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黒を纏う聖堂騎士団員

作者:櫻木可憐
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31.優しさに包まれて

25時17分、マイエラ修道院から強烈な光が放たれました。
この時間が正確に記録されているのは、これが歴史に残る大事件であると記しています。
あの宗教を潰して戻ってきたエイトたちが目撃したものでした。

「・・・館の方からだ!!」

「マジかよ!!なんで!?」

「オディロ院長が生きていた頃のままにしろってマルチェロが指示してただろ?
あの館なら魔法陣が一つ描ける広さがある!!」

確かに。
マイエラ修道院の館で団員が掃除していると言っていましたね。
ベッドと机を退かせば確かに広さは十二分ですね。

「兄貴!!」

「マルチェロさん!?」

「イヤミは無事なの?」

「あれに会うと体がかゆくなるでがす!!」

ヤンガスだけ台詞間違いですが。
それでも心配しているんです。

描かれた魔法陣が正しいものであるか、それを示すのはその場の光景でした。
床に倒れ込んだマルチェロを見たエイトは真っ青になりました。
人を生き返らせるなど本来は出来るわけないがありません。
世の中は等価交換が成り立ちます。
それに人、一人に見合うものなんてないのです。
だからマルチェロが死んだとエイトは判断しました。

「兄貴、生きてるのか」

マルチェロにばかり気をとられていたククールは、魔法陣の真ん中にいたクロノスにつまずきました。
顔面から打ったククールの音に、マルチェロは目を覚ましました。
そして転けたククールを睨みました。
一応生きていたようです。

「まさか・・・魔法陣を完成させたの?
でも一人を生き返らせるなんて・・・・・・」

ゼシカは恐る恐るマルチェロに尋ねました。
頭を打って倒れたらしいマルチェロは、額に手を当てながら起き上がりました。
いつものイヤミを言うマルチェロの覇気はありませんでした。
疲れきったと言うよりやつれたに近いマルチェロを見る四人は、クロノスに視線を移しました。
ゼシカがクロノスの口に手を当てます。

「息・・・している」

「マジでげすか、息が!?」

「おいおい。人が生き返えるのか!?
魔法陣一つで?あり得ねぇぜ。」

「で、でもマルチェロさん。
その子は・・・・・・」

「そうだ。エイト君が言う通り。
彼女がクロノスである保証はどこにもない。」

台詞を聞いた三人は真っ青な顔をマルチェロからクロノスに向けました。
深呼吸をして目を開けたクロノスが視界に入りました。

マルチェロが何を犠牲にしてクロノスの魂を身体に繋ぎ止めたとして、それが本当にクロノスの魂か知るすべは正確にはないのです。
そして同じ魂であるとしても身体を拒否する可能性もあるのですよ。

「クロノス・・・・・・だよな?」

「なんだいきなり。私の顔がわからないのか?
ククール、白髪(はくはつ)に白髪(しらが)が混じり老けたな。」

「こいつ絶対クロノスだ!クロノスに決まってる!!」

起きて早くから白髪(しらが)扱いする女の子がいるでしょうか。
マルチェロには額が広くなったと言いそうですね。

クロノスがまだ起き上がりもしていない段階で、四人が纏めて抱きつきに入りました。
四人の重さ(特にヤンガス)に潰されたクロノスを眺めるマルチェロが、優しい笑みを浮かべたことに誰も気づきませんでした。

「お前ら重いぞ!?
ぎゃあ、ヤンガス泣くな!!
ゼシカは胸が当たるんだよ・・・」

「勝手に死なないでよね馬鹿」

「心配していたんだ。僕らの仲間だからね」










これがオレらの物語。
マイエラ修道院で始まり、マイエラ修道院で終わる。
でもオレらの物語はまだ終わらない。
それはまた別の物語・・・・・・ 
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