ロックマンゼロ~救世主達~
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第60話 灼熱粒子砲と深海
前書き
ミッション続き
アリア達の拠点で子供達と遊んでいるアルエット。
そしてネオ・アルカディアに所属していた頃の知り合いと会話しているシエル。
「どうやら子供達はシエル達のことが気に入ったようだね」
「…そのようだな」
子供達と戯れる二人を見ながらエックスとゼロもお互いの近況を話し合っていたのだが…。
「ねえ、これがセミって虫なの?」
「そうだよ。セミは今は絶滅してしまったけど、昔はクマゼミというのもいたんだ」
今では珍しい紙媒体の古い図鑑を見ている研究者と子供の会話を聞いてゼロはクマゼミを想像してみる。
熊と言えば、ポーラー・カムベアス。
複数の腕と触角の生えたカムベアスの背中にセミの羽が生えている姿をしており、そして外敵に対して威嚇しながら“ぼふあああああああああっ!!!”と吠える姿を想像した。
「昔の地上にはそんな化け物がいたのか」
「ゼロ、とりあえず君が考えているのは確実に間違っているのは断言出来るよ」
「?」
引き攣った笑みを浮かべながら言うエックスにゼロは疑問符を浮かべた。
「いやー、ルインちゃん。ゼロ君ってば天然だね…」
「昔からああですよ。」
生暖かい目でゼロを見遣るアリアとルインにゼロは更に疑問符を浮かべる。
そして次の瞬間に手を叩いてゼロ達の意識を自分に向けた。
「とまあ、そろそろほのぼのタイムは終了。ラグナロク作戦の阻止の続きをしようか。こちらのメンバーはゼロ君、ルインちゃん、エックス君の三人。ゼロ君達の三人で行けば確実なんだろうけど、時間があるというわけじゃないので別々に行動してもらうよ」
「私は構いませんよ。その方が効率がいいでしょうし」
「うんうん。そういう勇敢な発言、私は大好きさ。というわけでエックス君とゼロ君には別エリアに行ってもらいます」
そして全員がトレーラーの転送室に移動し、モニターに残りのラグナロク作戦が行われているエリアを表示する。
「出来れば今すぐ無力化して欲しいのはこの二つのエリアなんだ。灼熱粒子砲のあるポイントA-4、深海の潜水艦ね。この二つのうち優先度が高いのは灼熱粒子砲のあるエリアで、ここに三人のうち二人が行って欲しいな。潜水艦に向かうまでは水中を移動することになるから水中での高い人に行って欲しいんだけど」
「そっか、なら私が潜水艦を何とかします」
水中ならルインのLXアーマーがあるため、深海でのミッションは適役だろう。
「なら、僕とゼロが灼熱粒子砲のあるエリアだね」
「俺とエックスが向かうエリアの情報をくれ」
「OK、まずはルインちゃんが向かう深海から。巨大なドリル型の潜水艦が、海底を潜航中との情報が入ってきたの。情報によると、この潜水艦には大量の爆薬が積まれていて、恐らくは海底から更に地中へと掘り進んで地中で潜水艦を爆発させることで、地盤を崩して大規模の地震を起こすのが目的じゃないかなと思うんだよ。潜水艦が地中に到達する前に、侵攻を阻止してね。」
「了解、アリアさん。LXアーマーならある程度広範囲を探れますから」
「それでゼロ君とエックス君が向かうエリア…ポイントA-4にバイル軍によって大型の粒子砲が設置されたの。現在は定期的にレーザーを発射してエリア内を破壊しているけど…どうやら、太陽エネルギーをチャージするタイプのようで徐々に射程距離がエリア・ゼロに向かって伸びて来ている…。エリア・ゼロが粒子砲の射程距離に入る前に、粒子砲の動力部を破壊してくれないかな?」
「「了解」」
二人の返事にアリアは満足そうに頷くと、トランスサーバーの端末を操作しようとする。
「よし、それじゃあ…まずはエックス君とゼロ君がトランスサーバーに乗り込んで」
言われた通りにエックスとゼロの二人がトランスサーバーに乗り込む。
「転送準備完了…転送!!はい、次はルインちゃん!!」
「はい!」
二人は転送の光に包まれ、灼熱粒子砲のあるエリアへと転送され、続いてルインもトランスサーバーに乗り込んで深海へと転送される。
「三人共、気をつけてね…」
三人の無事を祈りながら、シエルは静かに帰りを待つ。
そして灼熱粒子砲のあるエリアへと転送されたエックスとゼロは周囲を見渡す。
『ゼロ君、エックス君。その粒子砲を外部から破壊するのは難しいかも。内部に侵入して動力部を破壊して。今、内部への侵入ルートをスキャンしてるから…』
