世界をめぐる、銀白の翼
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第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
CLANNAD ~戦闘終了、その後とそして~
「奴」と蒔風が公園の真ん中で対峙する。
蒔風は風林火山の「風」と「林」を抜き組み合わせ一本にし、同じように「火」と「山」を組み合わせて構えていた。
「やっぱりおまえが手にしたのは「十五天帝」だったか」
「そういうおまえの武器は・・・」
「オレのは「魔導八天」。よろしく」
「そ・・・で?なんでお前この世界に来てすぐに行動しなかったんだ?」
「ふん、世界によって構築が違うのだ。それを解析し、いかように食らうかを算出せねばならなかったんだよ」
「あっさり教えてくれんのな」
「その程度、出し惜しみしてどうする・・・・・それにしてもまあなんとも、また、邪魔してくれたなぁ、おい」
「当たり前だ。この世界を、貴様の好きにはさせない。それ以前に、あいつらは俺の友人だ」
「ふん。出会って二日しか経ってないというのに友人か。よくそれで命を懸けられるもんだ」
「あいつらのためでもあるが、オレの世界のためにもだからな!」
その一言がスタートの合図だったかのように、蒔風が一気に間合いを詰める。
風林火山を振り回しながら、「奴」に迫る。
「奴」は腰の高さ辺りに魔導八天のうちの三本をプロペラのように回して剣撃をうける。
走り、飛び、転がり、跳ね、交差し、打ち合う。
お互いの気合がぶつかり合い、剣撃だけが、深夜の公園で響いていく。
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「・・・・・・・・・・というわけでして」
蒔風の張った結界内。
そこで岡崎と渚は、青龍とかいう男から事の顛末を聞いていた。
他の世界からきた蒔風は、あの黒い奴から他の世界の崩壊を防ぐためにやってきている。
そして彼等がそのトリガーらしく(世界の中心であることは、にわかに信じがたそうだが)、それで二人を守るためにこの公園で張ってた事までを話した。
「だったら最初から話せばよかったんじゃ?」
「信じますか?」
「・・・いや」
「わ、私も、この光景を見ていなければ、信じられませんし・・・・」
渚も落ち着きを取り戻してきたみたいである。
今も、この結界の外では蒔風が戦っている。
岡崎も何かしようと、身体を動かずが
「・・・いけません。ここにいてください」
「なっ」
青龍に止められた。
「・・・大体考えることはわかります。主を・・・助けに行きたいのでしょう?しかしあの場は・・・あなたたちの居るべき日常(いばしょ)ではありません。ここが安全・・・です」
「で、でも・・・」
「・・・その気持ちだけで十分でしょう。大丈夫です主は・・・・世界最強ですから」
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互いに攻め、互いに受けて、二人は空に舞い上がる。
それでも二人は止まらない。打つ切る削る。
まるで花火が打ち上がったかのような火花を散らし、とんでもない音を鳴らしながら中の二人が打ち合っている。
ギギギギギギギギギッギイギギッギッギギギンンン、ガッギィ!
と最後に思いっきり打ちつけ合い、刃が交差し、組み合って、そのままの体勢で二人が落ちてきて、
ドン!!と、思いっきり大地に足を踏みしめる。
数秒ほどその体勢で固まるが、「奴」の蹴りが蒔風の腹部にめり込みその体を吹き飛ばした。
「ゲボァッツァ!」
蒔風は後ろに飛び、どん、と岡崎たちの居る結界にぶつかり寄りかかる。
片手を結界に伸ばし、それで体を支える。
「はぁ・・・そういえばお前さん、結局オレを追ってきたのね?」
「ゲッホ、・・・ほっといたらいろんな世界も・・・・オレの世界も壊されちまうからな」
