ハイスクールD×D ~聖人少女と腐った蛇と一途な赤龍帝~
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第2章 滅殺姫の憂鬱と焼き鳥の末路
第42話 焼き鳥戦決着!
「霜天に坐せ……大紅蓮氷輪丸!」
私は氷輪丸の真の名を叫びつつ、周りに発生した煙を氷の両翼を広げて吹き飛ばした。そして私の目に飛び込んできたのは……顔を赤くしつつポカンとした表情のイッセーとライザーだった。……ポカンとするのはまだ分かるとして何で2人共顔赤くしてるかな? にしても
「あんたたちいつまでボケっとしてるのよ」
「「はっ!?」」
ようやく正気に戻ったみたい。と思ったら
「って焼き鳥てめぇ! 何顔赤くしてやがる!?」
「ばっ!? そんなわけないだろうが!」
「まさかお前、部長がいながら……! てめぇ、何のためにゲームしてんのか分かってんのか!?」
「だから違うと言ってるだろうが!」
何か急に2人が口喧嘩始めちゃった。一体何なのよ?
「……それにしてもまさか貴様まで禁手に至っていたとは。その上よりにもよって氷系の能力。都合が良すぎるだろ」
一通り口喧嘩をしたらライザーは私の姿を見つつ苦虫を噛み潰したような表情で呟いた。でも
「残念ながら都合よくあなたの苦手な能力を持った禁手に至っていたって訳じゃないんですよね」
「……どういう意味だ」
「ライザー様はこの姿が私の禁手だと思ってるみたいですけど……正確には違うんですよ。私の至った禁手の真の名は『限定解除』。能力は簡単、私が神器で創り出した物の能力を一気に高めて真の姿に変える、ただそれだけです」
「っ! つまりその姿は!」
「ええ、この姿こそあなたが先ほどまで貶していた氷輪丸の限定解除形態、大紅蓮氷輪丸です」
本来の魔獣創造の禁手はどんな物かは知らないけど、間違いなくこの限定解除は亜種でしょうね。実質これって何種類もの禁手を創れるってことだし。まあ祐斗も原作では氷や雷の聖魔剣創ってたし、創造系の神器は皆こんな感じなのかな?
「くっ……だが1人が2人になったところで何か変わるわけでもないだろう!」
「う~ん、そんなことないと思いますけど。それに……2人じゃないですよ。でしょ?」
そう言いながら私はイッセーの隣に目を向けた。そこにはいつの間にやら黒姉と白音が並んでいた。
「にゃはは、じゃあ私達も久しぶりに本気だすかにゃ?」
「はい、黒歌姉様」
「「ふっ!」」
その瞬間、黒姉と白音の体がそれぞれ膨大な黒と白のオーラに包まれ、尻尾が二又に分かれた。これこそ2人が全力で仙術を使う時の姿、猫又モード2。加えてこのオーラに当てられたライザーはというと
「なんだこれは!?」
彼の手は若干震えていた。まあ当然よね。いや、フェニックスならなおさらかしら。
「まあ震えるのも無理ないにゃ」
「どういう意味だ!?」
「私と黒歌姉様の扱う仙術は生命の流れを操作する術です。相手の気を乱したり断つことで生命の核自身にダメージを与えることもできます」
「その不死の力は生命の核から特殊な気が供給されて体がすぐさま修復されてるにゃ。でもいくら体が不死でも生命の核は私達と大差ないにゃ。私達がお前の気を断てばその体は修復されないし生命の核が破壊されればいくらフェニックスでも即お陀仏にゃ」
「つまりあなたの感じているのは生まれて初めての本物の死の恐怖です。気を付けてください、私達の攻撃はかすっただけでも大ダメージですしまともに入れば本当に死にますよ?」
その言葉を聞いてライザーは若干顔を青ざめると一歩足をひいた。
「バ、バカな。そんなこと貴様らのような下級悪魔に出来るはず……」
「なら試してみるにゃ?」
「……」
ついにライザー黙りこんじゃった。まあこれだけのことがいっぺんにあれば無理ないかな? じゃあそろそろ始めようかしら?
