宇宙を駆ける狩猟民族がファンタジーに現れました
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第一部
ファンタジーへようこそ
いち
前書き
ようこそはじめまして。
拙い、自分の妄想の垂れ流しではございますが、楽しんでいただければ幸甚です。
それでは、よろしくお願い致します。
『事実は小説より奇なり』
とは、誰が言ったことだったか。
深く腰かけた操縦席。真っ赤な視界でどこを見るでもなく、ふと感傷に浸る。
超長距離に及ぶ恒星間移動を、この25メートルプールに収まるほどの大きさで行える宇宙船の技術は、まさに見事の一言に尽きる。
前世の地球の科学者の手に渡れば、昼夜を問わず嬉々として解析を行うだろう。しかも、ワープやら光学迷彩、果ては山すらも抉る威力を持つレーザー兵器まで搭載しているのだから、彼の世界の警察国家に渡れば軍事転用を目的とされるのは必須だ。
まあ、そんなことにならないように、遠隔での自爆装置も着いているわけだが。
さて、“前世”と言ったように、私は元人間である。
地球生まれの日本人。
元はただの一企業に勤めるサラリーマンであった。
遊び、恋愛、音楽、映画、漫画やアニメ。それなりにサブカルチャーにも手を出して、それなりに仕事もこなし、それなりに交遊関係もあり、それなりに充実した毎日を過ごしていた。
事の起こりは何てことない、ありふれたものだった。
不運な事故。それまでだ。
事故の起こる寸前までは意識があり、「あ、やばいな」と確信した直後に私の意識はブラックアウトした。
いまのいままで意識不明に陥ったこともなけば、気絶したような経験のない私は、黒く塗りつぶされた感覚の中で、不明瞭ながらも自意識があることを認識していた。
ふわふわと、宙ぶらりんな曖昧な感覚。意識はあるはずなのに、はっきりしない体の感覚。
思えばその時点で既に私の前世、人としての生は終わり、新たな生を授かっていたのだろう。
プレデター。
ご存じであろうか。
高度な科学技術を持ち、高い知性を持った人型の生物を。
身長は2メートル30センチ~50センチ、体重は約100~150キロほどと、かなり大柄な筋肉の塊のような生物だ。
私は知っている。
映画の中の世界で、だが。
彼らは種族として、宇宙の様々な惑星に赴き、そこに生息する危険度と攻撃性の高い生物を狩猟することを最重要とした民族的文化を持った、地球外生命体のことである。
プレデターという呼び名は、人間が勝手に決めた呼称であり、何もその名の通り狩りの対象を『捕食』をするわけではない。
言ってしまえば狩りを文化という名の趣味とし、自ら身の危険を伴う行為、それこそ生死を掛けてその技術を高めようとする“ドM”である。
しかも、高水準の科学技術を持ちながらも、その技術を狩猟ステータスに全振りするという、云わば高度な“変態”でもある。
狩りを行うのもルールがあり、弱いとされる獲物、例えば武器を所持していない者、女子供や年老いた者、大病を患っている者や妊婦などは狩りの対象外とし、例外はあるが基本それに沿って狩りを行っている。そのようなところから狩猟を重要な文化とし、その中で技の熟練と勝利と名誉をかけて狩りをしているのだが、まあ、脳筋以外の何者でもない。
そんなプレデターの姿形だが、皮膚には爬虫類や水棲生物、昆虫類を思わせる模様があり、これは個体差がある。肌の色は黄土色やくすんだ茶色、黒ずんだ色など、これまた爬虫類等を思わせる。
また、頭部における顕著な特徴の一つに口の部分が挙げられる。顔の下半分には、皮膜に覆われた4本の爪状器官があり、この器官はそれぞれ独立して動かすことが可能で、正面から見ると四角形を描くように配置されている。4本全てを大きく開くとその内側に口があるのだが、唇はなく、歯と歯茎が剥き出しの状態となっている。
蟹等の甲殻類を想像してもらえれば、あながち間違いではないだろう。
また、額はかなり広く、頭部周辺には黒色で先細りのドレッドのような管が数十本生えており、個体によっては毛先が赤かったり、緑ばんでいたり、硬質なドレッドというよりも、もっと生々しい触手のような個体もいたりする。獲物の骨で飾り立てしている者や、昔流行ったビーズのような金属製の物を使ってアレンジしている個体もいたりと、意外と個性豊な種族だ。
正直、10人中10人が間違いなく化け物と呼ぶ我々プレデターだが、狩猟を最も重要な文化としており、その狩りを行うために高い技術力、科学力が惜しみ無く発揮されている。
まず、プレデターの代表的な装備といえば、自身を景色と同化させる『光学迷彩装置』、左肩部アームに装着するプラズマ砲『プラズマキャスター』、右腕ガントレットに装着されている、長さ約50~60センチの鍵爪状の、状況に応じて伸縮する『リストブレイド』。
そしてその外見をもっとも印象付け、更にプレデターの生命線とも言える『ヘルメット』は、サーモグラフィー等の視覚補助、射撃武装や対象の詳細情報の捜索に用いるレーザーサイトによるロックオン機能、また記憶媒体を取り付けられており、様々な環境、状況下での戦闘を経験する度に情報が蓄積され、光学迷彩の擬態能力を強化させていく機能がある。
そんな、前世の世界に持ち込めば世界の軍事レベルが崩壊しかねないほどの科学技術力を持っているにも係わらず、やっていることは、嘘か本当か昔のテレビで特集を組まれていた、森の奥地にいるアフリカの部族と同じレベルなのだ。
残念種族と言っても言い過ぎることはない。
私は、そんな残念種族の一人として、既に地球人であった頃よりも長く生きているのである。
本当に残念だ……。
後書き
作者はプレデター大好きです。
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