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DQ3 そして現実へ…~もう一人の転生者(別視点)

作者:あちゃ
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身内が神の様に崇められる

私達は今サマンオサに来てます。
お父さんがね『最終決戦の前に、お世話になった人達へ挨拶に行こう!』って珍しくまともなことを言ったの…
だからエコナバーグを真っ直ぐ南下したサマンオサに来てます。

でもね、本音はね『ラーミアで乗り付けたら、みんな驚くんじゃね?』って事みたいなのよ。
だからね、私も言ったの…
『それ、いいわね!』って…

でも私だけじゃないのよ…
お兄ちゃん以外、みんなが同じ様なことを言ったのよ。
毒されてるわよね…







「やっぱ城下はこうでなきゃね!」
まだ完全に復興出来てはいないのだが、それでも結構な賑わいを取り戻しているサマンオサの城下町。
大鳥(ラーミア)を見て人々は驚きながらも興味心から私達の方へ集まってくる。

ラーミアを幼女に変え、自慢気に城下を闊歩する…
すると、
「あ!リュカ様だ!!」
と、お父さんを指差し大声で感激する少年が一人。

その少年の声を切っ掛けにお父さんの周りに人集りが………
集まった人々皆が口々に感謝を述べている。
どうやらこの国を救ったのがお父さんであることを知っている様子だ。
何で?

「な、何でこんなに有名なの?」
群がる人々に困惑しながら、ここまで有名になっていることを疑問に思う我が父…
私も疑問に思っているが、巻き込まれたくないので距離をとって見学することに…

或る美術店の店先で、この事態をどう切り抜けるのか楽しんでいると、お店に飾ってある絵に視線が行く。
何処かで見たことある人物が、醜い化け物相手に勇ましく戦っている絵だ…

「お父さん…こんな絵が…」
ヤバイ…笑いそうだ…でもここで笑ったらお父さんにぶっ飛ばされる…きっと…
「な、何じゃこりゃ!?」
どうにか人集りを掻き分け、この素晴らしい絵(笑)の前に辿り着くと、混乱した表情でその素晴らしい絵(笑)を見詰めるお父さん。

ぷふっー!!ダメだ…我慢出来ない!
だってこの絵のモチーフは、この国を救ったお父さんなんだもん!
しかもこんなシーン無かったし(大笑)

「こんなシーン知らないぞ…」
その他にも展示されている自分がモチーフの絵を見詰め、愕然とした声で叫ぶマイパパ。
神々しく後光が差しているパパが、貧しく飢えた人々に食料を配布する絵(笑)
神々しく後光が差しているパパが、大勢の悪そうな兵士達と戦っている絵(笑)

その全てに『フィービー』とサインが記載されている。
フィービーって、あのフィービー?

私は神々しく後光が差していないお父さんに、これらの絵の作者がスリをしようとしてお父さんに捕まった少女のことであると伝えようとしたのだが、おもっきし怒り心頭状態だった為、余計なことはしない方が身の為だと悟りました。

神々しく後光が差していないお父さんは、神様を見るかの様に恭しくする店主に『ちょっとこの2枚の絵を借りるぞ!』と、半分怒鳴りながら伝える。
だが店主は『そんな借りるなんて…どうぞ、お好きな物をお持ち下さいませ。リュカ様にでしたら、店ごとお譲り致しますから』と、お布施の様に店を貢ごうと言い出す始末。
どうしよう…何この状況…どうしてこんなに面白いの!?

因みにお父さんの捨て台詞は…
『うるせー!返すってんだろ!』
だった…









「コラ、テメー!何だこの仕打ちは!?」
王様の居る会議室に乗り込むなり、怒りを爆発させる神々しく後光が差していないお父さん。

本音はともかく立前としては、お世話になった方達にご挨拶をする為の訪問だったのに、無礼全開で挨拶もしない我が父を咎める者は居なさそう。
だってパパはこの国では神様なんだもん!(笑)

「リュ、リュカ殿…!?ど、どうしたのですかな?」
ほら…この国で一番偉い王様が、この無礼を咎めることなく敬語を使ってる…
「どうしたじゃねー!何だこの絵は!?僕の事をバカにしてんのか?」
世間一般では馬鹿にするどころか、ありがたい物として崇めているんだと思いますけど…違うの?

