DQ3 そして現実へ…~もう一人の転生者(別視点)
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アホの子ラーミア、大空を行く!
一言で言うと肌寒い土地、レイアムランド。
希望としては海岸沿いに祠を建ててほしかったのだが、意外と内陸に建設されてる…
さみー思いをしながら、船から下りてトボトボ目的地を目指す勇者様ご一行。
卵(生き物?)があるのだから、もっと暖かい土地で奉ればいいのに…
何だってこんな寒い場所なのですか?
勿論こんな不満は口には出さず、黙って従う健気な私。
どうにかこうにか到着すると、一秒でも早く寒さから逃げたかった様で、お父さんが素早く室内へと入って行く。
私もそれに続き、ホッと一息心を落ち着かせる。
「うひゃぁ~…でっけー卵だな!目玉焼き何人分だろうか?」
「私はスクランブルエッグが好きですぅ!」
入って目に止まるのは大きな卵…
寒さから逃れ、余裕の出来た私とお父さんは、神聖なる不死鳥に対し無礼極まりない発言で心を和ます。
「「ようこそいらっしゃいました勇者様」」
大きな卵の存在感が強すぎて、手前の美少女双子に意識が行かなかった私達…
「うぉ、双子だよ!ザ・ピーナッツ!!」
美少女をスルーしてしまった事への恥ずかしさからか、古い話題で場を和まそうと試みるお父さん。
「お父さん、古い…もしかして、そのころ全盛期?」
「ちょ、失礼な娘だなぁ!知識として知っているだけだよ!だって昭和の名曲を数多く歌ってるじゃん!溜息が出る様な…」
確かに名曲揃いよね!
「まぁ…『恋のバカンス』ね!」
「じゃぁ、マナ・カナって言えば合格点?」
「う~ん…まぁいいでしょ!ギリセーフで…」
オスギとピーコって言わないだけマシね。
「「あの…話を進めても宜しいでしょうか?」」
私達の意味不明会話に困惑し、恐る恐る話しかける双子ちゃん。
「あ?あぁ…ごめんごめん!双子が珍しくて、つい…」
そうよねぇ~…双子って珍しいわよね………あれ?そう言えば身近にも双子が居た様な………気のせいか?
「「私達は待ち続けてきました。世界を救う勇者様が、各地よりオーブを集め訪れる事を!」」
はわぁ…素晴らしい程の同調ぶり…
「うわぁ~…ユニゾン…」
この二人ならイスラフェルを倒すのは容易だっただろうに…
「「さぁ勇者様…6つのオーブを6つの台へと奉って下さい」」
「あ、はい!」
双子ちゃんの美しいユニゾンに見とれていたアルルさん…
急に話を振られ、慌てて従っている。
「「私達、この日をどんなに待ち望んだでしょう!さぁ祈りましょう!時は来たれり…今こそ目覚める時!大空はお前の物…舞い上がれ空高く!!」」
双子ちゃんの言葉に反応するかの様に、卵が大きく振動しヒビが表面に走る。
そして遂には卵は割れ、中から白く美しい鳥が羽ばたき、祠の外へと出て行った。
「「伝説の不死鳥ラーミアは蘇りました。ラーミアは神のしもべ…心正しき者だけが、その背に乗る事を許されるのです。さぁラーミアが外で、あなた達を待っています」」
そのままどっかに行っちゃってたら笑えるよね。
「うわぁー!でっかい鳥ー!!ちょ~可愛い!」
お父さんて大きいのが好きよね…
愛人も全て巨乳だし…
「君のお名前は?………そう、ラミーアって言うの!う~ん可愛い!!ねぇねぇビアンカー!この子可愛いよぉ!連れて行こうよぉ!!」
大きな鳥に抱き付き、撫で回して愛撫するお父さん…
ラーミアも心地よいらしく、目を細めで擦り寄っている。
「あの…リュカさん…ラー「ちょっとリュカ!そんな大きな子を飼う余裕はありません!食費が凄そうじゃないのよ!」
え!?
何を言ってらっしゃいますのお母様…
私達はラーミアを…目の前の大鳥を連れて行く為に、危険な思いをしてまでオーブを集めたのですよ。
『家じゃペットは飼えません!』的な口調で断っちゃダメですわよ!
