ロックマンゼロ~救世主達~
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第55話 さらばルイン
前書き
オメガ撃破後のルイン達
オメガを撃破し、バイルの脅威を一時的ではあるが退けたルイン達はレジスタンスベースで傷を癒やした後、入り口でハルピュイア達を見送っていた。
「行くんだね」
「はい、俺達はバイルの手から人間達を守るためにネオ・アルカディアに行き、人間達の支援をしていこうと思います。」
「きっとバイルのやり方に反発してネオ・アルカディアから逃げ出す人達も出て来るだろうしね」
「はい」
だからこそ元四天王である彼らの力が必要となるだろう。
三人のエネルギーに関してもエックスを基にしているので、基本的に太陽光があれば動けるし、エネルゲン水晶も多めに持たせてあるので問題はないだろう。
「気をつけてね、私達は一緒には行けないけれど…」
心配そうにハルピュイア達を見つめるルインにハルピュイアは穏やかな笑みを浮かべた。
「大丈夫です。例えどれだけ距離が離れていても俺達は繋がっています。そうでしょう?」
その言葉にルインもハルピュイアに微笑みを返した。
「…そっか…そう、だね…家族だもんね。私達」
「ハルピュイア、ファーブニル、レヴィアタン。バイルの手から一人でも多くの人々を守って欲しい。頼んだよ」
エックスもハルピュイア達に協力したいのは山々なのだが、エックスは元が付くとは言え、ネオ・アルカディアの統治者である。
そんなエックスが人間達の前に現れたら、コピーエックス時代の政策に戻してくれか、ネオ・アルカディアの居住区にミサイルを撃ち込んだ件について罵るの二択だろう。
「ハルピュイアが言っていたように、私達は繋がっている…それを忘れないで…私は何時だって君達の無事を祈ってるよ……行ってらっしゃい」
「はい、行って参ります…母上」
「おう、行ってくるぜお袋」
「任せなさいってお母さん♪」
ルインの言葉に三人は頼もしい笑みを浮かべると、レジスタンスベースを後にする。
「ハルピュイア、またね」
ハルピュイア達に手を振るアルエットにハルピュイアは片手を上げて応えるだけだったが、ファーブニルもレヴィアタンも意外そうにハルピュイアを見つめていた。
「あんたレジスタンスの子といつの間に仲良くなったのよ?」
「さあな」
それだけ言うとハルピュイア達は今度こそレジスタンスベースを後にする。
ハルピュイア達の姿が見えなくなるまで、アルエットは手を振っていた。
「うーん…成長して巣立っていく子供を見送る親の心境ってこんな感じなのかな…」
「そうだね…」
同時にエックスは深い溜め息を吐くと、それに気付いたゼロがエックスに尋ねる。
「どうしたエックス?」
「ゼロ…いや、折角ボディを手に入れたのに、こうして何も出来ないんじゃあ…って、思っただけだよ」
「仕方ないよ、エックスはネオ・アルカディアの元統治者様だし、そんなエックスが人間達の前に現れたら大パニックだよ。人間達がエックスに助けを求める姿が目に浮かぶ…」
「それでも僕は何かしたいんだよ」
「簡単な変装ではバレるだろうしな」
「あ、ゼロは何も考えなくていいよ。そういう変装のセンス皆無そうだし…逆に目立ちそうなアイデア出しそうだしさ」
「ほう」
「にゃあああああっ!!?痛い痛い痛い痛いーっ!!ごめんなさいゼロ!!ごめんなさい!冗談です!冗談ですからアイアンクローは勘弁してーっ!!!」
ゼロのアイアンクローによってルインが悲鳴を上げるが、エックスが普通に動けるようにするために頭を悩ませる三人。
普段は口数が少ないゼロだが、エックスとルインといる時は何時もより多くなる。
エックス、ゼロ、ルインの三人が会話を弾ませるのはイレギュラーハンターが存在していた二百年前では当たり前の光景であったが、シエル達は珍しそうに見つめていた。
ゼロがあんな風に会話を弾ませたり、アイアンクローをかますのは初めて会った時は想像すら出来なかった。
それにしてあの三人が並んでいる姿は中々壮観である。
「あっ!そうだ!ナイスアイデアが浮かんだよ!!」
「「?」」
ゼロのアイアンクローから抜け出したルインはエックスの手を掴んだ。
「メンテナンスルームに行くよエックス」
メンテナンスルームにエックスを引き摺っていくルインを見て、ゼロ達も追い掛ける。
エックスを連れてルインがメンテナンスルームに篭もって数十分後にそのナイスアイデアの内容が明かされた。
「よし、これでOKだね。これならエックスだって絶対にバレない。正に完璧!パーフェクトだね!!」
満足そうな表情で額を拭う動作をするルインに、シエルは顔を引き攣らせるのを止めることが出来なかった。
何故ならルインが完璧と豪語する変装とはエックスのボディの色を変えただけなのだ。
アーマーの色は紫がかかった蒼、アーマーに守られていない部分は紫色(X4の裏技エックスカラー)にしただけだ。