「ん、我も」
「ってあれ、龍巳? あんたは今回部長たちの護衛でしょ?」
黒姉たちとライザーに襲いかかろうとする前に龍巳が私達に並んできた。ん~、今回龍巳にはあまり戦ってほしくないんだけどな。なにせ魔王様たちが見てるらしいし。さすがに龍巳が力使ったら隠し通せない気がする。
「大丈夫、我、ここで皆守りながら援護する」
「(いや、そうじゃなくてこの試合魔王様たちも見てるから……)」
「(大丈夫。我の力は使わない)」
ん? 龍巳の力は使わない? ここで守りながら援護するって言うから体術で戦うってことじゃないだろうし……じゃあどうやって戦う気だろ?
そんな私の疑問をよそに、龍巳はスカートの右側を少しめくると右足に巻いてあるものに手を這わせ……って!?
「龍巳! ちょっと待っ……!」
という私の制止の声は間に合わず
「展開」
と龍巳はつぶやき、その瞬間龍巳は一瞬にして膨大な光に包まれた。そしてその光が収まるとそこには……
「シュヴァルツェア・レーゲン、パンツァ・カノーニア装備」
そこにはIS、シュヴァルツェア・レーゲンに物理シールド2枚と右肩に付いているレールキャノンをもう一丁左肩にも装備する砲撃パッケージ、パンツァ・カノーニアを装備させた状態で身に纏った龍巳がいた。なんてことしてくれたのよこのおバカ。
一方その姿を見た部員たちはと言うと
『えええぇぇぇぇぇっ!?』
まさしく驚愕の声を上げていた。まあそうよね、こんなもの見せられちゃ。一方龍巳は自慢げに胸張ってるわ。この娘何にも考えてないわね。
「なあ龍巳、それってISか? 一体どこでそんなもの……?」
「これ? もちろん……っ!?」
私はイッセーの問いに馬鹿正直に答えようとする龍巳の首根っこを押さえて引き寄せた。
「(火織お姉ちゃん?)」
「(あんたどうやってそれ説明するつもりだったのよ!? 私の魔獣創造はまだ誰にも教えてないのよ!?)」
「(……あ)」
やっぱり気付いてなかったわねこのおバカ。
「た、龍巳? それに火織もどうしたんだ?」
「あ、あぅあ、あ」
龍巳、目を回しながら大混乱。ほんと一体どうするのよ。もういっそここでバラす? ……でもこれ魔獣創造で創ったって言っても信じてくれるかな?
「これ! 火織お姉ちゃん創ってくれた!」
「えっ!? 火織が!?」
皆の視線が私に向けられた。結局ここでバラすことになっちゃうか。
「火織お姉ちゃん、実は天才的アーキテクト! 魔力で動く機械鎧作ってくれた!」
『えええぇぇぇぇぇっ!?』
って龍巳ぃぃぃぃぃぃぃい!? あんた何さらに大嘘重ねてんのよ!?
「火織、あなたそんなものまで創れたの!?」
「前から頭いいとは思ってたけど、どんだけ頭いいんだよ!?」
ってみんな普通に信じてらっしゃる!?
「まさかそんなものまで用意してくるとは……」
しかもライザーまで信じた!? ああもういいわよそれで! あとで覚えときなさいよ龍巳!
「じゃあ早速始める!」
そんな龍巳は私から目を逸らすと両肩のレールキャノンから超音速の魔力弾を発射させた。その魔力弾は避ける暇を与えずライザーに直撃、派手に吹き飛ばした!
