| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

Epico?其は魔境にて畏怖されし財宝護る黄金の竜~Smaug~

 
前書き
黄金竜スマウグ戦イメージBGM
Fate/stay night Realta Nua「蘇る神話 (2012)」
https://youtu.be/KSr43K6dQ2c

byシャル
「ブリード・スミスって何さ! 本当はブリギット・スミスだよ! 初登場回から間違えるってどんだけ!?」
By私
「ごめんなさい! 執筆中に気が付きました!」
 

 
†††Sideルシリオン†††

「回収済みの神器6つ、すべて持って来たわ」

「ありがとうございます、フィレス一尉」

はやて達と別れた後、俺はクロノとも合流し、八神邸の自室に向かい、フローリアン家の人数分の“ドラウプニル”(念のために最大具現数を具現化していて良かった)と神秘カートリッジをリュックに詰めた後、機動一課のオフィスへとやって来た。オフィスの奥にある個室に1人で入り、少女2人がソファに座り、神器4つが脚の短いテーブルの上に置かれている様を確認。

「お久しぶりです、神器王」

「なかなかお会いに来てくださらなかったので、少し寂しかったです」

「ああ、すまないな、ブリギッド、スフィ。前にも言ったが俺は今、神器王だということを隠して生きているんだ」

人化できる神器、“ブリギッド・スミス”と“スフィー・ダンテ”。大戦時は人化できない物だったが、その頃からすでに自我があったことから俺や他の“アンスール”のことを慕ってくれている。だから今の俺の状況も伝えてある。“界律の守護神テスタメント”のこと、“堕天使エグリゴリ”を救い終わればアースガルドへ還れることなどを。

「そうでしたね。それで、今回はどういったご用でしょうか?」

「どんなことでもお申し付けください。この力の限り、ご協力します」

そう言ってくれる2人に「ありがとう。実はな――」スマウグが今、ここ本局に居ることを伝えた。

「魔界最下層の黄金竜・・・!」

「スマウグ竜様が・・・居るのですか!?」

神属側の“ブリギッド”や魔族側の“スフィー”が驚愕する。どの派閥でも関係なく恐れられる竜族、その中でも特に畏怖の対象である王クラスの一角、黄金竜スマウグ。俺は、リンドヴルムはスマウグが作った組織であり、今まさに2人やテーブルの上に乗った神器が狙われているのだと伝える。

「そうですか」

「私たちに出来ることがあるからこそ、こうして呼んでいただけのですよね」

「察しが良くて助かる。お前たちの魔力が欲しい」

ドーピングの為の神秘と魔力が欲しい。創世結界が使えない以上、スズメの涙程度の竜殺しの術式や神器も使えず、最悪の手段である“ジュエルシード”も使えない。ユーリの絶大な魔力に神秘が加われば、確かに最高の援軍と言えるが・・・、それでも足らない。

「「判りました。どうぞお使いくださいませ♪」」

快諾してくれた2人が光に包まれ、“ブリギッド”は黄金の輪に、“スフィー”は一振りの片刃剣という元の姿に戻った。俺は「ありがとう。コード・イドゥン」最大限の感謝を込め、魔力吸収の術式イドゥンで神器6つから限界まで魔力を吸収する。吸収した魔力を結晶化させ、私服のポケットに忍ばせる。

(スフィー・ダンテの能力に呑み込まれるのは嫌だし、ブリギッド・スミスじゃ火力不足だ)

他の神器もスマウグの神秘には通用しないだろう。それゆえにこんな形でしかお前たちを扱えない俺を許してくれ。そして俺は個室を出、「行きましょうか」外で待っていてくれたフィレスやクロノと共に、シグナム達の居る居住区へ向かう。

「スマウグは未だに居住区をぶらついているようよ」

「スマウグの実力からすれば単独で本局を落とせます。神器が目的ならここに攻めてきてもおかしくないです。それなのにどうしてまだそんなところに居るのか解りません。が、本局に留まる理由があると言うのは確か」

「そのスマウグを、特捜課のクララ准陸尉のスキル・強制転送で無人世界に飛ばすという作戦、面白いよ」

「本局でスマウグとの戦闘など正気の沙汰ではありません」

それこそ本局が滅ぶ。対スマウグ戦の最大の課題は、本局から無人世界へ強制的に転移させることが出来るかどうか。そのために必要な人員もすでに連絡して用意した。

「だけど、ベッキー陸曹長とアルテルミナス准空尉が居ないのは痛いわね」

「ええ。ルミナの固有スキルは欲しかったのですが、ベッキー先輩の精霊では元より勝ち目はないので、その・・・」

「居なくても構わない、というわけか・・・」

ルミナの固有スキルは神秘を宿せばある程度は使えるが、最下層の魔族であり竜族の王クラスでもあるスマウグ相手に精霊では相手にならない。かえって吸収されて強化さしてしまう可能性もある。

「死んでもそんなこと言えないけどな。とにかく今は、下手に行動に移られる前に急ごうう、クロノ、フィレス一尉!」

「ああ!」「ええ!」

合流までの道程にて「ルシル!」特別技能捜査課の先輩、左側の前髪だけを耳に掛けるといった蜂蜜色の長い髪を揺らす、本作戦の要であるクララや、強制転移させるまでにスマウグが真の姿に戻った時の場合の結界要員の「ルシル!」セラティナ、それに「ごめん、待たせた!」ユーノとも合流。その3人にも“ドラウプニル”を渡す。さらに戦力の1人である「お待たせ!」セレスとも合流。
そして・・・

