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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
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第41話

6月20日―――



~第三学生寮~



「うわ~……っ」

エリオットは目の前に出された朝食に驚いて声を上げ

「これは見事だな。」

「ええ。大使館にいた頃の普段の朝食と同じくらいありますよ。」

「朝から一人でこれ程の種類の料理を人数分、よく作れましたね……」

「い、いったい何種類の料理があるんだ?」

ガイウスとプリネは感心し、ツーヤは驚き、マキアスは信じられない表情をし

「どれもおいしそう。」

フィーは興味ありげな表情で朝食を見つめた。



帝国風(インペリアル)ブレックファースト……そういうスタイルでしたよね?」

「はい、伝統的な帝国風の朝食のスタイルですね。厨房に慣れていないため間に合わせになってしまって申し訳ありませんが……」

エマの質問に答えたシャロンは申し訳なさそうな表情をし

「いや、謙遜する事はない。私の実家で出されるより、遥かに彩りも豪華なくらいだ。」

「ふむ、公爵家の料理人にも引けを取らないかもしれないな。」

「ふふっ、ありがとうございます。コーヒー、紅茶共に揃えていますので遠慮なくおっしゃってくださいね。ミルモ様も、お代りが必要でしたら遠慮なくおっしゃってくださいね。」

「…………♪」

ラウラとユーシスの褒め言葉にシャロンは微笑んだ後、アリサの前に置かれている朝食の傍に置いてある皿に乗っている葡萄の一房を目をキラキラさせた状態で見ているアリサの肩に止まっているミルモにも微笑み、シャロンの言葉にミルモは嬉しそうな表情で頷いた。



「…………………………」

一方アリサは不満そうな表情で黙り込み

(さすがにご機嫌斜めだな……)

(うーん、昨日はずいぶん、揉めてたみたいだからねぇ……)

リィンとエリオットは昨日の出来事を思い出して苦笑していた。



~昨日~



「じょ、冗談じゃないわ!せっかく実家を離れたのに母様の思い通りになってたまるもんですか!」

「まあまあ、アリサ様。会長も、別にお目付け役としてわたくしを派遣されたのではないと思いますわ。ひとえに愛するお嬢様に日々のご不便がないように―――」

自分を睨んで怒鳴るアリサを宥める為にシャロンは優しげな微笑みを浮かべたが

「それが余計なお世話だって言ってるの!」

対するアリサはシャロンを睨んで怒鳴り続けていた。



「――もういい!こうなったら母様に直接交渉する!ラインフォルトの本社ビル!?それともどこかに視察に行ってるの!?」

「はい、本日は帝都で鉄道省総裁とご会食だったかと。そのまま各地を回られるそうなので本社にお戻りになるのは5日後ですね。」

「ああもう、相変わらず仕事の鬼っていうか……と、とにかく認めない!絶対に認めないんだからあっ!」

シャロンに怒鳴り続けているアリサの声を聞いていたリィン達や次々と帰ってきたプリネやラウラ達はそれぞれ冷や汗をかいていた。



~現在~



(それにしても”R”が(ラインフォルト)だったなんてね。しかもお母さんが会長ってことは会社のオーナーっていう事でしょ?)

(ああ……大陸最大の巨大工業メーカーか。下手をすれば大貴族よりも遥かに資産家なんだろうし……貴族生徒もいる学院で伏せていたのもわかる気がするな。)

エリオットの小声の言葉にリィンは静かな表情で頷いた。



「……とにかく。私はあくまで反対だから。母様も忙しいんでしょうし、シャロンがついていた方が―――」

一方アリサは怒りを抑えた様子でシャロンから視線を背けて呟き

「ふふっ、さすがアリサお嬢様。離れていてもお母様のことを気にかけていらっしゃるんですね?それでこそ、わたくしが心よりお仕えする大切な方々ですわ♪」

「べ、別に気にかけてなんか!」

微笑みながら言ったシャロンの言葉を聞いたアリサは反論しかけたが

「あ、お嬢様。大好物のアプリコットジャムをたくさん作って来ましたわ。せっかくですからシャロンがトーストにお塗りしましょうか?」

「え、ホント!?」

自分にとって大好物の食べ物がある事を知らされ嬉しそうな表情でシャロンを見つめた。



「だ、だから子供扱いしないでってば!その、ジャムは頂くけど……」

しかしすぐに我に返って恥ずかしそうな表情になり

(……微笑ましいな。)

