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ポケットモンスター 急がば回れ

作者:おうーん
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26 ポケモン屋敷

グリーン(セキチクジムでは相手が毒タイプだったから勝てたが、この先エスパー技だけじゃ通用しねえ……)

イミテ「あの、グリーンさん。
双子島の様子がおかしくないですか?」

グリーン「ああ、そうだな。しっかりつかまってろ!」

2人はギャラドスに乗って20番水道を行く途中、双子島の異変に気づく。
島の上空に雲が集中し、渦を巻くように広がっていく。
大粒の雨が激しく水面を打ち海を荒らしていく。
そして突風が波を騒がせる。
荒れ狂う海をギャラドスは飛ぶように泳いでいく。

グリーン「何なんだこの異常気象は……!」

目的地のグレン島に辿り着くと、早速ポケモンセンターで手持ちのギャラドスを休ませる。
ずぶ濡れのグリーンとイミテもジョーイにタオルを借りて一休みする。
窓からは島の中央にそびえる山が見える。
火山活動を活発に続ける山も、今は静かに佇んでいる。

イミテ「すごい人だかりですね……」

グレン島は小さな島なので人口はそれほど多くはないが、島民がポケモンセンターに避難しているので人混みができている。
一同は大時化の情報を聞くためモニターの前に殺到する。
グリーンは椅子から立ち上がって出口へ向かう。

グリーン「グレンジムに行ってくる。お前はここで待ってろ」

イミテ「わたしも行きます」

グリーン「雨が強いからここにいたほうがいい」

イミテ「あなたのバトルを見ておきたいんです」

2人はポケモンセンターで借りた雨具に身を包んでグレンジムへ向かう。
海は相変わらず荒れていて、波が何度も堤防を呑み込もうとする。

グリーン「何だこりゃ?」

グレンジムの扉に貼紙がある。

「最近のトレーナーは弱すぎる。
なのでわしから試練を与えることにした。
ポケモン屋敷にこのジムの扉を開く鍵を置いてきた。
これを読んでいるそこの君、早速鍵を取ってくるのだ!
さすれば挑戦の扉は開かれん!」

グリーン「鍵だって?」

扉には鍵穴の代わりにスイッチのようなものがある。
グリーンはスイッチを押してみた。

「ポケモンクイズ!
正解するとドアが開いて中へ進めます!」

グリーン「うわっ! ドアが喋った!」

「間違えたら死ね死ね光線をお見舞いさせていただきます!
ここのリーダーに会ってポケモンバトルを挑戦したいなら、頑張って答えてください!
では、お答えください!」

グリーン「何だよ死ね死ね光線って、物騒な名前だな。
お前は下がってろ」

イミテは後ろに下がる。

「図鑑ナンバー151、現在1体しか生存が確認されていない、フジ博士によって発見された幻のポケモンの名前は?」

グリーン「しまった! 俺、ポケモン図鑑持ってなかった!」

グリーンは頭を抱えて考える。

グリーン「幻のポケモンかー、たしかじーさんから聞いたことがあったような……」

イミテ「……ュウ」

グリーン「ちょっと黙っててくれ! 今考えてるんだから!」

イミテは言われた通りにする。

グリーン「わかった! セパルトラ!」

「ばか。ハズレです……」

扉に穴が開いて赤いものがひょっこりと顔を出す。

グリーン「何だ?」

顔を近づけて覗き込む。
赤いものはボクサーなどが手にはめているそれで、伸縮自在のバネによって勢い良く飛び出してくる。
そしてグリーンの顔面にクリーンヒットする。

グリーン「いってー! くそっ!」

バネが即座に縮んでグローブは穴に収まり扉は何事も無かったかのようにそこに居座る。

グリーン「ポケモン屋敷に答えがあるってのか……」

大雨の中を歩いていると大きな建物が見えてくる。
屋敷と呼ぶには雰囲気のない鉄筋コンクリートの建物である。

研究員A「ここでは毎日ポケモンの研究をしてます。
あと、珍しいポケモンなどを持ち込んでくるお客さんもいらっしゃいますね」

グリーン「ここがポケモン屋敷か?」

研究員A「いえ、ここはポケモン研究所ですよ」

グリーン「あんた、図鑑ナンバー151番目の幻のポケモンを知らないか?
たしかフジ博士とかいう奴が見つけた……」

研究員A「さあ、知らんな」

そう答えてそそくさと行ってしまう。

グリーン「何だあいつ」

イミテ「……何か隠してるみたいですね」

廊下を進むと部屋がある。

研究員B「ちっちっちっ! いい技マシン作ったぜ!
ポケモンにこいつを教えりゃ楽しくなるぜ!
ちっちっちっ! これは指を振る音だぜ!
指を振るとポケモンは脳みそが刺激されて、普段やらない技をいろいろ繰り出すぜ!」