「はやて、みんな!」

はやて達とも合流を果たす。かなりの大所帯になってしまったが、これもでまだ足りないかもしれない。アミタ達と自己紹介を始めつつ、マテリアルがはやて達にそっくりなことに驚くフィレス達を横目に「ん? シャルはどうした?」彼女の姿が見えないことに気付いた。

「シャルちゃん、あの後にシャルロッテさんと交代して、今はフライハイト邸へ・・・」

「キルシュブリューテを取って来るって言うてたよ」

ベルカ時代にフライハイト家へ渡した“断刀キルシュブリューテ”・レプリカをか。複製品とは言え宿す神秘はオリジナルと大差ない。だが、スマウグの神秘には通用しない。“キルシュブリューテ”の神秘は絶大だ。しかし、完全解放したとしても、いくら第9位だとしても、王の一角であるスマウグの神秘には足りない。

「(それでもデバイスのキルシュブリューテよりかはマシか)そうか。判った。・・・スマウグ・・・」

ここから100mほど離れたここから老紳士姿であるスマウグを確認する。

(クソッ。涼しい顔をしているな。オリジナルのヨルムンガンド、エインヘリヤルではあるがその神秘はケタ違いのフェンリル、フレースヴェルグ、ガルムの4体を相手にしていながら勝つのか・・・!)

さすがに年単位が経過すれば、どれだけダメージを負っていても治せるか。とにかくアミタ達に「これを手首にはめてくれ」“ドラウプニル”や神秘カートリッジを渡す。アミタとキリエとユーリ、それにディアーチェとアイルには“ドラウプニル”を。
シュテルとレヴィとフラムには“ドラウプニル”とカートリッジを10発ずつ渡し、なのは達にも10発ずつ渡す。毎日コツコツと作っておいて良かった。俺は「シャマル。コレを頼む」シャマルに背負っていたリュックサックを預ける。

「これは・・・?」

「カートリッジ組の予備だ。みんな。戦闘中にカートリッジを消費しきったら、シャマルの元で補給してくれ」

みんなにそう伝えておく。いま渡した10発程度では絶対に足りないことは判っている。俺が今まで地道に作ったカートリッジ、その全てがあのリュックに入っている。完全な総力戦だ。

「黄金の腕輪と薬莢、ですか」

「へぇ。どんなゴツイ兵装かと思えば、超豪華なアクセじゃな~い」

「鏡のように顔が反射して映ってます~♪」

「コレが貴様の言う対策か?」

「確かに腕輪やカートリッジからは不思議な感じがしますね」

「おお、ゴールデンでありますな~♪」

「美しいですわ~」

「なんか手首にはめても変化ないぞ? このカートリッジをロードすればいいのかなぁ~?」

レヴィは、起動した“バルフィニカス”に装填したカートリッジを、なんとその場でロードしやがった。俺やはやて達も「ちょっ!?」その最悪すぎる行為には絶句した。レヴィは「わわっ! リンカーコアがビリビリするぅ~!?」と大慌てしつつ魔力を放出させた。

「ようやく姿を見せたな、神器王!!」

スマウグから視線を外していた数秒のうちに、奴は俺たちの背後に立っていた。すでに神秘が膨れ上がっている。多くは無いとは言え人の居るところで変身をする気なのか。魔力炉(システム)の稼働率を引き上げ、魔術師化する。そして・・・

――女神の聖楯(コード・リン)――

「シャマル、クロノ、ユーノ、アルフ! セラティナ! 急いで結か――・・・っ!」

――顕現――

上級の防性術式のリン4枚を同時展開し、スマウグと隔てるように横一列に並べた。その直後にスマウグの全身からカッと光が発せられ、さらに爆炎が生まれた。俺は真っ先に「はやて!」を庇うように胸に抱いた。

VS・―・―・―・―・―・―・―・―・
其は財宝を集め護りし竜族の王スマウグ
・―・―・―・―・―・―・―・―・VS

炎はリンで防げたが、爆風だけは防げなかったこともあり「ぐぅぅ・・・!」俺たちはゴミのように吹き飛ばされてしまった。俺の腕、というよりははやての腕の中に居るリインの「ふわぁぁぁぁぁ!」悲鳴が微かにだが聞こえた。

「ルシ・・・!」

「舌を噛む、喋るな!」

空中で姿勢を立て直しつつ俺は『みんなは無事か!?』念話でみんなの安否を確認する。すぐに『大丈夫だよ!』なのはを筆頭にみんなから無事を知らせる返答があった。俺ははやてを抱えたまま着地し、「エヴェストルム!」を起動して防護服へと変身。降ろしたはやてとリインも「セットアップ!」変身を終えた。

『結界担当の 5人は結界を! 俺が護衛につくからクララ先輩は煙の外から出てくれ!』

『『判った!』』『了解です!』『任せて!』

『了解!』

クロノも前線で戦わせるかどうか迷っていたが、今となっては結界担当に回ってくれた方が心強い。俺はリインとユニゾンを果たしたはやての手を引いて、スマウグの顕現による爆炎に遅れて発生した黒煙の中から脱出。黒煙の外ではすでにみんなが防護服へと変身し、デバイスを力強く握り締めていた。

