宇宙を駆ける狩猟民族がファンタジーに現れました
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第一部
ファンタジーへようこそ
に
前書き
長い前置き、自分でもビックリ
そんな残念種族と私が勝手に思っているプレデターであるが、前世での私はこの映画が大好きであった。
しかし、是非一度考えてみて欲しい。
あれはエンターテイメントであるから楽しめるのであり、客観的に観れたからこそ、プレデターという生物の生き方を、そして戦う様を格好良いと思ったのだ。
それが、いざ自分に降りかかってきたとなれば、愚痴の一つくらい言ってもバチは当たらないだろう。
そうはいっても、つい数日前までかく言う私も未開の惑星で狩りに勤しんでいた訳であるから、随分とこの種族の文化に染まってしまったものだと思う。
宇宙は広い。
いくら恒星間移動の術を持っていても、いまだ辿り着いたことのない未開の惑星は存在している。
更にそこに生命体が存在し、狩猟の対象となるような生物がいる地を探し、そこで狩りを行う。
私の主な仕事は、言わばその先見隊のようなものであり、探検家や冒険家に近い位置にある。
そこまでの道のりとして、私は無事に成人の儀式を終え、ある程度狩猟を経験して着実に実績を上げ、戦う技術と装備を充実させてきた。
元々種族の中でも体格に恵まれており、ある意味、自棄糞気味に戦闘技術、狩猟技術を高めていったのが良かったのかもしれない。そうでもしないと自身の死に直結することを考えれば、そうする他なかったともいえるが……。
我々種族は、狩りの中で強敵と合い見え、勝利し、狩りを成功させることが最大の名誉とされており、次に名誉とされることは強敵と戦い死ぬこととされている。
「名誉なき者は一族にあらず。そして名誉のために戦わぬ者に名誉はない」
というのは、私たち種族の掟であり、信条だ。
遂には我々の種族と敵対している、バーサーカー族種のプレデターを多く狩猟したりもしてしまった。
死にたくないので必要以上に頑張りますよ。
そんなことを続けていると、周りが勝手に勘違いをして、気付けば私を『勇者』などと呼ぶものも現れる始末だ。
このときばかりは流石に生きている心地がしなかった。
勇者に祭り上げられるつもりもないし、氏族を興し、“エルダー”になるつもりのない私は、種族の繁栄と発展のためにと、この仕事を請け負うことに決めた。
建前は上手に生きていく中で、とても重要である。
エルダーになれば氏族の長となり、狩りを行う必要もなくなるのだが、常に誰かに見張られながらなんて息が詰まるし、“クリーナー”のようなトラブル専門の“掃除屋”として危険度MAXの中に自ら飛び込んでいくなんて絶対にお断りだ。
故に私は“冒険者”として、いまの地位に就いた。
通常、我々の種族は氏族単位で群を形成し、狩りや任務の際は一人、もしくは三人単位で行動する。
「自ら戦いに常に身をおくその姿勢、流石勇者。我が氏族の誇りだ」みたいなことを所属していた氏族のエルダーに言われたが、誰の目もなく、好き勝手したいだけだ。
今後飛んでもないことになりそうではあるが、都合がいいので取り合えずは否定しないでおいた。
皆は“冒険者”というが、私の心情的には“旅行者”である。
だって男の子だもん。
ロマンを求めたくなるものじゃない。
ある程度の危険を打ち払えるだけの力は持っているつもりだ。かといって満身はできないので、そこは慎重にならなければならない。
さて、次は何処に向けて舵を切ろうか。
そう思ってホログラフで浮かび上がるウィンドウを操作し、ランダムに宇宙に放った無数の探査ビーコンから届く情報へとウィンドウを切り替える。
当然、まだ宇宙を漂っているものも数多くある中で、無事に惑星に着いた探査ビーコンの情報に目を通す。
……この星は暑そうだからパス。
……氷が一杯で滑りそうだからパス。
……なんか臭そう。パスで。
肘掛けに肘をついて拳の上に顎を乗せながら、顔の下半分にある、2対4本の牙をカチカチ鳴らして8ビートを刻んでいるこんな姿のどこに勇者要素があるのだろうか。
どちらかと言えば、マウスをスクロールさせてエロ動画を探している姿に近い。
……それもある意味勇者だよな。いや、紳士か?
そんな肉にも血にもならないアホな考えを打ち消すかのように、船体が大きく揺れる。
何かが物理的にぶつかったような衝撃ではなく、衝撃波に近い。
探査ビーコンから送られてくる情報ウィンドウはそのままに、船体の異常を確かめるために新しいウィンドウを開いて各部のチェックを行う。
特に被害を受けた箇所は無さそうだ。一番懸念された動力部に関しても正常に作動している。
次に船全体を覆っている光学迷彩機能目を通す。
「出力も安定しているし、解除もされていないと」
この暗い宇宙空間で、全く姿が映らないこの船を目視で認めることは至難の技だ。エンジンもほとんど音を鳴らさずにいるため、ソナーにも反映されにくい。このステルス性能を看破できる技術力をもつ異星人もいるにはいるが、生息域からは大分外れている。
それであるならば、この領域に住まう、同じく高い水準の科学技術を持つ存在か。
警戒レベルを一段階上げ、迎撃用の火器を作動させると同時にセンサービーコンを射出する。合わせてブリッジの防護壁を稼働させ、剥き出しになっている特殊ガラスで覆われたブリッジを保護することも忘れない。
1分、2分と時間が経過するが、射出したビーコンからの反応はなく、近くに他の船はもとより、目立った漂流物や小惑星も確認できない。
電磁波やらガンマ線やらの衝撃波とも思ったが、計器に異常も見当たらず、検出もできない。
原因不明というのも気持ち悪いが、警戒レベルはそのままに、肩の力を抜いて浅く操縦席に座り直す。
再度の衝撃。
完全に油断していたタイミングで船体が揺れたため、操縦席から擦れ落ちた拍子に後頭部を背凭れに強打する。
「マジでふざけんな」
左手で自身の後頭部を摩りながら立ち上がり、背凭れを睨み付ける。
「ウボァァア!」
八つ当たりと分かっていながらも、若干フック気味に背凭れを殴り付けると、凄まじい音を立てて大小様々な破片となって砕けた。
……ちくしょう。落ち着いたら直さないと。
後書き
あれ、いつファンタジーに行くんだろう
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