ポケットモンスター 急がば回れ
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25 グリーン対キョウ
イミテ「あの、ここは……?」
グリーン「クチバだ」
グリーンとイミテはシルフカンパニーからクチバシティのポケモンセンターにテレポートしてきた。
イミテ「ブルーは……?」
グリーン「ロケット団にそそのかされちまったよ」
グリーンはイミテをまじまじと見つめる。
グリーン「しっかしお前、本当にブルーにそっくりだな」
イミテ「いや……あんまりじろじろ見ないでください……」
イミテは恥ずかしがっている。
グリーン「おもしれー! あいつがシャイな乙女になっちまったみてーだ!」
ブルーの性格からは想像できないほどの恥じらいを見せる。
それをグリーンは楽しんでいるようだ。
グリーン「ほーれほれほれ! スカートめくっちゃうぞー!」
イミテ「いや……やめて……!」
グリーン「さてと……
お前はなぜあそこにいたんだ?」
グリーンの表情が突然変わる。
グリーン「あそこはシルフの最上階、ロケット団のボスのサカキとかいう奴の部屋だ。そう簡単には入れねえ。
お前は一体何者だ? ブルーをそそのかした張本人か?」
イミテ「……みんな、わたしのせいなんです。
ブルーがおかしくなっちゃったのも、あなたたちを巻き込んでしまったのも……」
グリーン「答えになってねえな。
ロケット団はブルーを利用して何を企んでる?
イエローのことも狙っていた。
お前は知ってるんだろ?」
イミテ「ごめんなさい……」
イミテは泣き崩れて床にへたり込む。
グリーン「ちっ、ブルーにそっくりだから調子狂うぜ。
あいつはガキの頃からじーさんの家で一緒に暮らしてきた。
だから何としてでも助けてやらねえと。
それに、あいつには1発貸しがあるからな」
グリーンは頬をさする。
まだ少し赤く腫れている。
グリーン「じゃあな。
もうロケット団なんかに捕まるんじゃねーぞ」
グリーンは背を向ける。
イミテ「あの、どこへ……?」
グリーン「旅の途中だ。
またポケモントレーナーの旅に出るんだよ。
レッドもイエローもそのうち見つかるだろ」
レッドとイエローよりも、頭にあるのはブルーのことである。
グリーン「もっと強くならねえと、あいつを取り戻せねえ……」
イミテ「あの……!」
グリーンは振り返る。
イミテ「わたしも連れて行ってください!」
イミテの目は真剣だ。
イミテ「わたしもブルーを取り戻したいんです。
……ダメですか?」
グリーン「……勝手にしろ」
グリーンとイミテは海沿いの道路を経てセキチクシティに着く。
名物のサファリゾーンには目もくれず、早速セキチクジムに挑戦する。
グリーン「何だこれ、どうなってるんだ?」
イミテ「見えない壁があるようです」
グリーンはパントマイムのように壁に触れる。
キョウ「……ファファファ!」
グリーン「変なコスプレしたおっさんが壁の向こうにいるぞ!」
キョウ「変なコスプレではない、忍者だ!」
グリーン「忍者? いい歳して何言ってんだこのおっさん」
キョウ「おのれ小童め、バカにしおって!
……まあよい。お主はここにたどり着くことすらできんのだ。
見えない壁を永遠にさまようがよい! ファファファ!」
グリーンはキョウの肩を叩く。
グリーン「よう」
キョウ「なんだと!?」
グリーンとキョウの間に壁は無い。
キョウ「お主、どうやって……!?」
グリーンは眼鏡のようなものをかけている。
グリーン「シルフからかっぱらってきたシルフスコープだ。
こいつで壁がはっきり見えるぜ。ご丁寧に道案内の矢印まで書いてあった。
こんな使い方もあるんだな」
キョウ「おのれ小癪な!」
キョウはモンスターボールを構える。
キョウ「小童ごときが拙者に闘いを挑むとは片腹痛いわ!
毒をくらったら自滅! 眠ってしまったら無抵抗!
忍の技の極意! 毒ポケモンの恐ろしさ、受けてみるがよい!」
グリーン「壁なんかで小細工してねーで最初からそうしてりゃいーんだよ」
レフェリー「使用ポケモンは3体。
手持ちが3体以下の場合は手持ち全て。
使用できる道具は挑戦者は無制限、ジムリーダーは4つまで。
ジムリーダーは挑戦者のバッジの数により定められたポケモンを使用すること。
使用できるポケモンがいなくなったら負け。
反則行為は即失格」
キョウ「お主、ジムバッジは幾つ持っておる?」
グリーン「3つだが手加減なんかいらねえぜ。
ちなみに俺はこいつしか手持ちがいない!」
グリーンはモンスターボールを構える。
キョウ「その心意気や良し!」
レフェリー「では、始めっ!」
グリーン「いけっ、フーディン!」
キョウ「……ファファファ!」
グリーン「笑ってないでポケモン出せよ」
キョウ「既に出しておる。そのシルフスコープとやらでよく見てみるがよい」
グリーン「なんだと?」
グリーンはシルフスコープで辺りを見回す。
バトルフィールドは肉眼では見えない壁で囲まれている。
相手のポケモンはおろか、これといって変わったものもない。
グリーン「何もねえじゃねーか」
シルフスコープを外す。
すると見えなくなった壁の一部だけが確認できる。
それはうねうね動く紫色の物体に変わる。
キョウ「隙あり! ベトベトン、毒々攻撃!」
壁だったものは身体からヘドロを撒き散らす。
グリーン「しまった! 逃げろフーディン!」
しかしフーディンはヘドロに囲まれてしまう。
覆いかぶさるように降り掛かってくる。
四方八方から襲うそれから、フーディンは脱出する術を考える。
グリーン「フーディン、アレだ!」
キョウ「自棄になったか、アレではわからんだろう」
全体に付着したヘドロはフーディンのシルエットを濃くしていく。
全く動けないのか、微動だにしない。
キョウ「ファファファ!
