魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~
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Epico?奇跡の結成/最強の対魔竜部隊~Dragon SlayerS~
前書き
Hahaha ! まるまる1話が追加しちまったぜい!
†††Sideなのは†††
1年ってあっという間。そう改めて実感する。まぁ私は半分近くを入院していたから余計にそう感じるんだろうけど。修学旅行、シャルちゃんの誕生日パーティとあった2学期も終わって今は冬休み真っ只中。
仕事については未回収の最後の神器も回収されたし、私はSランクの魔導師になったし、フェイトちゃんは執務官に、アリシアちゃんは執務官補佐に、ルシル君は新たに監査官になることが出来た。もちろんみんなで盛大にお祝いしたよ。楽しかったなぁ~。
「せっかくコタツでぬくぬくしていたのに、誰よ違法渡航なんかして来る奴って!」
私たちチーム海鳴の小学生組はアリサちゃんのお家に集まって、みんなで冬休みの宿題をやろうって決めていた。そしてコタツ3台を連結させて、ゆったりぬくぬくしながら宿題を片付けていた。そんな時・・・
――緊急事態だ。臨海公園付近の海上に転移反応が発生した。違法渡航者である可能性が大きい――
クロノ君からそんな緊急連絡が入った。私たちはその対処のために宿題を中断して、現場である海鳴市海上にまでやって来ていた。シグナムさん達が居ないけど、クロノ君やアルフも合流したことでその戦力は本局武装隊の一個部隊以上になってるから、きっとどんな事でも対応できるはず。
「来るぞ! 警戒!」
クロノ君からの指示に私たちはグッとデバイスを握り直して、転移反応が強くなる空間を注視する。そして、カッと眩い光が発せられて・・・違法渡航者たちが私たちの目の前に現れた。私は目を疑った。いつかは逢える。そう思っていながらもどこか諦めていたのに・・・。
「シュテル・・・」
私の姿に似た女の子がそこに居た。しかもシュテルだけじゃない。
「王さま・・・!」
「うそ、フラム・・・!」
「「レヴィ!」」「うげぇ」
「アイルちゃん!」
はやてちゃんにそっくりなディアーチェ、アリサちゃんににそっくりなフラム、フェイトちゃんとアリシアちゃんにそっくりなレヴィ、すずかちゃんにそっくりなアイル。それに・・・
「お久しぶりです、みなさん!」
「はあ~い♪ お久しぶり~♪」
「お久しぶりです!」
アミタさんとキリエさん、そしてユーリも一緒だった。私は思わず「シュテル!」に抱き付いた。夢でも幻でもない、本当にシュテルが今目の前に居るんだ。はやてちゃんも「久しぶりや~!」ディアーチェに抱き付こうとするんだけど「ええい、うっとおしい!」思いきり拒絶されちゃってた。
「レヴィ、久しぶり!」
「会いたかったよ~♪」
「オリジナル、姉っ子! 久しぶりだな! 来てやったぞ♪」
フェイトちゃんとアリシアちゃんは本当に嬉しそうにレヴィと再会を喜び合うんだけど、「あたしゃ会いたくなかったけどね」アルフは若干不機嫌。対するレヴィも「今度はボクが泣かしてやるからなアホ犬!」敵意剥き出し。フェイトちゃんとアリシアちゃんが「まあまあ」って宥めに入った。
「アイルちゃん。久しぶりだね。元気そうで良かった」
「ええ。お久しぶりですわね、すずか。あなたも元気そうでなによりですわ」
すずかちゃんは両手でアイルの右手を取って、アイルは照れくささを紛らわそうとしてるのかそっぽを向いて、左手で後ろ髪を払ってる。
「フラム! 全然会いに来なかったじゃないのよ、このぉ~!」
「痛いでありますよ、アリサ~!」
アリサちゃんはフラムの肩に左腕を回して、右拳でフラムの頭にグリグリ攻撃。でもなんだかフラムも楽しそうに笑ってる。
「アミタ、久しぶり!」
「はい! お久しぶりです、イリスさん!」
「久しぶり。ユーリも元気そうだな。良かったよ」
「はいっ。元気ですー!」
「執務官は元気してた~?」
「あ、ああ。僕は元気だったが・・・」
