英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)
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外伝~”怠惰”を司りし妖艶魔王との邂逅~
4月18日―――
翌日の自由行動日、自分のポストの中に入っている生徒会から回された依頼者を確認したリィンは依頼した生徒達の依頼を片付け、そしてオーブメント関連の調整などもする技術部の先輩生徒ジョルジュの依頼を終えたリィンはヴァンダイク学院長から受けた依頼―――不思議な現象を起こし続けている旧校舎の探索にエリオットとガイウスに協力を求めた後旧校舎の中に入って行った。
~旧校舎~
「ううっ……またこの場所に来るなんて。ど、どう考えても無謀だと思うんだけど……」
旧校舎の中に入ったエリオットはオリエンテーリングでの出来事を思い出して不安そうな表情をし
「まあ、それは確かに。気が進まないなら無理に付き合わなくてもいいんだぞ?」
エリオットの言葉に頷いたリィンは振り向いて答えた。
「う、ううん……来週は実技テストなんていうのもあるみたいだし……少しでも魔導杖の扱いには慣れておきたいから。それにリィンとガイウスだってさすがに二人だけじゃ心配だよ。」
「そうか……助かる。」
「この人数だ。慎重に進んで行く事にしよう。その正面の扉から地下に降りればいいんだな?」
「ああ、例の石の化物と戦った階段部屋があるはずだ。さすがに落とし穴の方から降りるわけにもいかないからな。」
「それはさすがに勘弁だよ……ううっ、またあの化物がまた襲ってきませんように。」
その後リィン達は地下に降りようとしたが、そこには驚くべき光景が広がっていた。
「これは……」
「……………」
扉をくぐって見えた光景を見て何かに気付いたリィンは驚き、ガイウスは考え込み
「ふう……見たところあの化物は見当たらないみたいだね。不気味な石象とかもないし……」
唯一人何も気付いていないエリオットは安堵の溜息を吐いたが
「あれ……?この部屋ってこんなだっけ?」
すぐに違和感に気付いて首を傾げた。
「いや――――”俺達があの化物と戦った時より部屋が小さくなっている”。」
「え”。」
部屋の構造が変わっているというリィンの信じられない説明にエリオットは呆け
「恐らく2回り以上――――おまけに見覚えのないものまで現れているようだな。」
周囲を見回したガイウスは見覚えのない扉を見つめた。
「あれって……ま、前にここに来た時、扉なんて無かったハズだよね?」
「ああ……正直、半信半疑だったんだが。」
「とにかく降りて扉の向こうを確認してみるか。」
そしてリィン達は見覚えのない扉をくぐるとそこには新たな空間が広がっていた。
「……………」
「……驚いたな。」
新たな空間を見回したリィンは真剣な表情で考え込み、ガイウスは目を丸くし
「ってココ、完全に別の場所じゃない!?僕達、こんな場所なんて通らなかったハズだよね!?」
エリオットは驚きの表情で声を上げた。
「ああ……間違いない。どうやら”地下の構造が完全に変わった”みたいだな。」
「そんな……」
「徘徊している魔獣の気配も違っているようだ。―――どうする、リィン?」
「……………―――学院長の依頼は旧校舎地下の異変の確認だ。こんな状況になっている以上、手ぶらで帰るわけにもいかない。行ける所まで行ってみよう。」
ガイウスに尋ねられたリィンは考え込んだ後やがて決意の表情になって探索の続行を宣言した。
「はあ……仕方ないか。」
「―――女神の加護を。行くとしようか。」
「ああ……!」
その後リィン達は探索を開始し、武術訓練で習ったARCUSならではの機能―――”戦術リンク”を使い、互いに協力して時折現れて来る魔獣を撃退しながら最奥に到着すると突如今まで見た事のない魔獣が現れ、リィン達は戦闘を開始した。最奥で現れた魔獣はリィン達がかつて戦った石の守護者と並んでもおかしくない程手強かったが、以前と違い”戦術リンク”という新たな戦闘方法を手に入れたリィン達は苦戦しながらも3人で倒した。
~地下一階・最奥~
「はあぁ~っ……さすがに危なかったぁ……でも……何とかなったね。」
戦闘を終えたエリオットは安堵の溜息を吐き
「ああ、”戦術リンク”もやっとコツが掴めてきた……どうやら”ARCUS”を通じて”呼吸”を合わせる感覚みたいだな。」
エリオットの言葉に頷いたリィンは今までの戦闘で大きな助けとなったARCUSに視線を向け
「ああ……悪くない感覚だな。」
リィンの言葉にガイウスは静かな表情で頷いた。
「”呼吸を合わせる”かぁ………そう言えばオリエンテーリングでの時にプリネとツーヤも呼吸が合わさって、最後に凄い攻撃をしたけど……僕達もあんな事ができるのかな?」
「”協力技”か……そうだな。あの時も二人の”ARCUS”は強い光を放っていたし、俺達もいつかはできるかもしれないな。」
エリオットの言葉を聞いたリィンは考え込んだ後、プリネとツーヤが”協力技”を放った時の状況を思い出し、静かな表情で頷いた。
「しかし―――どうやらここが終点のようだな?」
そしてガイウスは行き止まりになっている自分達がいる部屋を見回して呟き
「ああ、他のルートもないし、間違いないだろう。どうやら地下の構造が完全に変わってしまったみたいだな。」
ガイウスの言葉を聞き、今までの探索場所やルートを思い返していたリィンは頷いた。
「う、うーん……ちょっと信じられないけど。」
エリオットの言葉に誰も返す事ができず、その場は静寂に包まれたがやがてリィンが口を開いた。
「……とりあえず、いったん旧校舎から出るか。」
「そ、そうだね。」
「道は覚えた。帰りは楽に戻れるだろう。」
その後謎の装置を見つけたリィン達が装置に触れると入口付近へと転移し、その事に驚いたリィン達だったがすぐに気を取り直して地上へと帰ろうとすると何かの違和感を感じたリィンとガイウスが立ち止まった。
「!……………」
「何だ、この異質な気配は……?」
「へ?ふ、二人ともどうしたの??」
異質な気配に気付いて立ち止まったリィンとガイウスの様子にエリオットが不安そうな表情をしたその時!
