英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)
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外伝~妖艶魔王の力~
~旧校舎・地下一階~
「このくらいは耐えてね?」
翼を羽ばたかせてリィン達に向かったベルフェゴールは手袋を付けた片方の手を腕ごと動かして拳を溜め動作し
「ねこパンチ!!」
速さもある重い一撃をリィンに繰り出した!
「!!」
しかし動体視力が高いリィンはベルフェゴールが繰り出した拳を間一髪の距離で回避した。
「お願い、眠って!」
その時エリオットが魔導杖を振るって導力エネルギーによって発生した数個の水の泡をベルフェゴールに放った。
「甘いわよ。」
エリオットが放ったクラフト―――ブルーララバイはベルフェゴールを襲ったがベルフェゴールが片手に軽く溜め込んだ小さな魔力の球体を放つと球体は拡散して水の泡を打ち消すと共にエリオットを襲った!
「うわっ!?」
自分に襲い掛かってきた分散した魔力弾―――拡散弾にエリオットは怯んだ。
「風よっ!!」
エリオットに注意が逸れた隙を狙ったガイウスは槍に溜め込んだ竜巻を一直線に放ったが
「まだまだね。」
竜巻が自分に襲い掛かる瞬間ベルフェゴールは無造作に腕を振るうと竜巻は消滅した。しかしその時ガイウスと”戦術リンク”を結んでいたリィンがすかさず攻撃を仕掛けた。
「四の型・改―――紅蓮切りっ!!」
疾風の速さで詰め寄るリィンは無防備になっているベルフェゴールの脇腹の部分に魔力によって発生した炎を纏わせた太刀を抜刀したが
「フフ、捕まえた♪」
「なっ!?」
なんとベルフェゴールは魔力を纏わせた手袋でリィンの太刀を掴んで太刀に宿る炎を自らに秘められる膨大な魔力で打ち消し
「まずは一人目ね♪」
「!!」
そしてベルフェゴールのもう片方の手袋がリィンを襲ったその時!
「リィン!」
ガイウスが突撃して十字槍を突き出し
「!」
ガイウスの攻撃を避ける為にベルフェゴールはリィンから離れ
「アークス駆動!ニードルショット!!」
更にリィンから離れたベルフェゴールにエリオットがオーブメントを駆動させ終えて放ったアーツが命中しようとしたが
「鬱陶しいわね。そんな下級の魔術でこの私に傷をつけられると思っているのかしら?」
なんとベルフェゴールは鬱陶しそうな表情で手袋で裏拳を放って自分に襲い掛かる岩の刃を砕いた!
「ええっ!?ア、アーツを手で砕くなんて……!?」
アーツを手で砕くという信じられない光景にエリオットは表情を引き攣らせ
「リィン、大丈夫か?」
「ああ、何とかな。危うくやられる所だったよ。……………………………(こうなったら……)」
自分を心配するガイウスの言葉に頷いたリィンはベルフェゴールと自分達との圧倒的な戦力差を戦いで思い知り、打開する為の方法を考え込み、ある方法を思いついて決意の表情になり、二人の名を呼んだ。
「――エリオット、ガイウス。このまま戦っても全滅するだけだ。二人は今すぐ撤退して”Ⅶ組”やサラ教官、それとレオン教官に援軍を求めてくれ!援軍を呼んでくるまでの時間は俺が稼ぐ!」
「ええっ!?む、無謀だよ!?」
「これ程の相手に一人で相手するのは幾ら何でも無理だ。俺も残る。」
リィンの提案を聞いたエリオットは驚き、ガイウスは協力を申し出たが
「目の前の相手はあのプリネさん達を含めた全員で挑んでも勝てるかどうかわからない相手だ!一秒でも早く全員を集める為に二人で手分けしてみんなを集めてくれ!俺は相手の速い動きはある程度なれているから、防御や回避に徹すれば少しくらいなら耐えられる!」
「リィン………わかった!でも、絶対に無理しないでよ!?」
「女神の加護を。行くぞ、エリオット!」
「うん!」
そしてエリオットとガイウスはその場から去り、その様子をベルフェゴールは妨害する事もなく興味ありげな様子で見つめていた。
「フフ、仲間を逃がして自分一人だけ残るなんて、中々熱い性格ね?そういう性格の子は真っ先に死んじゃうのがよくあるパターンだけど、私はそういう子は結構好きな方よ?だって、そういう熱い性格をしている子ほど、精気がとっても美味しいし、仲間の為に自分の身を犠牲にするなんて健気で可愛いし♪」
ベルフェゴールは魅惑的な笑みを浮かべてリィンを見つめていたが
「………二人を逃がしたのは俺にとっても都合がよかったからな。これで心置きなく戦える……!」
「へえ?」
静かな表情で語った後決意の表情で自分を見つめるリィンの言葉に目を丸くした後興味ありげな表情でリィンを見つめていた。
そしてリィンは目を閉じて片手を心臓の部分に置いた。するとリィンの心臓はドクンドクンと激しい鼓動を始めると共にリィンの周囲に何かの気が纏い始め
「あら………フフ、一体どんな秘策をみせてくれるのかしら?」
リィンの様子を見たベルフェゴールは目を丸くした後口元に笑みを浮かべてリィンを見つめた。するとその時!
