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独裁者二匹

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4部分:第四章


第四章

 こうしたことが続いた。彼はワンとカミナリの相手していた。そうして両親はそんな二匹を甘やかすばかりだ。全く怒りはしない。
「あっ、こらっ」
「ニャッ!?」
 テーブルの上に寝そべっているカミナリを怒る。まるでそこがベッドであるかの様に堂々と寝そべっていた。だが彼に怒られると慌てて逃げ出す。
 しかもだ。テーブルには父が座っている。しかし平気な顔でカップ焼きそばを食べている。それだけで何も動こうとはしないのだった。
 彼はその父を見てだ。むっとした顔でこう言った。
「怒らないの?」
「怒らないぞ」
 平然と返す父だった。
「何で怒る必要があるんだ?」
「こんなに悪いことしてるのに」
 そのテーブルの上で寝そべっていることを言う。
「それでも怒らないっていうの?」
「全然」
「全然って」
「カミナリは悪いことしていないじゃないか」
 あまつさえこう言う始末だった。
「それで何で怒るんだ?」
「テーブルの上に寝そべっているのが悪いことじゃないの?」
「いいじゃないか、それ位」
「それ位って」
「とにかくカミナリは悪いことしていないぞ」
 あくまでこう言う。言っているそのそばから折角畳んだ洗濯物をひっくり返してそのうえに横になる。ここでもまるで王者の様な顔をしている。
「全然な」
「してるじゃないか、今だって」
「だからそれ位いいじゃないか」
 実際に全然怒る素振りのない父だった。それどころかである。
 その好き放題しているカミナリに対してだ。満面の笑みを浮かべてこう言ってきた。
「なっ、カミナリ」
 しかしカミナリは返事をしない。相変わらず偉そうではあるがだ。
「全然返事しないじゃない」
「心でわかっているからいいんだよ」
「全く。お父さんもお母さんもさ」
 昌哉はいい加減怒ってだ。そのうえで父に言った。
「甘やかし過ぎだよ、カミナリもワンも」
「そうか?」
「そうだよ。おかげでどんどん我儘になってるし」
「我儘か?」
「我儘だよ」
 また父に返す。
「どっからどう見てもさ」
「そうか」
「そうだよ。とにかくカミナリどけないと」
 こう言ってである。洗濯物のところに来てそのうえでだ。また彼を叱った。
「こらっ」
「ニャン」
「ニャンじゃないっ、そこをどけ」
 叱るがそれでもどこうとはしない。カミナリがそこを去ったのは暫くしてからだった。カミナリの我儘はエスカレートする一方だった。
 そしてそれはワンもだった。御飯を食べ終えるとだ。
「ワン」
「ワンって何だ?」  
 ここで右の前足でその空になった皿をこつんとやってみせる。
 それを見てだ。昌哉にもわかった。そのうえで彼に問うた。
「おかわりか?」
「ワンッ」
 一声鳴きながらこくりと頷いてきた。その通りだというのだ。
「まだ食うのか」
「ワン」
「ワンじゃない、食べ過ぎだぞ」
 こう言うとだ。不機嫌そうな顔を見せてだ。昌哉に鳴いてきた。
 
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