その完璧な変装とやらを見たゼロも残念な物を見るような目でルインを見ている。
「あ、あの…ルイン…流石にそれはバレるんじゃないかしら?」
ハッキリ言ってこんな分かりやすい変装など見たことも聞いたこともないので不安だ。
「えー?あの、エックスに全然似てないコピーエックスにさえ誰も気付かなかったのに?人間どころかレプリロイドまで」
「う…っ」
それを言われて思わずシエルは呻いた。
製作者である自分から見てもコピーエックスはエックスにはあまり似ていない。
というか、人間はまだしも側近のレプリロイド達さえ殆ど気付かなかったので、確かにそう言われると何となくだが、大丈夫そうな気がしなくもない。
「まあ、バレたら他に考えればいいし。しばらくはこれで行こうよ」
「う、うん…」
少し不安そうなエックスだが、確かに大丈夫そうな気がしてきたからしばらくはこれで行こうと決めた。
「ところでセルヴォさん。私が頼んでおいた“アレ”は完成したかな?」
「ん?ああ、“アレ”かい?頼まれた通り、完成させておいたよ。二百年前の機体だから上手く再現出来たか分からないが」
メンテナンスルームを出て、ルインはセルヴォの研究室に向かう。
ルインに頼まれたセルヴォが何を造ったのか気になったために、ゼロ達もついて行く。
「君が渡してくれた設計図を基に造ってみたんだが…」
布を取り払うと、エックスから見ればとても懐かしく、ゼロから見れば、少しだけぼんやりとしている過去の記憶を刺激する機体があった。
「記憶通りのチェバルだ!ちゃんと二人乗り出来るタイプだ。」
そう、かつてイレギュラーハンターで足代わりとして活躍したライドチェイサー・チェバルであった。
因みに形式番号はADU-T400turboである。
「チェバルとはまた、随分と懐かしい物が出て来たね。これをプライベート以外で使うのはカウンターハンター事件以来だよ」
「カウンターハンター事件?何それ?」
エックスの言葉にルインが首を傾げる。
無理もない、ルインは最初のシグマの反乱以降はずっと眠っていたのでそれ以降の出来事に疎いのは仕方のないところだ。
「カウンターハンター事件というのは最初のシグマの反乱の後に起きた事件だよ。ミッション中にチェバルを使う物があったんだけど、チェバルのターン性能や耐久性にやや難があったりとかの問題点が露呈した事件でもあるんだ。」
「へえ~」
因みにチェバルの後継機として火力、機動力、耐久性を大幅に向上させたアディオンが開発されたが、搭乗者の命を度外視した怪物ライドチェイサーとなってしまい、エックスやゼロクラスの実力者でなければアディオンの性能に耐えられないという欠落が出来たのは余談だ。
「じゃあ、エックスからすればチェバルじゃ物足りないかな?」
「いや、チェバル自体は専用アディオンが配備された後でも愛用していたよ。主にプライベートでね。性能は劣っていてもやっぱり安全性についてはアディオンよりチェバルが上だからね」
搭乗者の命を度外視した怪物マシンよりも誰でも扱えるマシンの方がいいとして、アディオンと、そのアディオンを大幅にデチューンしたハーネットよりもチェバルを愛用していたハンターは多い。
「さあ、エックス。乗ってみてよ」
「うん」
ルインに促されたエックスはエンジンを入れ、異常がないかを確かめるエックス。
この時点では異常はないようなので、後は走らせるだけ。
チェバルを運び、外に向かう。
外に出たエックスはチェバルに乗り込むと、チェバルを走らせた。
「これは凄い。よくここまで再現出来たね」
二百年前の機体をよくここまで完璧に再現したものだ。
しかも難があったターン性能も改善されているため、エックスが扱ってきたライドチェイサーの中でも一番扱いやすい。
「これで私とエックスも動けるね」
「あ、そうか…ルインはエックスと一緒に行くのよね」
ネオ・アルカディアから逃げる人間達を助けながら、バイルの脅威を退ける。
エックスだけでは危ないというルインの発言でルインはエックスと共にレジスタンスベースを去ることになった。
「寂しくなるわね…」
シエルにとってルインは頼りになる同性であり、親友だと思っている相手である。
「何言ってるの!一生会えなくなる訳じゃないんだよ?また会えるよ。絶対に」
「うん、そうよね…また会えるわよね」
「うん」
笑い合う少女達にエックスは微笑み、ゼロは無表情ではあるが、瞳に優しい色を湛えていた。
そして翌日の朝、レジスタンスベースの入り口付近でエックスとルインがチェバルに乗り込んでシエル達に振り返る。
「ルイン、エックス。気をつけてね」
「無理をするなよ」
「ああ」
「ルインお姉ちゃん、またね」
「うん、またね。アルエットちゃん」
エックスはエンジンを噴かす。
そしてチェバルは前方に向かって進んでいき、エックスとルインはゼロ達とは違う道を歩むのであった。
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