「オオオオォォォオォオ――――――ッ!!」
なんとリィンが天井に向かって吠えると同時に黒髪は銀髪へと変わり、瞳は真紅の色へと変わり、全身に膨大な何かの”気”を纏うと共に凄まじい殺気をベルフェゴールへと向けた!
「フフ、いい闘気と殺気ね………これなら精気も極上のものでしょうねえ!?」
変貌したリィンの様子を微笑みながら見つめていたベルフェゴールは邪魔者が来ないように指を鳴らして結界を展開した後リィンへと襲い掛かり
「オオオオォォォオォオ―――――ッ!!」
リィンはまるで獣が吠えるかのような咆哮を上げながらベルフェゴールへと向かって戦闘を再開した!
~トールズ士官学院・本校舎2階・吹奏楽部~
「プリネ、ツーヤ、いる!?」
変貌したリィンが一人でベルフェゴールとの戦闘を繰り広げ始めたその頃、慌てた様子のエリオットが吹奏楽部の教室の扉を勢いよく開けるとそこには部員達と共に楽器の演奏の練習をしているプリネとツーヤ、そして他の部員達にアムドシアスがいた。
「エリオットさん?そんなに慌ててどうしたんですか?」
エリオットの様子にツーヤは首を傾げて尋ねた。
「ハア、ハア……あ……アムドシアスさんもいたんだ!ちょうどよかった……!早く旧校舎に向かって!じゃないとリィンが死んじゃうよ!」
「一体何があったのですか?」
息を切らせて尋常じゃない様子のエリオットの話を聞いて何かとてつもない事が起こっている事を察したプリネは真剣な表情で尋ねた。そしてエリオットは旧校舎での出会い、そのまま戦闘する事になったベルフェゴールとの事を説明した。
「”はぐれ魔神”ですって!?どうして旧校舎に……」
「それもウィル様に協力している”魔神”――――アスモデウス様と同じ”七大罪”の一柱を司る魔神ですか……一体どうやってこのゼムリア大陸に……」
「全く、あの好色魔め!我の至福の時間を邪魔しおって!」
エリオットから事情を聞いたツーヤは血相を変え、プリネは真剣な表情で考え込み、アムドシアスはいつかは素晴らしき演奏家となる可能性を秘めている演奏家の卵達を育てるという芸術を心から愛する自分にとって至福の時間を邪魔された事に憤っていた。
「今、ガイウスと一緒に手分けしてみんなやサラ教官達に協力を求めているからプリネ達もリィンを助けに行ってあげて!」
「―――わかりました。アムドシアス。」
「フン、あの好色魔に我の至福の時間を邪魔した罪……どれほど重いのか教えてやらねばな……!」
エリオットの言葉に頷いたプリネはアムドシアスを自分の身体に戻し
「では、私達は先にリィンさんの加勢に向かいます。ツーヤ。」
「はい。」
そしてツーヤと共に窓際へと向かった。
「え………ふ、二人とも!?何をしているの!?」
二人の行動にエリオットが驚いたその時プリネとツーヤは跳躍してなんと、2階から飛び降りて地上へと着地し、二人の行動に驚いた周囲の地上の生徒や教官達を無視してそのまま何事もなかったかのように旧校舎の方向へと向かい始めた!
「…………………」
二人の行動を見ていたエリオットは口をパクパクさせ
「う、嘘!?ここ、2階よ!?なのに何ともない様子で走るなんて……」
「もしかしてあれが”闇夜の眷属”の身体能力なのか!?」
周りの部員達は混乱していた。
~旧校舎・地下一階~
「フフ、まずは小手調べよ。」
変貌したリィンとの戦闘を再開したベルフェゴールは再び魔術―――拡散弾を放った。球体が拡散し無数の魔力弾がリィンを襲ったが
「オォォッ!!」
「!!」
なんとリィンは一瞬でその場から消えてベルフェゴールの目の前に現れ、突如目の前に現れたリィンにベルフェゴールは驚いた!