アミタさんとキリエさんとユーリは、シャルちゃんとクロノ君とルシル君の3人と笑顔で挨拶をし合ってる。キリエさんのスキンシップにクロノ君はちょっとたじたじで、ユーリはルシル君に頭を撫でられてとっても気持ち良さそうに目を細めてる。
「お久しぶりです、なのは。・・・一目見て、あなたがあの日より強くなっているのが判りました。今から再戦するのが楽しみです」
「にゃはは。シュテルも当然強くなっているんだよね?」
「はい。エルトリアの危険生物は恐ろしく強く、我々マテリアルが総出で掛からないと勝てないものも居ましたから、かなり鍛えられました。なのははどうです?」
「私もすごく強い人たちと戦ってきたよ。負けたこともあって、半年以上入院することもあったけど」
にゃはは、って笑ってそう答えると、「あなたが負けた・・・!?」シュテルは明らかな驚きを見せた。そんなに驚くことなのかなぁ。シュテルから「それはいつの話ですか?」って聞かれたから、「1年ちょっと前に撃墜されて、半年くらい前まで入院してた」って答えた。
「最近なのですね。今はもう・・・?」
「うんっ。完全復活したし、魔導師Sランクも取得したよ。シュテルとお別れしたあの日に比べれば強くなってる・・・って思う」
「いえ。強くなっていますよ。それは間違いないと思います」
「にゃはは。ありがとう♪」
シュテルが柔らかな微笑みを見せてくれた。そして私たちはこんな寒空の下で長々とお話しするより、アリサちゃんのお家に集まってお話ししようってことになったから、「じゃあ、あたし達について来て」また空を翔ける。
「そう言えば、紅の鉄騎たちは居ないのでありますな」
「あー、ヴィータ達は仕事なんよ。夜には帰ってくるからな、フラム。それで・・・アミタさん達ってどんくらいまでこっちに居れるん?」
「あ、今日・明日・明後日は居ようかなって思ってます」
3日しか居られないんだ。ちょっと・・・っていうより結構寂しい。だからその分、濃い3日間にしないと。いっぱいお話しして、いっぱい模擬戦して。また何年も会えなくなったとしても寂しくないように。
「それでなんだけど~。誰かわたし達を泊めてくれないかしら~?」
「それなら家に来なさいよ。部屋も空いてるし」
「ありがとうございますアリサさん! いやぁ、助かりました。こっちの世界のお金も持ってませんし。もしみなさんに断られていたら野宿する羽目に・・・」
アミタさん達がアリサちゃんのお家に宿泊することが決定。だったら・・・。
「アリサちゃん! あのね、私・・・――」
「言わなくても判るわよ、なのは。あんた達も泊まりに来なさい。どれだけ人数が増えようが泊まれるくらいに広いんだから」
そういうわけで、私たちチーム海鳴もアリサちゃんのお家に泊まることになった。朝・昼・夜とシュテル達と一緒に居られるんだ。でも、管理局のお仕事もあるから最終日はゆっくり出来ない。せめてお見送りが出来ればいいんだけど。本局から帰ってくるまでシュテル達、帰らないでいてくれると良いな。
「しかし、君たちはどうして再び海鳴市へ? また変な事件を起こそうとしているわけじゃないよな?」
「クロノさん。さすがにそれはあんまりですよ」
「そうよ~。忙しくなる前に友達に挨拶しに来ただけよ~、執務官」
「す、すまない。気を悪くしたのなら許してくれ」
アミタさんとキリエさんに挟まれるような形のクロノ君はさっきからたじたじしっぱなしで、普段は絶対に見せないようなその様子がちょっと面白い。
「それで王さま。忙しなる前に、ってどうゆうことなん?」
「・・・・」
「無視せんで~!」
「のわっ? ええい、抱き付くな、鬱陶しい!」
「王さまが話してくれるまで離さへんよ~♪」
「わひゃっ? ど、どこを触っておる馬鹿者!」
「なっ! うそや・・・、そんな・・・! 王さま、わたしをモデルにしてるはずやのに・・・、わたしのより大きい・・・!」
「ひゃあん!? たわけっ! 変なところを揉むでない!」
――アンスラシスドルヒ――
最近頻発するようになったはやてちゃんからの強力なスキンシップがディアーチェにも襲いかかって、顔を真っ赤にしたディアーチェの周囲にはブラッディダガーと同じ射撃魔法が12発と展開された。
「わー、ダメですよディアーチェ!」
