独裁者二匹
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3部分:第三章
第三章
ワンを決まったコースを歩かせてそのうえで糞の処理もする。そして家に帰って母が用意した御飯を出す。その時のワンの態度がまたかなりのものだった。
「あのな、御前な」
「ワン?」
「何でそんなに偉そうなんだよ」
皿の中にあるドッグフードを出しながらの問いだった。見ればワンはまるでふんぞりかえるように座ってだ。そのうえで待っていたのである。
昌哉はそんな彼に文句を言う。しかしそれでも届く筈もなかった。
「ワンワン」
「食わせろってことか」
「ワン」
この言葉はわかったようで応えてきた。
「わかったよ。ほら」
「ワン」
しかしであった。ワンはまた言ってきた。
そしてだ。御飯のお皿の横の水を入れた皿を右の前足でこつんとやってきた。そうしてそのうででまた鳴いて言ってきたのである。
「ワン」
「水じゃ駄目だっていうのかよ」
「ワン」
昌哉の言葉にこくりと頷く。どうやら本当に言葉がわかるらしい。つまり自分にとって都合のいい言葉はわかる犬であるらしい。
「ミルクか?ひょっとして」
「ワン」
その通りだと頷いてきた。
「そうか。わかったよ」
昌哉はうんざりとした顔でワンの催促に応えた。そのうえでミルクを出した。すると彼はそれに顔を近付けて美味そうに飲むのであった。
そして家に帰るとだ。もう一匹来た。
「ニャンッ」
「今度は御前か」
カミナリだった。彼が足元にまとわりついてきたのだ。
昌哉は台所に向かって問うた。そこに母がいるのである。
「ねえお母さん」
「何?」
「カミナリに御飯あげたよね」
「あげたわよ」
ありのままの返事だった。
「ちゃんとね」
「じゃあ何でこんなにまとわりついてきてるの?」
「遊んで欲しいんじゃないのかしら」
「遊んで欲しいの」
「そうじゃないの?」
こう彼に言うのである。
「それじゃないかしら」
「遊んで欲しいって」
昌哉はそれを聞いてだ。憮然とした顔になった。カミナリはその間にも彼の足元にまとわりついてきている。そのカミナリを見ながらだ。
「何かなあ」
「遊んであげなさい」
「遊べって?」
「そうよ。カミナリちゃんが遊びたがってるからね」
「ちぇっ、猫には甘いんだから」
「猫にだけじゃないわよ」
今の言葉にはすぐに訂正が来た。
「犬にもよ」
「ワンにもなんだ」
「そうよ、だからわかったわね」
「わかったよ。じゃあさ」
昌哉も憮然としながらだが頷いた。そうしてである。
彼はそのままカミナリの相手をした。棒を出してそれを彼の前に振ってそれを飛びつかせる。ねこじゃらしの様にしてそうして遊ぶのだった。
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