「死ネッ!!」
そしてリィンは閃光の速さで太刀を振るう八葉の剣技―――閃光斬りをベルフェゴールに放ち
「っと!どうやらちょっと本気を出さないといけないみたいね。」
閃光の速さで振るわれた太刀を素早く後ろへと退避したベルフェゴールは真剣な表情になった。
「ソコダッ!!」
リィンは反撃の隙を与えないかのように後ろへと退避したベルフェゴールにクラフト―――紅葉切りで襲い掛かった。変貌した事によって驚異的な身体能力を手に入れたリィンの抜刀技は今度こそベルフェゴールの脇腹に肉薄しようとしたが
「させないわよ!」
ベルフェゴールはギリギリで結界を展開して攻撃を防ぎ
「シャアッ!!」
「ねこパンチ!!」
リィンが太刀を振り下ろすと同時に一瞬で力を溜めた拳を突き出して、互いの攻撃を相殺した!
「!(手加減しているとは言え、通常の睡魔が放つ”ねこパンチ”とは比較できない威力の私の”ねこパンチ”を相殺するなんて……)―――だったら、これはどうかしら!?ねこアッパー!!」
自分の攻撃を相殺したリィンに心の中で驚いたベルフェゴールはその様子を顔に出さず右腕でアッパーカットを放ったが
「オオッ!!」
リィンは常人とは思えない動きでその場から消え、ベルフェゴールから距離を取った場所に現れた!
「暗黒の霧に包み込まれなさい!崩壊のディザイア!!」
リィンが距離を取るとベルフェゴールはリィンの周囲に暗黒の霧を発生させたが
「イクゾッ!!」
なんとリィンは霧が発生したその瞬間に再びその場から消えて自分に襲い掛かって来た漆黒の霧を回避すると同時にベルフェゴールの目の前に現れ
「シャアッ!!」
電光石火の速さで攻撃する”八葉一刀流”二の型―――疾風で襲い掛かった!
「痛っ!?なっ……この私に傷を作ったですって……!?」
目の前からの電光石火の速さに対処が遅れた事で脇腹の僅かな部分が斬られた痛みに表情を顰めたベルフェゴールは信じられない表情でリィンを見つめた。
「焔ヨッ!」
ベルフェゴールと対峙し続けているリィンは太刀に怪しげに燃える紫色の炎を纏わせ
「オオオオオオオオッ!!」
太刀を大きく振りかぶって脅威的な身体能力でベルフェゴールに襲い掛かり
「無駄よ!」
ベルフェゴールは片手で魔法陣を一瞬で展開して簡易結界を展開してリィンの一撃を防ぎ
「オオオオオオッ!!」
リィンは結界ごと叩き割るかのように更に力を入れていたが
「隙だらけよ!」
「ガッ!?」
結界を展開していないベルフェゴールのもう片方の拳の一撃を腹に受けて吹っ飛ばされたが、すぐに受け身を取って瞬間移動をしているかのようにその場から消えてベルフェゴールからある程度離れている距離の場所に現れた。
「…………………」
変貌し、”目の前の敵を殺す”事しか考えていないリィンはベルフェゴールを殺す為には更なる力が必要と判断し
「オオオオオオオオオオ――――――――――――ッ!!」
天井に向かって咆哮を上げると共に膨大な何かの”気”を集束し始め
「何、この魔気………!?上位悪……いえ下手したら最上位悪魔にも届くほどの魔気をどうして人間が……」
その様子を見ていたベルフェゴールは驚いたが
「……でも、このままだとあの子、死んじゃうわね。―――仕方ないわね。」
やがてリィンの行動が自らの命を散らす行動だとすぐに悟って溜息を吐いた後一瞬でリィンに詰め寄り
「超―――ねこパンチ!!」
「ガハッ!?」
リィンの腹に強烈な拳の一撃を叩き込み
「グ……ウ……ッ……!?」
ベルフェゴールの強烈な一撃によって気絶したリィンは元の姿に戻ると共に地面に倒れた!
「―――闇の息吹。」
戦闘を終えたベルフェゴールは治癒魔術で自分の身体にできた僅かな傷を癒してリィンに近づいた。
「…………………気力を著しく消耗しているわね。」
気絶して地面に倒れているリィンをベルフェゴールは黙って見つめた後その場でかがんでリィンの状態を確かめ
「…………………フフ、いいコトを思いついちゃったわ♪」
やがてその場で考え込んである提案を思いついた後、行動を開始した。
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