息抜きも
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3部分:第三章
第三章
その彼女がだ。常に何かと言う相手がいた。それは。
同じクラスの藤木登志夫である。茶色の髪を伸ばしいつも明るいというよりは能天気な笑顔を浮かべている。背は普通より高い。身体つきは均整が取れている。
その彼はだ。何かというと遅刻していた。それを言われるのだ。
「藤木君、今日もまた」
「ああ、悪い悪い」
反省していない返答だった。
「ちょっとな」
「ちょっと?」
「昨日うどん浴びてシャワー食ってたら十二時だったんだよ」
こんな言い訳をするのだった。
「部活から帰ったらさ」
「部活確かホッケー部」
「そうだよ。試合前でさ」
「そんなに遅くない筈ね」
直美はすぐに突っ込みを入れた。
「そうね」
「あれっ、そうだったかな」
「そうよ。言い訳は聞かないしね」
直美はこのことも釘を刺した。
「大体ね。一ヶ月のうちに何度遅刻してるのよ」
「さあ。どれ位かな」
「三回よ。三回遅刻してるのよ」
「何だ、それだけなんだ」
登志夫は能天気な調子で返した。
「もっと多いかって思ってたよ」
「三回も遅刻してるのよ」
ところがだった。直美はむっとした目で登志夫にこう返した。
「クラス委員が。何考えてるのよ」
「いいじゃないか、別に」
「いいって?」
「誰にも迷惑かけてないしさ」
登志夫の能天気な調子は変わらない。ある意味において見事である。
「だからさ」
「そんな問題じゃないでしょ」
その彼にさらに怒って言う直美だった。
「あのね、だからクラス委員として」
「ああ、それでさ」
直美の話を聞かずにだ。登志夫は逆に彼女に声をかけた。
「今日だけれど」
「今日。何よ」
「売店で何か特製のパンがあるんだって?」
「パン!?」
「それ何かな。渡部さん知ってる?」
「そんなの知る訳ないでしょ」
直美は牙を剥かんばかりになってだ。登志夫に言い返した。
「パンなんてね。私は食べないわよ」
「パン嫌い?」
「御昼は自分でいつも作ってるのよ」
むっとした顔になってこう答える。
「栄養を考えてね。カロリーもね」
「それで自分で作ってるんだ」
「そうよ。健康管理もちゃんとしないと駄目だからよ」
この辺りまで考えているのがだ。まさに直美であった。
「それでそうしてるのよ」
「そんなの気にしなくていいのに」
「気にしないでどうするのよ」
「美味しいって思うもの食べたらいいじゃない」
「それで健康壊したら何にもならないじゃない」
やはりこう言う直美だった。ここでも完璧主義だった。
「そうでしょ。違うの?」
「俺そんなの全然気にしないからさ」
登志夫は平気な顔で直美に返した。
「じゃあ俺で調べるよ」
「その売店のパンが何か?」
「そうするから。それじゃあね」
「ええ・・・・・・ってちょっと」
登志夫に応えてからだ。自分の言いたいことを思い出した。
それでだ。また彼にくってかかった。
「まだ話は終わりじゃないわよ。いい?大体貴方は普段から」
「気にしない気にしない」
「ちょっとは気にしなさいよ」
こんな二人だった。とにかく登志夫は何処までもいい加減であった。まさに直美とは正反対だ。直美はそんな登志夫にいつも小言を言っていた。
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