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ドラゴンクエストビルダーズ:アレフガルドを復活させられてます(新リュカ伝)

作者:あちゃ
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第1章:メルキド編
  11:暗いのは空ではなく、人々の心の中だった。

(メルキド城塞跡地)

朽ちた城塞の屋上にリュカは足場を築きながら到達する。
この城塞が、まだ竜王軍からの攻撃を退けていた頃の長である、ロロニアの言い付けに従って。
そして辺りを見渡し、上がってくる様言い付けた人物を探し見つける。

『よくぞ来たな若きビルダーよ』
「……………」
今は亡き長……ロロニアからの語り掛けに無言で返答するリュカ。
その瞳には怒りと悲しみが入り交じった影を灯してる。

『やはり日記を読んだのだな』
「如何でもいいだろ、そんな事。それより石の守りの造り方を教えろ」
リュカからは好意の欠片も感じられない。

『そう言うな若きビルダーよ……私が貴殿を屋上(ここ)まで呼んだのには訳がある。見てほしいのだ、ここから見える景色を……』
目すら合わせないリュカに景色を見させようとするロロニア。

「……見たぞ。もういいだろ、石の守りの造り方を『ここからの景色は素晴らしかったのだ。今の様に空は淀んでおらず、澄み切った青空が広がっていた』
ロロニアはリュカの言葉を遮って、遠くの空を見詰めながら語り出す。

『竜王は我々から晴れやかな空を奪っていった……だが、そうではないのだ。人々の心が曇ってしまったから、それに応じて空も曇ってしまったのだ! 若きビルダーよ、この世界を救ってほしい。空だけでなく、人々の心からも曇りを取り去ってほしい』

「偉そうな事言うな。お前みたいに何でも命令する輩が、幼い子供の未来を奪っていったんだろう! 自分が生き残る為に、口減らしとして力無き子供を犠牲にしたんだ。本来、大人が守るべきはずなのに……」

『口減らしか……確かにこの城では弱者を犠牲にする行為が行われていた様だが、その口減らしの第一号は私なのだよ、若きビルダー』
「あ゛ぁ、だからなんだコラ? 『だから気分が良いでしょ』とでも言いたいのかコラ?」

『私が命令したのではないと言っているのだ。切っ掛けを与えてしまったのかもしれぬが、私の命令で口減らしが行われたわけではないのだ』
「切っ掛けって何だ!?」

『簡単な事……私が最初に抜け駆けをしたのだよ』
「状況が簡単だったからって、説明も簡単にするな! 解る様に説明しろ馬鹿!」
リュカの機嫌は直らないが、ロロニアの話も気になる様子。

『食料の備蓄が心許なくなり出し、同胞の間で猜疑心が起き始めた頃、危険を察した私は皆に内緒で妻と息子達を城塞から逃がしたのだ』
「……逃がしただけじゃないだろ。それだけだったら、飯食う奴が減って喜ばれる。逃がす際に大量に食料を持って行かせたんだろ」

『その通りだ。察しが良いな若きビルダー』
リュカの鋭い指摘に遠い目で空を見詰め応えるロロニア。
同じ様に曇った空を見詰め、リュカは柔らかい口調でロロニアに告げる。

「その時に逃げた息子は、現代に子孫を残す事が出来たぞ。今、俺が復興しているメルキドの町で暮らしてる」
『そ、そうか! 私がしたことは無駄にならなかったんだな……』

「ああ……無駄にはなってない。無駄にはなってないが、問題もある!」
『問題?』
「お前、字が汚すぎるんだよ!」
『字が汚い? 何故貴殿が私の字が汚いことを知ってるのだ!?』

「お前の子孫が、お前が書き残したメルキド録を大事(だいじ)に所持してるんだ。そして現行のメルキド発展に役立てようと、メルキド録の中から情報を掻き出してるんだが、テメーの字が汚すぎて一向に解読出来んのだ!」

『はははははっ、それは済まぬな。だが、メルキド録をそのまま真似ても、結果はこの有様だ。解読出来ぬ部分があったほうが良かろう』
「笑い事じゃねーっての」
そうは言っても、苦笑いをしてるリュカ。