「お・・・大きいですー」

ユーリの視線を追ってそちらに振り向くと、「んな・・・!」はやてが絶句。そこには真の姿である全長70m、翼を全開していることで全幅140mという巨体を誇るスマウグが居た。

(黄金の鱗がボロボロだな。ヨルムンガンド達が頑張ってくれたおかげだろう)

想定以上に俺たちの勝率が高いことが判った。しかしそれでも、勝てるかもしれない、程度だが。強烈な熱波を発する奴が雄叫びをあげると黒煙は吹き飛び、「う、うるさい・・・!」はやて達が一斉に耳を塞いだ。

『クララ先輩!』

コルセットを付けたスカート丈がミニなビスチェワンピース・袖口がサーキュラーカフス(やわらかく広がっているフレア形状)になっているアームカバー・太腿までの丈であるサイハイブーツと言った防護服を着ているクララを念話で呼びつつ、彼女の元へ走る。

『いったぁ・・・! おしり打った~、けど!』

尻を擦りながら立つ上がるクララを右腕で脇に抱え上げ、空戦形態ヘルモーズを発動して空に上がる。シャマル達が結界を張ってくれたおかげで、結界内から無関係者たちの姿が消えた。それに・・・

「さぁ、貴様が保有する神器を渡してもらおうか! 決断するまでの時間を設けてやろう!」

スマウグは“エグリゴリ”とは違って、複製とは言え何百と言う神器やそれに近い武装を何千と持つ俺を殺す気はないようで、攻撃を仕掛けては来ないのが救いだ。作戦通りにまずはスマウグを強制転移させよう。そのために今はまだ攻撃を加えない。いま攻撃して反撃を食らい結界が破られ、本局を壊されたりでもされたら・・・一体どれだけの死者が出るか判らない。

「大人しく渡せば、貴様の手下どもには危害は加えぬ!」

スマウグのその言いように無視したかったが「取り消せ! この子たちはみんな仲間だ!」そう怒声を上げ、奴のすぐ側まで突っ込む。常時発している熱波への対抗策として、オーバルプロテクションという名の球体状の障壁を展開。先の次元世界でなのはから複製し、今は俺の魔法であり魔術と化している術式の1つだ。

「一番近い第3無人世界に飛ばすよ?」

「頼む!」

「よしっ!」

スマウグとの距離を詰め、不動の奴の腹部へめがけて突進。そして「あっつ! 熱い! 火傷、火傷しちゃうよ!」クララが半泣きになりながらも「この・・・飛んでけ!」スマウグの腹に触れた。クララのスキルは名の通り触れた対象を、同じ世界や近隣世界へと強制的に飛ばすというものだ。

「あれ・・・?」

「クララ先輩、急いで!」

「ダメ、転移できない! あっつ! 無理、私のスキルが通用しない!」

最悪な報せが入った。クララは「どうして!?」と、手の平がじゅーじゅー焼かれているにも関わらずバシバシっとスマウグの腹を叩くように触れ続ける。これ以上は「無理だ!」と判断した俺はスマウグより離脱する。プロテクションもヒビが入り始めていたし、なおかつ「なんで・・・!」クララの手が使い物になりそうだった。

――女神の祝福(コード・エイル)――

クララの焼け爛れた両手の平をエイルで治しながら『こちらルシリオン! 作戦変こ――』念話をみんなに繋げた瞬間、「時間切れだ!」スマウグが火炎のブレスを吐き出した。地面がものすごい勢いで炎に包まれる。とうとう攻撃を仕掛け始められてしまった。

『蒼ハネ! もう無理! 攻撃するよ!』

――光翼連斬――

『焼き殺されるなど堪ったものではないですものね!』

――ティアマト――

好戦的なレヴィと冷静沈着なアイルが交戦に移った。フェイトのハーケンセイバーのような斬撃を連発するレヴィと、8枚と宙に展開した魔法陣から氷山を突き出させるアイルの攻撃がスマウグを襲うが「ほう。降伏ではなく私と戦う選択を取るか? 実によい、来るがいい!」奴には通用しなかった。さらに炎のブレスを奴は吐き続ける。

「クララ先輩は結界担当に移ってくれ!『こうなったら仕方ない! ここでスマウグを討つ!』」

クララは「うん!」と頷き、シャマル達と一緒に結界を張るために戦線を離脱。そして俺たちは、余裕にふんぞり返っているスマウグへと一斉攻勢に移る。俺は結晶化させた魔力を魔力炉(システム)に同化させ、“エヴェストルム”の神秘カートリッジを4発ロードする。
1つ分でフルドライブの魔力刃形態・イデアフォルムに変形させ、2つで穂に刻んだルーンを発動させて神器化のイドフォルムへ。さらに柄に埋め込まれている魔石に魔力を流し、数倍となって返還される魔力と、残り1発分の魔力を用いての・・・

力神の化身(コード・マグニ)!」

強化術式を発動。俺だけでなくみんなにもマグニを掛ける。さらに「お願いスノーホワイト!」すずかの斬撃・打撃・射撃・機動力・防御力といった強化魔法がメンバー全員に重ね掛けされる。

