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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
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第42話

数日後、ついに中間試験の結果が戻り、廊下の掲示板に順位が貼りだされた。



6月23日――――昼休み



~トールズ士官学院・廊下~



「……………………」

「あ、あはは……」

掲示板に貼りだされてある順位を見たマキアスは呆け、エマは苦笑していた。



72位 フィー・クラウゼル(544点)



36位 エリオット・クレイグ(802点)



20位 ガイウス・ウォーゼル(870点)



17位 ラウラ・S・アルゼイド(895点)



15位 ツーヤ・ルクセンベール(900点)



8位 アリサ・ラインフォルト(924点)



7位 リィン・シュバルツァー(932点)



4位 プリネ・カリン・マーシルン(945点)



3位 ユーシス・アルバレア(952点)



1位 マキアス・レーグニッツ(975点)



1位 エマ・ミルスティン(975点)



「よ、よかった~……そんなに悪い順位じゃなくって。それにしても、まさか委員長とマキアスが同点1位なんてね!」

順位を見たエリオットは安堵の溜息を吐いた後興味ありげな表情でマキアスをエマを見つめ

「さすがだな、マキアス。」

「ええ、宣言通りエマさんに負けていませんよ。」

「はは、ちゃんと有言実行を果たせたじゃないか。」

ガイウスとツーヤ、リィンはマキアスを見つめて感心した。



「あ、ああ………何と言うか、さすがだな、エマ君。」

一方マキアスは戸惑いの表情で頷いた後エマに感心し

「いえいえ、お互い頑張った結果だと思います。」

マキアスに感心されたエマは微笑んだ。



「それにしても……みんな、いい線行ってるわね。」

アリサは全員の順位を見て目を丸くし

「うん、私も入学試験より順位が上がっているようだ。」

「まあ、こんなものか。」

「フフ、勉強した甲斐がありました。」

ラウラやユーシス、プリネはそれぞれの結果に満足している様子で呟いた。



「ユーシスはユーシスでさらっと余裕そうだし……リィンも10位以内に入るなんて、相当頑張ったみたいね。」

「はは、みんなと試験勉強をばっちりやったおかげだよ。」

「……ちょっと疎外感。」

それぞれが試験結果に明るい表情をしている中、自分だけ順位が圧倒的に下のフィーは不満そうな表情をし

「ふふっ、フィーちゃん、頑張ったと思います。」

「基礎学力のことを考えると十分すぎるほどの結果だわ。次はもっと上を狙えるはずよ。」

エマとアリサはそれぞれ感心した様子でフィーを見つめた。

「ん、気が向いたら。そういえば、そっちにも何か書かれてるけど。」

アリサの言葉に頷いたフィーはクラスごとの平均点と順位が書かれてある紙が貼られている掲示板に視線を向けた。



1位 1-Ⅶ(883点)



2位 1-Ⅰ(843点)



3位 1-Ⅲ(770点)



4位 1-Ⅱ(735点)



5位 1-Ⅵ(675点)



6位 1-Ⅴ(650点)