『解っておる、笑い事ではないことは……』
「……………」
朽ちた城塞の屋上に、ゆったりとした沈黙が流れる。

「俺は元々ルビスに言われて、このアレフガルドを復活している。人間という動物が愚かだというのは知ってるし、反面偉大なことも知っている。お前に言われるまでもなく、俺はアレフガルドを復活させるし、未だ少ないが知り合った人々を幸せにしたいとも思ってる」

『その幸せにしたい知人の中に、私の子孫は含まれてるのか?』
「含まれてるよ……優先順位は一番低いけどね」
共に持つエゴを見せ合い、リュカとロロニアは納得をする。

もう何も言わない。
ただ黙って足下の宝箱を目で指すロロニア。
同じく黙って頷くリュカ。

そしてロロニアは消え去った。
リュカに全てを託したからなのか、子孫が生き長らえてることを知ったからなのかは判らない。
ロロニアが示した宝箱を開け、石の守りの製造方法メモを入手し、リュカが呟いた言葉は……

「あいつ……やっぱ字汚ーな!」



(メルキド)
ケッパーSIDE

ロロンドさんの指示で出かけていたリュカさんが、今し方キメラの翼で空から戻ってきた。
華麗に着地するなりリュカさんは、ロロンドさんを目で探し見つけると、大股で近付いて何かの紙を顔に叩き付ける。

「おら、お目当ての物を持ち帰ったぞ! 今すぐ解読しやがれ」
「うわっぷ!! や、やめんか馬鹿者!」
解読しろと言いながらも、顔面に押し付けてるから、読むことも出来ない。

それでも何とか紙を受け取ると、ロロンドさんは食い入る様に読み、自分の世界へと没頭する。
取り敢えず一仕事を終えたリュカさんは、ロロンドさんの側を離れると水場から出てきたピリンさんの下に歩み寄る。
その嬉しそうな足取りに、彼(リュカさん)が女性好きである事を窺える。

そしてピリンさんと楽しそうに会話するリュカさん。
そこに現れたのは、孤独を愛するロッシさんだ。
石の作業部屋から出てくると、リュカさんを見つけ近付いた。

「リュカ……帰ってたのか。丁度良い、頼みがあるんだ」
「はぁ? 今忙しいんだよ、判らねーのか?」
判らない。ピリンさんと無駄話してる様にしか見えないから、忙しいとは判らない。

「お喋りしてるだけだろ!」
「そうだよ。お喋りで忙しいんだよ!」
私の知らない“忙しさ”を、今発見した。この町は私にとって色々な発見に満ち溢れている。

「それは忙しいとは言わねーんだよ! そんな事より……俺も最近、物作りの楽しさが解ってきたんだ。でもあの作業部屋をもう少し何とか出来ねーか?」
「何とかって何だよ?」
何だろう?

「だからさぁ……もっと本格的なって言うのかなぁ? そんな感じ」
「ふざけんなよ、何だその漠然とした頼み事は? 人に物を頼むときは、もっと具体的に言え!」
リュカさんは言いたいことをストレートに言うから凄い。

ロッシさんは『俺は何時でも逃げ出せる構えで居る。だから誰とも馴れ合わない』と広言してる人。
そんな人が町造りにやる気を出したのだから、そのやる気を削がない様に気を遣うのが普通の人だと思う。
でもリュカさんは気にしない。大物なんだと思うけど、もしかしたら馬鹿なのかもしれない。

「ねぇリュカ。ロッシのお願い何とか出来ないかなぁ?」
「う~ん……ピリンが言うなら何とかしちゃうぅ!」
やっぱり馬鹿なのかもしれないな。女性の頼み事になれば、コロッと態度を変え、それを臆面もなく見せるなんて……ピリンさんのお願いにも一片の具体性も存在しない。

何とかすると言ったリュカさんは、直ぐに行動に移す。
石の作業部屋に入ると、中からは何かを作成する音が聞こえてくる。
あの漠然とした依頼で、何を如何するのかは楽しみだ。

ロッシさんも楽しみなのだろう。
リュカさんが作業部屋へ入った後、その場に残されたピリンさんと共に楽しそうに会話をしている。
彼もあんな笑顔が出来るんだなぁ……

ケッパーSIDE END



 
 

 
後書き
重い話を書くのが苦手。 
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