「じゃあ私達も行くにゃん、白音!」
「はい、黒歌姉様!」
そのライザーを追って黒姉と白音も飛び出していく。さて……
「じゃあ私達も行くわよイッセー!」
「っ! ああ!」
私は大きく氷の翼を広げ、背中から伸びた氷の尾を引きつつその場を飛び立つ。後ろを見ればイッセーもブースターを吹かして追いかけてくるわ。前方では態勢を立て直したライザーに黒姉と白音が追いついていた。
「にゃはは、逃がさないにゃん!」
その言葉とともに黒姉が長く伸びた爪で斬りかかる。先ほどの言葉もありライザーはとっさにその爪を避けようとするけど普段からそんなことはしてないんでしょうね。避けきれずに右肩をバッサリ切られたわ。しかも
「傷が回復しない!?」
「言ったにゃん、気を断てば回復できなくなるって。傷口の気をちょっと弄らせて貰ったにゃん」
そのあまりにもショッキングな言葉にライザーは動きを止めた。まあ気持ちは分かるけどね。自分のアドバンテージが無くなったんだから。でもここで動きを止めるのは致命的よ。なにせその間に小さな体を活かして白音が懐に潜り込んでるんだから。ライザーも気付いたようだけど
「えいっ!」
「ごはぁっ!?」
白音の渾身の右ストレートがライザーの懐に炸裂した。しかも
「なんだ……これは……?」
ライザーは口から思いっきり血を吐いたわ。血を吐くなんて初めての経験でしょうね。
「内蔵にダメージを与えました。黒歌姉様同様仙術も使ってますので回復はできません」
「くそっ!」
その言葉にライザーは一気に上空、私とイッセーの方に飛び上がってきた。これ以上黒姉と白音のそばにいるのが危険と思ったんでしょうね。私達を盾にして二人の追撃を回避、その後に速攻で部長を取りに行くつもりかな? まあ今の状況じゃ余裕を持って全員倒すなんて無理でしょうからね。でも私達を盾に出来るなんて考えは大間違いよ。
「まずは初手!」
私は右手の氷輪丸を大きく横に振り抜く。するとその軌跡から10m級の氷龍が20体ほど飛び出しライザーに突っ込んで行った。ライザーは氷龍を自身の炎で迎撃しつつなおもこっちに向かって来ようとするけど明らかに炎の量が足りないわね。氷龍にじわじわ追い詰められてるわ。ライザーもそれに気付き一旦下がろうとするけど
「逃がすかぁぁぁぁぁぁあああ!!」
「なっ!? 貴様!?」
イッセーがブースターを吹かして突撃、ライザーの顔面に一撃を入れた。ブースターの加速が加わったこともあり、殴り飛ばすのではなくライザーの頭がはじけ飛んだわ。グロッ。でもただの打撃だったので頭はすぐに回復した。でもその頃には残っていた氷龍がライザーに追いつき全弾着弾、大きな氷の塊になったわ。
「やったか!?」
「まだよイッセー! 油断しない!」
「くそがぁぁぁぁあああ!!」
その言葉とともに氷が爆散、両手に炎剣を持ったライザーが私に向けて再度突撃してきた。でもだいぶ弱ってきたわね。体の各所がまだ凍りついてるわ。
それにしても私に対してやけにしつこいわね。まあ回復不可能の傷を作る黒姉と白音、そして赤龍帝のイッセーと比べたら私は禁手に至ってるとはいえただの神器持ちだと思われているだろうから仕方ないかな?
ライザーは私のいる高度まで上がってくると両手の炎剣で斬りかかってきた。先程イッセーの持つ氷輪丸を受け止められたからこその選択でしょうね。でもこんな太刀筋じゃ私には届かないわよ。
私は振り下ろされてくる2本の炎剣を避け、それを持つ手首を斬り落とした。炎剣が氷輪丸を受け止められるならその手を斬り落としてしまえばいい。
「ろくに剣を振ったこともないくせに剣術で私に勝てると思わないことです」
そして私は胴薙ぎを一閃、ライザーを上下に断ち切った。ライザーの下半身は完全に凍りつき屋上に落下、砕け散ったわ。
「おのれ!」
ライザーは下半身を回復しつつも両手首の切断面から私に向けて炎を放ってきた。私はそれを距離をとって回避する。するとその瞬間下からレールキャノンで放たれた魔力弾がライザーに直撃、またしてもライザーを吹き飛ばした。
「お兄ちゃん! 今こそ練習の成果を見せる時です!」
「練習!? ……っ! そうか! よし!」
するとイッセーと白音は共に屋上に降り立ち構えをとった。なるほどそう来るか。なら私のすることは……。
ライザーの方を向くと、ライザーもなにかヤバイものが来ると思ったのか炎の翼をはためかせ、回復もそこそこに回避行動を取っていた。
「逃がしませんよ!」
私は氷の翼をはためかせ、さらに背部と足裏のスラスターも全開にしライザーに突撃、すれ違いざまに右の翼を斬り落とした。さらに
「こっちは私が頂くにゃ」
気配を消して接近していた黒姉が残った方の翼をむしり取る。右翼切り口は凍りつき、左翼は仙術のせいで回復できない。つまりライザーは空中で身動きが取れなくなった。
「しまった!」
慌てるけどもう遅い!