「わあっ……!」

平均点と順位を見たエリオットは驚き

「ほう、我らⅦ組が首位か。」

「皆さんで頑張った甲斐がありましたね。」

「ええ。みんなで協力し合って勉強していましたものね。」

ラウラは興味ありげな表情をし、プリネとツーヤは微笑み

「ふふっ、1位から4位までいるしちょっと予想はしてたけど。」

アリサは嬉しそうな表情をした。



「フン、俺が属するクラスが負けることなどあり得んがな。」

「だから君は何でそんなにも偉そうなんだ……」

鼻を鳴らして呟いたユーシスの言葉を聞いたマキアスは呆れた表情でユーシスを見つめ

「クスクス……」

二人の様子を見たエマは微笑んだ。

「……いや。実際みんな頑張っただろう。」

「ああ、誇ってもいいと思う。」

「V(ブイ)、だね。」

そしてガイウスの言葉にリィンとフィーはそれぞれ頷いた。



「クッ、何という屈辱だ……!」

「帝国貴族の誇りをあんな寄せ集めどもに……!」

一方1年Ⅰ組の貴族生徒達は自分達のクラス平均点が”Ⅶ組”より下である事に悔しがり

「そ、それに……アリサさんのあの家名は……」

アリサの家名を見たフェリスは信じられない表情をし

「……………………」

パトリックは怒りの表情で”Ⅶ組”の面々を睨んでいた。



午後―――実技テスト



~グラウンド~



「試験結果は見させてもらった。――――よく頑張ったな。」

「いや~、中間試験、みんな頑張ったじゃないの♪あのイヤミ教頭も苦虫を噛み潰したような顔してたし、ザマー見なさいってね♪」

グラウンドに集合したリィン達を見回したレーヴェは静かな笑みを浮かべ、サラ教官は嬉しそうな表情でリィン達を称賛した。



「別に教官の鬱憤を晴らすために頑張ったわけでは……」

「というか、教頭がうるさいのは半分以上が自業自得ですよね?」

サラ教官の称賛を聞いたリィンとアリサはそれぞれ呆れた表情で指摘した。



「まったく、あのチョビ髭オヤジ、ネチネチうるさいっての……やれ服装だの居酒屋で騒ぐなだのプライベートにまで口出しして……おまけに婚期がどうだの、余計なお世話だっつーのよ!」

サラ教官の愚痴を聞いたリィン達は冷や汗をかき

「フッ、逆に”七大罪”の一柱を司るベルフェゴールと同じ意見を口にした教頭には感心すべき所もあると思うが?」

(ああ、婚期ね♪)

静かな笑みを浮かべて言ったレーヴェの言葉を聞いたベルフェゴールはからかいの表情になり

「ああん!?何か言ったかしら!?」

「レ、レーヴェ……」

「それ以上火に油を注がない方がいいのでは……」

レーヴェの言葉を聞いたサラ教官がレーヴェを睨むとプリネとツーヤはそれぞれ冷や汗をかいた。



「―――コホン、それはともかく。早速、実技テストを始めるとしましょうか。」

「はい。」

「フン、望むところだ。」

「はあ、中間試験よりはちょっと気がラクかなぁ。」

そしてサラ教官は指を鳴らして人形兵器を召喚した。



「……現れたか。」

「また微妙に形状が変わっているな……」

「一体どこで手に入れているのかしらね?」

「ええ……”入手先”が気になりますね。」

現れた人形兵器を見たガイウスは警戒し、マキアスは疲れた表情をし、プリネとツーヤは真剣な表情で人形兵器を見つめていた。



(これは……)

「……気付いた?」

一方何かに気付いた様子で真剣な表情で人形兵器を見つめたリィンの様子に気付いたフィーは視線をリィンに向け

「ああ……フィーもか。色や形状は違ったけどどこか似ているな……」

「素材の雰囲気が近いんだと思う。ひょっとしたら――――」

リィンの意見に頷いた後何かを言いかけようとした。

「……?どうしたのだ?」

「別に。こっちのこと。」

しかしラウラに尋ねられると視線を逸らして答え

「……………………」

(またか……)

フィーの答えを聞いて厳しい表情でフィーを見つめ始めたラウラの様子にリィンは呆れた。



「フン……面白そうなことをしてるじゃないか。」

するとその時Ⅰ組の貴族生徒達が声をかけてきた。

「Ⅰ組の……」

「な、なんだ君達は?」

Ⅰ組の登場にエマは目を丸くし、マキアスは戸惑い、貴族生徒達はリィン達に近づいてきた。

「あら、どうしたの君達。Ⅰ組の武術訓練は明日のはずだったけど。」

「それに現在の時間の授業はどうした?まさか抜け出してきたのか?」

「いえ、トマス教官の授業がちょうど自習となりましてね。せっかくだからクラス間の”交流”をしに参上しました。―――最近、目覚ましい活躍をしている”Ⅶ組”の諸君相手にね。」

サラ教官とレーヴェの質問に答えたパトリックは不敵な笑みを浮かべてレイピアを取りだして構え、リィン達を見つめた。



「そ、それって……」

「得物を持っているということは練習試合ということか……?」

「フッ、察しがいいじゃないか。そのカラクリも結構だが、たまには人間相手もいいだろう?僕達”Ⅰ組”の代表が君達の相手を務めてあげよう。フフ、真の帝国貴族の気概を君達に示してあげるためにもな。」

