ロックマンゼロ~救世主達~
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第59話 同盟
前書き
コカペトリ戦ですが、頭に血を上らせたコカペトリがバカ正直にゼロに突っ込んでセイバーに滅多斬りにされたと思って下さい。
レジスタンスのトレーラーの転送室で、ルージュが端末を操作していた。
「転送完了まで…2…1…転送!!お疲れ様でした」
転送室のトランスサーバーに出現したゼロにルージュがいつもの労いの言葉を言うと、シエルがゼロに歩み寄る。
「人間の姿のない都市って…何か寂しいものだわ…私達が戦いに勝ったとしても、人間とレプリロイドが歩み寄らない限り、こういう景色は無くならないのかもしれない…ゼロ…頑張りましょう、人間とレプリロイドの未来のために…!!」
今までレプリロイドのために戦ってきたシエル。
“人間とレプリロイドの未来のために”
ゼロはこの部分に今までとは違うシエルの心境の変化が見て取れた。
今までレジスタンスのレプリロイド達と生きてきたシエルは、ある意味で人間という生き物を忘れていたのかもしれない。
人間達との接触は、シエルに改めて人間とレプリロイドの共存を考えさせるきっかけになったのかもしれない。
「(どうやら人間達との接触は悪いことばかりではなかったようだな…)」
ゼロはシエルの言葉に無言のまま頷くことでそれに応えた。
「ところで、ゼロ。話したいことって何かしら?」
シエルの問いにゼロは少しの間を置いて口を開いた。
「俺があの都市の罠に手間取っていた時に、人間の女が通信を寄越してきた。そして都市のコンピュータにハッキングし、ウィルスプログラムを除去した。エックスとルインのことを知っていることから、バイルのような奴ではないらしい」
「そんなことがあったの…でも、私達に協力してくれたのよね…レプリロイドを認めてくれる人間がいてくれた…」
「…これで少しは希望が見えてきたんじゃないのか?人間とレプリロイドの共存のな…」
「そうね…!出来ることならその人に会ってみたいけれど…今はそれどころじゃないし…。まだそんな人がいるなら、可能性は0じゃないわよね?」
「ああ…」
少なくとも可能性が無いわけではない。
シエルの願いはエックスの願いでもあるので、ゼロは最後まで協力は惜しまないつもりだ。
そしてアリア達の拠点のトレーラーの転送室でもアリアが端末の操作をし、トランスサーバーにエックス達を転送させた。
「はーい!転送完了!!エックス君、ルインちゃん。体の調子は大丈夫かな?いくら耐熱性能に優れたレプリロイドである君達でも、あんな高熱の中でずっと戦うのは危険だしね」
「いえ、大丈夫です。」
「あ、でも、今は触らないで下さいね。アーマーの熱が異常に上がってますから」
拠点に戻ったことで体温は急激に下がってきてはいるものの、まだ人間が触れていいような熱ではない。
「OK、出来れば二人には少し休んで欲しいところだけど。少しやりたいことがあるんだ」
「やりたいことですか?」
「うん、君達がいたレジスタンスの諸君と協力関係に結びたいんだ。」
「私達がいたレジスタンス…ゼロ達とですか!?」
「当たり~、私もね。流石に私達だけでバイルの糞爺とガチでやり合えるとは思ってないんだ。だからね、君達がいたレジスタンスと共闘しようと考えたわけ、人間とレプリロイドが分かり合う第一歩になると思うよ~」
笑みを浮かべながら言うアリアにエックスとルインも確かにと頷いた。
「ルインちゃんとエックス君もいいよね?」
「「はい」」
「それじゃあ、通信を繋げるよ。あーあー、テステス。聞こえるかな?レジスタンスの皆さん」
「(あれ?でもアリアさんって、どうしてレジスタンスへの通信コード知ってるんだろ…?)」
聞いたところで教えてはくれないだろうが、アリアだからと思えば納得出来た。
レジスタンスのトレーラーの転送室ではルージュが黙々と作業をしていた。
いつの間にか、人工太陽のあったエリアが無力化されていたことに気付いて調査していたのだが、発信元不明の通信が来ていることに気付く。
「どうしたの?」
「発信元不明の通信です。どうしますか?」
ルージュの問いにシエルは少し悩んだ後、頷いた。
「繋いで頂戴」
通信を繋げると、モニターにアリアの姿が映る。