グリーン「ブルーのゲンガーが使ってたあの技か。
俺はまぐれに頼ったりしねーぜ。お前にやる」

技マシンをイミテに渡す。

イミテ「ありがとうございます」

グリーン「ところであんた、ナンバー151のポケモンを知らないか?」

研究員B「貴様ら、ロケット団だな!?」

グリーン「は?」

研究員B「出てけー! 塩まいてやるぜ!」

2人は追い出される。
再び大雨の中を歩いていると大きな建物が見えてくる。
屋敷と呼ぶには雰囲気のありすぎる廃墟のような建物である。

グリーン「ここがポケモン屋敷か」

建物の中は柱が折れていたり天井に穴が空いていたりすっかり荒れ果てていて、人の手が加えられず長年の間放置されていたことがうかがえる。
荒らしたのはポケモンだろうか、薄暗い部屋の隅に糞ともヘドロともとれないものが転がっていたり、放火にしては不自然な焦げ跡もある。

イミテ「なんだか不気味なところですね……」

段の抜けた階段を慎重に上っていく。
シャッターのような扉やポケモンの銅像が、かつて主がいたことを物語る。

グリーン「何だこの日記……」

ノートに日付が書いてあることから日記であることがわかる。

「7月5日
ここは南アメリカのギアナ。
ジャングルの奥地で新種のポケモンを発見」

グリーン「新種のポケモン……まさか幻のポケモン!」

イミテ「グリーンさん、こっちにもありました」

イミテの呼ぶほうへ行ってみる。

「7月10日
新発見のポケモンを、私はミュウと名付けた」

グリーン「ミュウ……それが幻のポケモンなのか?」

イミテ「ということは、これはフジ博士の日記なのでしょうか……」

グリーン「まだあるかもしれない!」

3階の小さな部屋にそれはあった。

「2月6日
ミュウが子供を産む。
生まれたばかりのジュニアをミュウツーと呼ぶことに……」

グリーン「ミュウツー……あいつがミュウから生まれたのか!」

グリーンはシオンタウンで会ったときのことを思い出す。
ポケモンタワーが崩れていく様子が脳裏をよぎる。

グリーン「今よりもっと強くなってぜってー倒してやる」

イミテ「答えがわかったことですし、早く戻りましょう……」

イミテは頭を抑えてふらふらしている。

グリーン「もうちょっと探してみようぜ!
まだ面白いもんがあるかもしれねー!」

グリーンは探険を楽しんでいるかのようにどんどん奥へ進んでいく。
イミテはその場でへたり込んでしまう。

イミテ「わたしはここで、ブルーさんを……」

髪を振り乱しながら気を失う。
しばらくして、サングラスをかけた老人がやって来る。
老人はイミテの顔を覗き込み、前髪を優しく撫でて額にそっと手を置く。

グリーン「イミテ、どこだー!」

老人の傍らにイミテがいるのを見つける。

グリーン「じじい、イミテに何をした!」

カツラ「イミテという名前なのか……」

グリーン「お前は誰だ、じじい!」

カツラ「わしはグレンジムのジムリーダー、カツラ。
噂通り口が悪いな、オーキドの孫よ」

グリーン「どうして俺のことを……!」

カツラはイミテを抱きかかえる。

カツラ「クイズの答えはわかったようだな。
雨も止んだことだしジムへ戻るぞ」



サカキ「カツラはジムへ戻ったようだな」

ナツメ「はい」

エリカ「外もさっきまでの豪雨はすっかり止んで、今は気持ちのよい日本晴れでございますわ」

サカキ「ついに目覚めたか、ファイヤーよ」

ポケモン屋敷の地下1階に彼らはいる。
上のフロアとは違って、ここは風化せず手つかずに残されている。
割れた培養液のケースも、その時のままである。
サカキはそこに落ちていたノートを拾う。

「9月1日
ポケモン、ミュウツーは強すぎる。
駄目だ……私の手には負えない!」

読み終えるともとあった床に放り投げる。

サカキ「もうすぐだ……もうすぐミュウツーを超える究極のポケモンが誕生する!
そいつを携えてミュウを迎えに行ってやるぞ!
待っていろ、フジ!」 
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