「止めるでないユーリ! 此奴には一度灸を据えてやらねばならぬのだ!」
ドタバタなはやてちゃんとディアーチェとユーリ。すると今度は「へぇ。オリジナルより成長が早いってことかしら」アリサちゃんがわきわきと両手を厭らしく動かし始めて、フラムへと接近を試みようとするも、「来るなでありますよ~!(怯)」フラムが必死に逃げる。
「まったく。何をやっているのですか、あなた達は? 胸の大きさなど瑣末な問だ――きゃん!? す、すずか!?」
「えっと、やらないといけない雰囲気だったからつい・・・」
「そんな雰囲気など気のせいですわよ! ちょっ、お離しなさい!」
すずかちゃんとアイルも始めちゃったし、「きゃあ!?」フェイトちゃんと、「わわ!」アリシアちゃんは、「わっはっはー!」レヴィちゃんに襲われちゃってるし。
「執務官。わたしの・・・触ってみる?」
「んなっ!? 触るわけないだろう!」
「あはは♪ 顔真っ赤にしちゃって可愛い♪ 身長もぐんっと高くなったし、声変わりもして格好良くなったよね❤」
「こら、キリエ! クロノさんの純情を玩んではいけません! 本気にしちゃったらどうするんですか!?」
「ならない!」
キリエさんはクロノ君で遊ぶし、ユーリは顔を真っ赤にして両手で顔を覆い隠してるし、ルシル君は「男が2人も居る中で何やっているんだ」思いっきり呆れてた。そして私は「にゃはは・・・」シュテルを見ると、シュテルが「っ!」って少し身構えた。
「やめましょう、なのは。これは不毛な争いです」
「そ、そうだよね、うん」
「はい」
シュテルは真面目で良かった。そう安堵した瞬間「にゃっ!?」思いっきり触られた。両腕で胸を隠しながらバッとシュテルから距離を取ると、「なるほど」シュテルは自分の胸に手を置いて、「なのは。ちゃんと成長していますね」そう言った。喜んでいいのか、だまし討ちみたいなことをされたことに怒っていいのか、何か複雑な気分。
「シュテル~~~!」
「なのはも触ってみますか?」
シュテルはそう言って胸を張った。そんな堂々とされるとこっちの方が恥ずかしくなっちゃう。とりあえず「それじゃあ・・・失礼します」シュテルの胸に手を伸ばしたら、「なんて嘘です」シュテルはひょいっと躱した。
「あ!」
「ふふ。なのはは素直ですね。再戦前の前哨戦です」
「負けないよ!」
シュテルが高機動で空を翔け回り始めたから、私も全力で追いかけることに。結局その追いかけっこはアリサちゃんのお家に到着するまで続いた。クロノ君とは途中でお別れして(キリエさんからイジられないようにするためみたい)、アリサちゃんの部屋に移動。そして「わっ、コレなんですか!?」コタツに驚くアミタさんや、「あー、これ一度入ったら出たくなくなるわ~♪」その機能にホクホクなキリエさんを微笑ましく眺めながら・・・
「それで? 忙しいという理由で来てくれたようだけど」
温かなココアをみんなで飲みつつ、チーム海鳴を代表してルシル君が改めて訊ねた。
「あ、はい。エルトリアの再生は、王様たちのおかげで徐々に成果を出しています。完全に再生するまでは100年単位になりそうですけど、それでも緑も戻りつつあります」
「それで、これから再生活動の第二段階に移るのね。けどその第二段階に移ったら早々休みが取れるような余裕が生まれないのよん。だったらその前に、チーム海鳴に改めてお礼をしようってことになったの」
それが再び海鳴市に来た理由だった。エルトリアを死に至らそうとしていた死蝕現象をどうにかするために、遠い遠い異世界からやって来たアミタさんとキリエさん。そしてアミタさん達に協力するために、エルトリアへと付いて行ったシュテル達マテリアルとユーリ。お別れしてからずっとエルトリアがどうなったのか気になっていたけど、ちゃんと再生できているようで本当に良かった。
「そうだ。アミタ、キリエ。エフェルは役に立ってくれただろうか? 一応エフェルとのリンクは繋がっているけど、そんなの意味ないくらいにそちらの情報が入って来ないんだ」
「はいっ! もうルシリオンさんにはどんなに頭を下げても足りないくらいに感謝しています!」