『黄金の鱗は対魔力に優れた装甲だ! そこには当てるなよ!』

「アイリ!」

『ヤー!』

「コメートフリーゲン・アイス!」

『乱れ撃ち!』

ギガントフォルムの“グラーフアイゼン”で、冷気を纏うビッグサイズの物質弾を18発と打ち放つヴィータ。

「まずはその厄介な口を縫いつけてやろう!」

スマウグの全身から放たれる熱波によって物質弾の冷気は吹き飛び、着弾した物質弾は炸裂するものの奴の最も防御力の高い黄金の鱗への着弾だったこともあり、その効果を発揮することが出来なかった。

――鋼の軛・顎――

そこにザフィーラの軛がスマウグの突き出た口に目掛けて突き出る。スマウグは「このようなもの」と鼻で笑い、軛をわざと受けた。上あごには黄金の鱗もあったことで破壊されたが、下あごには鱗はないためサクッと貫いた。が、閉じられた口の隙間から炎が溢れ出し、軛が一瞬のうちに粉砕されてしまった。

戦滅神の破槍(コード・ヴィズル)!」

スマウグの周囲に舞い散る火の粉の中を翔け抜け、奴の鼻っ面に雷撃系の上級砲撃を撃ち込んだ。しかし「アールヴヘイムでの威勢はどうした!?」全く通用していない。舌打ちしつつ「ヴィズル!」を撃ち続けて行く。

「我が呼びかけに応じ参ぜよ。深淵奈落を支配する冥府の女王の槍。空穿つ螺旋の唸りは破滅与える喜びの咆哮。突き進む道妨げる壁を無残に穿ち、其に純然たる破壊を齎す!」

『ヴルフシュペーア・デア・ウンターヴェルト!』

「せぇぇぇーーーーい!!」

スマウグの頭上に出現するのは、はやてとリインの魔法による巨大な螺旋槍。はやては柄頭を“シュベルトクロイツ”で打ち、槍を放った。それと同時になのはは“レイジングハート”をエクセリオンへ、フェイトは“バルディッシュ”をザンバーへ、アリサは“フレイムアイズ”をクレイモアへ。
シュテルは“ルシフェリオン”をディザスターへ、レヴィは“バルフィニカス”をブレイバーへ、フラムは“タラスクス”をツヴァイヘンダーへ。ディアーチェは「さぁ、トカゲ狩りだ!」“エルシニアクロイツ”をスマウグへと向ける。

「我も子鴉には負けてはおれんな。我が敵を射抜く剣の兵よ。紫天の光の元、軍勢となりこの空を埋め尽くさん!」

――レギオン・オブ・ドームブリンガー――

そして詠唱の果て、何十基もの物質剣を展開したディアーチェは「往けい!」剣群を一斉に射出した。スマウグは避けようとも防ごうともしない。対魔力効果を持った黄金を失っている赤い鱗にディアーチェの放った剣群を受けようとも、はやてとリインの槍が頭頂部に当たろうとも「現代の魔術師など所詮はこの程度よ!」ビクともしない。それどころか頭を跳ね上げることで槍を弾き飛ばし、明後日の方に進もうとしていたソレをブレスで焼き払った。

「なのは、行きますよ・・・!」

「うんっ! 行こう、シュテル!」

フルドライブモードの相棒を手に、スマウグの周囲を飛び回りるなのはとシュテルは神秘カートリッジをロードして・・・

「エクセリオン・・・!」

「ルシフェリオン・・・!

「「バスタァァァァーーーーッ!」」

砲撃を発射。桜色の閃光と、轟々と燃える火炎砲と火炎弾8発が、スマウグの顔面に直撃したことで爆発が起き、黒煙が奴の巨大な顔を覆い隠す。

「キリエ、行きますよ!」

「OK、アミタ♪ K.Z.G. ! キリエ、全力で、頑張るわ!」

――アクセラレイター――

「「――からの・・・、ファイネストカノン!」」

アミタとキリエは目にも留まらない速度でスマウグの周囲を翔け回りながら、それぞれが持つ小型銃・“ヴァリアントザッパー”2挺からの大型エネルギー弾を何発も撃ち込んでいく。

「フレイムアイズ、レガリア発動!」

≪おう! スリーズ・サンズレガリア、いくぜ!≫

「よっし! フラム!」

「アリサ!」

「行くわよ!」「行くでありますよ!」

――ヴォルカニックスカッシャー――

――アルジンツァン――

アリサとフラムによる燃える大剣を伸長させての刺突攻撃が、スマウグの腹目掛けて突き入れられたと同時、「フラムと熱血っ子に遅れずに行くぞ、オリジナル、姉っ子!」レヴィが攻撃に移る。

――雷神滅殺極光斬――

「いい加減、フェイトってちゃんと呼んでほしいかも!」

――ジェットザンバー――

「わたしはお姉ちゃん呼びだから不足はないよ!」

――ジャベリンメテオ――

フェイトとレヴィが極大斬撃でスマウグの首を挟撃し、アリシアは展開した魔法陣に寝転がってスナイパーライフル型のデバイス・“ブレイブスナイパー”を構え、「当たれ!」奴の目を重点的に狙って先の尖った魔力弾を撃ち続ける。本当に成長したよな、アリシア。彼女の百発百中の一撃が、アリサ達の攻撃にすら一切のダメージを負わなかったスマウグに初めて回避行動を取らせた。

