神の贖罪
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7部分:第七章
第七章
次は東のヘスペリデスの園に来た。しかしこの国は今戦乱に悩まされていた。黄金の林檎を守る騎士達も乙女達もその敵に向かい国におらずただ林檎の木を護る百の頭の龍だけが国に残っている。しかし彼も人々が戦乱に苦しむ姿を見て非常に辛い思いをしていた。三人が来たのはそんな時だった。
「そなた等のことは聞いている」
龍が三人に対して告げた。
「黄金の林檎を求めてここに来たのだな」
「如何にも」
彼の言葉に答えたのはブリアンだった。見れば龍はその黄金の林檎の木に巨大な身体と百の首を絡めさせている。彼の青い身体の間から緑の葉と茶の枝に幹、そして黄金の林檎達が見える。まさに今そこに求めるものがあった。三人はそれを見て密かに喉をごくり、と鳴らした。
「では早速。もらいたいのだが」
「一つ条件がある」
ここで龍は三人に対して言うのだった。
「一つな。林檎をやってもいいがそれでもだ」
「それは何だ?」
「見ていると思うが今この国は敵に侵されている」
やはり言うのはこのことだった。
「だからだ。それを倒せればだ」
「一体どういう敵だ?」
「奇怪な相手だ」
龍は言う。
「毎夜姿を現わし突如として襲い掛かる」
「ふむ」
「朝になれば煙と共に消える。我等は昼に生き夜に休む」
人の生き方であった。
「わしはこの通り百の頭がありそれぞれ生きて休むことができしかも死ぬことがないのでいいが」
「人はそうはいかんな」
「そうだ。その敵により今この国は疲れ果てている」
龍はこのことまで三人に告げた。
「それでだ。そなた達にこの問題を解決して欲しいのだ」
「それができれば林檎を分け与えてくれるのだな」
「その通りだ」
龍はこのことを三人に対してはっきりと約束してきた。そこには誇りがあり二言はないとはっきりと知らせるものであった。三人はその心も受け取ったのである。
「それでどうだ」
「わかった」
三人はすぐに龍に対して答えた。
「それならばだ。行こう」
「任せておいてくれ」
「ならばだ。早速今夜だ」
龍は言った。
「頼むぞ。敵を倒してくれ」
「うむ」
こうして三人は武器を手にその夜の敵と戦うことになった。昼は他の国とも変わりはない。しかし夜になるとだった。急に何処からともなく恐ろしい叫び声が聞こえてきた。
「来たぞ」
龍が自身の側で控えていた三人に対して告げた。
「あの声だ。その敵だ」
「!?この声は」
「そうだな」
ここで三人は顔を見合わせた。何かを知っている顔であった。
「あの声だな」
「そうだ、間違いない」
「知っているようだな」
龍は三人の顔と言葉を聞いてそれを察してきた。
「この声の主達を」
「うむ、フォウォールだ」
「そうだな、フォウォールだ」
「フォウォール!?」
龍はその名を聞いて思わずその言葉に疑問符をつけた。それは彼が今まで聞いたことのない名だったからだ。それで思わず三人に対して問うのだった。
「何者だ、それは」
「その連中は片手片足ではないのか?」
「その通りだ」
ヨッハルの問いに対して答える。
「奇怪な連中だ、全く以ってな」
「そうか、やはりな」
三人は龍の言葉を聞いてあらためて頷いた。
「やはりそうか」
「それなら方法がある」
「戦い方があるのか」
「まずはだ」
三人は龍に対して言う。
「貴殿が彼等を正面から引き受けてくれ」
「わしがか」
「そうだ、まず貴殿は百の首がある」
これが相当な戦闘力になっているのは言うまでもない。百の首からはそれぞれ鋭い牙が生えしかも炎に吹雪、雷に風、音、溶岩、毒、酸と様々なものを吐き出している。魔術まで使えるのだからその力はかなりのものである。神と言っても過言はない程だ。
「そのうえ不死身だな」
「如何にも」
しかも死ぬことがない。だからこの林檎を護っているのである。
「その貴殿が正面からあの者達を引き受けるのだ」
「その間に我等は」
「どうするつもりだ?」
「この国の者達と共に横と後ろから攻める」
「横と後ろからか」
「そうだ」
はっきりと龍に対して答えた。
「これで勝てる。間違いなくな」
「安心していいぞ」
「しかし。途方もなく強いぞ」
龍は怪訝な顔をそれぞれの顔に見せつつ三人に述べた。
「あの者達は。それも知っているようだがな」
「知っているのも道理」
今の龍の言葉にブリアンが答えた。
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