世界をめぐる、銀白の翼
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第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
CLANNAD ~日常と幻想、そして開戦~
この世界での一日目が終わり、「奴」がやって来てから夜が明け、二日目が始まった。
あいつは必ず岡崎を狙って来るはずだ。
そう考えた蒔風がとろうとした行動は岡崎の家に張り込むことだった。
しかし・・・・・・
「やべえ、わかんねぇ」
はい、今オレ蒔風 舜はまた迷子になっております。
畜生、岡崎の家くらい情報くれよ、世界さんよ。
仕方がないので学校前の坂の麓で待つことにした。
そうしていると、だんだんと登校する生徒が増えてきて、待ち続けて十五分ほどしたところで、岡崎と古河が一緒に登校する姿が見えた。
周りの生徒には全く怪しまれなかった。
ダンボールかぶってたからな。
そこでオレは隠れていたダンボールと茂みから出て、五メートルほど前を歩きながら、岡崎たちを意識の範囲内に入れた。
そうして歩いていると、どうやらあちらが気づいたようで古河が挨拶してきた。
「蒔風さん、おはようございます」
「おぉ、おはようございます古河さん」
「渚でいいですよ。皆さんそう呼んでますし」
「あー、な、渚さん?」
「はい」
ダメだ。やっぱり名前で呼ぶのはまだ慣れない。
「よう」
「おお、岡崎。最近どうだ?」
「特にないぞ。っていうか昨日あったばかりで最近もなにもないだろ」
「ん、まぁな。でもほら、社交辞令社交辞令♪」
なるほど、特に異常はなかったようだ。隠しているわけでもなさそうだしな。
「お、そういえばお前パン好きか?」
「ん?特に嫌いなわけじゃないけど」
じゃあこれやる、と岡崎が二、三個パンをよこしてくれた。
昼飯は買うつもりだったし、資金は(世界の支給で)たくさんあるから金に困っているわけでもないが、こういうのは素直にうれしいな。
「ありがとな」
「あ、朋也くん、そのパ「気にするなよ知り合いのパン屋にタダでもらったんだ」・・・もう」
「ん、じゃあありがたくいただくぜ」
「ああ」
そんなこんなでクラスの違う渚と別れて、俺達二人は教室に入っていく。
そしてHRが始まり、午前の授業が終わり、昼休みに入る前に春原が登校してきて、岡崎と話し始めた。
「岡崎っ!なんで僕を置いていくんだよ!」
「お前誰だ」
「あのその知らないフリやめてくれませんかねぇっ!?すごく傷つくんですけどっ!」
「悪かったよ。だからそんなに顔を近づけるな」
「ふっ、やっぱりお前でも、僕の友達のポジションを失うのはおしいよな!うんうん」
あいつやっぱりモテねぇだろ。あと馬鹿だ。
「今から昼飯だろ?」
「あ、僕なにもないや。ま、渚ちゃんのお弁当をもらうし、いっか」
「杏にボコボコにされるぞ」
するとギギギと春原の首が傾き、ホント?、と岡崎に問いかけていた。
ちなみに岡崎の目もかなりマジだった
「んー、あ!」
と春原はなにか思い付いたようでオレの方に歩いてきた。
「なぁ、お前、僕よりあとに演劇部に入ったってことは僕の後輩だよな」
「まぁ、そうなるのかな」
「よし!今から僕が言うことに逆らうなよ!」
「やだ」
「逆らうなって言っただろぉー!」
「なあ岡崎。こいつどうすればいい?」
「杏を呼んでこい」
「よし!」
「よし!じゃねーよ!なんだなんだぁ?お前僕が怖いのかぁ?女子の力を借りるようなチキン野郎かぁ?」
春原がチンピラのようにケンカを売ってきた!
「あぁ?てめぇもっぺん言ってみよぉかぁあ゛?」
蒔風はメンチを切って春原に凄みをきかせた!
「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」
春原は戦意を削がれた!春原はへたれた!春原の敗北!
「まったく、何してんのよ」
「杏」
「ほら、昼ご飯食べに行くわよ。あんたも」
「あ、ああ」
どうやら俺のこともかろうじて演劇部の仲間として受け入れられたようだ。
なんでか知らないけど。
あまりからんでないんだけどな。しかたないけど。
理由探ってもいいけど・・・最終的に「世界ってスゲー」で終わる気がする・・・・
そうして俺たちは杏に連れられ演劇部部室まで行き昼飯を食べた。
なお、昼飯には岡崎からもらった「メカニックパン」なるパンを。
パンとは思えないほど硬くて、食べるのに難儀したが、まあ俺だし、何とか食いきることができた。後ほど計測したら鉄分がとんでもない量入っていた。
そういうものなのか?鉄分って
さすがにひとつでギブアップして、残りの二つのうちの一つは春原にあげた。
食えないと騒ぎ出したところで杏がもうひとつを投げつけた。
春原の口にクリーンヒットし、そのまま食道に流れ込んで詰まったようで、水を飲んでもふやけず、このままでは春原が死んでしまうので思いっきり腹を殴って一命をとりとめさせた
そうして午後の授業も終わり放課後である。
今日は皆それぞれに用事があったようなので、部活はないそうだ。
ちょうどいい、このまま岡崎の家を調べて今日から張りこもう。
俺の世界みたいになるのはまっぴら御免だからな。
そうして岡崎は渚と一緒に下校しだした。
その後をついていくオレ。
すると二人はパン屋さんの中に入って行った。
ここが岡崎の知り合いのパン屋ってところか?
