ソードアート・オンライン ~黒の剣士と神速の剣士~
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SAO:アインクラッド
第32話 教会
「ユイの着替えも終わったしそろそろ行くか」
「そうだな。アスナ、カゲヤ、サキ、一応すぐ武装できるように準備しといてくれ。あそこは《軍》のテリトリーだからな」
「それなら俺だけで十分だ。軍だけなら俺1人で問題ない。サキ達はユイとの時間を楽しむといい」
「それじゃあ、お言葉に甘えて楽しませてもらうね。行こ!アスナ、ユイちゃん」
「あっ、待ってサキちゃん」
サキが部屋から飛び出し、アスナはユイを連れてサキを追いかけるように部屋から出て行く。
「俺たちも行くか」
「そうだな」
俺とキリトもサキ達を追いかけるように部屋から出た。
「この層に来るのは久しぶりだな」
「そうだな」
俺もキリトも第1層《はじまりの街》に来るのは数ヶ月ぶりだった。
「ユイちゃん、見覚えのある建物とかある?」
「うー……わかんない」
アスナはキリトに抱かれるユイの顔を覗き込み聞くが、ユイは難しい顔で周囲の建築物を眺めた後、首を横に振った。
「まぁ、はじまりの街はおそろしく広いからな」
キリトはユイの頭を撫でながら言う。
「そういえば、東七区にある教会に子供のプレイヤーが集まって住んでるらしいよ」
「そうか、じゃあそこに行ってみるか」
俺たちはその教会を目指して再び歩み始めた。
人影の少ないだだっぴろい道を南東目指して十数分歩くと、広大な庭園めいたエリアに差し掛かった。
「えーと、マップではこのへんが東七区なんだけど………その教会ってのはどこだろう」
「教会ならあそこにあるぞ」
道の右手に広がる林の奥に一際高い尖塔を指しながら俺はキリトに言う。
「あそこか。よし、行こう」
その言葉と共に俺たちは教会へと向かった。
教会の建物は街の規模に比べると小さなものだ。
二階建てで、シンボルである尖塔は1つしかない。
アスナは正面の大きな2枚扉の前まで行くと片方の扉を押し開け、入り口から上半身だけ差し入れ呼びかけた。
「あのー、どなたかいらっしゃいませんかー?」
しかし、声が残響エフェクトの尾を引きながら消えていくだけで誰も出てくる様子はなかった。
「誰もいないのかな?」
「変だな。普通ならサーシャさんが居るはずなんだが……」
俺は教会の中へと入ると少し大きな声で呼びかけた。
「サーシャさん。居ませんか?カゲヤです。少しお伺いしたいことがあるのですが」
すると右手のドアがきいっと開き、1人の女性プレイヤーが姿を現した。
「カ、カゲヤさんですか?」
「はい」
「えーっと………だれ?」
「ここに住んでいる子供達の保護者だ」
「そうなん「カゲヤ兄!?カゲヤ兄だあーー!!」……ほえ?」
サキが言い終わる前に周りの扉から甲高い少年の叫び声と共に子供達が駆け出してきた。
「久しぶり、カゲヤ兄!今日はどんな話聞かせてくれるの?」
「ねぇねぇ!武器見せて!武器!」
「綺麗な宝石ある?」
次から次へと子供達が言いよってくる。
「落ち着けお前たち。後から見せてやるから」
「いつもすみません。カゲヤさん」
「いえ、好きでやってることですから」
「……あの、こちらへどうぞ。今お茶の準備をしますので……」
サーシャさんは呆気にとられているキリト達を礼拝堂の右にある小部屋へと案内する。
俺も小部屋へ向かおうとした時、不意に2階から声が降ってきた。
「あら?カゲヤ君じゃない。珍しいわね。こんなところに来るなんて」
来なければよかった……
瞬時に声の主が誰かわかり教会に来たことを後悔した。
何とかサキがいることだけは隠さなければ……
「久しぶりだな、アテス」
声のした方を振り向くと予想通り、白髪の30歳前後の女性が階段の手すりに座っていた。
「最近全然会わなかったから寂しかったわ〜」
「………用件は何だ?」
「相変わらず冷たいわね。でも、そんなところも私は好きよ〜」
やっぱりこいつは苦手だ……
にっこりと笑うアテスを見ながら俺は再び用件を聞く。
「用件って程のものじゃないけど、奥でクロードが待ってるわよ」
「そうか」
なぜここに来るのがわかったんだ?
ふとそんな事を疑問に思いながら階段を上る。
「ふふ、私もついて行こうかしら」
アテスの近くまで階段を上ると、アテスが手すりから降り近寄ってくる。
だが近付こうとした直後、俺とアテスとの間をナイフが物凄い勢いで通過し壁に突き刺さる。
それと同時に階段の前から殺気にも似た何かが漂ってくる。
「そこにいるのはアテスさんじゃないですか」
ナイフを投げた張本人は笑顔でアテスに話しかける。
殺気がだだ漏れだ……
「あら、いたの。ここはガキが多いから気付かなかったわ〜」
アテスも笑顔で返す。
こっちも抑えられないのか殺気が漏れている。
「オバさんには見分けるのが難しかったですかねー」
「あら、言ってくれるじゃない。この青ガキが」
「なんですか、この白髪ババア」
これだから合わせたくなかったんだ……
この2人は会う度に毎度毎度言い争うのだ。
始まったらもう手がつけられなくなる。
その間にも言い争いは徐々に勢いを増し、階段の間を罵倒やら暴言やらが飛び交う。
この2人は放って置くか
俺は言い争いを止めるのを諦め、奥の部屋へと向かった。
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