フフ………こんなに若い子達を食べるのは久しぶりね……
女性の声が聞こえてきた後空間が歪み、下着としか思えないような扇情的な服を身に纏った妖美さを漂わし、撫子色の髪を腰までなびかせ、まさに”絶世の美女”と言ってもおかしくない美しい容姿を持つ女性が現れた!
「う、うわあっ!?い、いきなり現れたっ!?」
「一体何者だ……?」
突如現れた女性にエリオットとガイウスは驚き
「!その姿………もしかして貴女は睡魔族ですか?」
女性の服装や頭についている猫耳のような耳や更に背中についている蝙蝠のような漆黒の翼を見つめた後、留学中のメンフィル帝国の帝都ミルスで何度も見た事のある”闇夜の眷属”の種類を思い出したリィンは尋ねた。
「睡魔族?」
「うわっ………よく見るとすごい格好だな。目のやり場に困るよ……」
リィンの質問を聞いたガイウスは首を傾げ、豊満な胸を惜しげもなく見せるかのようにほとんどの肌を露出している女性の服装を見たエリオットは驚いた後顔を赤らめて女性から視線を背け
「フフ、私は普通の睡魔と違うわ。睡魔族の女王種――――”リリエール”にして”七大罪”の”怠惰”を司る”魔神”―――ベルフェゴールよ。」
「!!!”魔神”……いや、先程の異質な気配の事を考えると”はぐれ魔神”か……!どうして学院の旧校舎に……!」
女性――――ソロモン72柱の魔神の一柱であり、”七大罪”の”怠惰”を司る”怠惰”のベルフェゴールが名乗り上げるとリィンは血相を変えて厳しい表情をした。
「フフ、気まぐれで散歩していたら”美味しそうな気配”がしたから、それにつられて来たら……フフ、他にも若い子が二人も付いているとはね。」
ベルフェゴールは意味ありげな視線でリィンを見つめた後エリオットとガイウスにも視線を向け、そして魅惑的な笑みを浮かべ
「貴方、見た所は人間だけど私達に近い”気配”を持っているわね……一体何なのかしら?」
やがて興味ありげな様子でリィンを見つめ
「!!!」
ベルフェゴールに見つめられ、心当たりがあるリィンは血相を変えた。
「え、えっと、リィン……?”はぐれ魔神”って、一体何なの……?」
その時エリオットは不安そうな表情で尋ね
「……”はぐれ魔神”は一か所に留まらず世界中を放浪する”魔神”の事だ。”魔神”とは数多くいる”闇夜の眷属”の中でも比べものにならないくらいの凄まじい力を持っているらしい。中には国一つを軽く滅ぼせる力を持っている者もいると文献で読んだ事がある。確かプリネさんが契約しているアムドシアスさんがその”魔神”の一柱のはずだ。」
「ええええええええええええええええっ!?そ、そんなに強いの!?ってか、あのアムドシアスさんがそんな滅茶苦茶な強さを持っているなんて信じられない……」
「あら。何だか懐かしい気配もするとは思ったけど”一角”が近くにいるのね。」
「…………それで、その”はぐれ魔神”が俺達に一体何の用だろうか?」
リィンの説明を聞いて声を上げて驚いた後更に普段自分達に熱心に音楽を教えているアムドシアスの事を思い出して信じられない表情をし、アムドシアスの事を聞いたベルフェゴールは目を丸くし、ガイウスはベルフェゴールが無意識にさらけ出す威圧に冷や汗をかきながらベルフェゴールを見つめて尋ねた。
「フフ……最初は術で眠らせてから精気をもらおうと思ったけど、気が変わったわ。少し”遊んで”から、たっぷりと精気を吸わせてもらうわ。」
そして尋ねられたベルフェゴールは妖美に微笑んだ後両手に付けている手袋を構えると共に背後に魔力によって発生した電撃をバチバチと迸らせながらリィン達を見つめ
「クッ……!どうやら戦うしか選択はないようだな……!」
「ぼ、僕達だけでか、勝てるの……!?」
「”戦術リンク”を活用して、何とか勝機を見つけるぞ……!」
自分達に戦いを挑む様子のベルフェゴールにリィンは唇を噛みしめながら太刀を構え、エリオットは不安そうな表情をしながらも魔導杖を構え、ガイウスはベルフェゴールの一挙一動を最大限に警戒しながら十字槍を構え
「さあ、遊びましょう?」
ベルフェゴールは微笑んだ後リィン達に襲い掛かった!
そしてリィン達は”七大罪”の一つ、”怠惰”を司る”はぐれ魔神”ベルフェゴールとの戦闘を開始した!
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