「目が弱点ですね!」

――ジャベリンバッシュ――

「そのようだ! レヴァンティン!」

――シュツルムファルケン――

「セレス!」

「うんっ!」

「「悪魔の角(ディアブロ・クエルノ)!!」

ユーリは背後に浮遊する霧のような赤い2つの魔力――魄翼で造った巨大な槍を放ち、シグナムはボーゲンフォルムにした“レヴァンティン”から矢を射た。フィレスとセレスは螺旋状の氷の杭を何百基と展開して、一斉射出。

「ヨツンヘイム人か? 面白い!」

スマウグはブレスで全ての攻撃を焼き払った。俺って馬鹿だな。そうだよな。目には鱗はない。弱点と見て良いだろうに。最下層の魔族・竜種、その王クラスという事実に当てられて、この最大の勝機を見逃していた。

「はっはっは! 神器王よ! 貴様より賢しいのではないか? この幼き少女たちの方が!」

「チッ・・・! みんな、目を狙え!」

「おうおう、掛かって来るがよい、幼き英雄たちよ! 我が名は黄金竜スマウグ! 私の――いや、生物としての弱点を知ったところで私の勝利は確定だろうが、それまでの刹那、私を楽しませてくれ!」

大きな翼を力強く羽ばたかせたスマウグ。あまりの突風に「ぐぅぅ・・・!」吹き飛ばされる。そんな中、『クロノだ! 居住区民の避難誘導が始まった! まだ転移できないのか!?』クロノから念話が来た。体勢を立て直しつつ、クララのスキルではスマウグを強制転移できないことを伝えた。

『なに!? どうす――』

『待て、今それどころじゃ・・・!』

スマウグの吐く業火弾が容赦なくみんなに向かって行く。みんなはちゃんと軌道とその威力を見極めて回避し、スマウグの顔面――両目を射砲撃で狙い撃っていく。俺も「ヴィズル!」みんなに混じって砲撃を奴の目に向かって放ち続ける。

『スマウグから仕掛けられてしまった! もうこの場で討つしかない!』

「危ない王さま!」「王様!」

――クラウ・ソラス――

――ファイネストカノン――

「言われずとも判っておるわ!」

――インフェルノ――

回避先を狙われたディアーチェに直撃しようとした業火弾だったが、はやてとアミタが砲撃を撃ち込み、僅かに速度が落ちたことで余裕の生まれたディアーチェが巨大な魔力球4つを降らせることで、業火弾を迎撃した。

『勝てるのか!?』

『勝つしかないだろ! とにかく結界の維持を最優先に頼む!』

小手先の攻撃ではスマウグは斃せない。弱点となった目に攻撃を加えようとも、スマウグの迎撃能力が高くて全く当たらない。それでもやらなければ、本局が文字通り崩壊することになる。

「アリシア!!」

「え・・・?」

空戦の出来ないアリシアが立つ魔法陣の元へ迫り行く業火弾3発。俺やフェイトがフォローに入るには間に合わない距離だった。しかしそこに「はーい、セーフ♪」キリエがアクセラレイターという高速移動術を使って割り込み、アリシアを脇に抱えて軌道上より離脱した。

「ありがと、キリエ!」

「どういたしまして!」

その様子にホッと安堵しつつ、“エヴェストルム”のカートリッジを8発と連続ロード。

「其は戦場を駆け抜ける戦乙女の将。その美は全てを魅了し、その愛に果てはなく、愛おしむ実りの生誕と成長を見守る・・・」

「ルシル君が詠唱に入った! みんな、サポート!」

「私も付き合いましょう!」

なのはがいち早く気付き、空を飛び回る俺の護衛としてシュテルと共に付いてくれた。スマウグが「儀式か。どのような魔術を見せてくれるのだ?」俺たちへ向けて口を開けた。喉の奥から真っ赤な光が溢れ出し、それが火炎のブレスとなって吐き出されようとしたその時・・・

「『ギガント・・・フリーレンシュラァァァーーーークッ!!!』」

超巨大化した冷気を纏う“グラーフアイゼン”による一撃がスマウグの口に振り下ろされた。さらに「おおおおお!!」ザフィーラが下あごの真下から拳と蹴りの連撃を打ち込んだことで、口はスマウグの意思には反して閉じられた。直後「むごぉぉぉぉ!?」奴の口の中が爆発し、爆炎と黒煙が溢れ出した。

「豊穣に転じて死と戦をも其は司らん・・・」

「アルゴス・ハンドレッドレイ!」

そこにユーリがスマウグの眉間のところまで行き、大きく広げられたその魄翼から100発という砲撃を一斉に発射した。続けて「シャルシュガナ!」アイルの冷気砲撃、「トライデントスマッシャー!」フェイトの雷撃砲、「カンシオン・デ・コンヘラシオン!」フィレスとセレスの冷気砲撃、「ヴォルカニックスカッシャー!」アリサの火炎斬撃と、連続して頭部に撃ち込まれていく。

「金色の光を纏いたるその苛烈にして華麗な威容・・・」

スマウグがグラリと仰向けに倒れ込み始めた。みんなの攻撃というよりかは、スマウグの自爆が奴に大きなダメージを与えたようだ。

「チャンスや! 攻撃を絶やすとアカン!」

――クラウ・ソラス――

「うむ! 攻撃を続けよ! 反撃を許すでないぞ!」

――ヨルムンガンド――

はやてとディアーチェも砲撃を放ち、その指示の下にフェイト達も攻撃を加えていく。俺は「なのは、シュテル。俺は大丈夫だ、行ってくれ」と、そわそわしていた2人に告げる。詠唱も残り僅か。スマウグも完全に仰向けに倒れた。あの状態で攻撃するのは難しいだろう。

