我が剣は愛する者の為に
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勘違い
前書き
風邪で更新が止まってしまいました。
今日から復活です。
不幸中の幸いと言うべきか、風邪で寝込んでいる間にこの小説の細かいプロットやオリ武将の設定も完成しました。後は書くだけです。
さて、今さらですがこの小説にはご都合主義や本来武将にはないオリ設定などがあります(法正が諸葛亮らと水鏡塾で一緒など)。
それらがOKな人はこれからもよろしくお願いします。
天の御使いご一行は出来るだけ街などに寄りながら旅をしていた。
一刀が天の御使いであると言うのを広めるためだ。
街に行って一刀が何か芸をする訳ではない。
今、一刀が天の御使いである事を証明しているのは聖フランチェスカ学園の制服だ。
見た目からして完全にこの世界の服装とは一線を分けている。
街に入ると必然と一刀に注目が集まる。
そこで俺がこのお方が天の御使いだ!、と大きな声で宣伝する。
最初は信じられないような顔をした人には一刀が着ている服などを見せる。
さらには行商人などにも見せて、この生地は見た事のない素材で出来ている事を分からせる。
そこで天の知識などを披露して信憑性を高める。
車や電車の事など話しても意味ないので、俺達の世界で普通に作られていてかつこの世界ではあまり知られていない料理を作ったり、道具を作ったりと工夫している。
人の噂と言うのはすぐに広まる。
数か月くらい大陸を渡り宣伝をすると初めてきた街でも、すでに一刀の事を知っている人もいた。
だが、噂が広まるという事は良い事だけではない。
当然、一刀の持っている服などを奪おうと賊などが襲いにかかる頻度が上がった。
そこで俺の出番だ。
賊程度の実力など何人かかってきた所で相手にならない。
俺の名前も天の御使いを守る従者みたいな噂が広まっているのを知った時は何だか複雑だった。
今は街道を歩いている。
荷物はいつも通りに馬に乗せて一刀と俺は歩いている。
目指す場所は荊州南陽に向かっている。
孫堅達に会いに行くつもりだ。
少し卑怯だが、彼女達が天の御使いを噂を広めてくれればより確かなものとなる。
大きくなった雪蓮や冥琳に会いたいと言うのもあった。
一刀にはこの世界の有名な武将は女性になっている事は話してある。
それを聞いた一刀は半信半疑の様だ。
実物を見せてそれが本当である事を分からせるためもある。
太陽を見るとちょうど真上。
お昼時だ。
「よし、少し休憩にするか。」
「了解。」
馬を止めて載せてある荷物から麦などを練り合わせたパンのような物を取り出して食べる。
森だったら山菜などを採れたのだが、荒野ならそれも出来ない。
なので、前の街で買って置いた食べ物で軽く済ませる。
最後に梨を一刀に投げ渡す。
「それ食ったら修行するぞ。」
「うい~っす。」
梨を食べながら答える。
その間に木刀を二本取り出し準備運動などをする。
食べ終わった一刀に木刀を渡す。
木刀を受け取り服を着替えて準備完了だ。
ある程度距離をとってから始めようと思っていた時、いきなり一刀が打ち込んでくる。
それを慌てる事なく冷静に受け止める。
「あれで不意打ちのつもりじゃないだろうな?」
「うっ。」
言葉を詰まらせる一刀。
どうやらマジの様だ。
俺は軽くため息を吐いて、木刀を弾いて出来た隙に掌底を入れる。
手加減はしているがそれでも後ろに吹き飛び仰向けに倒れる。
だが、すぐに立ち上がって木刀を構え直す。
「ふむ。
打たれ強くはなってきたな。」
「毎日誰かさんにボコボコにされているからな!!」
そう言って連続で斬りかかってくる。
全ての斬撃を受け止める。
この数か月の修行で少しはマシになったがまだまだ。
しかし、見込みはある。
このまま続ければ武人としてはいい線まで育つ。
あとは頭の方を鍛えないといけないな。
と、考えていると一刀が俺の足を払ってきた。
「おっ。」
珍しい展開だったのでわざと引っ掛かる。
足を払われた俺はバランスを崩し後ろに倒れていく。
「貰った!!」
初めて一本を取れると思ったのか既に笑顔になっている。
倒れそうになっている俺に木刀を打ち込みに来る。
「油断大敵だ。」
俺は木刀を投げ捨て、その逆の手を伸ばして一刀の腕を掴む。
後ろに倒れる筈だったが一刀の腕を掴む事で持ちこたえる。
さらに俺の方に力一杯に引っ張る。
「えっ!?」
氣で強化していないがそれでも力は俺の方が強い。
一刀の方もバランスを崩し前に倒れる。
引っ張った力を利用して、空いている手を一刀の肩に乗せてそのまま背中に回り込む。
一刀は地面にうつ伏せに倒れ、俺は上から押さえ込んでいる。
首筋には愛刀を抜いて刃を当てる。
「これでお前は死んだと同じだな。」
「ちくしょう。
後ちょっとだったのに。」
「わざと受けたんだけどな。
まぁ、それでも剣で攻めて不意に足を払うのは中々だったな。」
こんな会話をしているが上から押さえ込み、刀で首筋を当てている。
さすがにこんな状態で話をしたくはないのか一刀は言う。
「てか、そろそろどいてくれないか?
