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ヤオイとノーマル

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5部分:第五章


第五章

 そして次の日。二人は私服に着替えてデートをはじめた。学校の鞄は駅前のコインロッカーに入れて自分の鞄を持っている。
「これでいいのよね」
「そうだよ」
 にこりとした笑みを作って良美に応える。彼女は黄色い膝までのスカートにピンクのシャツ、その上に白いガーディアンを羽織っている。信繁は青いジーンズに黒いブラウスとジャケットである。良美が可愛い格好であるのに対して信繁はワイルドな格好であった。
「じゃあ行こうか」
「うん。それで何処に行くの?」
「こっちだよ」
 何気なくを装って案内する。そこは普段行く同人誌を置いている本屋やゲームショップとは少し離れた場所であった。やたらと派手な看板で城の様な外見の建物が並んでいる。良美はそうした建物を見て目を少し丸くさせていた。
「何処なの、ここって」
「入ればわかるよ」
 信繁はそこが何なのかをあえて彼女に言わなかった。
「入ればね」
「そうなの」
「それで。入る?」
「楽しいところなの?」
 彼女は何も知らずに彼に尋ねた。
「ここって」
「うん、楽しいよ」
 実は彼もこうした場所に来るのははじめてだ。それで内心不安でもあるのだがそれを隠して彼女に答えている。ここでも演技は上手くいっていた。
「それもかなりね」
「そうなの」
 どうやらこの辺りがどういった場所か本当に知らないようである。
「だったら」
「何処がいいの?」
 さりげなく良美に選ばせてきた。
「何処に入るの?」
「私が選んでいいの?」
「うん、どうぞ」
 またにこりとした笑みを作って彼女に答える。どうやら男同士や女同士には興味があっても男女のことやこうしたことには全く以って疎いようである。それは信繁にとってはいいことであった。
 そのままホテルの中まで連れて行く。ホテルのロビーには目もくれず部屋のパネルの前まで来た。そこで部屋を選ぼうとしていると。
「あっ、この部屋」
 横から良美が言ってきた。
「この部屋がいいわ」
「んっ!?ああ、ここ」
 彼女のその言葉に応える。見ればその部屋はピンク色の内装で可愛らしいぬいぐるみがソファーに置かれている。何とも少女趣味の部屋であった。
「ここでいいんだ」
「うん」
 穏やかに笑って信繁に答えてきた。
「他にもいい部屋があるけれどやっぱりここが」
「わかったよ。じゃあここだね」
 良美の言葉に頷いてその部屋のボタンを押す。すぐに鍵が出て来てそれを手に取る。手に取って後はエレベーターに乗る。それからは一直線だった。
 部屋に入るとパネルにあった通りの部屋だった。バスルームがガラスで透けて見えている。ベッドは大きく二人が楽に寝れる。
「さて、と」
 信繁は部屋に入るとすぐに部屋の鍵を閉めた。それからまた良美に声をかけた。
「じゃあはじめる?」
「はじめるって?」
「だからさ。いつも良美ちゃんがね」
「ええ」
 そっと彼女に声をかける。彼女は少しきょとんとした顔で彼に応えた。
「男同士、女同士でしていることを今」
「今?」
「しよう。それだけ」
「それだけって」
 まだ彼女はよくわかっていなかった。
「何を」
「まあ俺もさ」
 彼は照れ臭く笑ってまた彼女に言う。
「よくわからないけれど。けれど」
「うん」
「痛くしないし。それに優しくするから」
 いざとなるとたどたどしくなる。それでも何とか言葉を出すのだった。
「いいよね」
「何かよくわからないけれど」
 信繁の手でべっどに近付けさせられる。その中で彼に応える。
「いいわ」
「それじゃあ。いくよ」
「うん」
 良美を静かにベッドに寝かせる。それからはじめるのであった。
 終わった後で。良美はベッドの上に仰向けに寝ていた。その身体は布団の中に入れ隠している。しかしその中は服一枚着てはいない。
「あのさ」
 その彼女に信繁が声をかけてきた。今シャワーを浴びた後で上は裸だ。下にズボンを穿いているだけである。身体はまだ少し濡れていてバスタオルで身体を拭いている。
「痛くなかったよね」
「うん」
 良美は少し放心した声で彼に答えた。
「何ともなかったわ」
「痛くなかったらいいよ」
 信繁はそれを聞いてまずは安心した。頷いてからソファーに座る。隣にはあのぬいぐるみがある。犬のぬいぐるみであった。
「痛くなかったらね」
「うん。それでね」
「それで?」
「これが男の子と女の子なのね」
「そうだよ。どう?」
「何かまだよくわからないわ」
 そう信繁に答えるのだった。
「何が起こったのか」
「わからないんだ」
「ええ。けれど」
 良美は言う。
「小山田君ってあったかいのね」
「そうかな」
 良美のその言葉には思わず苦笑いを浮かべた。何か照れ臭かった。
「そう言われると恥ずかしいね」
「男同士や女同士も見るのは楽しいけれど」
 良美の言葉は続く。
「実際に男の人と一緒にこうするのもいいものなのね」
「よかったんだ」
「小山田君が優しかったから」
 だからいいと言ってみせる。信繁はそれを聞いて何か自分が包まれるような気がした。
「そう言ってもらえると嬉しいよ。じゃあさ」
「ええ」
「これからも。いいかな」
 おずおずと彼女に問うた。
「俺、良美ちゃんと一緒にいて」
「それは私が言うつもりだったんだけれど」
「そうだったんだ」
「本当にしたのははじめてだけれど」
 それだからこそ強く心に刻まれているのであった。その暖かさまでも。
「これからも。御願いね」
「うん。それじゃあこれからもね」
「ええ。宜しく」
 こうして二人の心が重なった。信繁は話を終えるとソファーから立ち上がった。そうして良美のところに向かい彼女に声をかけるのであった。
 
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