「安心しろ。その後にみんなが主人公になれる世界を作る。そうすれば誰もないがしろになんかされない、素晴らしい世界になるんだ。どうだ?誰もが幸せになれるんだぞ?いい世界だろう」
「・・・・それは・・・・・だめだろうよ」
「あん?」
「何もせずに幸福を得るってか?馬鹿馬鹿しい。そんなものはいらねえだろ?「幸せな地獄」なんてな、必要ねえよ」
「それはあくまでもお前の持論だ。それをすべてに押しつけるのか?生まれた時から主人公として生きてきてこれた運命を持つ奴は、言うことが違うなぁ」
「・・・・生まれた時から主人公?馬鹿かてめえ、生まれた瞬間からを描いた物語なんざねえだろうがよ。あらかたの物心ついた頃からだろうよ。主人公だからあれこれいろいろあるんじゃない。あれこれいろいろある奴が主人公になるんだ!運命なんて簡単な言葉で俺たちの人生の評価を決めるんじゃねえよ!」
「・・・・所詮はな、そんなものはそこにいる人間だから言える戯言だ。持っている者がこんなのいらない、というのがどれほどむかつくか、解るか!?」
「知らん!だが幸せを得ようとするなら、方法を間違うな。そういうのはな、他人を蹴落としてでも手に入れられるかどうかってぐらい大切なもんだ。だからこそ、頑張って生きてるんだろ?そしてその人生が他の世界へと知られたとき、それは「物語」というステージとして知られることになるんだよ!!」
「誰もがステージに立てるわけではないだろう?だから俺は、誰もがステージに立てる舞台を用意するんだよ!」
「・・・・・このバカ野郎が・・・・・」
蒔風が怒気をはらんだ声でぼそりと唸る。
「いいか?こいつらはな、舞台に立つことすらもままならなかったんだ。部活は廃部状態、相談できる友達はいねえ、経験も知識も何もねえ!でもそんな状況でも、こいつらは舞台に立ちたいっていう強い願いで動いた!そしてステージに立ったんだ!」
蒔風は自分でもなんでこんなことを言っているのかもわからない。情報が来たわけでもない。ただ、そんな気がしたのだ。
こいつらは、必死だったと。
彼らがその願いをかなえるために、走り回っていたことを・・・・
もしかしたら、彼はもともと知っていたのかもしれない。
その生きた証を、走り抜けた青春を。
「お前の言う世界は素晴らしいのかもな。でもそれは、こいつらのような奴の努力を踏みにじる行為だ!俺はそれを許さない。俺は銀白の翼人。俺の翼の司る人の想いは希望・・・・人の願いだ!」
グッと右手の拳を胸の前で握り、そして打ち払うように一気にその手を振り下ろす!
「開翼!!!!」
その瞬間
蒔風の背に、銀白の翼が現れた。
「銀白の・・・・翼人・・・・っ!」
「・・・・オレはお前を許さない。こいつらのためにも、絶対に、だ!」
ダンッ ギィン!
風林火山を構えなおし、蒔風が「奴」に迫る。
「奴」の体勢が崩れたところで蒔風が舞う。
その舞は華麗なる剣撃。
「いくぞ!鎌鼬切演武!!!」
ザアッ!
無数の斬撃が蒔風の廻す風林火山から放たれ、「奴」を追いこんでいく。
そしてその斬撃は一定の形をなす。
「鎌鼬切演武、四季早々「春」花吹雪!」
ザザザザザザザザザ、ズアッ!
「奴」の周りをぐるぐると、斬撃が取り囲むように、回りながら、迫っていく。
奴を取り囲む斬撃の円が、徐々に狭まり、奴を切り刻む。
「ぬ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
それは舞い散る花びらのように、キラキラと光りながら廻っていく。
その光景は攻撃の激しさが忘れられるような、美しい光景であった。
「がああああああああああああああああああああああっっっ!!!!!」
「奴」は斬撃の竜巻にのまれた。
「奴」が斬撃を受けるような甲高い金属音が聞こえてくるが、とてもじゃないが防ぎきれていない。
ズゥアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!
