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戦国異伝

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第二百三十一話 怪しげな茶その八

「その為にじゃ」
「はい、では」
「それではですな」
「織田信長を討ち」
「そのうえで」
「明智光秀は安土に入り」
 そしてというのだ。
「あの城を焼く」
「織田信長が築いたあの城を」
「焼いて消してしまうのですな」
「あの城があれば我等の兵を防いでしまうしじゃ」
 それにというのだ。
「あの城は我等への結界でもあるからな」
「比叡山や高野山と共に」
「大坂城と並んで」
「結界は一つでも消す」
 そうするともだ、老人の声は言った。
「それを明智光秀はしてくれる」
「折角比叡山と高野山に潜り込み腐らせて結界の力を弱めていましたが」
「長い歳月をかけて」
「織田信長はそれも阻みましたからな」
「忌まわしいことに」
「しかもああして城まで築いて結界を強めていました」
「しかしその安土城をですな」
「消す」
 明智に攻めさせてというのだ。
「そして一気に残っている兵の全てを出してじゃ」
「天下を乱し」
「伴天連や明の左道の者達も組み込みましたし」
「そうした力も使ってですな」
「今度こそは」
「大和の者達の天下を終わらせる」
 今度こそというのだ。
「その為の最後の一手だった故にな」
「その一手をですな」
「明智光秀主従に打ったからこそ」
「それで、ですな」
「織田信長を滅ぼし安土城も焼いて」
 結界も弱めてというのだ。
「兵を起こし」
「遂にな」
「ことは成る」
「ではここが正念場ですな」
「まさに」
「だからこそ慎重に進めてもいる」
 ことのそれをというのだ。
「どの家に仕掛けるべきかと考えておった」
「そして明智家だったのですな」
「あの家だったと」
「織田信長が安土にいる時、出陣している時は手が出せぬ」
 そうした時はというのだ。
「安土自体が我等を阻む結界になっておりあ奴の周りは常に何人もおってな」
「下手に刺客をやろうとも」
「返り討ちに遭うだけですな」
「戦の場でも常に軍勢と警護の者がおりますし」
「その周りには」
「だから戦の場でも討てぬ、しかし今は都におり」
 そしてというのだ。
「そこに兵が殆どおらぬ、ならばな」
「ここで軍勢を送れば」
「そこで倒せる」
「そしてその軍勢は、ですな」
「丹波か大和でしたが」
「大和には大きな大名がおらぬ」 
 即ち大軍を動かせる者がいないというのだ。
「都に兵を送られても少ない」
「だからですな」
「丹波の明智になったのですな」
「都にすぐに兵を送られる者として」
「あの者になりましたな」
「丹波と大和以外の国では阻まれる」
 他ならぬ織田家にというのだ。 
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