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神の贖罪

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8部分:第八章


第八章

「何故なら我等は過去あの者達と戦ったことがある」
「そうなのか」
「そうだ、だからこそ知っている」
 今度はヨッハルヴァが答えた。
「だからだ。ここは任せてくれ」
「それでいいか」
「わかった」
 ヨッハルの言葉も受けて遂に決断を下す龍だった。
「それではな。頼むぞ」
「うむ、それではだ」
「行くぞ」
 こうして彼等とフォウォールの戦いがはじまった。まず三人はこの国の人々と共に潜み龍は独特の香気を出してフォウォール達を自分の所へ誘き寄せた。彼の魔術の一つだった。
 まずは龍とフォウォール達の戦いがはじまった。フォウォール達は片足で跳ねて動き片手で巨大な剣を振り回す。その動きは素早く力も強い。百の頭を持ち尚且つ不死身の龍だからこそ相手にできた。
 その力は圧倒的なまでだった。龍でなければ到底相手にならない。そこまでの強さだった。しかし龍は互角に戦っている。そしてそのうちに彼は魔術を使ってきた。
「!?一体」
「何だこれは」
「これでよし」
 彼は魔術を放ってから言った。
 周りが霧に覆われていく。フォウォール達は視界を遮られ狼狽しだした。そしてここで突如として彼等の横や後ろから喚声が起こった。
「よし、今だ!」
「行くぞ!」
 ここで三人はヘスペリデスの者達に声をかけた。皆それぞれの手に剣や武器を持っている。
「このまま突っ込む!」
「フォウォール達を倒せ!」
「このままでいいんですね」
「このまま切り込めば」
 ヘスペリデスの者達は三人の話を聞いて三人に対して問う。問うというよりは窺うという顔だ。
「それで勝てるんですか?本当に」
「それで」
「そうだ、大丈夫だ」
「奴等は片手片足だ」
 三人はまず彼等にこのことを告げる。
「それだけ小回りが利かない。横や後ろからの攻撃には弱いのだ」
「そうなのですか」
「そうだ。持っているのは剣だけ」
 まずこのことを教える。
「盾はない。それに」
「それに?」
「足も一本だ。跳ねることはできるが踏ん張るのは弱い」
「確かに」
「そういえば」
 彼等は三人の言葉で今気付いた。片手片足というのは実はバランスに欠けるのだ。しかし今まではその強さと素早さを前にして気付くことはなかったのだ。
「こういう戦い方があるんですね」
「こうすれば」
「そう、しかもだ」
 ブリアンはさらに話を続ける。
「今は霧がある。奴等は視界を阻まれている」
「視界が」
「その通りだ。そこに付け込む」
 はっきりと言い切った。
「確実に勝てる。いいな」
「はい、それでは」
「今から」
「角笛を吹け!」
 ヨッハルはまた高らかに叫ぶ。
「勝利の雄叫びだ!」
「剣を鳴らせ!槍を掲げろ!」
 ヨッハルヴァもそれに続く。
「今勝利は我等にある!行くぞ!」
「そうだ、勝利を手に!」
「行くぞ!」
 ヘスペリデスの者達は今三人と共にフォウォールの大軍に横と後ろから突っ込む。霧に視界を阻まれ彼等の攻撃も受けたフォウォール達は為す術もなく倒されていった。こうしてヘスペリデスの危機は去り彼等は恐ろしい敵を倒すことができたのであった。
「やった、やったぞ」
「これでもう奴等の脅威から」
「いや、まだだ」
 しかしここで三人は勝利に沸く彼等に対して言うのだった。
「まだだ、ここはな」
「まだですか?」
「何故」
「フォウォールの害はこれだけではない」
 こう彼等に告げるのだった。
「これだけではな」
「といいますと」
「死体だ」
 三人が言うのはこのことだった。
「この者達の死体は毒となる」
「毒に!?」
「そうだ。だからこそ」
「死体は全て焼く」
 こう言うのだった。
「全て。幸い死体は一つに集まっている」
「だから。ここで」
「そうか、わかった」
 龍が彼等の話を聞き終えてその百の頭で頷いた。
「その死体を焼けばいいのだな」
「そうだ。それでいい」
「後はその林檎を灰に置けばいいだろう。どんなものでも治すその林檎をな」
「わかった」
 龍は彼等の話を聞いて満足そうに頷いた。
「それならな。すぐに焼こう」
「すぐにか。それがいい」
「わしが魔術を使う」
「火も使えるのか」
「ついでに言えば吐くこともできる」
 実際に頭の幾つかから火を吐いてみせる。やはり彼の強さは神に等しい。
「これでもいいな」
「うむ、とにかく焼くのだ」
「そして林檎を置けばいい」
「よし。ではこれで話は終わりだ」
 龍は満足そうに三人に告げた。
「持って行くといい」
「林檎をか」
「そうだ。それだけの世話になった」
 龍の言葉は満足そうに笑っていた。
「世話になった分は返す。だからな」
「では有り難く受け取っておくぞ」
「遠慮なくな。本来はここで宴でもといきたいのだが」
「それはまた今度にしてくれ」
 三人は笑みを浮かべてこう龍に返した。
「今度な」
「まだ旅を続けるのだな」
「そうだ。だからだ」
「では。さらなる活躍を祈るぞ」
 龍のこの言葉を受けヘスペリデスの国を離れた。三人の手には黄金の林檎があった。彼等はここでまた一つ旅の使命を終えたのだった。そして次の旅の先であるイローダの国に着いた。イローダ王はまず三人と会った。話をすればもう三人のことは知っているようだった。
 
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