「うん! シュテル!」

「ええ! 参りましょう!」

「極光の天幕が靡く時・・・」

なのはとシュテルもスマウグへの情け容赦ない爆撃に参加。奴は起き上がろうと体勢を直そうとするが、「おらぁぁぁぁぁ!」ヴィータがギガント・フリーレンシュラークでそれを阻止し、ザフィーラも「破城の穿杭!!」巨大な杭を打ち込むことで防ぐ。

「戦士を従え、希望と絶望を戦場へ運び往かん」

詠唱完了。俺の後方にアースガルド魔法陣が6枚と円形に展開。俺の周囲にも6枚の魔法陣、前方にもまた6枚の魔法陣。計18枚の魔法陣がピラミッド状に配置される形だ。俺は『退避!!』念話で指示を出す。スマウグの側からみんなが退避していくのを確認して・・・

女神の大戦火(コード・フレイア)!!」

フレイヤを発動。前方の第一層の6枚は時計回り、俺の周囲に展開した第二層の6枚は反時計回り、後方の第三層の6枚は時計回りに回転し始めて、閃光・闇黒・風嵐・雷撃・炎熱・氷雪の6属性による砲撃が断続的に発射され始める。

「すっげぇ、すっげぇ!」

「わぁ、すごいですー!」

問答無用にスマウグへ着弾していく6属性、何十発と言う砲撃。レヴィとユーリが驚きの声を上げる。この魔術を見せるのははやて達にも初めてだが、俺の異常性を知っていることもあって驚きと言うよりは呆れているようにも見える。

「これでもまだスマウグは倒れない! これ以上、小手先の魔法を使っても意味は無いだろう! 各員、最大魔法を用意!」

下手に魔力を消費をして魔法をちびちび撃ってもジリ貧になるだけだ。だったら大魔法で一気に削った方が良い。

「レイジングハート! スターライトブレイカー、いくよ!」

「真・ルシフェリオンブレイカー、参ります・・・!」

なのはは魔力集束を始め、シュテルは集束砲の前の直射砲撃の為の魔力チャージに入った。

「よぉーっし! ボクの必殺技、お見舞いしてやる!」

「雷光一閃!」

水色に輝く雷撃の球体がレヴィの頭上に複数展開される。屋外ではないことで天然の雷を利用できないフェイトは、その代わりとして周囲にプラズマスフィアを複数展開し、その雷撃をザンバーフォームの“バルディッシュ”の魔力刃に集束させていく。

「フレイムアイズ!」

≪不浄の闇を断ち払うのは太陽の現身。輝ける炎の聖剣!≫

「炎砕、爆砕、大粉砕!」

アリサは足元に展開した魔法陣の上に立ち、魔法陣から噴き上がる炎を“フレイムアイズ”の魔力刃へ集束させていく。フラムも同様に魔法陣の上に立ち、“タラスクス”の魔力刃を突き刺している魔法陣から噴き上がる炎や、その周囲に発生している炎の竜巻8基から魔力刃へと炎を集束させていく。

「響け、終焉の笛!」

「紫天に吼えよ、我が鼓動! 出でよ、巨重!」

はやての足元にはミッド魔法陣、前面にベルカ魔法陣を展開して魔力をチャージ。ディアーチェは前面にミッド魔法陣を5枚と展開して魔力をチャージ。

「「真技!!」」

フィレスとセレスはスマウグの直上へ移動し、正四角形の中に雪の結晶の紋様、その正四角形の四方の角からひし形の模様が伸び、それを覆う三重の六角形というヨツンヘイム魔法陣を足元に展開。

「私の魔法に合わせなさい、すずか!」

「あ、うん! お願い、アイル!」

すずかとアイルは、アイルの展開したミッド魔法陣の上に降り立ち、魔法をスタンバイ。

「キリエ!」

「いつでもオッケ~よん♪」

「ユーリも!」

「私も準備万端です! ルシリオン、みんなの準備、完了です!」

ユーリからの報告に「ああ!」俺は頷き、フレイアの砲撃が切れる前に残りのカートリッジをロードし、すぐさまスピードローダーを使って2つのシリンダーにカートリッジを装填し、そのカートリッジも全弾ロードした。

「(久しぶりに使うな、この魔術・・・)其は狂乱の中に静かに黙する者。鉄靴(てっか)を履き鳴らし、その音を聴きたる者へ恐怖を植え付ける。深き森に在りし其が戦場へ発ち立つ時、傷つきし汝らは絶望す。恐れ、震えよ。汝らの敗残は此処に定めとなろう」

使いどころが難しい術式をスタンバイするために詠唱する。

「フレイアの術式効果が切れる! アミタ、キリエ、先発を頼む!」

「はいっ!」「判ったわ!」

多属性多弾砲撃フレイアを構築していた18枚の魔法陣が霧散する。計100発の砲撃を受けたスマウグだったが、「やるではないか・・・!」それでもまだ起き上がろうと動きを見せる。