時折粒子砲から放たれるレーザーを見つめながら、ゼロは口を開いた。
「いや、スキャンはいい…粒子砲の砲口から直接、内部に入る」
『え゙?流石に危険すぎない?』
「…どうやら太陽エネルギーのチャージが始まっているようだ…時間がない、ミッションを開始する…!!」
『ああもう…分かったよ。二人共、絶対に生きて帰るんだよ?』
「分かりました」
エックスが答えるとアリアが通信を切り、ゼロとエックスがダッシュで先に進んだ。
「時々…」
「?」
駆け抜けながらも聞こえたエックスの呟きにゼロが振り返った。
「今の状況が夢なんじゃないかと思う時がある。新たなボディを得て、ルインやゼロと一緒に戦っているのが、現実を受け入れられない僕の都合のいい夢なんじゃないかと…」
「……」
「すまない、変なことを言って……エリア・ゼロへの射程圏に入る前に急ごうゼロ。」
「ああ…だが、エックス……」
「ゼロ?」
「お前は戻ってきた。今はそれでいいだろう?」
昔のように自分達がまたタッグを組んで出撃するなど、本来どれだけの幸運が重なれば出来るかなどゼロには分からない。
しかし、今こうして共に敵地を駆けていることは夢でも何でもないことくらいはゼロでも分かる。
「ああ…」
ゼロはZセイバー、エックスはメガアックスを構えながら先に進む。
「エックス、お前はそんな武器も持っていたのか?」
「あの時も言ったけど、人工太陽のあったエリアを無力化するためのミッションで破壊したメカニロイドの武器チップを組み込んだんだよ。切れ味も悪くない」
エックスはアックスを振るい、時にはXバスターで遠くの敵を狙撃しながらメカニロイドとバリアントを倒して突き進む。
ゼロも同じくセイバーとバスターショットで迎撃しながら先に進むのだった。
しばらく先に進むと空から巨大な竜を思わせるメカニロイドが舞い降りた。
それを見たゼロはセイバーを構え、エックスは属性を電気属性に切り替えてバスターのチャージをするのだった。
「行くぞエックス」
「行くよゼロ」
紅と蒼の残像がメカニロイドに迫る。
そして一方、ルインは転送と同時にLXアーマーに換装すると、水中を泳いでいた。
『ここに敵の潜水艦がいるはずだよ、いくらでもルインちゃんでも、完全に水中に特化したレプリロイドと違って深海の水圧の耐えられるのも限界があるの。カウントが終わる前に、何とか潜水艦の中へ入ってね!!』
「了解!!」
ウォータージェットを最大まで噴かして、サーチ能力を最大まで上げながらルインは深海を泳ぎ回る。
途中でメカニロイドが妨害して来るが、ハルバードを振るって両断する。
「よし、この調子なら…後少しで…!!」
『よーしよしよし。潜水艦の入り口はすぐそこだよ。ルイン…ゃん急…で!あらら……波…』
途中で電波が届きにくくなったのか通信にノイズが入り始めた。
しかしある程度まで聞き取れたために返事をする。
「はい!!」
潜水艦への入り口を発見し、ルインはすぐさまそこに侵入する。
『ルインち………聞………?ど………潜水…に、侵……う………みたい…ね』
「あ、もう通信が聞こえない……仕方ない。自分の判断で進むしかないか」
奥に進むと広い場所に出て、巨大な竜を思わせるメカニロイドが現れた。
氷属性の攻撃をするということは炎属性が弱点のはず、即座にFXアーマーに換装し、オーバードライブを発動すると、メカニロイドに向かっていくのだった。
そして場所は粒子砲のあるエリアまで戻り、エックスとゼロはメカニロイドを撃破寸前にまで追い込んでいた。
「レイジングエクスチャージ!!」
自己強化能力を発動し、エックスはチャージを終えたバスターを構えた。
メカニロイドが尾の部分からビームを放とうとした時、ゼロがチャージセイバーで叩き斬る。
「今だエックス!!」
「ダブルチャージショット!!」
電気属性のダブルチャージショットを喰らわせ、メカニロイドを撃墜した。
メカニロイドが地面に激突したショックで地面が崩落したが、結果的に粒子砲内部に侵入出来た。
「ゼロ、急ごう」
「ああ」
互いに視線を合わせ、立ち塞がるメカニロイドとバリアントを薙ぎ払いながら、途中でファイタルのチップをバスターに組み込むと、バスターの銃口からファイタルのフレイムソードが出現する。
あまり重くなく使いやすそうだが、残念なことにこのエリアの敵は炎属性ばかりなのであまり役に立ちそうにないが、貴重な属性を持った武器なので回収していく。