「え~……こんなに可愛いのにぃ~!」
「ダメよ!プックルを始め、他にも色々居るでしょ!」
居るけど…用途が違うからね!
それとも食費の心配ですか?確かにこの大きさ…大量に食べそうねぇ…
「変化の杖で人間に化ければ、食費はかからなくなるかもね」
私は馬鹿なやり取りをする両親に、呆れ半部分で馬鹿な提案をしてみる。
採用なんてされる期待などなく、『馬鹿か、そう言う事じゃない!』って言ってきたら、『そっちこそそう言う事じゃねーだろ!』って言い返すつもりでした。
「なるほど!マリーちゃんナイスアイデア!」
でもお父さんは指パッチンで私を褒め、変化の杖をラーミアに託し話しかける。
「人間の姿を想像して、この杖を振ってごらん」
ラーミアもクェーと一鳴きすると、杖を加え豪快に振り回しお父さんの指示に従っちゃう…
「はわぁ!?ホントだ、ラーミア人間になったよ!リュカ、ラーミア人間になれたよ!」
どんな想像をしたのか、4.5歳の幼女に化けるラーミアちゃん…
「うわ…本当になれたよ…流石ファンタジー…」
そんな幼女に抱き付かれ、一番ビックリしてるのはお父さん…
「あ~ぁ…リュカ、責任取りなさいよ!」
責任?…この場合の責任とは?
「リュカ!ラーミア、リュカ好き!ラーミア、リュカの為頑張る!」
大好き!?
もしかしてやっちゃったの?
エルフ・ホビット・異世界人…そして不死鳥。
リュカ・愛人列伝に新たなる種族が…
その名も不死鳥ラーミア!
いきなり抱き付き、撫で回した事に絶大な効果があった様で、ラーミアはお父さんにゾッコンだ!
「…では、ラーミアの事はリュカさんに一任する事にします。異存はありますか?」
「「「「「……………」」」」」
シラケた瞳でラーミアを押し付けるアルルさん。
そして誰も異論を唱えない。
首に幼女をぶら下げて、途方に暮れるお父さん…
大人のナイスバディー美女に変身させて、子作りを楽しむのかしら?
今後のお父さんに期待よね。
「さて…それではお空の旅へと参りましょうか!」
色々準備(特にメンタル面)を済ませた私達(特にお父さん)は、ラーミアに変身を解かせ大鳥に戻すと、順次背中に乗り込んだ。
でもお父さん以外を乗せるのが嫌なラーミアは、あからさまに不機嫌そうな表情をする。
鳥のクセに生意気ね!
きっと人間の姿だったら舌打ちしてるわよ。
「そう言えば、マナ・カナは今後どうするの?」
勝手に双子を“マナ・カナ”と呼び、今後の彼女等を心配するフェミニストパパ。
「「マナ・カナではありません!私達はスフェルとスフェアです!」」
名前、あったんだ…そりゃそうか!
「あ…うん、どっちがどっちだか分からないけど……ともかくどうすんの?此処に残って、処女を守り通すの?」
「何でそう言う聞き方しか出来ないんだ!?」
それは私達のパパだもの…お兄ちゃんにも私にも、同じ血が流れてるのだもの!
「「………分かりません。私達は、ラーミアの卵を守る事を使命として生きてきました…その使命から解放されて、どうすれば良いのか………」」
何だろう…如何なる質問にもユニゾンで答えられる様に、日夜練習していたのだろうか?
常に同じ動きをする気持ち悪い双子だ!
あ!思い出したわ…そう言えば私のお兄ちゃんとお姉ちゃんも双子じゃん!
全然揃ってないから忘れてたわ!
似てるのは面だけだもんね。
「じゃぁさ…新しく出来た町を紹介するから、そこで暮らしてみない?」
フェミニスト心が言わせるのかしら…それとも何時でも口説ける様に、ルーラで行き来可能な場所に住まわせたいだけなのかしら?
