戦国異伝
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第二百四十四話 屋島の合戦その十三
「高所から今度はな」
「はい、我等がですな」
「攻め入るのですな」
「そうしようぞ」
こう言いつつだ、長政は自ら槍を振るってそのうえで魔界衆の軍勢を倒していた。その攻めに楯岡も音羽もだった。
苦い顔になってだ、そして言った。
「まずいのう」
「うむ、これではな」
こう二人で話すのだった。
「下の敵を攻めるどころではない」
「我等がそうする以前じゃ」
「ここからは最早攻められぬ」
「無理じゃ」
こう話すのだった。
「ではな」
「うむ、下がろうぞ」
「そしてそのうえで」
「あらためてな」
こう話してだった、二人は周りにいる魔界衆の者達に言った。
「ここには傀儡を置いてじゃ」
「我等は退くぞ」
「よいな、本陣にまで戻り」
「そのうえでじゃ」
「はい、こうなってはですな」
魔界衆の者達のうちの一人がここで言った。
「ここにいても意味がない故」
「本軍と合流してじゃ」
そして、というのだ。
「そこで一丸となって戦うぞ」
「畏まりました」
「上で戦っておられる三太夫殿にもお伝えせよ」
「あの方にもじゃ」
二人は百地のことにも言及した、今彼等の上の山の険しい場所で激しい戦いを繰り広げている彼に対しても。
「そしてじゃ」
「本陣に戻り」
「我等一丸となってじゃ」
「攻めるぞ」
「わかりました、では」
「百地殿にもお知らせしてです」
「下がりましょうぞ」
魔界衆の者達も応えてだった、そのうえで。
彼等は傀儡だけを置いてだった、そして。
黒い渦を出してそれぞれその中に消えた、暫くして戦は長政達浅井家の者達の勝利に終わった。しかし。
長政はその場に倒れ伏している者達を見てだ、眉を顰めさせて言った。
「やはりな」
「はい、魔界衆らしくですな」
「倒れているのは傀儡ばかり」
「人は殆どいませぬな」
「魔界衆の者達は殆ど倒れておらぬ」
「逃げましたか」
「闇の渦をどんどんと出してじゃ」
ここでまた言った長政だった。
「その中に消えておった」
「そしてですか」
「奴等の本軍に戻った」
「そうしたのですな」
「そうであろうな」
まさにというのだ。
「ここは」
「ですな、では」
「敵軍は西におります」
「我等はこれから西に向かって下り」
「そこからですか」
「攻めますか」
「いや、そうしたいがじゃ」
それでもとだ、長政は苦い顔で述べた。
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