時々放たれるレーザーをやり過ごしながらエックスとゼロは先に進んでいった。
一方、潜水艦内部ではメカニロイドに多少の苦戦はしたが、何とか撃破したルインはZXアーマーに換装し、ZXセイバーとZXバスターを状況によって使用し、敵を薙ぎ払いながら先に進む。
段差を越え、奥のシャッターを潜ると奥の方が水に満たされており、ルインはHXアーマーに換装すると、迷わず飛び込んで奥に進んだ。
そこには一体のイカ型レプリロイド、テック・クラーケンがいた。
「(ネオ・アルカディアの四大軍団の一つ“斬影軍団”に所属していたレプリロイド。巨大なドリル型潜水艦を海中基地とし、軍団長であるファントムからの直接指令のみで動く特殊部隊の長だった。クラーケンの任務はネオ・アルカディア内部の反逆者の内偵や処分。任務の性格上、他の軍団長にすらその所在を知られることはなく、故にファントムの死後、その存在は完全に深海の闇へと消えていた。闇に隠れての不意打ちによる戦法を得意とする。属性は氷属性か…なら、FXアーマー…いや、この手の相手には…)」
弱点である炎属性のFXアーマーではなく、無属性のPXアーマーを選択したルイン。
その姿にクラーケンは一瞬だけ体を硬直させたが、すぐに冷静さを取り戻す。
「…来たか…ゼロではなかったのが残念でならんが、某はアインヘルヤルが八闘士の一人にして…今は亡きファントム様率いる斬影軍団の生き残り、テック・クラーケン!!バイルの支配という屈辱にも耐え、この作戦に参加したのも…全てはゼロに倒された我が主、ファントム様の無念を晴らすため!!…しかし、バイルのような外道に手を貸し、外道に堕ちた某にはそれすら許されんらしい…。ルイン…我が主、ファントム様の面影を持つ者よ!!我が氷の刃を受けてみよ!!」
「それじゃあ、親としてファントムの顔に泥を塗らない戦いをするかな!!」
右腕のチャージを終え、十字手裏剣を発現させた。
クラーケンも両腕の刃を構える。
「たあっ!!」
手裏剣をクラーケンに向けて勢い良く投擲する。
「轟け!アビストレイサー!!」
迫る手裏剣に対してクラーケンはそれを回避し、地を這うクナイを放ってルインを攻撃する。
「よっと!!」
ハンキングウェッジを天井の氷に引っ掛け、ぶら下がりながらクラーケンにクナイを投擲した。
「中々やるではないか…ミラーシールド!!」
青い球が氷の反射鏡へと変化すると、間を置かず光弾を二発放つ。
反射鏡が光弾を弾き、軌道が読みにくい。
「バリア展開!!」
即座にバリアを展開し、光弾を防ぐ。
その隙を狙ってクラーケンが両腕の刃を伸ばしてくるが、両腕の鈎爪で受け止める。
本来の使用法とは違うがこの際だから気にしない。
クラーケンが両腕を振るってくるが、鈎爪で受け止める。
「ならば!!」
クラーケンは闇の中に身を潜め、気配を消した。
流石はファントムの部下だけあって気配の消し方は一流だが、しかし、ルインにそれは通用しない。
スコープの精度を限界まで引き上げ、クラーケンの位置を探り当てると右腕のチャージを終えて手裏剣を投擲した。
「馬鹿な…!?」
気配は完全に消していたというのにアッサリと見破られたことに驚愕するクラーケン。
まるでファントムと戦っているかのような感覚を覚え、気付かぬ内に笑みを浮かべていた。
「ふ…はは…ファントム様の姿と力を持っているだけあって強いな…だが、某とて簡単に負けるわけにはいかん!受けてみよ!アイスジャベリン!!」
氷の槍が数発繰り出され、こちらに迫ってくる。
ルインはそれを回避しながらダッシュでクラーケンとの距離を詰めた。
「せいやっ!!」
再び手裏剣を投擲する。
クラーケンは咄嗟に両腕で受け止めるが、ルインは一気にジャンプしてクラーケンの背後を取ると、クナイを投擲する。
投擲されたクナイはクラーケンの背中に突き刺さる。
「ぐっ!ならばこれならばどうだ!ミラーシールド!!」
再び反射鏡を生み出し、アイスジャベリンと反射弾のリフレクトショットを放つ。
反射鏡により、光弾は反射するので軌道が読みにくい。
「とどめ!!」
攻撃に気を取られているルインに両腕の刃で斬り掛かるクラーケンだが、ルインの体はそれをすり抜けた。
「な…っ?」
「十字手裏剣!!」
背後からオーバードライブで強化された手裏剣がクラーケンを両断する。
クラーケンの刃が迫る寸前にオーバードライブを発動し、シャドウダッシュで回避し、背後から十字手裏剣を投擲したのだ。
真っ二つにされたクラーケンは自虐の笑みを浮かべた。
