもやりすぎなのでは…………」

重々しい様子を纏って呟いたユーシスの言葉を聞いたラウラは頷いた後複雑そうな表情でリウイとパトリックを見つめ

「お父様!まさかパトリックさんを……それも皆さんが見ている所で殺すつもりなのですか!?」

プリネは真剣な表情でリウイを見つめて声を上げた。



「安心しろ。俺が相手する訳ではないし、殺すつもりなど毛頭ない。―――エリゼ、お前が相手をしてやれ。兄や実家を侮辱したその男に家族としての怒りを存分にぶつけてやって構わんぞ。」

「なっ!?」

リウイの答えを聞いたリィンは驚き

「―――承りました。」

エリゼはリウイに会釈をしてパトリックの前に出て腰に刺していた鞘から自らの得物―――リィンと同じ得物である”太刀”を抜いて構えた!



「ええっ!?あ、あの剣ってリィンと同じ……!」

「しかもあの構えは”八葉一刀流”……!」

太刀を見たエリオットは驚き、エリゼの剣の構えを見たラウラは信じられない表情をし

「リフィア殿下の専属侍女長に任命された時より、若輩でありながらも殿下の専属侍女長として相応しい者へと成長させる為にリウイ陛下の手配によって、専属侍女長としての仕事や実戦技術に関する事はエクリアから、剣術は”剣聖”カシウス・ブライト直々に鍛えられたと聞いているが?」

レーヴェは興味ありげな表情でエリゼに視線を向けて尋ねた。



「嘘!?カシウスさんが!?」

「け、”剣聖”カシウス・ブライトって言ったら、”百日戦役”で活躍したあのリベールの”英雄”じゃないか……!」

レーヴェの言葉を聞いたサラ教官は驚き、マキアスは信じられない表情をし

「はい。私の剣術や魔術の腕前はまだまだ未熟ですが、殿下の足手纏いにはならない程度の腕前へ上達したとカシウス様とエクリア様のお二方からお褒めの言葉を頂いております。」

「…………………………」

「ほう……ゼムリア大陸でその名を轟かせるあのカシウス卿から直々に剣を教えてもらいながら、魔術もできるとは……」

「………………」

エリゼの口から出た衝撃の出来事の連続にリィンは口をパクパクし、ラウラは興味ありげな表情をし、エマは真剣な表情でエリゼを見つめていた。



「――構えろ、パトリック・ハイアームズ。エリゼとの”模擬戦”をする事で先程のお前の罵倒の件は無しにしておいてやる。アーツや道具の使用も勿論構わん。」

「ヒッ!?わ、わかりました…………」

リウイに指示をされたパトリックは悲鳴を上げてレイピアを構えてエリゼと対峙し

「パ、パトリックさん……!」

「ご、ご武運を……!」

その様子を見ていた貴族生徒達は身体を震わせ、表情を青褪めさせながら応援の言葉を贈った。



「エ、エリゼさんだったね?女性を相手するのは本意ではないが……悪いけど本気を出させてもらうよ。」

エリゼと対峙したパトリックは気を取り直した後戸惑いの表情で尋ね

「――ええ、そうして下さった方が私も”遠慮なく本気を出せます”から、手加減をする必要はありませんよ?――――未熟な剣ですが見せて差し上げましょう。”百日戦役”で絶望的な戦力差でありながらもエレボニア帝国の侵略を見事撃退し、祖国を守った誇り高き”白隼”の紋章を掲げるリベールの”英雄”より受け継ぎし剣を。」

「…………ッ……!」

顔に青筋を立て、背後に魔力によって発生した電撃をバチバチ迸らせ、膨大な威圧を纏い、目にも見えるほどの怒気をメラメラと燃やし続けて微笑みを浮かべるエリゼに微笑まれ、息を呑んだ。



「や、やばい。あの笑顔は滅茶苦茶怒っている時の笑顔だ。」

「そ、そうなの?」

「笑顔なのに怒っているのか?」

エリゼの微笑みを見て冷や汗をかいて表情を引き攣らせたリィンの言葉を聞いたエリオットとマキアスは戸惑い

「……彼女の周囲の風が彼女の怒りを恐れているかのように震えているように感じる……」

「もしかしてパトリックがお兄さんの事を馬鹿にした事に、怒っているんじゃないかしら?」

「恐らくそうでしょうね……エリゼさんにとってリィンさんは大切な家族でしょうし……」

ガイウスは静かな表情で呟き、アリサの推測にツーヤは頷いた。



「―――レーヴェ、合図をしてやれ。」

「ハッ。―――双方構え!」

リウイに視線を向けられたレーヴェは頷いた後指示をし

「――始め!」

そしてレーヴェの号令を合図にエリゼとパトリックの一騎打ちが始まった!



今ここに!”剣聖”と”姫将軍”の教えを受けた”聖魔皇女”の守護者の力の一端を見せる戦いが始まった! 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