「「しかし…私達は、今までこの地で暮らしてきました…都会で暮らす知恵など持ち合わせておりません…そこで暮らす方々に、ご迷惑をお掛けする事になるかも………」」
「あはははは、大丈夫だよ!出来たての町だから、どっちを向いても余所者だらけ♡ 奇抜な双子が現れても、誰も気にしないと思うよ。それに町長は、僕にとって大事な人なんだ…サポートしてあげてよ。出来る事だけで良いからさ」
う~ん…分からないわ…
何時もこんな感じで女性に接してるし…
お父さんの口説き文句が効いたらしく、双子ちゃんもラーミアに乗り込みお父さんに擦り寄っている。
「よし、行こう!」
お父さんの掛け声一つで、一気に天空まで舞い上がるラーミア…
あまりの勢いに、落ちるかと思う事が幾度も…
ラーミアの“リュカ以外振り落とす”感がヒシヒシと伝わってくる空の旅だ。
よし…可能な限りラーミアと仲良くしよう!
嫌われない様に仲良くしよう。
風圧に晒される空の旅は快適とは言えず、飛ばされない様にしがみつくのがやっとの状況…
でもお父さんだけがテンション高く、気持ちよさそうに『浪漫飛行』を歌い出してます。
そして気付けば歌に酔いしれており、立ち上がって熱唱しております!
言うまでもない事ですが、強烈な風圧に身を晒されれば、否応なく吹き飛ばされるのが自然の摂理…
非常識なお父さんとて例外ではないのですよ。
「リュカさん!」
当然の様に飛ばされ落下するお父さんを気遣い、アルルさんが大声で呼びかける。
「大丈夫だよ…ルーラを使って、一足先にエコナバーグへ向かうから…」
だけど息子を始め、その他の方々は心配など微塵もしておらず(双子ちゃんですら、風圧に耐える事で精一杯)、冷静な答えで気にしない様促す。
だが、そんな事関係ないのはラーミアで、大好きな殿方を救うべく急旋回&急降下で助けに向かう健気な少女!
普通に乗ってるだけでも風圧に負けそうなのに、そんな事をされたのなら皆が泣き叫ぶ大空の旅。
ジェットコースターって良いよね…
だって幾重にも安全装置が付いてるんだもの…
この乗り物の安全装置って何?
「あははは、絶叫マシンは堪能出来た?」
器用にラーミアの上へ舞い戻ってきたお父さんが、無責任極まりない口調で嘯いた。
「ふざけんなクソ親父!テメーぶっ殺すぞコノヤロー!」
嫌だ…もうこのオッサン嫌だ!
「エコナー!また来たよー!!」
妻と愛人以外から、“殺してやる”感を出しまくられても全く気にしない男が、明るい口調でこの町の長に挨拶をする。
「リュ、リュカはん…出立してから10日しか経ってないんに、もう戻って来たんか?」
ガッツリ仕事中のエコナ町長…結構迷惑そうな表情だ。
でも、そんな事も気にしない男は、町長を抱き寄せると耳元で呟く様にお願い事を言う。
「あのね…エコナにお願いがあって来たの」
「な、何?お願いって…?」
忽ちウットリトリップのエコナさん…
麻薬より危険だ!
「あの双子を雇ってほしいんだ!」
ホテルの一室で、男が女に甘える為に、首筋や耳たぶへキスをするのは理解出来る…
でもオフィスに乗り込んで、部下の人達の前で行う行為ではないと私は思うけど…世間一般ではどうなんですかね?
「あ…べ、別に構へんけど…あの二人は…ん…何が…出来るんや…?」
色っぽい声を出しながら、それでも素質を確認するのは流石だ。
「さぁ…何が出来るのかは知らないなぁ…でも、真面目で良い子達みたいだから、僕の子のベビーシッターになってもらおうかと思ってね!」
「え!?マジかリュカはん!ウチ妊娠したんか!?」
愛人の腹部をさすりながら、妻の目の前で言うおめでたい話。
うん。何度も言うがおめでたい話なので、誰も怒ったりはしない…
トリップ状態から一気に覚めたエコナさんも、嬉しそうだし…
でも一般常識に照らし合わせると何かがおかしいよね!?