「おぉ…良く描かれた絵だろ!ワシも何枚か持ってるが、どれも気に入っているぞ!」
「何が『お気に入り』だ!このモチーフは僕だろ!バカにしているとしか思えないぞ!作者を呼べコノヤロー!説教してやる!!」


何故この国の英雄が怒っているのか分からない様子の王様達。
「…リュ、リュカ殿…何をそんなに怒っているのだ?」
と心から不思議そうに問いかける。

しかし
「作者が来てから話す!」
の一点張りで、彼等の困惑は深まるばかり。
やはりお父さんは世間一般の人々には理解出来ないのだろう。






待つ事15分…
「あ、リュカ!私の事を呼んだって本当!?私もリュカに逢いたかったから、すごく嬉しいわ!」
思った通り私達の知っている少女が現れた。

「お、お前がこの絵を描いたのか?」
「そうよ!私のリュカに対する思いを、絵に表現してみたの。結構良く描けてるでしょ。サマンオサでは人気があるのよ」
流石に知り合いの少女が現れ、尻窄みになるかと思ったのだが…

「ふざけんな、バカにしてるとしか思えないぞ!」
態度を変えないお父さんは凄いのだろう。
「な、何で怒ってるの…?わ、私は…リュカの事を尊敬して描いたのよ!?バカになんてしてないわ!」
でも尊敬の念から描いたのがこれらの絵なのだろう…
急に怒鳴られて涙目になってしまうフィービー。

「………分かった…説明するから座りなさい」
ちょっとバツが悪そうに声を整えて、彼女を椅子に座らせる。
竜頭蛇尾ってこう言うのを言うんだろうなぁ…

「あのねフィービー…君が僕の事を尊敬してくれるのは嬉しいんだけど、この絵の僕はまるで神様みたいに描かれてるよ!止めてくんない!?」
先程までの怒りに任せた勢いはなく、優しい口調で宥める様に話すお父さん。

「何で?リュカは私にとって英雄よ!この国の救世主よ!神と言っても良いくらいよ」
もう妄信的に崇めてる…いっそこの地で布教活動を始めちゃってもよくね?
お布施いっぱい集めて、金ぴかの宮殿作って、新しい宗教団体を作っちゃってよくね?
名前は…“光の教団”なんつって(笑)

「それは違うよ…僕は人だ!なんの力も持ってない平凡な人間なんだ!」
「そんな事無いわ!リュカは私達を…この国を救ってくれたじゃない!力無き者に出来る事では無いわ!」
「はぁ…違う違う…違うよ!もし僕が神ならば、この国があんな酷い状況になる前に何とかしたんだ…そこのバカ王が変化の杖を奪われ、王位をも奪われた時に現れて、あのバケモノを倒したんだ!そうすれば力無き弱者が虐げられ、フィービー…君の様な()を不幸にする事も無かったんだ!」
そうよね…もし本当に神様が居るのなら、一大事になる前に手を打ってるハズよね。

「僕を神として人々に知らしめる事は酷い侮辱なんだ…いい加減不幸の極みで現れて、怒りに任せてバケモノを倒し、復興を手伝わずに帰って行く…そんなの神じゃ無い!そんなの英雄じゃ無い!…でも人ではある。自分の手の届く範囲でしか物事を解決出来ない凡庸な人間だ!」
私もそう思う…

確かにお父さんは凄い人だ。
尊敬出来る部分もある…
でも尊敬出来ない部分も大いにあるのだ!
何処の世界に其処彼処で子作りする神様が居るだろうか?

