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戦国異伝

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第二百四十四話 屋島の合戦その十二

「さて、御主達はどれだけおるか」
「そこは順序が逆の方がよいのではないか?」
 海野にだ、望月が突っ込みを入れた。
「むしろ」
「それもそうか」
「うむ、わし等一人一人がな」
「この連中千人に相当するか」
「そっちの方がよかろう」
 こう話してだ、そしてだった。
 飛騨者と十勇士が構える、それを見てだった。
 魔界衆の忍達の中からある者が出て来た、霧隠がその者を見て言った。
「百地三太夫か」
「そうじゃ」
 老人は皺がれているが強い声で答えた。
「この者達の棟梁じゃ」
「魔界衆の忍の者達のか」
「百地家のな」
「そうか、名は聞いている」
「そしてその名を聞いたからには御主達の最後じゃ」
「そう言うか、しかしその言葉そのまま返しておく」
「貴殿達のことはもうわかっています」
 伊佐が落ち着いた声で言った。
「その全てが」
「だからか」
「貴方達に負けることはありません」
 右手に持っている錫杖の鐘が鳴る、その中での言葉だった。
「決して」
「さて、妖術を使うか」
 穴山は背中にある鉄砲を両手に持ち替えている。
「果たしてそれがわし等に通じるか」
「見ものじゃな」 
 百合もその手に鎖鎌を持っている。
「それもまた」
「随分と余裕じゃな」
「御主達のことはわかっておると言ったな」 
 根津も既に刀を抜いている、その刃が銀に光っている。
「だからよ」
「ならば見せてやるわ」
 百地も負けていない、少なくとも自信はあった。
 それでだ、こう言ったのだった。
「御主達に我等の忍術をな」
「妖術は使わぬか」
「忍には忍の術じゃ」 
 これが百地の煎の考えだった。
「それを見せてやるわ」
「ふん、そうでなくては面白くないわ」 
 猿飛は右手に忍者刀、左手に苦無を持っている。そうして身構えての言葉だった。
「ではやるとするか」
「その言葉地獄で後悔するのじゃな」
 百地もその身体から妖気を出して身構えた、一ノ谷では忍の者同士の戦いもはじまっていた。そしてその下では。
 長政が高所に陣を敷いていた魔界衆の軍勢に攻め入っていた。彼は自ら先頭にいて馬上からやりを振るいながら軍勢に命じた。
「よいか、ここでじゃ」
「はい、この場にいる敵はですな」
「全て討ち取る」
「そうするのですな」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「今福原の街が砲撃と火矢で攻められている」
「吹き飛ばされ焼かれ」
「街が払われていますな」
「間も無く通れる」
 建物に邪魔されずにというのだ。
「上様の軍勢が通れる様になるまでにじゃ」
「ここにいる者達を倒し」
「攻められる様にするのですな」
「そういうことじゃ」
 長政は家臣達に答えた、浅井家の者である彼等に。
「だからよいな」
「畏まりました」
「ではここで倒しましょう」
「そうする、そしてな」
 長政はさらに言った。 
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