店名を見てみたら「古河パン」と書いてあった。
ということはここは渚の家か。
ちょうどいい。ここもチェックしておこう。
ついでにあのパンの創作者の顔を見ておこう。
そう思い店の中に入ると
エプロンを制服の上からかけた姿の岡崎と渚が店番をしていた。
「お前らが店やってるのかよー!!??」
「あ、蒔風さん。どうしたんですか?」
「い、いや、今日食べたメカニックパンっていうのが愉快過ぎてな。どんなパン屋か見に来たんだ。」
「でもなんでうちのパン屋にピンポイントに?」
「春原に聞いた」
あとをこっそり付けてきたなんて言えない。言えるわけない!
だから適当なスケープゴートを用意した。春原・・・・便利な子!!
「あいつか・・・で?感想は?おまえ普通に食ってたけど・・・」
「ああ、おれは何とか大丈夫だったが、春原のあの反応を見てわかるとおり、あれは常人じゃとてもじゃないが食えない。硬すぎる。人を殺せるな。まあ味は悪くなかったがな。あんなパンどうやって作ったんだ?」
いったところで後ろですすり泣く直前のようなヒック、という声が聞こえた。
振り返ってみると渚に少し年齢を重ねたような女性が、目をウルウルさせて立っていた。
「わ、私の・・・・」
「私の?」
「私のパンは、人を殺せるような必殺仕事人みたいなパンだったんですね~~~!!!」
「!!???」
「さっ、早苗!どうしたんだ!?また誰かに泣かされ・・うお!待て早苗!おれは大好きだぞぉ~~~~!!」
「!!??!!?!?!?」
「お、おかあさ~ん!おとうさ~ん!」
「お母さん!?お父さん!?若いなおい!」
「ああ、驚いたか。あれが渚の両親だ。アホ親子だ。見ていて面白いぞ。とくにおっさんがな」
「はあ・・・・そういえば、もう遅いが、岡崎、お前は帰らなくていいのか?」
「大丈夫ですよ。朋也君はうちに住んでますから」
「ふぇ?ここに?」
「ばっ、渚!」
「どうしたんですか?朋也君」
「んなこといきなり言われたら戸惑うだろ!」
「ああ、なるほどね。親公認の中ってことか」
「えっ、それは」
「お前、理解速いのな」
「そりゃまあ、理解しなきゃいけないのでね」
「ん?どういうことだ?」
「気にすんなよ。んじゃ、見るもん見れたし、オレは帰るな」
「気をつけてな~」「お気をつけて」
「おう・・・見るもん?」
そして俺は帰路につくふりをして、前にある公園の茂みの中に身を潜め、ジッとした。
これからここで見張るか・・・・
そうして三十分後、渚の両親が帰ってきて、パン屋も閉まった。
さらに見張りを続けていると、家から二人、誰かが出てきた。
岡崎と渚か?なんか話してるけどよく聞こえないな・・・
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今日も渚は演劇の練習をするらしい。
なんでも、せっかく新入部員が入ったんだから、また何かやりたいんだそうだ。
「でもあいつ、なんかおかしな奴だよな」
「蒔風さんのことですか?」
「ああ、なんだろうな。昨日来たばかりなのに、不思議となじんだっていうか。でもなんかそれでもみんなから外れてるよな」
「ふふっ」
「なんだよ」
「やっぱり朋也君はやさしいですね。昨日来た転校生を気にかけてあげるなんて」
「寝る」
「あー!待ってくださいよ~!」
「・・・嘘だよ。でもな」
「はい、不思議な人です。まるで・・・・」
「まるで?」
「外から来た人・・・・みたい?」
「そりゃ、転校生なんだから外から来たんだろ?」
「う~~~ん??」
そういってうなる渚。仕草がいちいち可愛らしいな。
アホ毛もミョンミョン揺れている。
ブルっ
今日は寒いな、ソロソロ家に戻るか。
練習はしてないけど、このままじゃ体調を崩す。
渚はそもそも身体が頑丈ではないんだし。
「渚。今日はやめて家に入ろう。風邪ひいちまう」
「あ、じゃあ一回だけ」
「はいはい、一回だけな」
そう言って渚は電灯の下に立つ。
そしてあのセリフを言うのだ。俺があいつの練習を、最初に見たときのあのセリフを。
それは、始まりのセリフだった。
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渚が街灯の下に立ち、偶然か、蒔風のいる茂みのほうを向き、言葉を紡いだ。
「もし、よろしければ」
それは・・・・
「あなたを」
とても幻想的な空間を作り出し
「あなたを、お連れしましょうか」
そしてきっとこの言葉からこの物語は始まったのだろうと連想された
「この町の・・・・願いが叶う場所に」
その瞬間、それは始まりを告げる祝詞となる。
オォぅっ・・・・
音もなく。
まるで闇が形を得て人型になったかのように。
「奴」が渚の首をはねようと闇の空から落ちてきたのだ。
「っ!」
ギャンッ!