リィンの質問に答えたパトリックは勝ち誇った笑みを浮かべ

「フッ……」

「フフン……」

パトリックに続くように貴族生徒達も口元に笑みを浮かべた。



「……君達は……」

「………随分、挑発的じゃない。」

「……………………」

パトリックたちの挑発にマキアスとアリサは真剣な表情でパトリック達を見つめ、ユーシスは目を細め

(……中間試験の結果の事を考えると、これはもしかして……)

(ええ……平民も混じったⅦ組の成績より自分達が下である事を認められないから、せめて武術では自分達が上である事を私達に思い知らせたいのでしょうね……)

ある事を察したツーヤに小声で尋ねられたプリネは頷いて呆れた表情でパトリック達を見つめた。



「ふむ、真の帝国貴族の気概か。」

「フン…………」

一方ラウラは興味ありげな表情で考え込み、レーヴェは鼻を鳴らした後呆れた表情でパトリック達を見つめ

「フフン。なかなか面白そうじゃない。」

サラ教官は口元に笑みを浮かべた後指を鳴らして人形兵器をその場から消した。



「―――実技テストの内容を変更!”Ⅰ組”と”Ⅶ組”の模擬戦とする!4対4の試合形式、アーツと道具、魔術の使用も自由よ!リィン―――3名を選びなさい!」

「りょ、了解です。」

その後リィンはメンバーを選んだがパトリック達は何かと理由をつけてリィンが選んだメンバーの参加を認めない事を指摘し、その結果、メンバーはリィン、エリオット、マキアス、ガイウスの4人のメンバーに限定された。



(あの男、小物の割に剣の腕はそれなりのものだ。取り巻き達も剣術の英才教育を受けた者が多い。くれぐれも油断はするなよ。)

準備を整えたリィン達にユーシスは忠告し

(……わかった。)

(た、確かにフェンシング部に所属しているくらいだもんね。)

(フン、あの高慢ちきな鼻、絶対にへし折ってやる……!)

(とにかく全力を尽くそう。)

ユーシスの忠告にリィン達はそれぞれ頷き、パトリック達と対峙した。



「では、これより、Ⅰ組とⅦ組の代表による模擬戦を開始する。双方、構え。」

サラ教官の指示によって互いのチームはそれぞれの武器を構え

「―――始め!」

サラ教官の号令を合図に模擬戦を開始した!パトリック達はそれぞれ宮廷剣術でリィン達に襲い掛かり、リィン達は傷つきながらもARCUSの戦術リンクの機能やチームワークの良さで協力し合い、パトリック達を戦闘不能にして勝利した。



「―――そこまで!勝者、”Ⅶ組”代表!」

「よし……!」

「ふふ、やったわね。」

「悪くない、かな。」

「フン、及第点だな。」

「皆さん、お見事です。」

クラスメイトの勝利にⅦ組の面々はそれぞれ嬉しそうな表情でリィン達を見つめていた。



「ふう……やったか。」

「な、何とか勝てた~……」

ガイウスとエリオットは戦闘の疲労によって息を切らせながら安堵の表情をし

「バリアハートでの脱出劇や大規模戦闘を経験したお蔭か、そんなに苦戦しなかったな……」

(そりゃ、あんだけ走って、大勢の敵と戦えば嫌でも体力がつくし、実戦経験も勝手に上達するわよ~。)

リィンはあまり疲弊していない様子で自分と同じようにそんなに疲弊していないマキアスに視線を向け、リィンの言葉を聞いたベルフェゴールは苦笑し

「ああ……!どうだ……これが僕達の実力だ……!」

マキアスは頷いた後勝ち誇った笑みを浮かべてパトリック達を見つめた。



「ば、馬鹿な……」

「こんな寄せ集めどもに……」

一方貴族生徒達は信じられない表情をし

「…………………」

パトリックは唇を噛みしめてリィン達を睨みつけ

(実際に剣を合せて敗北したにも関わらず、敗北を認めないとは……典型的な負け犬だな。)

パトリックの様子を見たレーヴェは呆れた表情をしていた。



「……いい勝負だった。あやうくこちらも押し切られる所だった。機会があればまた―――」

そしてリィンがパトリック達を称賛して近づいて手を差し伸べたその時

「触るな、下郎が!」

パトリックが差し出された手を弾いてリィンを睨んで怒鳴った!



