ソードアートオンライン~戦場で舞う道化師~
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アインクラッド編
第七話本質
前書き
ナギは強いデス…
体術を習得する為に来たネズハとナギ、挑発に乗って後悔してるアスナ、体術スキルを既に持っている私ことサイガ。
このカオスなメンバー(一人を除く)で、岩割に勤しんでいた。
「クッソ、ちょこまかと!」
『ん〜、遅いのう。こっちじゃ、こっちじゃ、木偶』
「この野郎!ぜってーポリゴン片に変えてやる!」
一人を除く、とはこの人サイガのことである。
「もういい加減諦めなよ〜。間に合わないよ?」
「そうよ、早くしないとキリト君にLA取られちゃうもん。後、早く帰りたいし」
このクエストが始まり半日が経過しようとしていた。サイガはどうにか仙人を捕まえようとしていたが、ぬるりぬるりと逃げられてしまう。
「私利私欲マックスじゃねえかッ!?」
岩から岩へと飛び移ろうとしていたサイガは足を滑らせ頭から落っこちた。落ちた先はナギの岩の近く。
「いてて…足を滑らすとは…不覚…」
「だ、大丈夫?」
「…大丈夫…やっぱり陽動が必要だな」
「もう、間に合わなくても知らないよ?」
「まあ、この岩位なら一日で……え?」
「…?」
ふと全員の岩を見ると、一個もヒビすら入っていなかった。
「…お前ら半日ナニシテタノ?」
「なにって、ずっと叩いてたじゃない」
「嘘だろおい!こんなんじゃ三日かかっても終わらないぞ!」
「そんなの無理だよ!私はサイガ君と違って普通の人間なの!」
「なんだと!俺が普通じゃないってのか!」
「そうでしょ!半日もNPCを追いかけまわしてる人は普通じゃないよ!」
「…ぐぬぬ……」
ナギに正論を言われサイガは黙りこくってしまった。
「あ…ごめんね、言い過ぎちゃって」
「………」
ナギの言葉に反応がなく、下を向いている。
「珍しくサイガ君が反省してる」
「あのサイガさんが…」
謝るためにナギは覗き込んだ。
「本当にごめんね、サイガk「これは罠しかない!」ヒャア!」
もちろんサイガは反省なんかする事は無く、次の作戦を考えていたのである。
「…なんで私心配してたんだろう…」
「そんなことだと思ったわ」
「やっぱりサイガさんは、サイガさんですね」
「うるせ」
そんなんこんなで日が暮れ、辺りは岩の間に置かれる松明だけが明るく光っている。
アスナとナギは岩の上に寝袋を敷き寝る準備を、ネズハは寝る間も惜しんで岩を叩いていた。
「全く…屋根のないとこで寝るなんて久しぶりだわ」
「私は初めてかな〜」
「星でも見えれば良かったのだけれど」
「すみません、僕のせいでキリトさんと…」
「…なんでそこでキリト君が出てくるのかわからないわ」
「アスナってキリト君の彼女?」
「もう!違うから!」
「ねえねえ、サイガ君」
「………」
「あれ?普段なら真っ先に食いついて来そうな人が静かね」
サイガはというと、罠を作りながら寝ていた。
「…寝てますね」
「はあ、いつになったらやる気を出すのかしら」
「サイガ君も攻略組なの?」
「…まあ、そうね」
かなり変わっているが、サイガの腕は確かなものである。
「通りであんなに強いと思った」
「どんな感じだった?」
「トレンブリング・オックス三体を一瞬だったよ!凄かったな〜」
ナギは目を輝かせながら話していた。
「そう言えばなんであの道にいたのかな?」
「あ〜、最初は私たちと一緒に居たんだよ。そしたら突然『ピンクの霞が…』とか言い始めて森の中に入ってっちゃったの」
「…やっぱり凄い人だね…いろいろ…」
アスナはボソッと一言。
「運命の赤い糸だったりして」
「ちょ、ちょっとアスナ!?何言い出すの!?」
「さっきのお返しだよ〜」
「も、もう!」
アスナの一言でナギは顔を真っ赤にしてしまった。
ナギはサイガに好感を抱いているが、それは「好意」ではなく強い「憧れ」である
「そう言えば僕サイガさんが戦っている所見た事ないですね」
