ロックマンゼロ~救世主達~
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第57話 駄女神降臨
前書き
物語スタート
エックスとルインの二人が施設に連れてこられた子供達の相手をしていた。
子供というのは悪意さえなければ例え相手がネオ・アルカディアの元統治者で英雄であろうと、それに匹敵する実力者であろうと懐いてくれる。
「ほーら、高い高ーい」
「わあああ!!」
HXアーマーに換装したルインが女の子を背中に乗せて空を飛び回り、高い場所から見渡せる光景に女の子は目を輝かせてはしゃぐ。
これを見ると、女神に飛行能力を持つ強化アーマーを造って欲しかったなと思ってしまった。
レイジングエクスチャージでファルコンアーマーを再現出来ないものかと頭を悩ませていたところで、奥から甲高い泣き声が聞こえた。
「何だい?何があったんだい?」
「これ…赤ちゃんの泣き声かな?」
施設の奥の部屋に向かうと、泣いている赤ん坊をあやしている女性がいた。
「あ…っ、エックス様…」
赤ん坊の世話をしていた女性達がエックスとルインに気付く。
「僕はもう、ネオ・アルカディアの統治者じゃないし、その資格はない…。ところでこの子達は…」
「うわあ、可愛い!!」
ルインは赤ん坊を見て思わず歓声を上げる。
人間の赤ん坊を見たのはいつぶりか、子供好きのルインは瞳を輝かせ、そんなルインの様子にエックスは思わず苦笑した。
「あの…だっこしてもいいですか?」
キラキラした目で言ってくるルインに苦笑しながら女性達は赤ん坊をルインに渡した。
「うわあ、柔らか~い。ぷにぷにしてる~。あったか~い。高い高ーい♪」
嬉しそうに赤ん坊を高い高いするルイン。
赤ん坊も楽しいのかキャッキャッと笑っている。
次に泣いている赤ん坊を抱き上げると、ルインは子守歌を口ずさみ、優しい子守歌が流れると、ぐずっていた赤ん坊達の表情が穏やかな物に変わっていく。
周りの赤ん坊達もルインの子守歌に聴き入ってるかのようにルインを見つめていた。
赤ん坊に囲まれて子守歌を口ずさむルインの姿は、まるで母親のように思えた。
ルインが歌い終わると、赤ん坊はすっかり機嫌を直していた。
「ご静聴、ありがとうね~」
赤ん坊達と戯れるルインをエックスは優しく見つめていた。
「うん、お見事。この子達を一発で泣き止ませるなんてやるじゃない」
流石に女神であるアリアも泣きじゃくる赤ん坊を泣き止ませるのは至難の業だ。
子育て能力が壊滅的なのもあるのだろうが。
「はは…昔からルインはこういうの得意ですから」
「ねえ、エックス君。こうしてると、君達は夫婦みたいだね」
「え…」
“夫婦”という単語を聞いて、思わずエックスは動揺する。
「だってさ~あんなん見たら家族みたいじゃん」
アリアがエックスに笑いかけ、エックスはその言葉に頬を微かに染めて俯くことしか出来ない。
「ああ、か、髪を口に入れちゃ駄目だよ~」
ルインの方に視線を遣ると、ルインの髪を口の中に入れている赤ん坊がいた。
微笑みながらエックスはルインに歩み寄る。
「こら、めっだよ」
髪を口に入れている赤ん坊に注意するように言うが、赤ん坊はキョトンとしながらルインを見つめている。
「やっぱり君はこういうの上手だよね」
「だって可愛いもん。もし私もお母さんになれたら子供は沢山欲しいな。」
「いや、君はもう四人の母親じゃないか。ハルピュイア達の」
「え?あ、そうだったね…あははは…」
互いに赤面しているエックスとルインにニヤリと笑うと、アリアは四人に歩み寄る。
「ほうほう、お二人はそんな仲なんだ。ネオ・アルカディア四天王がお二人の子供ね~。よーしよし、私達にも分かりや~すく教えて欲しいな~」
「「なっ!?」」
「聞・か・せ・て・よ~」