もはや自滅を待つのみ!」
グリーン「……くそっ!
見えない壁を利用して、元々見えてたベトベトンを隠すとはな」
キョウ「これぞ忍法隠れ身の術!」
グリーン「フーディン、サイコキネシス!」
フーディンはフィールド全体に気を広げる。
超能力に捕まったベトベトンはあっけなく倒れる。
レフェリー「ベトベトン、戦闘不能! フーディンの勝ち!」
キョウ「まずは毒々状態にした。これでよい」
作戦通りに事が運んでいるのか、キョウはほくそ笑む。
グリーン「笑ってないで早く次のポケモン出せよ」
キョウ「既に出しておる」
グリーン「またかよ」
フィールドにはベトベトンのヘドロが散乱している。
グリーン「どうせあのヘドロにでも隠れてるんだろ。早く出てこいよ」
キョウ「よくぞ見破った!」
ヘドロがもぞもぞ動いてマタドガスが現れる。
キョウ「マタドガス、影分身!」
マタドガスは素早い動きで残像を作っていく。
キョウ「これぞ忍法分身の術!
どうだ、どれが本物かわかるまい!」
グリーン「フーディン、サイコキネシス!」
キョウ「マタドガス、ヘドロ隠れの術!」
マタドガスとその分身はフィールドに落ちているヘドロに隠れる。
サイコキネシスは外れる。
キョウ「ファファファ!
どうだ、攻撃できまい!
お主のフーディンはそのまま毒が全身を侵すまでもがき続けるのだ!」
しかしもがいている様子はない。
相変わらずヘドロを被ったまま動かない。
キョウ「それとももう戦えぬのか?
しかし戦闘不能の判定はまだ無い。
……よし、引導を渡してやる。
マタドガス、自爆!」
グリーン「そんなに勝負を焦ることはないんじゃないか?」
キョウ「臆したか、小童め!
任務のためには躊躇無く自決する。これぞ忍の精神!」
すさまじい爆音と共に衝撃が轟く。
熱風はフィールドにあるもの全てを吹き飛ばす。
トレーナーとレフェリーは安全な場所にいるが、そのすさまじさは充分に目の当たりにする。
グリーン「本当にやりやがった……」
キョウ「拙者には最後の手持ちがいる。
勝負あったな」
爆炎が巻き起こした煙から、瀕死したマタドガスが姿を現す。
フーディンの姿は無い。
レフェリー「マタドガス、戦闘不能! フーディンの勝ち!」
キョウ「なんだと!?
どこだ、どこにいる!?」
キョウは辺りを見回す。
グリーン「シルフスコープ使うか?」
キョウ「要らぬ!」
バトルフィールドは肉眼では見えない壁で囲まれているが、爆発の焼跡と吹き飛んだヘドロで見えるようになっている。
あとは爆炎の煙が漂っているだけで相手のポケモンはおろか、これといって変わったものはない。
キョウ「何もないではないか!」
グリーン「フーディン、リフレクターを解け!」
リフレクターにへばりついていたヘドロがキョウの頭上から落ちてくる。
見上げると、フーディンが天井に逆さまになって立っている。
グリーン「お前のポケモンがさんざん撒き散らしたヘドロで隠れさせてもらったぜ。
忍法ヘドロ隠れの術ってやつか」
キョウ「おのれ、どうやって爆発から脱出した!?」
グリーン「フーディンは脱出王だぜ!」
キョウ「……さ、左様か。
ところで、拙者の最後のポケモンは既に場に出ている」
グリーン「そうだと思ったぜ」
煙の中から2つの光が見える。
レーダーのような目と触角が次第に現れる。
グリーン「フーディン、サイコキネシス!」
キョウ「コンパン、防御に徹するのだ!」
触角を使って結界を張る。
しかし自分の身を守るので精一杯だ。
キョウ「彼奴のフーディンは直に毒で自滅する。それまで堪えろ!」
グリーン「毒だって? フーディンの状態は普通だぜ。
毒々をくらったのは身代わりだ!」
キョウ「なんだと!?」
コンパンの結界が解ける。
サイコキネシスを受けてあっけなく倒れる。
レフェリー「コンパン、戦闘不能! フーディンの勝ち!」
グリーン「お前は最初からフーディンの分身を相手にしてたんだ」
キョウ「最初のアレとは身代わりのことだったか。
それに気づかずマタドガスに自爆させてしまった。不覚……」
グリーン「そういうこと」
キョウ「ふん……! お主やりおるな。
そら! ピンクバッジを受け取れ!」
キョウはピンクバッジを放ってよこす。
グリーン「あんた、本物の忍者じゃねえだろ」
キョウ「……ファファファ!
拙者の先祖は伊賀忍者だったが今はこんな時代。
セキチク江戸村の忍者ショーでアクションをしたり忍者体験教室を開いたりしておる」
グリーン「いや、そういうことじゃなくてさ」
キョウ「何だ?」
グリーン「忍者は自分で忍者だって名乗らねえよ」
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