「そう! そのお礼がしたかったのよ! エフェルのおかげで博士の病も完治したの! 君のおかげで、博士に再生し始めたエルトリアを見せることが出来たわ!」
ルシル君がグランツ博士の病気をどうにかするために、死んでいなければどんな病気でも怪我でも治せるっていうコード・エイルのみ使えるように設定した使い魔を、別れ際にユーリの髪の毛に引っ付けたってことはすでに聞いてた。
ルシル君の使い魔は見事にお仕事したみたい。アミタさんとキリエさんの2人からぎゅ~って抱きしめられるルシル君は「役に立って良かったよ」って、2人に抱きしめられてること以上に、グランツ博士を救えたってことに喜んでるみたいだった。
「あの、ずっと気になってたんですけど、ルシリオン。その左目はどうしたんですか? その、間違っていたらすみませんけど・・・左目、見えてませんよね?」
ルシル君が付けてるモノクルを見てユーリがそう訊いたら、「それは気になってました」ルシル君を解放したアミタさんも同意して、「え、そうなの? ファッションじゃなかったのね~」キリエさんが続いた。
「ああ。全く見えないんだ。ある犯罪者に敗れた時にやられたようでね。左目の視力を奪われ、創世結界が使用できないようになってしまったんだ」
ルシル君が負けた。その一言でアミタさん達が絶句した。それに「創世結界とは、複製した魔法や武器を蓄えておく精神世界でしたね。それはあなたの戦力において大きな損失では?」シュテルがそう言うと、「まったくだよ」ルシル君が肩を竦めた。
「それは治りますの?」
「その犯罪者を撃破すればな」
「蒼ハネを倒せるだけの強さかぁ。ボクも戦ってみたいな~」
「かなりの強敵であるようですからな。腕が鳴るであります」
ルシル君に呪いを掛けたレーゼフェアさんと戦ってみたいって言うレヴィとフラムだけど、正直勝てないと思う。はやてちゃんが「勝てるんはユーリだけやないかな~」って呟いた。私たちレーゼフェアさんや“エグリゴリ”を知るチーム海鳴みんなは「うん」頷いて同意を示した。たとえシュテル達が神秘を持っていたとしても、たぶん・・・無理だ。
「私ですか? ディアーチェ達が束になってもダメなんですか?」
「あー、たぶんダメ。ユーリを解放した時みたくディアーチェと四騎士が融合してる形態ならいい勝負かもだけど」
「あんな真似、二度とするものか! しかし気に食わんな。我々が束になっても遅れをとるような者が居るなぞ。貴様らの過大評価ではないのか?」
シャルちゃんが言うように、あの最終決戦でのディアーチェの砕け得ぬ闇モードだったら何とかなりそうな気もする。だけど、そんな事を二度としたくないってディアーチェが怒った。あのモードになった経緯はすごく辛いものだったから仕方ないよね。
「そう思うなら後で見せてやるよ、ディアーチェ。エグリゴリという存在がどれだけの物か」
ルシル君の“エヴェストルム”にはシュヴァリエルさんやレーゼフェアさん、フィヨルツェンさんとの戦闘記録が収められている。私たち子供組は、かなりの過激な戦闘だってことで閲覧禁止だけど。ドクターやシスターズからも、見ちゃダメだ、って言われちゃってるし。
「ほう、良かろう。貴様が言うエグリゴリとやらの実力、とくと見させて――」
ディアーチェがそこまで言いかけたところで、PiPiPi♪通信が入ったことを知らせるコールが鳴った。受信者は「俺か? 悪いな、ディアーチェ」ルシル君だった。ディアーチェに一言断りを入れてから「はい。ルシリオン」コールを受けて通信を繋げた。
『こちらシャマル! ルシル君、緊急よ!』
「「シャマル?」」
私たちの前にモニターが展開された。映し出されたのはシャマル先生で、一目で緊迫してる空気が伝わってくる。続けて『ルシリオン。お前に確認してもらい男が居る』シグナムさんが映り込んだ。
『ルシル! 本局にトンデモねぇ神秘を発してる奴が居んだよ! お前、コイツのこと知ってたりするか!?』
また新しく映り込んできたヴィータちゃんの顔からアングルが移動する。そこは本局の居住区のレストラン街。一般人も入れる区画だ。カメラアングルが行き交う局員や民間人の列に移って、1人の初老の男の人を映し出した。インバネスコートと燕尾服っていう紳士って感じの人だ。