周囲からも聞きたそうな視線を受け、思わずエックスとルインは後退してしまう。
「逃がさないよ!者共、出会え出会え!!」
【はっ!マスター・アリア!!】
施設の所々からアリアの助手らしき者達が向かってきた。
レプリロイドの、しかも戦闘用のエックス達が全力疾走しているのに容易く追い付く人間離れした身体能力から考えるに、恐らくは女神の眷属か何かだろう。
「何ここ!?大昔の武家屋敷!?」
「“ネオ・アルカディアの元統治者、熱愛発覚!!四天王の母親の正体!!”今日の一面記事はこれに決まったーっ!!」
「え?プライバシー?何それ美味しいの?」
「全員突撃!!」
助手達がエックス達を追い掛けてくるのを見てエックスが思わず叫んだ。
「くっ!下手なイレギュラーやバイルより質が悪い!!」
「失礼ですねエックス様!!私達はただ真実を伝えようとしているだけです!!」
「我々には真実を知る権利がある!!」
「だったらその悪巧みしているような顔は止めてくれ!!」
人間達がローテーション組んで行動しているから、追う全員の疲労を狙う作戦も使えない。
こうしてエックス達と女神もといアリアとその眷属との鬼ごっこはしばらく続いた。
エックス達に警戒していた者達も笑っていた。
もしかしたらこれが目的だったのかと思ったが…。
「さあ、エックス君、ルインちゃん!お付き合いしている証拠を見せてよ~」
気のせいだった。
何というかエックスが今まで抱いていた神様のイメージがガラガラと音を立てて崩れていくような感覚を覚えた。
うん、きっとこの女神が特殊なんだ。
そう思うことにしよう。
そう思わないとやってられない。
しばらくして、鬼ごっこは終わり、エックスとルインは肩で息をしながら座り込んでいた。
「す、凄いね…ここの人達…」
「こういう桁外れな人達が沢山いたら、こんな世界には…いや、止めておこう。そんな世界は妖精戦争時代以上の地獄だ…」
「やあ、お疲れ様~」
疲弊しきった二人の前に悪魔がやって来た。
「この状況を作った張本人が何を…」
「あっははー、でも楽しかったでしょ?まあ、とにかくついて来て。君達に頼みたいことがあるの」
真剣な表情を浮かべるアリアにエックスとルインも顔を引き締め、ついて行く。
トレーラーの荷台の扉を開けると、トランスサーバーやらモニターやらが置かれていた。
「これ、ネオ・アルカディアの物ですよね?」
「パクった」
それだけ言うとコンピュータを弄り、モニターを起動させた。
「今、地上に人間が暮らせる規模の自然がある場所はここと、かつてスペースコロニー・ユーラシアが墜ちたエリアゼロ。コロニーが墜落してから周囲は危険地帯として封鎖されていたけど、現在、エリア・ゼロでは自然環境が徐々に回復しつつある。コロニーの残骸に残った環境維持システムが、一部生きているためだと思う。回復した自然の規模は小さいけど、人間が生活をするには充分な大きさ…ここにもネオ・アルカディアから逃げてきた人間がいるのさ」
「エリア・ゼロ?」
「あの時、コロニーが墜ちた場所が希望となるなんてね…」
「ここで問題、バイルがエリア・ゼロを見過ごすと思う?」
「いいえ」
「バイルはね、外界の自然を破壊する作戦を企てているのさ。この施設は二百年前から忘れ去られているからしばらくは大丈夫だとして、存在が知られているエリア・ゼロは一番危ない。出来ればさ、バイルの作戦…“ラグナロク作戦”を阻止して欲しい。頼むよ」
頭を下げるアリアにルインは慌てて止めさせる。
「頭を上げて下さい!寧ろやらせて下さい!数少ない自然をバイルに壊させない!!」
「ラグナロク作戦が行われている場所を教えて下さい」
ルインとエックスがバイルのラグナロク作戦を阻止するために動き出すのであった。
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