さすがに刃を首に当てられている状態は嫌だぞ。」
「おっと、すまない。」
俺は一刀から離れようとした時だった。
後ろから一瞬殺気を感じた。
すぐさま刀を後ろに振る。
ガギン!!、と金属と金属がぶつかり合う音が鳴り響く。
そのまま一刀から離れ、後ろから奇襲をかけてきた人物を見る。
それは女性だった。
白を基調とした服に青い髪。
その手には槍が持たれている。
「後ろからの攻撃を防ぐとはただの賊ではないな。」
女性は俺に殺気をぶつけながら言う。
この殺気に構えを見た限りかなりの武人である事はすぐに分かった。
俺はいつでも対応出来るように構えながら気になった事を言う。
「賊だと?
何か勘違いしているみたいだな。」
「何が勘違いだ。
その男を後ろから押さえつけ、首元に剣を押し付けている状況でどう勘違いするのだ!」
「「あっ。」」
俺と一刀が思わず声が出る。
確かにあの状況を見たら誰だって賊か何かに襲われていると勘違いするだろう。
悪ノリしすぎたな、と反省しながら誤解を解くために説得する。
「あれはそいつの修行をしていただけだ。
そりゃあ、傍から見たら襲われているよう見えたと思うけどそれは誤解だ。」
「私が倒してきた賊も同じような言い訳をしてきた輩もいる。
そんな見え透いた嘘を私が信じると思うか!」
「んじゃあ、その男に聞いてみろよ。」
俺の言葉では信じてくれなさそうなので一刀にバトンタッチする。
「勘違いさせたみたいだけど、本当にこの人は賊じゃないんだ。
むしろ恩人・・・「貴様、この男を脅しているな!」・・・はえ?」
何だか話がややこしい事になってきた。
「脅されたかもしれないが、もう大丈夫だ。
無理にあの賊を庇う必要はない。
かなりの手練れのようだが私もそれなりに強い。
さぁ、早くこの場から離れるんだ。」
「お願いしますから話を聞いてください。」
一刀はそう言うが全く耳に入っていない。
槍を両手で持ち、構えをとる。
「ばれちゃあしょうがない!
その天の御使いの服でも剥ぎ取って売ろうと思ったが、あんたを殺して剥ぎ取ればいい!!」
「何か悪ノリし始めたよこの人!?」
このまま話をした所で全く聞きはしないだろう。
それにこの女性はかなりできる。
少し勝負してみたくなったのでわざと賊の振りをする。
話をこの女性を無力化しても遅くはない。
「正体を現したな。
この趙子龍が貴様を成敗してくれる!!」
「「趙子龍だと!?」」
まさかこの女性があの五虎将の一人、趙雲だったなんてな。
どうりで強いわけだよ。
俄然やる気が出てきた。
一刀は彼女が趙雲であるという事実がかなり衝撃的だったのか、口をパクパクさせている。
「せいせいせいせい!!!」
素早い突きが四回連続で繰り出してくる。
俺はそれを刀で起動を逸らしていく。
「はぁっ!!」
腰を落とし強烈な突きが俺の胸に向かって繰り出される。
あの四回の突きを簡単にいなされたのを見て本気を出したのだろう。
さっきの突きとは段違いに早い。
だが、見切れない速さではない。
今度は受け止めず、逆に左足を前に一歩踏み込む。
それを軸にして一回転して趙雲の側面に回り込む。
回転の遠心力を利用して、趙雲の横腹に肘鉄を入れる。
手加減はしたがそれでも横に吹き飛び、地面に転がる。
だが、すぐに体勢を整えて槍を構える。
(この男、強い。)
趙雲は無闇に攻撃しても無駄だと分かったのか様子を窺っている。
「来ないならこっちから行くぞ。」
地面を蹴って距離を詰める。
首を狙った一撃を放つが趙雲はそれを槍で受け止める。
俺は続けて趙雲に何度も斬りかかる。
(くっ!