「馬鹿な! 馬鹿な、そんなことがあるわけがない! ありえない、あってたまるか!」
ルシル君が立ち上がったと思えば、「何故だ、どうして奴がこの世界に居る!?」取り乱し始めた。ルシル君がそこまで取り乱すことなんてほとんどないから、私たちはすごく困惑する。顔色が真っ青になるほどに動揺してるルシル君に「ルシル君! この人のこと知って――」はやてちゃんがそこまで言いかけたところで・・・
「スマウグだ! リンドヴルム首領、ミスター・リンドヴルム!」
ルシル君が、その紳士さんの正体を明かした。リンドヴルムの首領。それを聴いて私たちも「そんな!」驚く。だってミスター・リンどブルムことスマウグは、アールヴヘイムっていう全く別の次元世界でルシル君が倒したって話だったのに。そんな私たちに「リンドヴルムとは?」アミタさんや、「スマウグってなになに?」キリエさんが訊いてきた。
『この声・・・え!?』
『ちょっ、はあ!? フラム・・ってか、マテリアルやユーリ、フローリアン姉妹まで居んじゃねぇかよ!』
『なに!? いろいろと聴きたい事はあるが、今はスマウグのことだ、ルシリオン! どうすればいい、指示が欲しい!』
「ねえねえ、スマウグってなんだよ~!」
「リンドヴルムってなんでありますか!?」
「ああ、判っている! 指示・・・指示・・・! くそっ、この展開は最悪過ぎるだろ・・・!」
「ねえねえ!」
「リンドヴルムやスマウグとはなんでありますか!?」
もう大混乱。状況も切迫してるし、レヴィやフラムもリンドヴルムやスマウグのことを聴きたいって言ってるし。だから『ああもう、うるせぇ! 後で教えてもらえ!』ヴィータちゃんが怒鳴った。するとレヴィとフラムは渋々だけど黙った。
「あとで教えるからちょっと待っててね」
「今は大事な話し中なのよ」
「チェー」
「であります」
フェイトちゃんとアリサちゃんが優しくレヴィとフラムの肩に手を置く。そんな中で「スマウグには手を出すな」悩みに悩んだ結果、ルシル君がそう指示を出した。
『手を出すなって。アイツの好きにさせろってか!?』
「ああ、そうだ! 何か目的があるはずだ。その目的が暴れることでないのなら、下手に手を出さないのが一ば・・・っ! そうか、神器だ! スマウグの目的は神器だ! 機動一課に連絡! 神器をスマウグに渡すんだ! それで戦闘だけは回避できるはずだ!」
『っざけんなよ、ルシル! 尻尾巻いて逃げろってか!』
「ああ、そうだ! 勝てないんだよ俺たちじゃ! 損害が神器だけなら安いものだろうが!」
ルシル君のその話に「そんな・・・」私は無意識に呟いた。“ブリギッド・スミス”と“スフィ・ダンテ”。人の姿に変身できる数少ない神器で、回収後に言葉を交わしたこともあった。“スフィー・ダンテ”は自分を人として、娘として一緒に過ごしてくれた家族への思いが溢れる優しい女の子で、“ブリギッド・スミス”は物静かだけど人化できる他の神器思いの温かな女の子だった。そんな2人を犠牲にするその作戦・・・なんか、いやだな・・・。
『・・・判った。お前がそこまで恐れる相手であるのなら、我々も手を出そうとは思わん』
『な!? マジか、シグナム! お前までなんで弱気になってんだよ!』
『スマウグはエグリゴリ以上の神秘を有するという話だ! そんな怪物を相手に仕掛けるわけにはいくまい!』
『だけど!・・・そうだけどよぉ・・・』
『ルシル君。アミタちゃんやキリエちゃん、ユーリちゃん、マテリアルの子たちにドラウプニルや神秘カートリッジを渡しての総力戦でも勝てないの?』
シャマル先生からそんな提案が出て、自分たちの名前が出たアミタさん達は、「それは・・・!」そう悩みだすルシル君を見た。
「ルシリオンさん。リンドヴルムとかスマウグとか、私たちにはさっぱりですが、何かお役に立てるようなことがあるのであれば何でも仰ってください」
「そうね。君だけじゃなくチーム海鳴のみんなには大きな借りがあることだし、その1つを返すにはちょうどいい機会かも♪」
「貴様がそこまで恐れるスマウグ。我は興味があるな。良かろう。我らの力を貸してやろう。シュテル、レヴィ、フラム、アイル。異存はあるまいな。とは言え王命であるゆえ、拒否権など無いが」