「いくぜ白音ちゃん!」
「はい! お兄ちゃん!」
「「ドラゴン波!!」」
イッセーからは膨大な量の魔力が、白音からは気が放たれ空中で混ざり合い
「ぐぁぁぁぁぁあああ!!」
身動きの取れなかったライザーに直撃、大爆発を起こしたわ。でも……アナウンス流れないしまだ仕留めきれてないようね。
私は爆発で起きた煙に向けて突っ込む。すると煙の中から吹き飛んだ左半身を回復させようとしてるライザーが出てきたわ。どうやら身を捻って直撃は裂けたようね。ライザーは突っ込んでくる私に気付いたようだけど、もうまともに動けないのか回避しない。私はそのままライザーの腹に右手の氷輪丸を突き刺し一気に下降、屋上にライザーを叩きつけた。
私は氷輪丸をライザーに突き刺したまま手を離し後ろに下がる。すると屋上にいたイッセーと白音、さらに上空にいた黒姉が降りてきて寄って来た。
「……今度こそやったのか?」
「さぁて、どうかな? さすがにそろそろ限界だとは思うけど」
そして次第に煙が晴れ、そこには……
「ぐっ……が、あ……」
そこには立ち上がり腹に突き刺さっている氷輪丸を掴んで引き抜こうと苦しむライザーがいた。でも氷輪丸が突き刺さっていることで少しずつだけど体の凍り付いている範囲が広がってるわね。刀も抜けそうにないし。氷と体の境界面から炎を吹き出して何とか氷が広がる速度を抑えてるみたいだけど……全身が凍りつくのも時間の問題ね。
「あいつ、まだ……」
「でももう時間の問題ね。このまま放っといてもいいけど……イッセー、あんた何か言いたいことがあったんじゃなかったの?」
「っ!」
確か旧校舎前で別れるときにそんな事言ってたわよね?
「ああ、そうだった。ぶん殴るついでにちょっと言ってくる」
そう言うとイッセーはもがき苦しむライザーに歩み寄っていった。
「ぐっ! ま、待て! この婚約は悪魔の未来にとって大切な物なんだ! 貴様のような何も知らないガキがどうこうしていいようなものじゃないんだ! それが分かっているのか!」
「知るかよそんなこと。俺は難しいことは分からないからな。……でも俺にも分かることがある。お前には部長と結ばれる権利なんてない。ここ最近部長は元気がなかった。ゲームが決まってからもよく浮かない顔をしていた。そしてさっき! 部長は泣いていた!」
『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost』
ここに来て赤龍帝の籠手がイッセーの気の高ぶりに反応してイッセーの力を一気に引き上げた。これはもう決まったわね。
そしてそんなイッセーはすべての力を拳に乗せるかのように右手に莫大な魔力を纏わせ振りかぶった。
「女の子を、これから結婚する相手を悲しませて泣かせるような男に! 結婚する権利なんてあるわけ無いだろうがぁあ!!」
そしてイッセーの渾身のストレートがライザーに炸裂、派手に吹き飛んで屋上の給水塔に激突した。背中から激突したため背から突き出ていた氷輪丸の刃が給水塔に突き刺さりライザーを貼り付けにする。そして今の一撃で心まで折れかけたのか炎の勢いが弱くなり全身が一気に凍りついた。
「こんな事で……この俺が、がぁぁぁぁぁあああ!!」
でもライザーも往生際が悪く再度炎を吹き出して何とか氷の侵食を首で抑えたわ。今のライザーは首から下が全部凍っている状態。
「あいつまだ! ならもう一度……っ!?」
そこでイッセーもドーピングの力を使い切ったのか鎧が解除された。30分よりだいぶ短かったけど……それだけ力を使ったってことでしょうね。特に最後の一撃に。
鎧を解除されたイッセーはそれでもライザーの元へ向かおうとしてる。でも私はそんな彼の肩を掴んで止めた。
「イッセー、後は私が」
「火織……」
なにか言いたそうなイッセーを残して私はライザーの元へ向かう。イッセーには悪いけど私も一言言っておきたいのよね。一方ライザーは目の前に立った私を憎々しく睨んでいるわ。
「ライザー様、あなたには色々と教えましたが最後に1つ、大切なことを教えなければなりません」
そう言いつつ私はライザーに突き刺さったままの氷輪丸を抜き取り振りかぶり、そして
「好きな女の1人くらい、自分の力で振り向かせなさい」
そのまま私は急に呆けたような表情になったライザーの首を斬り落とした。
『ライザー・フェニックス様の投了を確認。リアス・グレモリー様の勝利です』
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