『おー、通じた通じた。えっと、君達がエックス君とルインちゃんの仲間のレジスタンスだよね?間違ってないよね?』
「え?あ、あの…」
「この声は…」
もしかしたら別勢力のレジスタンスからの通信かと思っていたシエルだが、全く知らない人間の女性から来たことに戸惑いを隠せない。
一方ゼロは聞き覚えのある声に顔を顰めた。
「お前…あの都市で罠の動きを止めた奴だな」
『おおー、覚えてくれたんだ。そうだよゼロ君、私があの都市のコンピュータにハッキングしてウィルスプログラムを取っ払ったんだ~。えっと、君がシエルちゃんでOK?』
「え?は、はい…」
『そんな緊張しなくても~、私達も今やネオ・アルカディアから逃げ出して君達とてんで変わんない立場なんだから、自然体でいてくれれば嬉しいな~。はい、リラックスリラックス』
明るい雰囲気に安心したのか、シエルは体から少し力が抜けたのを感じた。
どうやら気付かぬうちに緊張していたようだ。
「何の用だ?」
このままでは話が進まないためにゼロがアリア達の用件を尋ねる。
『おっと、話が逸れちゃったねえ。それじゃあ単刀直入に言おうか、君達…私達と共闘しないかい?』
「え!?」
「共闘だと?」
『うん、正直言ってさあ。私、バイルの糞爺がネオ・アルカディアでやりたい放題なの滅茶苦茶腹立つの。だからさ、一緒に協力してバイルの糞爺をぶっ潰さない?あの糞爺の悔しげな顔を見てやろうよ?』
ニッコリと素晴らしい笑みを浮かべながら言うアリアに唖然となるシエル。
アリアの後ろからルインが出て来た。
『アリアさん、そんな直球なこと言われても向こうが反応に困るだけじゃないですか』
『ん~?でもルインちゃん、こういうのは直球が一番じゃないかな?』
『あはは…久しぶりだね』
「ルイン!!」
久しぶりに見た親友の姿にシエルは目を輝かせた。
『うん、そっちも元気そうで何よりだよ。ラグナロク作戦の行われている地域が一つ攻略されたのを見ると、ゼロ達がやったんでしょ?』
「ええ、そうよ。もしかして…」
『うん、人工太陽があったエリアは私達が無力化した。エックスと一緒にね』
「エックスも?」
『やあ、ゼロ。久しぶりだね……君達は今、エリア・ゼロにいるんだろう?』
「ああ、正確にはエリア・ゼロの近くだがな」
『そう……まさか、あの時、スペースコロニー・ユーラシアが墜ちた場所が地上の人間達の希望になるなんて夢にも思わなかったけど…』
『エックス君、感傷に浸っているとこを悪いけどさ。シエルちゃん。どうする?私達と組む?組まない?どっち?』
「ゼロ……」
「お前が決めればいい。お前の判断に任せる」
シエルが此方に顔を向けて来たが、ゼロはシエルの判断に任せることにした。
しばらく悩んだ後、アリアに向かって頷いた。
「アリア…さん…だったかしら?こちらこそ…お願い」
『OK!!今から座標送るから良かったらうちの拠点に来てよ!全員で歓迎するからさ』
モニターから映像が消えると、アリアとエックスとルインがいる拠点の座標が送られてきた。
「座標が送られてきました。………入力完了、行けます」
「ゼロ」
「ああ」
アリア達の拠点に行こうとトランスサーバーに乗り込もうとした時、偶然会話を聞いていたアルエットが入ってきた。
「シエルお姉ちゃん、ゼロ。私も一緒に行っていいかな?私もルインお姉ちゃんやエックスに会いたい」
「え…?いいのかしら?」
「向こうは人数を指定していない…別に構わんだろう。迷惑になれば戻せばいい。転送を頼む」
三人がトランスサーバーに乗り込むと、ルージュが作業を開始した。
「了解…転送準備完了…転送!!」
三人は転送の光に包まれ、アリア達の拠点にあるトレーラーの転送室に転送された。
アリア達のトレーラーの転送室のトランスサーバーに転送されたゼロ達はアリアからの熱烈な歓迎を受けた。
「やあやあお二人さん!お二人さんとは直接会うのは初めてだねえ、おや?後ろにいるその可愛い子は誰かな?」
「あ、この子はアルエット。私達の仲間です」
シエルからそれを聞いたアリアはアルエットを怖がらせないように屈んで目線を合わせた。
「そっかそっか、アルエットちゃんね。私はアリア。お姉ちゃんって呼んでくれると嬉しいな~」
「お姉ちゃん?」
「そうそう!ん~可愛い。こんな可愛い子を処分しようだなんて、当時のネオ・アルカディアは外道だね!!」