「拒否などしませんよ、我らが王」
「おお! どんだけ強いのかすぅっごい楽しみ♪!」
「エルトリアで鍛えた私の魔導! とくとお披露目するでありますよ!」
「仕方ありませんわね。ゆっくりバカンス気分でしたけど、王命であれば存分に我が魔導を使いますわ」
ディアーチェの王命っていう指示に応えてくシュテル達。そしてディアーチェは「ユーリ。お前はどうだ」ユーリには確認を取った。ユーリは戦うことがあんまり好きな子じゃなかった。だから砕け得ぬ闇事件では苦しんでた。傷つけるのも、壊すのも、大嫌いだって。
「愚問ですよ、ディアーチェ。もちろん私も戦いますよ! スマウグっていう人は悪い人なんですよね? しかも尋常じゃない強さ。だったら私は協力したいです!」
「うむ。決まりだな」
脇を閉めて両拳をグッと握り締めたユーリに、ディアーチェは満足そうに頷いた。ルシル君はそれでもまだ迷いがあるみたい。だから「私は・・・見捨てたくない」ルシル君にそう言った。
「なのは・・・?」
「私、スフィー・ダンテやブリギッド・スミスを見捨てたくない。確かに人じゃないかもしれないけど、生きてることに変わりないんだ。そんなあの子たちを、見捨てたくない」
「あたしも、なのはと同意見よ」
「私も!」
「私も」
「わたしもだよ!」
「わたしもやよ、ルシル君」
「わたしも! シャルロッテ様の力を借りれば、きっと勝てるって!」
アリサちゃん達も私と同じ気持ちであってくれた。ルシル君はさらに迷い、悩んだ後、「判った。スマウグを迎撃しよう」戦う意志を持ってくれた。ヴィータちゃんが『それでこそだぜ!』嬉しそうにガッツポーズを取った。
「シグナム達は、スマウグを尾行してくれ。だが、絶対にこちら側から手を出さないように。今から対スマウグの準備を始めるから、それまでは耐えてくれ」
『了解した』
『おうよ!』
『判ったわ!』
『了解ですぅ!』
『ヤー!』
シグナムさん達がルシル君の指示に応じていく。そして最後にリインとアイリの顔がモニターに映ったら「え・・・!?」アミタさん達が驚きを見せた。その理由はリイン。アミタさん達がエルトリアに戻った後にアインスさんが亡くなったことを知らないから。
「ルシル君! あの、ごめんね。えっと、スマウグって、ケリオン君の門の先・・・アールヴヘイムで倒したんだよね・・・!」
「・・・門が閉じる直前だったからな。倒れる姿を見ずに戻って来た。だが、必ず勝てると思っていた。当時、俺は、俺の最高クラスの使い魔を何体も召喚したうえで戦った。スマウグと同格に近い子たちだ。その子たちが束になれば勝てる。そう思って・・・ん? あ・・・!」
「そうだよ。勝敗はこの際関係ないよ、ルシル君。ケリオン君は確かに閉じて、アールヴヘイムに帰ったはずだった。なのにどうして? どうしてアールヴヘイムに居るはずのスマウグがこっちの世界に居るの?」
すずかちゃんの考えに私たちは絶句した。何故ならその答えは1つだから。私たちの過ごす次元世界と隔絶されたまた別の次元に存在している世界・アールヴヘイムとを繋いでいる神器・転移門“ケリオンローフェティタ”。
リンドヴルムの本拠地・天空城レンアオムでの決戦の後、ルシル君は使い魔さん達と一緒にスマウグをアールヴヘイムに閉じ込めた。ケリオン君は自身であるその門を閉じて、本来の在るべき場所のアールヴヘイムへと帰ったはず。
「ケリオンローフェティタはまだ帰っていないということなのか・・・!?」
せっかく回収してアールヴヘイムに返還したいくつもの強力な武器型神器がまた、この次元世界に流れ込んでいるかもしれない。そんな最悪な結末が脳裏に過ぎる。
「くっ・・・! とにかく! はやて達は本局へ今すぐ向かってくれ。機動一課への連絡は俺がやっておく。あとアミタ達の分のドラウプニルとカートリッジを取りに行ってくるから、リンドヴルムやリインのことは、シグナム達と合流するまでに済ませておいてくれ。・・・アミタ、キリエ、ディアーチェ、シュテル、レヴィ、フラム、アイル、そしてユーリ。・・・ありがとう」
アミタさん達にお礼を言った後、ルシル君ははやてちゃんのお家へ向かった。ルシル君を見送った後は「本局へ行くわよ!」アリサちゃんに続いて、本局のスカラボへ直行できるトランスポーターへと向かう。