「あれ?そういえばそうね。ボス戦ならあるけど、私もないわ」
知らないのも無理はない。何故ならキリトとアスナが全て倒してしまうからだ。サイガ自身のレベリングはソロで行っている為アスナは知らないのだった。
「だって三人で攻略してたんでしょ?」
「それはな、教えてやろうか、ナギ」
「サイガ君!?起きてたの?てか、どこから聞いてたの!?」
アスナにからかわれた言葉を聞かれたのではないかと再び顔を赤くしてサイガに詰め寄り問いただした。
「うおッ!ど、どうしたナギ、顔が赤いぞ!落ち着け!」
「どこから聞いてたの!」
有無を言わせないその迫力にサイガは一瞬で従った。
「た、戦ってるのがどうちゃらこうちゃらってとこから…」
ナギはホッと安堵するとサイガを放した。
「…ふう、さて、俺の戦っている姿を見た事がない理由、それはな…」
「それは…?」
「キリトとアスナが一種の変態だからだ」
「…え…?」
謎のカミングアウトにナギはついていけずに、固まっていた。
「ど、どこがよっ!!!」
「だってそうだろ、敵が出てくるたびに目を輝かせて飛び込んでくし」
「い、いやそれは…そ、そうよ、サイガ君が代わってって言わないからよ」
「キリトに代わってと言うと『いや…まだ…もうちょっと』って言うし、アスナに代わってって言うと、
『えー、まだいいでしょ?』、この無限ループだ。二人とも自覚がないんだからな」
「そ…それは…」
そんなこんなで夜は更けていきサイガのみが起きていた。
(さて罠をどうするかな……)
他愛のない事を考えていると、サイガは突然吹き荒れるような殺意を背後から感じ、反射のごとく横に飛んだ。
その刹那、サイガの首があった位置をダガーが振り抜いた。
「…おっと、一応聞いとくけど間違ってそのオモチャを振ったのかな?」
暗闇に向かって言葉を発する。
「Wow…今のを避けるか…殺すつもりで振ったんだがな」
「なるほど、イカれ具合は良く分かった」
「HaHa、俺の名は《Poh》だ、殺す予定だったがお前、俺と組まないか?」
「あいにく、人間をやめるつもりはないんでね」
暗がりから出てきたのは絶妙なイントネーションで喋る“黒ポンチョ”の男。その言葉にはどこか心を許してしまうような
力があった。
(…こいつ…恐ろしく強い………更に人を殺すのに躊躇がないと来ている……!)
「そんなに恐ろしい顔で見るなよ、殺気がだだ漏れだぜ。攻略組《サイガ》」
「俺って有名人か」
「ターゲットは把握しておかないとな」
「大人しく帰るつもりはないと?」
「Ofcouse 皆殺しだ」
そう言うとPohは殺意全開でサイガに斬りかかってきた。
「まあそうなるよな」
Pohは即座に距離を詰めると首ではなく右手を落としにかかった。理由は、ウインドウを出させない為に。
サイガは、右腕を切り落とさんとばかりに迫って来る刃を下からはね上げ、ダガーは宙を舞った。
直後に刃を切り返し、獲物を手放した右腕を切断した。
「…Wow…今日は驚きが絶えないな」
「そう易々と殺される気はない」
もちろんダガーで先制攻撃なんかされてしまったら両手剣は間に合うはずもない。Pohは素手での対処を予想していた。
が、帰ってきた結果は【後出しの両手剣ソードスキルでダガーを弾かれ腕まで落とされる】という現実。
「どうやら何かしらのタネがあるみたいだな。正攻法では勝てないようだ、『正攻法』ではな」
Pohのニタニタした笑みからサイガにはゆうに予想がついた。
生まれた感情は怒り。
サイガは怒りの中に冷静を保ち警告した。
「そこの三人に手を出すなら
……ログアウトしてもらうぞ」
サイガの無意識のうちに出たPohの殺気を呑み込む程に溢れ出たサイガのドス黒い殺気、サイガとPohの小競り合いの中
「Beautiful…いいぜェサイガァ!」
この空気の中アスナとナギは目を覚ました。
「…ッ!な…なに…これ…!」
「…心臓を……掴まれているような…!」
(……目を覚ましたか……!?)