その斬撃も終わり、晴れた後に「奴」の姿が見えてきた。
満身創痍ではあるが、奴はいまだに立っている。
そこで蒔風は岡崎たちを覆っていた結界を消した。
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その光景を、岡崎智也は言葉にできないような、不思議な気持ちを胸に見ていた。
蒔風の、「奴」に対する叫び。
なぜ蒔風が自分たちの演劇のことを知っているのか、という不思議はある。
でも
確かに、なぜ蒔風が彼らのことを知っているのか、あのステージのことを知っていたのかは分からない。
しかし岡崎には、蒔風はわかってくれている、とそんな気がしていた。
「行くぞ!鎌鼬切演武!!」
そして、彼の斬演武が始まったのだ。
「綺麗・・・・」
渚もこの光景に目を奪われている。
一つ一つが大変な威力だろうに、思ったのは凄さより美しいということだけだった。
そうしてると結界が消えて、蒔風がやってくる。
「よし・・・とどめを刺そうぜ!」
「は?」
戦う力のない彼らに疑問符が浮かぶ。
だが蒔風は、笑顔でこういった。
「大丈夫だ。お前の力を借りるだけだし。さて・・・お前の世界だ。お前が守らなきゃぁ、な!」
そして、岡崎の肩に手を当て叫ぶ。
「いくぜ!WORLD LINK!!」
その瞬間、どこからか声が聞こえてきた。
【CLANNAD】-WORLD LINK- ~WEPON~
それは、空間そのものが発した声とも音ともつかないものだった。
これは宣言である。
世界による、その敵を葬る為の術式。世界が、この世界を守るとする彼等を後押ししてくれる契約。
それが成されると、地面から光がポツポツと雪が降るようにそして大量に浮かんできた。
「さあ、この町の願いをかなえよう」
その光は「奴」を覆い尽くし、その動きを止める。
明らかに軽そうなそれだが、その拘束力は「奴」の力を上回っているようだ。
「な、んだこれは!」
「これがWORLD LINKだ。世界だってお前に抵抗する意思がある。そして、それを俺たちが!!」
「ぶっ、あ!?」
「よし、行くぞ岡崎!お前の想いを強く念じろ!」
「あ、ああ!」
【CLANNAD】-WORLD LINK- ~FINAL ATTACK~
また声がすると、巨大な光でできた剣が蒔風の手に握られていた。
そしてそれは岡崎の手にも。
「これが俺たちの力だ。行くぞ岡崎!」
「よし!おおおおおおおおおおおおおお!」
「あああああああああああああああああっ!」
この町にいるすべての人の、今この場の状況はわからなくても、この町を思う気持ちが、力となる!町もまた、守るために、力を発揮する!その想いを、町は・・・この町の幸せのために!
蒔風と岡崎が、一気に駆け、「奴」をその想いでたたっ切る!
「ぬ、ぐああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
斬ッッ!!
二人の斬撃が「奴」を切り裂く。
そして三等分にされた「奴」が
「グぅッ!?」
ドゴンッッ!!!ァァァァァァァァァ・・・・シュウウウウウウウ
爆散する。
「またしても・・・・また、負けただと?この俺が!畜・・・生!」
「お前の魔導八天はどうやらパワー重視らしいな。オレのは多様性がめちゃくちゃあるから工夫しないと勝てないぜ」
「余裕そうにしておけ、次は勝つ・・・・・」
「やわせねえよ。オレは世界最強だからな。勝ち続けてやるさ」
ゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・・・
そうして「奴」は、最初からそこにいなかったかのように、消えた。
その瞬間、「奴」の張っていた結界が消滅し、普通の夜が戻ってきた。
公園の時計を見ると、五分も経っていなかった。
「五分も経ってない・・・・」
「あの中では若干時間の流れがずれるみたいだ。ふむふむ」
「・・・で、終わったのか?」
「ああ、この世界での役目は終わった」
「あ、あの、よくわからなかったんですけど、ありがとうございました!」
「気にすんな。俺の世界のためでもあるんだからな」
「行っちまうのか?」
「すぐにってわけでもないんだがな。あと一時間ほどで、かな。この世界にいたのはたったの二日・・・もう三日目になっているけど、それくらいだしな」
「あの、じゃあ何かお礼を」
「ストップ。お礼が欲しくてやったわけじゃない」
「で、でも・・・」
「ふう、岡崎、渚」
「ん?」「は、はい」
「お前たちにはこれから大変なことが多く起こるかもしれない。しかし忘れるな、さっきの力を。この町はあれだけの力を持って、お前たちを見守ってくれている。そして、この町の人々も、な」
「はい!わかりました!」
「でもなんでそんなこと・・・」
「ではな、二人とも。この世界はもう大丈夫だろう」
「あ、ああ、じゃあな」
「おう、渚。もう部活にはいけないけど、ごめんな」
「大丈夫です。これからもがんばります!」
「ははっ。ん、じゃ」
「なあ!」