「でも…リュカが居たから…リュカがこの国に来てくれたから、私達は今生きている…それは事実よ」
その事実とお父さんが神であることはイコールじゃない。

「神とは…誰にも出来ない事をやってのける存在だ!僕のやった事は、僕じゃなくても出来る事…バケモノと戦う力さえあれば、誰が行っても良かったんだ。ただ偶然…本当に偶然僕がこの国へ訪れ、あの惨状を目の当たりにし、怒りを滾らせたからこうなっているだけなんだ」
人間として行動した結果、大勢の人々を救うことが出来ただけ…

「……………」
彼女は俯き黙ってる。
きっと納得出来ないのだろう…でも言いたいことは理解出来たのだ。

「はぁ……」
そんなフィービーを見て大きく溜息を吐くお父さん…
「僕はね…目の前で父親を殺されたんだ………」
そして自身の生い立ちを語り出す。



「………だから僕は神など信じない。もし神が居るのなら、此処まで酷い事をされたのは何故だ?せめてビアンカを攫うのを防いでくれても良いじゃないか!8年間も石になる事を防いでも良いじゃないか!だが実際は何もしてくれなかった…何故なら、神など存在しないから!」
ゲームでプレイしたので知ってはいたが、実際体験談を聞くとやりきれない思いに押し潰されそうになる。

「フィービー…僕の事を描くなとは言わない。でも描くのであれば、僕を人として描いて欲しい。僕は多少人より戦えるだけであって、神でも英雄でも勇者でも無い…直ぐに感情に流され、善悪を見失い、利己的な事しか考えない臆病な人間だ。正義の心に動かされてこの国を救ったのではない…弱者を虐げるクズ共に、同じくらいの苦痛を与えてやりたいと思う邪悪な心から戦ったんだ!結果が同じなだけで、この絵の様な人物など存在しなかったんだよ…何故なら僕は人だから…ただの人なんだからね」

フィービーは泣いていた…
尊敬する人のことを理解出来ず、結果として侮辱してしまった事に。
だけど彼女の所為ではないだろう…

「よし!ワシからお触れを出すとしよう。『リュカはこの国の英雄であって、神ではない!必要以上に神聖視する事はリュカに対する侮辱であり、本人の望むところではない!救国の英雄に対する無礼は、国家に対する不敬である』と…どうかね?」
全ての話を聞き、王様が突然提案する。

「う~ん…『英雄』と言うのが嫌だが…まぁしょうがないか」
お父さん程、自身を大物に仕立てるのを嫌う人は居ないだろう。
一般的に人は、他者から崇め尊敬される事を望むものだ。
だからこそフィービーは神聖視した絵を描いたのだろうから…






さて…
面白事件が一段落し、本来の目的である“ご挨拶”を行うお父さん達。
先程まで怒ったり困ったりしてたお父様だけど、カンダタをパシリに使うなど、何時ものお父さんに戻ったご様子。

因みに幼女ラーミアが私に小声で尋ねてきた。
「カンダタは下っ端か?」
「ええそうよ、アイツは下っ端よ」
「ミニモンよりもか?」
「ん~…ミニモンよりかは上ね。ちょっとだけ…」
「ふざけんな!俺様は高と(ゴン!)たはぁ~!!」
「そうか…ミニモンが一番下っ端か!」

私に後頭部を殴られ蹲るミニモンには目もくれず、パーティー内の序列を噛み締める幼女…
出来るだけ優しく接している私は彼女(ラーミア)の中では上の方だろう。
結構色々頼られて悪い気はしない。
このまま行けば、私にも気を使って空中でスピードを落としてくれるはずだ…



だけど所詮はアホの子だ…
次なる目的地ポルトガへ大鳥に乗って移動するが、我々を振り落とさんばかりのスピードに、必死でしがみつく。

「リュカさんが言わないと、ゆっくり飛んでくれないんじゃ、俺達にはこの上では出来ないよ…」
どうやらウルフも例の計画を実現したいみたいで、アホの子のアホさ加減に脱帽気味。
私としては残念な様な、一安心な様な…微妙に複雑乙女心だ。

つか、早急にアホの子を手懐けないと…



 
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