誰も何も言わないから大人しくしてますけど、どうにも釈然としないこの状況。
「と言うわけで、あの双子の事をお願いしたいんだ…長い時間、人里離れた僻地で暮らしていたから、些か常識外れな事もあるかもしれないけど、僕の相手をするよりは楽だと思うからよろしくね」
「何だ、自覚はしていたのですね父さん」
サクサクと話は進んで行くけど、釈然としませんですわ。
「そっか…無事ラーミアを復活させたんね!」
色々と言いたい事もある状況だが、これまでの経緯を簡単に説明し終えアルルさん達もマッタリくつろぐ。
「ほな、もう船は要らんやろ?水夫共々この町で雇うてもエエで!」
「本当に!?それは助かるわエコナ!正直、退職金を出す事が出来るわけじゃないし、船を譲った所で、その後の事が心配だったのよ…」
「良かったねアルル…彼等の第2の人生が守られて」
おぉ…やっとあのロリコンからおさらば出来るのか…
利用はさせて貰ったけど、正直キモかったから嬉しいわ。
「あんなバカ共の事など気にする事ないのに…船を与えたってまた海賊に戻るだけかもしんないし、スマキにして海に放り投げればいいんだよ」
身持ちは分かるけど、それは拙いだろうて…
「馬鹿な事言わないでよ!彼等にはとても助けられたのよ!今後彼等が正しい人生を進める様にしなければ…」
「そうですよ!いくら父さんが彼等を嫌っているからって、それは酷すぎでしょう!」
真面目カップルじゃなくたってクレーム付けるぞ。
「ヘイヘイ…ラブラブ勇者様はお優しい事で…」
まぁ勿論冗談だったのだろうから、他の誰も何も言わないのだろうけど…
「ほな決まりやね!…んで、今はどの辺を航海してんの?」
「「「……………」」」
ん?…今、どの辺を航海している…って?
「……どうしたんや?」
「………に………れた…」
「え、何!?」
誰も何も言えない中、アルルさんが代表して何かを呟くが、あまりにも声が小さすぎてエコナさんが聞き返してしまう。
「レ、レイアムランドに忘れてきたの!!」
驚愕の事実に私達も驚いた!
誰一人として気付いた者は居らず、レイアムランドの海岸に置き去りにしておりました。
ごめんねカンダタ・モニカさん!
「ぷふー!!何、アルル達はカンダタの事を忘れてたの?あはははは、ちょ~うける~!」
「な、なによ!リュカさんだって忘れてたんじゃないですか!」
「僕は憶えてたよ。でも、もうアイツ等必要ないし、あそこに捨ててきても良くね?って思ったから!」
お前…美少女双子の事は気にしてたクセに、お世話になった水夫さん達には敬意無しかよ!
皆さん船を忘れてきた事に混乱していると、
「じゃぁサクッと僕が行って来るよ。ラーミア、行こう!」
と言って、お父さんがラーミアと一緒に出て行こうとする。
常人の思考回路で考えれば、その方法が一番手っ取り早く妥当なのだが…
「そんなのダメよ!」
何故かお母さんが反対する。
「え、何で?」
まったく何でだ?一番良い提案だと思われるけど…
「ラーミアと2人きりなんて絶対ダメ!エルフ・ホビット…そして異世界人。この上、鳥との間にも子供を作る気!?」
………お母さんは真面目な顔で突飛な危険性を指摘する。
普通に考えれば鼻で笑ってシカトなのだが…お父さんの事だし………
お兄ちゃんも『あり得る…』と言い、ウルフからは『節操が無いから…』とか言われ、誰も弁護はしてくれない。
だけどお父さんは上手で、
「今更…もう1人増えたって問題なくね?」
って鼻で笑うのです……何でお前が鼻で笑う側なんだよ!?
さて…
紆余曲折はありましたが、折衷案としてお母さんが一緒にお父さん・ラーミアと共にレイアムランドへカンダタ達を迎えに行く事になりました。
その間、私達は時間を持て余します…
そこで気を利かせてくれたのは出来る女エコナ町長!