重い!)
かなり力を入れて斬りかかっているので手には負担がきている筈だ。
強く唇を噛み締めているのが分かる。
刀と槍がぶつかり合い鍔迫り合いになる。
「貴様、これほどの腕を持ちながら何故賊の様な真似をする!!」
その言葉を聞いて思い出した。
俺は賊の振りをしているんだったな。
適当に理由を考えようとしたが、思い浮かばなかったので。
「俺に勝ったら教えてやるよ。」
「ほざけ!!」
そう言って押し返してくる。
膝を狙った足払いを繰り出してきた。
俺はそれを上に跳ぶ事でかわす。
俺が跳んだのを見て趙雲はニヤリ、と笑う。
「これで終わりだ!」
空中にいる俺は身動きができない。
それを狙ってわざと膝を狙う事で俺を宙に誘き寄せたのだろう。
趙雲の槍の一撃が俺を襲う。
俺は左手の刀で槍を受け止める。
一撃で仕留めきれるとは思っていないのか、槍を手元に戻して断続的に攻撃しようとする。
だが、俺は趙雲が槍を手元に戻すよりも早く右手で槍を掴んだ。
「なっ!?」
氣で腕を強化して、一気に趙雲を宙に引き上げる。
槍を手放さなかったのはさすがだが好都合だった。
そのまま右手で趙雲が槍を持っている手首を掴み、そのまま重力に任せるように地面に落ちて行く。
地面に叩きつけられた趙雲の首に刀の刃を当てる。
槍を持っている手は右手で固めているので動かせない。
「俺の勝ちだな。」
「何故だ。
何故それほどの腕を持ちながら、どうして賊のような真似を。」
俺の強さを認めているからこそ俺が賊まがいをしている事を信じられないようだ。
ここら辺でネタバレとしますか。
俺は刀を引いて鞘に収めて立ち上がる。
「どういうつもりだ?」
俺の行動の意図が分からないのか槍を握りながら趙雲は聞いてくる。
「とりあえず、あんたの誤解から解く事にするか。」
「本当に済まぬ。」
ようやく趙雲が話を聞く状態になったのであれは誤解である事を教えると、深々と頭を下げる趙雲。
それを見て一刀は苦笑いを浮かべている。
「まぁ、誰にだって勘違いはあるんだし仕方がないよ。」
「そのせいで俺は殺されかけたけどな。」
「あの状況を作った縁が悪い。」
「それに関しては反省している。
だから、あんたも顔を上げてくれ。」
俺がそう言うとゆっくりと顔を上げる。
「しかし、お主は強いな。
この趙子龍、井の中の蛙である事を再確認した。
まだまだ修行が必要だ。」
「いや、あんたも中々だった。
自己紹介がまだだったな。
関忠だ。」
「俺は北郷一刀。」
「私は趙雲、字は子龍だ。
お主達は旅をしているようだが、何を目的としている?」
俺は一刀が天の御使いである事。
今、旅をしているのは噂を広めつつ一刀の修行をしている事を話す。
その事を話すと趙雲は面白いものを見つけた子供のような表情をする。
「興味深い旅ですな。
私もその旅に同行してもよろしいかな?」
趙雲の突然の発言に俺達は驚く。
「一応、理由を聞いても良い?」
一刀がそう言うと趙雲は笑みを浮かべたまま言う。
「私は自分を上手く使ってくれる人物を捜して旅をしている。
一人旅は飽きてきた所だ。
お主達と旅をしていれば退屈せずに済みそうだ。」
「出会ったばっかり人と旅なんて危なくないと思わないか?」
「確かにそうだが、関忠殿とは剣を交えて分かった。
お主は信用できる人物だと。」
どうする?、と言った視線を一刀は俺に向けてくる。
「良いんじゃないか?
本人が着いて来たいと思っているんだから。」
「縁がそう言うなら俺は良いけど。」
「なら決まりだ。
私の真名は星と申す。
これから旅をする者同士、仲良くしていこう。」
「真名を預けてくれるのならこちらも預けねばな俺は縁だ。」
「俺は真名は無いけど一刀って呼んでくれ。」
俺達は星と握手し合い、旅を再開した。
後書き
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