「あの、まずはリンドヴルムとスマウグについて教えてください!」
廊下を走る中、そう訊いてきたアミタさん。私たちはリンドヴルムとの戦いを話した。古代ベルカよりずっとずっと昔の時代に存在していた魔術、神秘、それを扱う魔術師、神さまや魔族と呼ばれる超常存在が作り出した神器って呼ばれる物を巡った戦いを。そしてスマウグっていう、魔族でありドラゴンでもある首領が、今再び姿を見せたということも伝えた。
「こんな時に不謹慎ですけど、とても興味深いお話ですね」
「そう? わたしは過去が現在を侵してるって点で嫌な気持ちよ?」
「ドラゴンかぁ! エルトリアじゃ何度も戦ってるけど、その神秘っていう特別な力があるわけだしやっぱり違うのかな~?」
「ふん。そのスマウグとか言うトカゲを狩ってやればよいのだろ? 見た目は老紳士だがな」
「神秘という力への対策はルシリオンが用意して頂けるとのことですし、数としての戦力も十分でしょう」
「私たちがユーリを止めるためのカートリッジやプログラムを作り、あなた達に授けたあの日とは正反対ですわね」
「おお、懐かしいでありますな!」
リンドヴルムについては話した。アミタさん達は思うところは別々みたい。そして次に「あのポンコツ融合騎は逝ったようだな」アインスさんとリインの話なんだけど、ディアーチェはすでに察していたみたい。
「その通りや。アインスはもう居らへん。ってゆうか、またポンコツって言うたな王さま!」
「ええい、さっさと続きを話せ!」
「んもう、あとで謝ってな!・・・さっき映ってたんはリインフォース・ツヴァイ。わたしとアインスのリンカーコアの一部を用いて生み出した、わたしのユニゾンデバイス――ううん、パートナーなんよ」
アインスさんが居ないことを知ったアミタさんやキリエさん、それにユーリがとても悲しそうな表情を浮かべた。アインスさんが慕われていたからこその表情だ。だから「おおきに」はやてちゃんはお礼を言った。
「さ、着いたわ。ここから本局へ直通転送できる」
「覚悟はいい? フローリアン家。敵は正しく最強クラスの一角。負ければ確実に死ぬ。勝ったとしても間違いなく無傷じゃ済まされない。退くなら今よ。私もルシルも責めないわ」
アリサちゃんの案内で到着したトランスポーター室。そこでシャルちゃん・・・ううん、雰囲気からして、シャルちゃんの前世の人格のシャルロッテさんが、アミタさん達に最終確認。アミタさん達もシャルロッテさんへとバトンタッチしたシャルちゃんに違和感を抱いたようだけど・・・
「退くつもりはありません」
「そうよ~。ここで逃げるのはノンノン♪」
「あれだけ大見得切っておいて退くなど考えられぬわ」
「ええ。我ら紫天一家の力を見せつけて差し上げましょう」
「やってやるぞー!」
「おお!であります!」
「はぁ。それだけ強大な相手であればコンビネーションが大切になりますわ。どうぞ足を引っ張ることの無いようにお願いしますわ」
「が、頑張ります!」
アミタさん達の覚悟をしっかり聴いたシャルロッテさんは微笑んで「じゃ、助けてもらおうっか♪」トランスポーターを見詰めた。
後書き
ドブレー・ラーノ。ドブリー・ジェニ。ドブリー・ヴェチェル
「あーあ、やっぱりこうなったか」
そう思う読者さまも数多くいることでしょう! 作者の自分がそう思うのですから~~! 残念!(古
元々は今話を2~3千文字に纏めたうえで後半からスマウグ決戦を始め、その決着を次話にやろうかと思ったんですが、なかなかどうして纏まらないじゃないですか。そして気が付けば文字数は5千を突破。あー、こりゃ纏めるのは無理だと早々に見切りを付け、はやての胸揉みスキルを思い出してので、それを加えることに。そうしたら見事1万文字を突破。なにやってんの? 自分(殴
そう言えば・・・フローリアン家が帰る話もしないといけないと気付いた今日この頃。最終話に辿り着くのはまだ遠そうです。が、今月中にはエピソードⅢは終わらせてみせる!
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