「アルル、これが今のエコナバーグで用意出来る、最高の装備や。好きな物を持って行っ
てや」
世界各所から珍しく素晴らしい装備品を集め、私達へプレゼントして頂けるみたいです。
思わず“キリンが逆立ちしたピアス”って口ずさんじゃいました。
あの歌、この部分しか憶えられないのよね…
みんなそれぞれ、自分の戦闘スタイルに合ったアイテムを手に取り、エコナさんへお礼を言う。
ハツキさんはフットワークを活かす為『闇の衣』お選び、ウルフは『ゾンビキラー』『ドラゴンローブ』『水鏡の盾』で剣術面を強化する。
勇者アルルさんが選んだのは『ドラゴンメイル』と『ドラゴンシールド』だ。
やはりどちらかというと前衛派なんですね。
私も良さ気な物を見つけてしまい、可愛くエコナさんにお強請りしちゃいます。
「エコナさん。私はこれを貰っても良いですか?」
「それは『細波の杖』やね…エエよ、マリーちゃんが使ってや」
細波の杖…何故だか攻撃魔法しか使えない私には結構貴重な防御アイテム。
この杖を使うと、私でもマホカンタを自分に張ることが出来ちゃうのだ!
素敵なアイテム入手でホクホクな私…
大きな鏡の前で“魔女っ子美少女マリーちゃん”を演じている。
後はマスコットキャラ的な可愛いのが居れば完璧ね。
ミニモンは見た目はともかく、性格と口が悪いからボツね…つー事は、新参入のラーミアを使うしかないわね…
それと決め科白ね。
何が良いかしら…“月に変わってお仕置…”イヤイヤ………
丸パクリは拙い。
では“月に一度はアレが来る!”……………って意味分かんない!
しかもまだ来てないし…
つーか“月”が関係ないのだから、取り入れちゃダメか?
「ラーミアもー!!ビアンカばっかりズルイー!!」
私が鏡の前で悦に浸っていると、お父さん達が帰ってきたらしく大声のラーミアに驚かされる。
お父さんの首にぶら下がり、幼女は何やら我が儘を言っている…
ダメだ…アホの子っぽくてマスコットに使えない…
「何があったの?」
一緒に入ってきたカンダタに事の次第を尋ねるアルルさん。
「さぁ…俺にもよく分からねーんだ…」
だがカンダタ達にも分からない様で、一緒になって首を傾げる。
使えねーヤツだ!
「次、ラーミアの番~!」
「いや、だから…ラーミアはダメだって…」
珍しいことにお父さんが困り顔で幼女を宥めてる。
お母さんも口を出せずにあらぬ場所を見詰めてる。
「あの…一体何がダメなんですか!?」
勇気を出して効いたのは、勇気の塊である勇者アルル。
「「………」」
だけども夫婦揃って黙秘権使用。
「ラーミア、リュカのお願いきいたの!なのにリュカ、ラーミアのお願いきかないの!」
しかし情報は別の所から漏れるもの…
アホの子が自らの権利を主張するかの様に秘密を暴露っちゃう!
「ラーミアちゃん…どういう事か詳しく説明してくれる?」
普段はお父さんの奇行に困らされる側のアルルさん…
今回は逆襲の機会だと思ったのか、優しい口調で幼女から情報を引き出そうと試みる。
「あ、ちょっと…」
阻みたいのはお父さん。
このままにすれば、気にはなっても有耶無耶に出来るので、アルルさんを止めようと手を伸ばす。
「一方的にラーミアちゃんへ言う事をきかせて、自分は何もしないなんて酷すぎですよ!ジャッジは僕等が行いますので、先ずは状況確認させてもらいますから!」
ところがドッコイ、普段の奇行の被害者は他にも居り、お兄ちゃんがアルルさんとタッグを組んで原因究明に乗り出した。
「あのね…リュカ、ラーミアに言ったの!『ビアンカと2人きりだから、もっとゆっくり飛んで』って!だからラーミア、ゆっくり飛んだ!」
私達と一緒の時もその一言を言ってよ!
何だったの、あの絶叫マシーンは!?
「そしたらリュカとビアンカ、ラーミアの上で交尾を始めたの!」
「「「「え!?」」」」
突然の危険ワードに声が出ない私達…幼い姿の女の子から『交尾』等とは聞きたくなかった…
「だから次はラーミアの番なの!ラーミアもリュカと交尾するの!!でもリュカ、ラーミアのお願いきかないの!!」
「「「…………………………」」」
どうしよう…どうフォローすれば良いのだろう?
