息抜きも
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2部分:第二章
第二章
「しかし何かな」
「ああ、面白くなさそうな顔してるな」
「不服って感じでな」
「どうしてなんだ?」
周囲はだ。彼女を見て話す。本人も順位を見に来ているのだ。しかしその顔は不機嫌そうでだ。見るからに面白くなさそうである。
そしてだ。一人が彼女に問うた。
「なあ。どうしてなんだ?」
「どうしてって?」
「あまり面白くなさそうだけれどな。どうしてなんだよ」
「全部満点じゃなかったから」
それでだといおうのである。
「だからよ」
「おい、全部満点を目指してたのかよ」
「そうよ」
はっきりとした声での返答だった。
「その通りよ」
「無茶言うな、また」
聞いた彼は驚いた声で述べた。
「全教科満点なんて」
「そうでないと駄目よ」
また言う直美だった。
「完璧ではにと」
「完璧にかよ」
「何でもね」
こう言って引かない。
「そうしないと駄目だから」
「ううん、厳しいなあ」
それはだ。周囲も思うのだった。
「ここでも完璧主義なんだな」
「厳しいねえ」
「まさに自他共に厳しい」
「徹底してるよ」
ある意味で感嘆の言葉だった。しかしだ。周囲はこうも言うのだった。
「けれど人間味ないな」
「ああ、ないな」
「全然ないな」
彼女のそうした完璧主義がそう評価されるのだった。
「機械みたいだよな」
「全くだよ」
人ではなくだ。それだというのだ。
そしてだ。彼女を昔から知る者がこんなことを言った。
「俺、小学校の頃からあいつと一緒だけれどな」
「ああ、昔からか」
「あんなのか」
「そうなんだよ。昔からなんだよ」
まさにそうだというのだ。
「本当にな。杓子定規でな」
「子供の頃からか」
「ああなんだな」
「顔も髪型も全部同じでな」
そこまで一緒だというのである。
「ガリ勉で。糞真面目でな」
「口調もあんなのか」
「ずっとあんなのか」
「弟がいるんだよ、二人」
家族についての話も為される。
「双子の。今小学生だけれどな」
「どんなのだ?弟さん達は」
「あんな感じか?」
「やっぱり機械か?」
「いや、弟さん達は普通だよ」
彼等はだというのだ。普通だというのだ。
「けれどな。その教育がな」
「ああ、それ予想つくぜ」
「どうせあれだよ」
「滅茶苦茶厳しいんだろ」
「帝国海軍なんだよ」
それであった。厳格なこと鋼の如しと言われた。
「まさにな。それなんだよ」
「帝国海軍か」
「そこまでなんだな」
「そうなんだよ。もう挨拶の仕方とか歩き方まで細かいところまで厳しくてな」
それを聞いてだ。皆溜息と共に言うのだった。
「弟さん達が気の毒だな」
「全くだよ。そんなのだって思ったけれどな」
「それでも。弟さん達可哀想だな」
それぞれだ。こう話す。直美はそのまま何も変わることなく過ごしていく。まさに寸分の隙もなく完璧なまま。そうした彼女だった。
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