(ふふっ、色々と頭が上がらないみたいだね。)

その様子をリィンとエリオットは微笑ましそうに見つめていた。



こうして、リィン達はメイドのシャロンが用意した完璧な朝食に舌鼓を打った後……それぞれ寮から出かけて行き、リィンも生徒会から届けられた依頼を確認後依頼を達成する為に寮から出かけ、依頼を達成し、全ての依頼を終えると既に夕方になっており、寮の出入り口にリィンが近づくと誰かが呼び止めた。



~夕方~



「あら、君も帰りなの?」

「サラ教官、お疲れさまです。」

「そちらこそお疲れ様。その調子だと、生徒会の手伝い、頑張っちゃってたみたいね?まったくも~、ストイックというかつくづく真面目君ねぇ~」

「最初にそう仕向けた教官にだけは言われたくないんですが……それよりも、なんだか疲れた顔をしてますね?」

苦笑するサラ教官をジト目で見つめたリィンはどことなく疲れた顔をしているサラ教官が気になり、尋ねた。



「ああ、うん……ちょっと色々あってね。まったくトヴァルのやつ、えらくコキ使ってくれちゃって……エステル達を止めなかったくせに、あたしがコキ使われるなんて理不尽すぎよ。後で絶対に倍返ししてやるんだから……ぶつぶつ。」

「???その、デートの方、上手く行かなかったんですか?」

自分から視線を逸らして小声でブツブツつぶやくサラ教官を不思議に思ったリィンは尋ねた。



「へ。」

リィンの質問を聞いたサラ教官は呆けたが

「いや~、そうそう!すっごく素敵な夜だったわ~!相手のオジサマがとにかく情熱的でステキでね~。いや~、学生の君達にはちょっと刺激が強いかしらねー。」

自分の行動を誤魔化す為にわざとらしく答えた。

「は、はあ……(何だろう。物凄く胡散臭いような……)」

「そういえば、昨晩はどうだった?あたし達の留守中、特に何も起こってないわよね?」

「ええ、特には―――そういえば、この寮に新しく管理人の女性が来たんですけど……教官、ご存知でしたか?」

「あらら、もう来たんだ。ええ、ラインフォルト家からメイドさんが来るって聞いたけど。……クンクン。そういえば良い匂いがするわね。」

リィンの話を聞いたサラ教官は目を丸くした後、寮から漂って来る料理の匂いに気付いた。



「ええ、たぶんその人ですね。すごく料理が得意みたいで……今朝は久々のご馳走でしたよ。」

「へえ~、それは楽しみねぇ。せっかくだし、美味いツマミでも作ってもらっちゃおうかしら♪」

「はは……(しかし、やっぱり教官はアリサの実家を知ってたんだな。)」

そしてリィンとサラ教官は寮の中に入って行った。



~第三学生寮~



「―――お帰りなさいませ、リィン様、それにサラ様。」

二人が寮に入るとシャロンが出迎えた。

「シャロンさん。ただいま帰りました。……その、そんなに丁寧に挨拶するのは止めてくださいよ。あくまで学生なんですから。」

「いえ、ここで働かせて頂く以上、お出迎えもメイドの務めですから。ふふ、それとも”旦那様”とお呼びした方がよろしいでしょうか?」

(フフ、ご主人様がお望みならメイドの姿でご奉仕してあげましょうか?)