「ん?」
「ありがとな!本当に、ありがとう!!」
その言葉を受け、蒔風はにっと笑い、歩いていく
[Gate Open---CLANNAD]
目の前に、光のゲートが開きそれをくぐる。
さぁって。次の世界は~なんだろな~
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次の日、岡崎が学校に行くと蒔風は転校したことになっていた。
たった二日だけの転校で、教師も生徒も驚いていた。
その話はすぐに噂になり、放課後にはほとんどの生徒が知っていることになった。
だが、その転校生がだれか、という明確な情報は誰も知らなかった。
「噂の転校生って、あいつのことよね?」
演劇部部室で杏が言う。
ことみは噂のことを知らなかったし、春原はさっき来て知ったばかりで、驚いていた。
「蒔風君、転校しちゃったの?」
「あいつへんな奴だったよな。来たときからいなくなるまで。あいつの部屋寮にあったらしいんだけど、荷物が何もなかったそうだぜ?」
「そ、それは怖いですね・・・」
ことみ、春原、椋が蒔風のことを話している。
「ねえ朋也、あんた何気によく話してたじゃない。何か知らないの?」
杏が岡崎に聞いてきた。
しかし岡崎は、知らねーよ、という。
きっと言ったところで信じてもらえないだろう。
そうして数日が過ぎるとそんな噂は日常に押し流され、忘れられていった。
しかし、二人だけは覚えている。
岡崎はあの剣を握った感触を。
渚は目の前で羽ばたいた翼の美しさを。
彼の強さを忘れない。
彼は今、どの世界で戦っているのだろう・・・・
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蒔風がゲートをくぐり、次の世界に降り立つ。
降り立つ先は、新たなる時代の始まり。
みんなの笑顔を守るために戦った、2000の技をもつ男の世界である。
to be continued
後書き
・魔導八天
「天剣・十五天帝」に対する「反天剣」
八本の剣による構成。十五天帝同様の融合型合体剣。
どの剣でも組み合わせは可能だが、どう組み合わせても西洋剣の形にしかならない。
その分、一つにしていけばその分重く、強くなる。十五天帝に比べてパワー重視。
・鎌鼬斬演武
斬撃波を飛ばす技。
演武と言っても、単発で放つ場合も当然もある。
・四季早々「春・花吹雪」
上記の鎌鼬斬演武の、連射の型の一つ。
名前の通り、四つある。春はその一つ。
無数の斬撃波が敵の周囲を取り囲むように旋回し、竜巻の中に閉じ込める。
そしてそれが細くなって行き、最後には敵を粉砕する技。
・消滅
「奴」にとって、敗北=死ではない。
この世界からはじき出され、また別の世界に行くことになる。
そして彼はそれを追ってさらなる世界をめぐっていく。
蒔風
「いやあ、おわったおわった」
アリス
「では次、WORLD LINKの説明」
WORLD LINKとは、各世界で蒔風が一回だけ発動できない大技である。
世界の意志とつながり、その力を引き出して使う。
世界の象徴ともいえるような技や武器が出て来て、それで攻撃するのだ!
また「奴」がある世界の「なにか」をとりこんでいたら、それを破壊することもできる。
しかしどの世界のWORLD LINKも大ぶりなものが多く、最後の一撃にしか使えない。
当然、世界ごとに能力、形態、効果、すべてが異なる。
-WORLD LINK- ~WEPON~は、各世界での力を引き出す。またキメ技のための前準備でもある。
そして-WORLD LINK- ~FINAL ATTACK~にて、最大の攻撃をぶつける。
大きく三つの形にその効果は別れ、
①最主要人物や主要人物に力を与える、その世界の人物主体の場合(この場合の使用者の負担は一切かからない)
②蒔風に最主要人物、又は主要人物の力を付加し共に攻撃する、蒔風に力をつける場合。
③最主要人物と蒔風の力を合わせ、新しい一つの武器(力)を作る、どちらの力も使う場合。
がある。
アリス
「ようは世界ごとに一回だけ出せるすげー技ってことでしょう?」
そのとおりですねはい。めんどくさくてごめんなさい。
【CLANNAD】
主な構成:”輝志”75%
”no Name”15%
”LOND”10%
最主要人物:岡崎朋也
-WORLD LINK- ~WEPON~:《町の光》町の意志の光で「奴」を拘束
-WORLD LINK- ~FINAL ATTACK~:《立ち向かう刃》朋也と共に、巨大な剣で斬り裂く
出典:原作に存在する「町の意思」の具現化。本来の効果とは異なり、攻撃的なものになっている。
アリス
「出典って?」
WORLD LINKの元ネタ。
今回はちょっとこの小説オリジナルです。
アリス
「次の世界、蒔風が出会う男とは?そして「奴」の攻撃は!?」
ではまた次回
からっぽの星、時代をゼロから始めよう
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