「アミティエ・フローリアン!」

「キリエ・フローリアン!」

「行きます!」「行くわよ!」

――アクセラレイター――

2人の姿が掻き消える。次の瞬間には、スマウグの周囲をアミタは翔け回り・・・

「E.O.D.、行きます!」

2本の片刃剣モードにしている“ヴァリアント・ザッパー”で目にも留まらない斬撃をスマウグの腹に叩き込み、さらに双銃モードに変形させて、無数のエネルギー弾で奴を包囲。

「エクス・オービット・ディバージョン!!」

最後に“ヴァリアント・ザッパー”からのレーザーサイトの照射に連動するように、スマウグを包囲していた他のエネルギー弾も一斉に発射され、「むぅ・・・!」着弾して大爆発を起こす。

「S.R.I.、行っくわよ~!」

キリエは双銃を高く掲げ、銃口から伸びる2本のエネルギーのロープの先に巨大なエネルギー球を造り出し・・・

「スラッシュ・レイブ・インパクト!!」

両腕を勢いよく振り降ろすことでそのエネルギー球をスマウグの腹に落とした。そしてまた大爆発を起こす。だがそれでも「はっはっは! この娘らも面白い技を使うわ!」プスプスと煙が上がっている腹を擦るスマウグが笑い・・・

「どれ、そろそろ反撃をしようか!」

仰向けに倒れ込んだまま口からブレスを吐き出した。その炎は結界のてっぺんに当たるかどうかというところで勢いを失くしたが、「ここに来てそんなものを・・・!」直径3mはあろう炎弾となって俺たちの頭上に降り注ぎ始めた。フィレスとセレスは直上に居ながらもなんとか回避できたことで直撃を免れた。

「みんなは動くな! 俺が対処する!」

――崇め讃えよ(コード)汝の其の御名を(ミカエル)――

しかしはやて達はその場から動けない魔法を使うため、俺が護らなければ。背より22枚の蒼翼を射出し、それらより砲撃を何十発と放って炎弾を迎撃し・・・

――戦滅神の破槍(コード・ヴィズル)――

俺自身からも雷撃砲を連射。それでも足りないため・・・

「其は時に天の使徒にして魔の従僕。(中略)死の恐れを知らぬ名声を求めし勇ましき者よ、宝物が欲しくばいざ挑めよ!」

詠唱を中略したことで威力はかなり下がるだろうが、魔法の発射態勢に入っているみんなの盾くらいにはなるだろう。

宝竜の抱擁(コード・ファフニール)!!」

上級儀式魔術ファフニールを発動。中級術式である、炎龍プシエル、氷龍マトリエル、風龍ルヒエル、毒龍ログジエル、闇龍シャムエル、岩龍トゥアル、光龍イオエル、雷龍ジェレミエル、各属性の龍をそれぞれ3頭ずつ、計24頭の龍を炎弾へと一斉に解き放つ。その直後、強烈な頭痛と胸痛に襲われ、さらに「ごふっ!?」吐血した。

(あぁ、最近なかったから忘れていた・・・。俺、もう限界だったんだよな・・・)

何か大事な物を失った喪失感が去来する。はやて達から『ルシル君!』と、不安でいっぱいといった感情に満ちた声で名を呼ばれた。それに応えようにも意識が揺らぎ、フッと重力に支配され、墜落し始めたことが判った。

「ルシリオンさん!」

エネルギー弾で炎弾を迎撃しながらもアミタが俺を抱き止めてくれ、「わたし達も手伝うわよ!」キリエもまた炎弾を迎撃してくれた。飛行に意識を割かないことで余裕が生まれた俺は『撃てぇぇぇぇぇ!』はやて達に攻撃を続けるよう指示を出せた。

「そんじゃ、このボク、レヴィ・ザ・スラッシャーが第二波を貰い受ける! いっくぞぉ! 雷神封殺爆滅剣! 死ねぇぇぇぇぇッ!!」

レヴィの頭上の雷球1つ1つから雷撃に繋がれた雷剣がスマウグへと殺到し、起き上がり途中の奴の喉を貫いて、派手な大爆発を起こして強烈な放電が起きる。

「オリジナル!」

「うんっ! プラズマザンバー・・・ブレイカァァァァーーーーーッ!!」

フェイトが“バルディッシュ”を大きく振るい放った強大な斬撃砲を、レヴィと同じようにスマウグの喉へと撃ち込んだことで、綺麗な水色と金色の放電が発生した。

「シュテル、次は私たちだよ!」

「ええ!なのは、参りましょう!」

「スターライトぉぉ・・・!」

「真・ルシフェリン!」

「「ブレイカァァァァァァーーーーーーーッッ!!!!」」

桜色に光り輝く強大な砲撃と、それと同等の強大さを誇る火炎砲撃が発射され、桜色の閃光爆発と火炎爆発が起きた。

「なのは達に続くわよ、フラム!」

「応であります!」

「ガラティーン・・・ブレイカァァァーーーーッ!」

「ドラッヘン・・・アポカリプス!!」

臨界点まで炎を集束させたアリサの“フレイムアイズ”と、フラムの“タラスクス”が振るわれた。そして発射される剣状砲撃と、7つの頭を持った特大砲撃が着弾して爆発、巨大な火柱が起こる。