「え、遠慮しておきます。(いらないから。)」

シャロンとベルフェゴールのからかいにリィンは疲れた表情で答えた。



「……………………」

一方サラ教官は厳しい表情でシャロンを睨んでいた。

「―――初めまして。ラインフォルト家より参ったメイドのシャロンでございます。皆様の身の回りのお世話などをさせていただくのでどうかよろしくお願いいたします。」

「……これはご丁寧に。ひとつ質問なんだけど……”初めまして”だったかしら?どこかで会ったような気が”そこはかとなく”するんだけど。」

シャロンに挨拶をされたサラ教官は真剣な表情でシャロンを見つめていた。



「……?」

サラ教官の様子にリィンは首を傾げ

「いえ、初対面なのは間違いないかと存じます。よろしくお願いいたします、”サラ・バレスタイン”様。」

「ええ、こちらこそ。”シャロン・クルーガー”さん。」

(な、何だか知らないけど邪魔しちゃ悪そうだな……)

互いに微笑み合うサラ教官とシャロンの様子を見たリィンは冷や汗をかいた後自分のポストを調べ、ポストの中に入っている手紙を回収した後自室に戻り、リィンが自室に戻ると同時にレーヴェが寮に戻ってきた。



「お帰りなさいませ、レーヴェ様。」

「お前は…………」

シャロンに出迎えられたレーヴェは目を丸くしてシャロンを見つめ

「あら、良い所に帰ってきたわねぇ?ちょっと聞きたい事があるんだけど。」

サラ教官は不敵な笑みを浮かべてレーヴェを見つめた。



「何だ?」

「気のせいだと思うんだけど、あんたとそこのメイドさんは”知り合い”だったような気がするんだけど、違うかしら?」

「いえ、レーヴェ様とも初対面でございます。――ご挨拶が遅れ、申し訳ありません、”メンフィル帝国プリネ皇女親衛隊副隊長レオン=ハルト”様。ラインフォルト家に仕えるメイドのシャロン・クルーガーと申します。此の度第三学生寮の管理人として働かせて頂く事になりましたので、以後お見知り置きを。」

サラ教官の問いかけにシャロンは首を横に振って答えた後レーヴェに微笑み

「…………ああ、そのメイドの言う通り”初対面”だな。シャロンと言ったな?よろしく頼む。」

微笑まれたレーヴェは真剣な表情でシャロンを見つめた後やがて警戒心を解いて頷いた。

(こ、こいつら……!絶対、初対面じゃないでしょうが……!?)

二人の様子を見ていたサラ教官は顔に青筋を立てて笑顔を浮かべて二人を見つめていた。



~リィンの自室~



―――兄様、どうかご心配なく。私の方といえば日々、つつがなく暮らしております。いまだ淑女に程遠いとはいえ、友人にも恵まれ、楽しく充実した生活を送らせてもらっています。それよりも……ご自分の学院生活のことをどうか第一に考えてください。”トールズ士官学院”といえばドライケルス帝ゆかりの名門……ですが、軍の士官学校である以上、危険な演習などもあると聞きます。どうか自分を顧みないような無茶だけは決してなさらぬよう――― 



エリス・シュバルツァー



―――兄様、私の方は心配なさらないで下さい。リフィア殿下に仕える事は大変ですが遣り甲斐を感じていますし、上司であるエクリア様やペテレーネ様からも優しく接して頂き、様々な事を教えて頂いていますし、恐れ多くもリウイ陛下やシルヴァン陛下からも労いの言葉を頂いております。いまだ皇族のお世話をさせていただく専属侍女としてエクリア様達に程遠いとはいえ、リフィア殿下との仲も良好で、充実した生活を送らせてもらっています。それよりも……ご自分の事を第一に考えて下さい。プリネ姫の護衛任務に付いている事は存じておりますが、どうか自分を顧みないような無茶をして、プリネ姫達にご迷惑をかけるような事は決してなさらぬよう―――



エリゼ・シュバルツァー



「はは、相変わらずだな。いや……この場合は俺が相変わらずなだけか。……………………」

妹達からの手紙を読んでいたリィンは苦笑した後立ち上がって棚の上に飾ってある家族写真を見つめて過去の出来事を思い出し

「……っ……はあ……」

自分にとって忌まわしい出来事を思い出し、溜息を吐いた。

「―――返事、書かなくちゃな。父さんと母さんにも……」

そしてリィンはラジオを聞きながら家族への近況報告の手紙を書き始めた。 
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