ベスト・パートナーは貴方だけ
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いいわけ
やってきたアーノルドは嫌な予感を覚えていた。
既に様子を見ていたらしい通行人から話しを聞いていて……アリシアらしき少女が一緒にいたらしい。
正義感が強いのはアーノルド自身がよく知っているが、頭痛がした。
「俺がどうしてこんなに頑張っているのか何も分かっていない」
愚痴るように呟いてから、アーノルドは見えてきた廃工場に向かい、そこで沢山のゴロツキのような男達が中にはいっていくのが見える。
丁度良かったのかもしれない。
アーノルドは思いながら、あるものを取り出して投げる。
それが中に放り込まれると同時に煙が吹き出し、男達が悲鳴を上げる。
そして怯んでいる男達を適当に義腕で殴って気絶させていく。
この程度ではしばらくすれば目をさますだろうと感覚でわかる。
そしてアーノルドは煙の中で工場内を睥睨して、階段とその上にいる人物の影に気づく。
気付いて、ああやっぱりと嘆息しながら歩いてそちらに向かう。
やがて煙が晴れる頃にはアーノルドは上へと上がる階段の下まで来たのだが、
「ふむ、ひとりですか。では、そろそろ“蒸気機械兵”揉めを覚ました頃でしょう。それに排除させますか」
男の声がして背後になにか大きなものが洗わっる気配を感じる。
「アーノルド!」
焦ったように叫ぶアリシアの声が聞こえるが、アーノルドは慌てず最近新調した武器を取り出す。
それは一見拳銃のように見えるが、それを義腕ではないと使えない武器だ。
その拳銃を“蒸気機械兵”に向け、アーノルドは引き金を引く。
乾いた大きな音と共に、“蒸気機械兵”に穴が空き動きを止めた。
義腕でないと、反動を抑えるのがむずかしい拳銃であり特注品だ。
だが、十分にこの腕なら抑えられるなと思いながらアーノルドは階段を登り始める。
その上の階には一人の男と、アリシア、そして目標の少女。
言いたいことは色々あったが全てを後回しにしてアーノルドはその、男に拳銃を向けて、
「今引くのであれば、これ以上は何もしない」
「さて、私を殺すと人殺しになりますよ? だから貴方は引き金を引けない」
余裕を見せるように彼は言うがアーノルドは嘆息して、
「正式な依頼で俺は来ている。まあ、生け捕りにしてもいいのだがどうする?」
案にどこからの依頼かを匂わすと、彼の表情は変わった。
苦々しそうにアーノルドを見て、そのままくるりとアリシア達に背を向けて、別の場所にある階段に向かう。
大人しく従っているような彼だがそこで立ち止まり、
「ですが我々は諦めたわけではないと、依頼主にお伝え下さい」
「……分かった」
アーノルドが答えると彼はそのまま階段を降りて去っていく。
それを見送ってから拳銃を彼に向ける腕を落としてアーノルドは深々とため息を付いてから、
「それで、アリシア」
「……」
「返事をしろ」
「……はい」
渋々といったように答えたアリシアにアーノルドは、
「どうしてこうなったのか、説明してもらおうか」
アリシアに、怒ったように無表情で告げたのだった。
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