「いい気になるなよ……リィン・シュバルツァー……”帝国貴族の恥”であるユミルの領主が拾った出自も知れぬ”浮浪児”ごときが!」

「……ッ……」

パトリックの罵倒にリィンは唇を噛みしめ

「おい……!」

「貴方……!」

「ひ、酷いよ……!」

「言っていい事と悪いことの区別もつかないんですか……!?」

パトリックの罵倒を聞いたマキアス、アリサ、エリオット、ツーヤはパトリックを非難した。



「ハッ、他の者も同じだ!何が同点首位だ!貴様ら平民ごときがいい気になるんじゃない!ラインフォルト!?所詮は成り上がりの武器商人風情だろうが!”蒼黒の薔薇”!?所詮は成り上がりの薄汚い孤児だろうが!おまけに蛮族や猟兵上がりの小娘まで混じっているとは……!」

「………………」

「………………」

「さすがに今の言葉は見逃せませんね……」

パトリックの罵倒を聞いたガイウスは目を伏せて考え込み、ツーヤとプリネは怒りの表情でパトリックを睨み

「な、な……」

「否定はしないけど……」

「小娘……わたしのこと?」

「……酷いです。」

マキアスは口をパクパクさせ、アリサとフィーは怒気を纏ってパトリックを睨み、エマは悲しそうな表情をした。



「パ、パトリックさん……」

「さすがに言い過ぎでは……」

一方パトリックの罵倒が余りにも酷い事に気付いている貴族生徒達は表情を青褪めさせてパトリックを見つめ

「うるさい!僕に意見するつもりか!?」

対するパトリックは怒鳴り散らして同じクラスメイトの意見を一蹴した。



「……聞くに堪えんな。」

一方ラウラは呆れた後厳しい表情でパトリックを睨み

「おい、いい加減に―――」

ラウラと共にパトリックを睨むユーシスが口を挟もうとしたその時

「―――よくわからないが。貴族というのはそんなにも立派なものなのか?」

ガイウスが一歩前に出て静かな表情で問いかけた。



「っ……!?」

「ガ、ガイウス……?」

ガイウスの問いかけにパトリックは驚き、エリオットは戸惑った。

「そちらの指摘通り、オレは外から来た”蛮族”だ。故郷に身分は無かったためいまだ実感が湧かないんだが……貴族は何を持って立派なのか説明してもらえないだろうか?」

「な、な……」

(ほう……あの年齢であのような問いかけができるとは、驚いたな。)

ガイウスの質問を聞いたパトリックは口をパクパクさせ、レーヴェは感心した様子でガイウスを見つめた。



「き、決まっているだろう!貴族とは伝統であり家柄だ!平民ごときには決して真似のできない気品と誇り高さに裏打ちされている!それが僕達貴族の価値だ!」

「なるほど……ラウラやユーシス、プリネとツーヤの振る舞いを見れば、納得できる答えではある。だが、それでもやはり疑問には答えてもらっていない。伝統と家柄、気品と誇り高さ……―――それさえあれば、先程のような言い方も許されるという事なのだろうか?」

「ぐ、ぐうっ……」

「ガイウス……」

「ふむ……」

ガイウスの問いかけに反論ができないパトリックは言葉を失くして唸り、リィンは驚き、ラウラは納得した様子で頷いた。



「―――確かにその者の言う通りだな。」

するとその時男性の声が聞こえ

「え……」

「こ、この声は……!」

声を聞いたプリネは呆け、ツーヤは驚いた。



するとエリゼを後ろに控えさせた外套がついた漆黒を基調とした服を身に纏う銀髪と紅の瞳の男性がリィン達に近づいてきた! 
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