アルエットの無垢な可愛さにやられたアリアは小さな体をギュッと抱き締めた。
「…そろそろ本題に入ってくれないか?」
「おっと失礼ゼロ君、アルエットちゃんのあまりの可愛さにやられてたよ。じゃあ私達の拠点にどうぞ」
トレーラーから出ると、ジャングルと化した施設を指差す。
「こ、これは凄いわ…」
「この施設はかつて地上、宇宙に存在したレプリロイドの軍隊、レプリフォースの極秘施設なのさ。永い永い時の中で忘れ去られていたんだ。かつてシグマウィルスのせいで暴走した自然が今や私達の役に立ってんだから人生ってのは分かんないもんだねえ」
「レプリフォース…」
一瞬だけ記憶を刺激させた単語にゼロは僅かに顔を顰めた。
「みんな~レジスタンスの人達が来たから挨拶して」
「はあい」
奥から出て来たのはアルエットくらいの見た目の子供達だった。
子供達はゼロ達を見ると駆け寄ってくる。
「お姉ちゃん、アリアお姉ちゃんのお友達?」
「お兄ちゃんもレプリロイドなの?」
「遊んでくれるの?」
三人を囲みながら尋ねてくる子供達に、アリアは手を叩いてストップをかける。
「みんな~、一気に聞いたら答えられないでしょ?」
【は~い】
「ごめんね、驚いたでしょ?この子達はね、ネオ・アルカディアの遺伝子操作を受けた子供達なの。あのままネオ・アルカディアに残してもバイルの糞爺に悪用されるのがオチだから連れてきたんだ」
「遺伝子操作…ネオ・アルカディアではまだそれをやっていたのね…もしかしてあなたも?」
自身も遺伝子操作を受けているからか、同じ境遇の子供達に悲しげな表情を浮かべ、もしかしたらアリアもと思って尋ねてみた。
「まあ、私も普通の人間じゃないことは確かだね」
「そう……」
「ここには、もう一人の“エックス君”の政策に疑問を抱いていた人ばかりなんだ。ほとんどがレプリロイド工学員なんだけど。理不尽な理由で自分が手塩にかけて造った子供をスクラップにされたんだから当たり前だけどね。少なくてもシエルちゃん。エリア・ゼロの人達は君達に対してキツいかもしれないけど、ここではそんなことないからゆっくりしていきなね。何なら子供達と遊んでいきなよ」
「お姉ちゃん、遊んでくれるの?」
キラキラと期待に満ちた表情を浮かべる子供達にシエルは微笑むと頷いた。
「そうね、少しの間だけど。遊びましょうか…アルエットもね」
「う、うん…」
人間の子供と遊ぶのは初めてなのでアルエットは少し緊張しているようだ。
「アルエットちゃんって言うの?」
「そうだよ、シエルお姉ちゃんがつけてくれたお名前なの」
「へえ、“雲雀”か。いい名前だね。シエルちゃんのネーミングセンスもいいじゃない」
「えへへ…」
アリアに名前とシエルを褒められて嬉しいのかアルエットは照れ笑いを浮かべている。
シエルとアルエットは子供達に引っ張られていく。
「シエルとアルエットはあっさり馴染んじゃったね」
「子供は善悪に敏感だからね。シエルもアルエットもいい子だから好かれるんだよ」
「お前達も随分と馴染んでいるようだな」
エックス「まあ、アリアさんを見てると緊張するのが馬鹿らしくなってきて…久しぶりにミッションをしたけど、やっぱりバスターのエネルギーチャージは時間がかかるね…ネックを補うための武器は手に入れたけど…」
「そう言えばエックス。あの斧とか盾とかどうしたの?」
「あれはメカニロイドの武器チップを回収してバスターに組み込んだんだ。武器可変システムの応用さ」
「便利だね」
「武器を手に入れたのはいいけど、これから慣らさないと…」
「大丈夫大丈夫、心配ご無用!!いつか私がエックス君を改造して両手両足頭部の五連バスター持ちに…痛だだだだだ!!?ちょっとエックス君っ!!?」
ふざけたことを抜かす現時点の元女神様の関節極めました。
「止めてくれませんか?僕がそんな変な改造を受けるわけないでしょう」
「痛だだだだだだだだだだだだだだだだだだっ!!?ちょ、止めてエックス君!!私の腕はそっちに曲がらな…あぎゃあああああああああああああっ!!!?」
悲痛な叫び声を上げるアリア。
ロボット三原則?
人間じゃない女神には適応されませんでした。
後書き
エックス、女神様の関節極めました。
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