サイガが二人に気を取られた一瞬、Pohはその時を逃さずアスナとナギに近寄りダガーを振り上げた。
「……チッ……!」
「It's show time」
流暢な発音と共に、二人の命を刈り取ろうとする。
AGIの上限を超えた速さでサイガはPohとの距離を詰めていき、二人に迫る凶器を再び跳ね上げた。
状態を仰け反らせたPohの顔は耳まで裂けているような嗤い。
ここまでPohの計算のうちだったのだ。
「殺し合いはな…いかに冷静でいられるかなんだよ、サイガ」
Pohの左腕が光ると、体術スキル《エンブレイザー》が発動しサイガの左目を貫いた。
ガクリと膝をつくサイガに悪魔の誘いが来る。
「今からでも遅くねぇ、俺と組めサイガ」
「…………」
サイガの反応はない。
「なんだ、放心状態か?期待外れだ」
Pohは再び《エンブレイザー》を発動し、サイガの心臓を貫いた
…………筈だった。
「ッ!?……なぜだ!?」
確実に貫いた、しかし目の前のこいつは飛散するどころか体力が減っていない。Pohがかつて無い程に動揺している中、
サイガの一言が聞こえた。
「…………眼…………」
この言葉を聞いたPohは理解した。
自分の片目がなんかしらの方法によって目の前のサイガに奪われた事。
そして、相手の攻撃と自分の部位破損に気付かなかった事。
「クックック、面白いモノを見た。今は引いてやる」
「……気前がいいな」
「いずれ殺してやるよ、サイガ」
ハハハ、と笑う、Pohを見ていると、サイガはまるでこう思えてしまうのだ。
「お前、まるで棺桶が笑っている様だぜ」
「cool、面白い表現じゃないか」
そう言い残しPohは闇へ紛れた。
(クソッ、あいつ…ダメだ…今から…刺し違えて…でも…いく…し…か…)
Pohが消えた森に足を進めていくサイガ、しかし緊張の糸が切れサイガは足から崩れ落ちた。
濃厚な殺気が晴れていき、ナギとアスナは状況を理解するために辺りを見回した。
黒ポンチョの男が森の中に消え、その後一人が倒れた。
「「サイガ君!!!」」
サイガは目を覚ますと、一瞬にしてさっきの光景が脳裏に浮かんだ。
「ナギ…アス…ナ」
二人の泣きそうな顔が見える。どうやら倒れている間にPohは来なかったようだ。
ああ、またこれか、身体が重い、なんて考えていると
「サイガ君!大丈夫!?ずっと起きなくて本当に心配だったんだからね!!」
「ごめんな。あいつは…もう来て…無いのか?」
「うん…もう居ないみたい」
ようやく落ち着きを取り戻し、サイガはいろんな意味でマズイ状況にあると理解した。
「あのさ、ナギ…アスナが…その、ニヤニヤしてるから…そろそろ離してもいいよ」
「…?…………ッ!?」
ナギは心配のあまりサイガに抱きついていた。本人にはその自覚がなくサイガに言われてやっと気がつき、だんだんと
顔を赤くしていった。
「あッ…えと……その……ぅぅ…」
「いや、済まなかった、心配かけて。もう大丈夫だ」
「ナギってば“どうしよう、どうしよう”ってすっごく心配してたんだよ」
「も、もうアスナ、言わないでよ〜」
これ以上にないほど顔を朱色に染め上げたナギ。
「それにしてもさっきの黒ポンチョの男は何者だったの?」
「あ、そうだった。あいつは俺たちを皆殺しようとしていたのさ」