「次は私たちが!」

――凍結せし巨いなる聖剣(スパーダ・デ・ニエベミトロヒア)――

「いただきます!」

――永遠なる凍土を生ずる王剣(スパーダ・デ・フリオサタナス)――

フィレスは巨大な冷気の大剣を、もぞもぞと体を捩って起き上がり始めたスマウグに突き刺した。奴の常時発する熱波の影響でとんでもない蒸気が発生する。そんなところに、セレスの放った冷気の剣状砲撃が着弾し、スマウグが真っ白な冷気が覆い包まれた。

「行きますわよ、すずか!」

「うんっ! 月村すずかとアイル・ザ・フィアブリンガー・・・行きます!」

――テンペスト・オブ・エンリル――

――リフリジレイト・エア――

スマウグを覆い隠すように二重の吹雪の竜巻が発生した。その光景を見守り、そして竜巻が治まると「すごいな・・・」俺は目を疑った。スマウグは完全に凍結されていた。しかし、歪な形をした氷の棺が勢いよく融けていくのが目に見えて判る。そして「まだまだぁ!」スマウグは氷の棺を粉砕して氷の破片を宙に舞い散らせた。

「おっしゃ! 次はあたしらだ!」

「「ああ!」」

「ギガント・フリーレンシュラァァァァーーーークッ!」

「シュツルムファルケン!」

「鋼の軛!」

ヴィータのは思いっきり腹に打ち付けられ、シグナムはスマウグの右目の前でその一撃を射って、奴の右目を射抜いた。ザフィーラはその反対、左目へと鋼の軛を10本と一斉に突き刺した。右目からは爆炎が上がり、左目はどうなったのかは判らない。

「王さま、わたしらの番や! ちゃんと付いて来てな!」

「フンッ。よかろう! 貴様こそ腑抜けた先導なぞするなよ、子鴉!」

「ラグ・・・!」

「ジャガー・・・!」

「――ナロク!」「――ノォォート!!」

ベルカ魔法陣の三角にある円より砲撃が3発、遅れて中央からの1発、計4発の砲撃ラグナロクが着弾。続けて5枚のミッド魔法陣より放たれた砲撃は一度空へ上がり、そして直角に屈折してスマウグに着弾。ラグナロクによる爆発が、ジャガーノートの爆発と、そして発生した重力によって呑み込まれた。

「ユーリ・エーベルヴァイン、行きます!!」

ユーリが高速でスマウグの元へと翔け、スマウグの胸へと両手を突き入れた。旅の鏡に似た転移魔法の一種らしい。そしてユーリは、スマウグの魔力を利用しての巨大な剣を形成しつつ、「よいっしょ!」奴の腹からソレを引き抜いた。ユーリ自身の魔力とスマウグの魔力の混合技であるあの剣の威力は、奴にとっても想定外のものになるだろう。

「これで終わりです! エンシェント・・・!」

ユーリは大剣をスマウグの直上で振り回し、「マトリクス!!」奴に目掛けて投擲した。スマウグは直感的に危険だと判断したのか、これまで以上のブレスを吐いた。しかし、自分の魔力が利用されているその大剣にブレスは引き裂かれる。次いで前脚で白刃取りをするが・・・

「ダメです、諦めてください!」

ユーリが大剣の柄頭を思いっきり踏みつけたことで、とうとう大剣はスマウグの心臓付近へと突き刺さり、視界いっぱいの大爆発を引き起こした。アミタに抱えられたままの俺は「これなら・・・!」スタンバイしておいた魔術を発動する。

黙神の拒剣(コード・ヴィーザル)!!」

爆発に呑まれたスマウグの直上に、呪いのルーンだけで構築された巨剣を展開。そしてまた起きる「あぐっ・・・!」頭痛と胸痛。それらの痛みを気力で抑え付け、「食らえぇぇぇぇぇぇッ!!」奴へと落とした。ルーンの巨剣は濛々と立ち上る煙を切り裂き、チラッと見えたスマウグの腹を貫いた。

「ルシリオンさん、あの大きな剣は・・・?」

「ヴィーザル。相手が負ったダメージを回復させないための呪いの剣なんだ。最後の最後、ユーリの一撃は確かにスマウグに通用した。そのダメージを回復させるなんて愚行は犯したくない」

アールヴヘイムでも使えれば良かったんだが、ヴィーザルは闇黒系術式に位置するものだ。アールヴヘイムのような光の具現と言ってもおかしくない世界では発動できないし、仮に出来たとしてもその効果が著しく低下する。

「勝ったのかしらね・・・」

「ルシル、大丈夫?」

「なんとか生きてるよ」

避難していたアリシアを抱きかかえたキリエが側に来て、アリシアが俺を心配そうに見た。正直「これでもまだスマウグは墜ちていないだろう」そうキリエに答える。この程度で奴に勝てるなんて思わない。ただ、ユーリが居てくれれば必ず勝てるはずだ。

「『みんな。もう少しだ。もう一度、全力全開の一撃をお見舞いするぞ・・・!』」

俺は口頭と念話の両方で、先程のようにスマウグへ仕掛けると伝えた。

 
 

 
後書き
ドーブロ・ユトロ。ドバルダーン。ドーブロ・ヴェーチェ
ANSUR本編でも最強クラスの一角・最下層魔族・竜種・王クラス、黄金竜スマウグ戦の前半戦をお送りしました。次回が決着なんですが・・・。なんかもう今月中にエピソードⅢが終わりなさそうです。新年度の4月からエピソードⅣっていう密かな考えもこれでお~しまい! わ~い、わ~い(壊
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