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ヤオイとノーマル

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6部分:第六章


第六章

「またいい?」
「またって?」
「だから。さあ」
 何だかんだと言いながらベッドに入るのだった。それから彼女に近付く。
「また。しよう」
「するの」
「うん。駄目かな」
 良美の上に来たところでまたおずおずとなってしまう。ここまで来てという感じだった。
「また。したら」
「いいわ」
 良美は信繁のその言葉を受けた。
「いいんだ」
「だって。小山田君だから」
 そう答えて自分から信繁を抱き締めるのだった。
「暖かいから」
「有り難う。そう言ってくれたら」
「ヤオイもいいけれど」
 信繁を抱きながらの言葉であった。
「ノーマルもいいのね」
「俺はノーマルなんだ」
「うん。それでそれは小山田君とだけ」
 抱き締めながらにこりと笑ってみせる。
「小山田君だけいてくれればいいわ」
「有り難う」
 礼を言いながら良美を抱き締める。そうしてまたはじめるのだった。
 それから良美の趣味が変わったかというと相変わらずであった。やはり同人誌やゲーム、ドラマに熱中し何かといえば男同士女同士だ。それは相変わらずであった。
「けれどいいんだよ」
 それでも信繁はこう言うのであった。
「だって良美ちゃんはそれだけじゃないんだし」
「それだけじゃないのか」
「ああ。いい娘だよ」
 穏やかで優しい笑みになっていた。
「本当にな」
「何だよ。メロメロになってるんだな」
「彼女をそうさせるんじゃなかったのかよ」
「最初はそのつもりだったさ」
 自分でもそれは認める。
「けれどな。実際に付き合ってみると」
「違うっていうのか」
「全然違うな。何か一緒にいてそれだけで」
「おやおや」
「どうしたんだか」
 クラスメイト達はそんな彼の言葉を聞いて肩をすくめる。信繁のそのメロメロぶりに呆れてしまったのである。だが笑顔での呆れであった。
「そこまで入れ込んで」
「オタクはいいのかよ」
「それもいいんだよ」
 顔が笑っていた。
「あの娘は何でもいいんだよ」
「そうか。じゃあそのまま行きな」
「行くさ。あの娘と一緒にな」
 笑いながらまた言うのであった。信繁は完全に彼女に参っていた。それはホテルに入った時に一層深いものになっていたのである。
「何処にでもな」
「ヤオイもいいのか」
「ノーマルの御前がねえ」
「だからいいんだよ」
 彼はまたそれをいいとしたのだった。
「俺はな。もう何処にだって行けるぜ」
「惚れさせるつもりが惚れさせて」
「それで幸せになるんだな」
「なるもんさ。だってよ」
「だってよ?」
 また彼等は信繁の言葉に顔を向ける。
「本気で好きになっちまったんだからよ」
「あっ、信繁君」
 ここで良美から信繁に声がかかってきた。わざわざ彼のところにまでやって来て声をかけてきたのである。笑顔が明るく可愛いものになっている。
「今日だけれど。アニメショップに付き合ってくれる?」
「ああ、いいよ」
 にこりと笑って良美に答えた。
「じゃあ今日もね」
「うん、御願い」
 首を右に傾げてにこりと微笑む良美であった。
「それで明日は信繁君の言う場所よね」
「その順番だったよね。それじゃあそういうことで」
「宜しく」
 そう言い伝えるのであった。二人はお互いの顔を見てにこやかに笑っている。クラスメイト達はそんな二人の顔を見て呆れた笑みでまた言うのである。
「どうやらヤオイとノーマルでも」
「真っ当な恋愛になるんだな」
「みたいだな」
 そう話す。しかし今の信繁にも良美にもそれは耳には入らなかった。ただ二人だけの世界でにこやかに話をしているだけであった。心地よい世界の中で。


ヤオイとノーマル   完


                2008・1・25
 
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