お父さんが有耶無耶にしたかったわけが分かりました…
「おう、我が息子!ジャッジしろよ…状況が判ったんだろ!早くジャッジしてみろよ!」
事態を有耶無耶に出来ない事への怒りか…余計なことに口出しした息子への怒りか…
些か厳しい口調で叱咤するお父さん。
お兄ちゃんもアルルさんも普段の父に対し、意趣返し的意味合いで踏み込んだトラブルだ。
今更ながら己の安易さを呪っているのだろう…
私はどうするべきかな?
お兄ちゃん達を助けながらラーミアの好意を勝ち取る…うん。それで行こう!
「ラーミアちゃん…アナタはお父さんと交尾出来ないのよ。何故ならアナタは人間の事を解って無いから…」
私は出来る限り優しい口調で少女に語りかける。
見た目もそうだが、実際にこの子は幼いのだ。
「ラーミア、人間の事が解ってないのか?」
実際に幼いと分かっていても、この子の思考には辟易する…まさに“アホの子”だ!
「そうよ…先ず『交尾』って言葉は使わないし、1度ダメって言われたのに、しつこく迫るのもダメなの!」
「そうかぁー…人間は『交尾』って言わないかー!じゃぁ何て言う?」
え!?何て言うって…そ、それはちょっと…
「そう言う事は自分で調べる物なのよ。人に聞いたのでは、本当の意味で人間の事を解った事にならないの。もっと人間の事を理解して、そうしてからお父さんにお願いしてみてね♥」
「うん。ラーミア頑張る!マリー、ありがと!」
ふー…何とか凌いだ…最終的にはアホ父に押し付ける事が出来そうだし…まぁ及第点よね。
「ありがとうマリー。助かったよ…」
事態が収拾しラーミアを別室へ追いやった後、お兄ちゃんがお礼を言ってきた。
「良いのよお兄ちゃん。何時も助けて貰っているお返しだから」
ホント…このところ父親には苦労させられっぱなしだからねぇ…
「何だよ…ジャッジ出来ないなら、しゃしゃり出るなよ!」
事態を大きくされて文句を言うお父さん…
「普段の行いが悪いから、こう言う時にこう言う目に遭うのよ!もっと自重する様に心がけてよ!」
私は普段の鬱憤を晴らすべく言ってやりましたわよ!でも…
「自重する僕など、最早 僕では無い!そんな常識的なパパが欲しいなら、どっか余所の家の子になりなさい!我が家のパパはこれがスタンダードです!」
何でだろう…何でこんなに自分に自信があるの?
そして、それを認めるお母さんにも腹が立つ!
「しかし…空の上でヤるとはなぁ…何考えてるんや!?」
暫く家族間で睨み合いが続いた…
それに耐えられなくなったエコナさんが、思わず口を出し事態を動かそうと試みる。
「はぁ…まったくです!父さんの非常識さには、言葉もありませんよ!」
「そうは言うけどねティミー…大空で大好きなビアンカと『交尾』するのは、新鮮で燃えるシチュエーションだったよ!お前も試してみれば?」
だからってラーミアの上では…ねぇ?
「そうよね…やっぱりマンネリって良くない物ね!…でもティミーとアルルちゃんには、まだ訪れてないでしょう。今はまだ、普通のでも新鮮なのよ!」
何でこの夫婦には常識が通用しないのかな?
何でこの夫婦には羞恥心ってのが存在しないのかな?
見た目だけでなく性格面でも似ていない夫婦なのに、“似た者夫婦”って言葉がよく似合う夫婦も珍しい…
腹は立つけど羨ましい限りだわ…
私もそんな夫婦になりたい…そう言う思いでウルフを見ると、懸命にメモを取る彼氏の姿が目に映る。
アレを真似しようと考えてるのかな?
えー…空の上ではちょっと…
でも…少しは興味あるなぁ…
彼が“どうしても”って言うのなら、私………♥
後書き
マリーが鏡の前で悦に浸るシーン…
書いてて凄く楽しかった!
そんなワケで決め科白募集。
公然と使えるのでお願いします。
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