| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

DQ3 そして現実へ…~もう一人の転生者(別視点)

作者:あちゃ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

愛の結晶

優勝出来なかった…
何故だか私は優勝出来なかった!
お父さんの威光を利用して、審査員達に圧力をかければ、問題なく楽に優勝すると思ってたのに…

結局優勝したのは、私の前に歌った少女だった。
お父さんにアドバイスされ、力の限りを発揮出来た女の子が優勝しやがった…
むぅ…アドバイスさえしなければ、威光を吹き飛ばす程の実力は出せなかったのに…

お父さんの威光があてにならないのなら、もう実力で上手くなるしかないじゃない…
………練習しよ…またこんな大会があった時に優勝出来るよう、頑張ろ!





「可愛さで言えば、マリーがダントツでしたから!」
ガッツリ落ち込んでいる私を励ます為か、ウルフが“歌唱力”以外のポイントで褒めてくる。
「分かったわよ!しつこいわねぇ…」
優勝発表が終わり、エコナ町長のお屋敷で食事を振る舞われる現在まで、何度となく同じ事を言い続けてくるウルフに、アルルさんもキレ気味に言ってくる。

私としては“歌唱力”を評価されたい…
この両親の娘ならば、可愛さが水準以上になるのは当然で、実力は微塵も含まれない。
『歌が上手いね!』ってチヤホヤされたいよ~!!

「でも、今回は喉自慢大会だからねぇ…歌唱力が物を言う大会だ!ミスコンじゃないんだよ」
「そんなこと関係ない!マリーが1番だった!」
もう止めて…
惨めな気持ちになってくる…

「ウルフ君………最近君は義父に似てきたぞ………もしかして、実は血が繋がっているのか?」
暴走気味のウルフに、お兄ちゃんが突っ込みを入れるけど…
「実の息子が、実の息子らしくないから、俺がそれを補完してるんです!ちょっとは責任を感じて下さいよ!」
止まりそうにない暴走狼。

「まぁまぁ…今度参加する時は、ウチから多少手心を加えるようにと言うとくから…」
「「そんな事はダメ!」」
ちょっとエコナさんの一言に期待を寄せた瞬間、夫婦揃って拒絶する私のご両親…
まさか…今回ワザと優勝させなかったんじゃないだろうな!?

「実力が伴わない評価は、自分も他人も不幸にする!」
「そうよ!今回の評価は、マリーの実力に見合った物だったわ!」
ぐっ…た、確かにそうだけど、両親に面と向かって言われると、傷口が広がる感じに落とされる。

「リュ、リュカはん等って…結構厳しい親なんやねぇ…」
た、確かにそうね…
一見すると子供(特に娘)に甘い印象を受けるけど、王族である事を秘匿させ一般の子供達と共に学校へ通わせる態度は、身分に拘る人間ではない様だ。
そして子供達を身分に拘らない人間に育てようとしている。

「努力せずに得た地位では、向上心を持ち得ない。一生懸命に頑張って優勝したアルエットちゃんは、今後も歌の練習を続けるだろう。来年の彼女は、今日よりも歌が上手くなっている!」
ゔっ…おもっきしそのつもりだった私…

「それは分かるけど…自分の子には、苦労させたくないやんか!?」
そうよ!苦労はしたくないですわよ!
「無用な苦労ならば、親として全力で取り去ろうとは思うけど…するべき苦労は与えるべきだよ。大して上手くもないのに、周りから『歌が上手い』と持て囃される娘を、僕は見たくない!下手な歌に酔いしれている娘なんて………」
確かに…そんな滑稽な姿を晒したくはない…
うん。やっぱり実力で頑張ろう!


「はぁ…やっぱ、リュカはんの生き方は勉強になるわぁ~…」
私が密かに決意を固めると、エコナさんがテーブルの上にイエローオーブをドンと置く。
「エコナ…これって…」
アルルさんは期待を込めて確認する。

「せや…アルル達がお探しの『イエローオーブ』や!結構な値はしたけど受け取ってや」
「ありがとうエコナ!これでバラモス城へ行く事が出来るわ!」
イエ~イ!
一時はどうなるかと思ったが、概ねハッピーな状態でイエローオーブを入手出来た。

「でな…別に交換条件ってわけやないんやけども…リュカはんにお願いがあるんや…」
お?“結構な値がした”って言ったけど、それと同価のお願いをするのかな?
「何…?面倒な事言われるくらいなら、イエローオーブは要らないよ!」
でも流石はお父さんです。
愛人からの…私達の為に色々してくれた愛人からのお願いなのに、内容を聞く前から顔を顰めて拒絶の体勢。

「ちゃうねん!交換条件やない!オーブはもうアルル等の物やねん…如何なる理由でも、返してもらうつもりは無いねん!」
「じゃ、何?」
破格の申し出だが、お願いされる事に拒絶気味のお父さんは態度を変えはしない。

「先日な…イシスの女王自ら、この町を視察に来たんや。その時な…自慢されたんや…女王様の娘を…『見て見て!私とリュカの、可愛い娘よ!』って」
へー…遂に生まれたんだ…私の新たな家族が…
「………ウチ、めっちゃ羨ましくて!だからウチにもリュカはんとの子供が欲しいねん!」
「「「「…………………………」」」」
えっと…それって…えっと…………

「う~ん………まぁいいけど………早速、今晩頑張ってみる?」
いやいやいや…そんな軽い口調でOKする様な事柄じゃないでしょう!
「ちょ…父さん!そんな非道徳的な事を簡単に了承しないで下さい!」
お兄ちゃんの意見は最もだ!

「何?簡単じゃ無ければ良いの?難しく考えた結果なら良いの?」
だが思考回路の違う男には効果がない!
「そ、そう言う意味では…」

「それに、もう慣れろよ!お前、腹違いの妹が何人居ると思ってるの!?」
それは結果論だし…
今回は着手前の事だし…
「か、母さんからも何か言って下さいよ!」
そ、そうよ!奥さんが一番出しゃばるべき事でしょう!

「………」
私もお兄ちゃんも期待を込めてお母さんを見詰める…お母さんもジト目でお父さんを睨んでますわ。
「大丈夫だよビアンカ…エコナが終わったら、直ぐに君の番だから!足腰立たなくなるまで頑張っちゃおうね!」

だがやっぱり思考回路の違う男には効果なく、チャラくウィンクして返事する。
私もお兄ちゃんも“そうじゃねーよ!”って心で突っ込みを入れたのだが、お母さんの心を的確に読み切ったのはお父さんだった様で、足腰立たなくなる事への期待でトリップしちゃっておりました…

あぁ…ダメだ…
この夫婦には常識が通用しないのだ…
「ちょ…」
更に言い縋ろうとするお兄ちゃんの服を引っ張り、口だけ動かして伝える…
『もう諦めて』と…



 
 

 
後書き
まだ俗物感があるマリー…
人間らしくて私は好きです。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