「フ…フハハッ…!バイルのような輩に力を貸し…外道に落ちた某に、誇り高きファントム様の魂を救えるはずも無し…か…だが…主を失った某に…出来ることはこれぐらいしか無かった…!ファントム様…お許しを…!」
それだけ言うとクラーケンは間を置かずに爆散した。
「少なくても君の気持ちはファントムに伝わると思うよ」
返事はないが、出来れば届いて欲しいと願いながらルインは転送の光に包まれた。
そして場所は粒子砲内部に戻り、エックスとゼロはレーザーをやり過ごしながらメカニロイドやバリアントを迎撃し、奥のシャッターを抉じ開けると、奥には亀型レプリロイドのヒート・ゲンブレムがいた。
「エックス、気をつけろ」
「ああ…」
「ラグナロク作戦は、愚かな人間の目を覚ますための作戦であり…何より、自分が尊敬しているクラフト隊長が指揮する誇り高き作戦であります!自分はアインヘルヤル八闘士が一人…ヒート・ゲンブレム!我らが部隊とクラフト隊長の邪魔をする障害物は…自分が排除するであります!!」
「誇り高い作戦か…地上に残った僅かな自然を破壊し、人間達を苦しめることの何が誇り高いんだ…!!」
ダブルチャージショットを放つエックスだが、ゲンブレムの甲羅には傷一つ付かない。
まるで遥か昔に戦った、シールドナー・シェルダンやレイニー・タートロイドなどを思い出させる防御力だ。
すぐさまゼロがチャージを終えたセイバーを構えて突撃した。
「はあっ!!」
「ふっ!!」
チャージセイバーが繰り出されるが、ゲンブレムはそれを背中の甲羅で受け止めると、直後に強烈なアッパーを繰り出す。
「ぐっ!!」
「ゼロ!!」
吹き飛ばされたゼロを受け止め、アッパーと同時に放たれた火炎をかわす。
「放射!!」
頭部をボディの内側に引っ込ませると、火炎放射を波打つように放つ。
二人はダッシュで距離を詰めると腹部にエックスはダブルチャージショット、ゼロはセイバーによる三連撃を浴びせた。
「ぐっ!?」
ダブルチャージショットと三連撃を喰らったゲンブレムは後退する。
「(どうやら攻撃の時だけ無防備になるらしい)」
長年の戦闘経験でそう判断したエックスは再びバスターのチャージをし、ゼロも気付いたらしく、いつでもセイバーを振るえるように構えていた。
「ならば…突貫!!」
炎を纏いながら高速回転するゲンブレム。
炎を纏った回転突進を繰り出し、左右の壁を往復バウンドしながら上に移動していく。
ゼロとエックスはバスターを構えてチャージショットを放つが、回転の勢いが強すぎて弾かれてしまった。
そしてゲンブレムは四肢と頭部をボディの内側に引っ込ませた状態で回転し、360゚の回転ビームを繰り出す。
「危ない!!」
「チッ…」
壁を蹴りながら回避し、回避を続けたままエックスはダブルチャージショットとゼロはチャージセイバーを繰り出す。
しかし攻撃中に受けたのにも関わらず、ビームの放射は止まらない。
即座にエックスは一撃の威力が高いアックスを装備し、ゼロはセイバーで斬り掛かった。
「てやあっ!!」
「はああっ!!」
アックスとセイバーで斬りつけていくエックスとゼロ。
エックスが使っているアックスはそれなりの重量があるため、セイバーのように小回りが利かないものの一撃の破壊力は勝る。
何度も斬りつけられたことで、ビームの放射が終わった時には既にゲンブレムも相当なダメージを負っていた。
「くっ…前進!!」
こちらに向かってくるゲンブレムだが、その程度の速度では高速で動くエックスとゼロを捉えることは出来ない。
腕を振り上げて炎を放つが、掠りもしなかった。
「放射!!」
ボディの内側に頭部を引っ込ませた瞬間、エックスとゼロはチャージを終えたバスターとセイバーを構えて突撃した。
「ダブルチャージショット!!」
「はあああああっ!!」
ダブルチャージショットとチャージセイバーの連続攻撃が繰り出された。
火炎放射を放とうとしたゲンブレムだが、ダブルチャージショットとチャージセイバーの破壊力に内部の火炎放射器に異常が発生し、体の内部機関が崩壊し始める。
「グッ…オ…!ターゲットの…破壊に、失敗…!ク…クラフト隊長…も、申し訳ありません…!!グオオオオオオッ!!!」
ゲンブレムは上司のクラフトに謝罪をし、断末魔の叫びを上げながら爆散した。
それを見届けたエックスとゼロは武器を収め、転送の光に包まれ、拠点に転送された。
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