その凶刃を俺はとっさに天地陰陽のうちの一本を引き抜き、手刀で受けるように弾き飛ばした。
刃がぶつかり、こすれ合った音がして火花が散る。
「は?・・・・・な、渚ぁ!!」
「は、ふぇ?と、朋也く・・・」
「動くな!!!」
ギイイン!ギャンチンキンギャリリリリ、ギャァン!
凄まじい攻防。
刃の交錯だけ、火花が生まれて闇夜を照らす。
へたり込んでしまった渚が何とかして岡崎の方へと向かおうとするが、その頭を押さえつけて地面に伏せさせる。
そして最後の一太刀で、日本刀型である風林火山の「林」を抜き放ち、奴との距離をとった。
「奴」への警戒を続けながらも、渚を抱えて岡崎のほうに連れていく。
「渚!大丈夫か、渚!おい蒔風どういうことだ!なんでお前がここにいる!あいつはなんで渚を!・・くそっ、警察を、その前におっさんを・・・・」
「それはできない」
「なんでだよ!すぐそこだぞ!」
「この公園を包むように結界が張られている。出れない」
「結界?何言ってるんだしっかり説明を・・・・・」
ブォン
その瞬間、蒔風が渚と岡崎を包むように簡単な結界を張った。
これで流れ弾に当たる事はなくなる。
「お、おい!」
「青龍、説明してやってくれ」
「・・・御意に」
結界の中に青龍を潜り込ませ、岡崎と渚を任した蒔風は、「奴」ほうに向かっていった。
「待てよ!おまえ、一体なんなんだよ!」
岡崎は蒔風に問いかける、せめてそれぐらいは答えろ、と
渚はまだ何が起きたのかよく理解できていない。
無理もないだろう。いきなり視界の外の頭上から襲いかかられたのだ。何が何だかわからない。
しかし自分がとんでもない脅威にさらされた事は判るらしく、いまだに体が震えている。
そんな二人に、蒔風は立ち止まって言った。
安心しろよ、大丈夫だと言わんばかりに、自信満々にこう言うのだ。
何者だという、その問いに答えるのだ。
「気にすんなよ。ただの・・・・」
--ただの世界最強だ--
銀白の翼人、始動
to be continued
後書き
・ダンボール
これさえあればどこにでも潜入可能。「!」
・メカニックパン
硬い。金属は入ってないが、鉄分豊富。
※注意・鉄分の効果はこのようなものではありません。
・作中の人物は特殊な訓練を受けています。決して真似しないでください。
・古河パン
渚の実家。読んで字のごとくパン屋さん。
諸事情により、岡崎も住んでいる。
・公園での一人劇
これもまた、一つの始まりの言葉。
渚はこうやって一人、演劇の真似事をしていた。
ついに戦闘に入りました!!
生徒会長や寮母さんは、この時期だったら智代は生徒会の仕事で演劇部には顔出さないだろうし、美佐枝さんは蒔風があんまり寮にいない。
そう言うわけで出番をカットしました。
アリス
「・・・・ファンに殺されますよ」
オレだって・・・出したかったよ・・・・
アリス
「でも古河夫妻は出てましたね」
なんとかね。
話の構成上、岡崎と渚が一番の柱だから、その周辺ぐらいしか描写できないからな。
蒔風は言ってしまえば「奴」の狙う最主要人物か、それに近しい主要人物を守れればそれでいい。
だからその周辺以外には干渉しないんだよ。
ただでさえ異端者で異世界人、しかも世界の分類も違うんだからさ。
アリス
「なるほど」
でもこんな説明で納得してもらえるとは思っていません。だから
アリス
「だから?」
とにかくごめんなさい
さて次回は
アリス
「ついに始まる「奴」との戦い。奴の使う武器、魔導八天!!そして世界の意志が呼応するとき、強き力がもたらされる」
ではまた次回
透き通る、夢を見ていた
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