さらっと恐ろしい一言にナギとアスナは顔を強張らせた。連絡しとくか、と言ってサイガはメッセージをキリトに送っている。
「おーい、そんなに怖がんなよ、俺がいればあいつは多分来ない」
「なんの…目的で…来たの…?」
ナギは顔をいっそう強張らせた。いくらデスゲームだからと言ってPKをするプレイヤーがいないわけでは無い、
そんな事は分かっている
が、二層の段階でそんなプレイヤーに遭遇し、命を狙われた。
一か月ちょっと前までは平穏な生活を送っていた女の子がこの恐怖に耐えられる筈が無いのだ。
「落ち着けナギ、確かにあいつはのPSは攻略組を凌駕している、俺とキリト以外は文字どうり瞬殺だろう、
戦うとしたらな。逃げるだけなら攻略組にも分がある奴は何人かいる、特にアスナ、ナギ、二人の速さならまず間違いなく逃げられる。だから、大丈夫だ」
「…で…でも………」
「んじゃ、こうしよう」
サイガはフレンド申請と、パーティー申請をナギに出した。
「これで俺はナギのHPと、居場所が常に見られる」
「…ありがと、サイガ君」
「それに、攻略組に入るんだったら俺と組んでてそんはないだろ?」
「…………へ?…」
「?」
「攻略組?」
「そうだよ」
「!!?」
「それは無理よサイガ君!ここの道にくる時点でやられかけていたじゃない!」
「そっか、アスナは見てなかったな。俺が見た時のナギは多分アスナと同じくらいの速さだった」
それに何かあったら俺のサポートでなんとかなるだろうし、と付け足した。
「アスナ、トレンブリング・オックス何体まで同時に相手にできる?」
「…フェンサーなら1、2体が限度よ」
「俺が見た時、ナギは3対相手にしていた、あの狭い道でだ。しかも、その前にも何体か相手にしているようだったし」
「…ナギ、本当?」
会話について行けていないらしくずっと上の空だったが、アスナの問いかけに我を取り戻しこくり、と頷いた。
「で…でも、アスナの言うとうり…私には無理だよ…」
目を潤ませながらナギは言う。
「あーあ、アスナが泣かせたー」
「ちょ、ちょっと!人聞きの悪いこと言わないでよ」
「じゃあ、連れてっていいでしょ?」
「じゃあって…………もう良いわよ。その代わり、絶対ナギを守りなさいよ!」
サイガのしつこさにとうとうアスナが折れた。
「…む…無理だよ…」
「ん〜、ナギみたいに強い奴はSAO攻略には必要なんだよ」
「私…」
「取り敢えず俺が全力で守れば死ぬことはないから」
何はともあれこの岩割ってからだけどな、と言ってサイガはニシシと笑った。
ナギは自分を命がけで助けてくれた事や、自分の恐怖を取り払ってくれた事などで十分に頼れると分かるのだが、
サイガの笑顔に妙に惹かれた。そして、笑顔を返した。
「うん、やってみる」
「はあ、会って一日の女の子を攻略組に誘うとは思わなかったわ」
「俺は友だちを作るのが得意なんだよ」
「はいはい……?」
アスナは明らかにおかしな点を一つ、夜が明けていく中
「サイガ君!なんで武器を取られていないの!?」
「え?」
「あ」
なぜかサイガのみ武器を取り上げられていないという不思議な事態が起こっていた。
後書き
Pohと戦う筈はなかったのに…
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