戦国異伝
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第二百三十一話 怪しげな茶その九
「その安土城と大坂城によってな」
「ですな、しかし丹波の明智は持っている兵も多く」
「都にすぐに行くことが出来て」
「織田信長を討てる」
「あの家が一番でしたな」
「しかも明智光秀は茶道が好きじゃ」
明智のこの趣味は広く知られている、茶の道についても非常に優れた者として天下に知られているのだ。
「そこでじゃ。城におる茶人の一人に化けてじゃ」
「中に入りですな」
「明智光秀とその腹心二人を傀儡にした」
「それで兵を動かさせ」
「都にいる織田信長を討つのですな」
「これで全てが成る」
彼等の望む様にというのだ。
「ことがな」
「そこまでお考えとは」
「流石は御前」
「では挙兵は」
「我等のそれは」
「伊賀じゃ」
この国だというのだ。
「長くより我等の里であったあの国にな」
「ですな」
ここである者が声をあげてきた。
「それがしがいますし」
「御主とな」
「はい、我等もです」
「我等います」
「伊賀には」
「百地家、石川家、楯岡家、音羽家とな」
この四つの家の名前をだ、老人の声は挙げた。
「あるな、だからな」
「伊賀ですか」
「あの国に兵を挙げ」
「そしてですか」
「一気に近江から都を制し」
「そこからですな」
「天下を中心から食い荒らすのですな」
他の者達もここで言った。
「では」
「その様にですな」
「我等は動く為に」
「伊賀に兵を集めるのですな」
「十二家の残る十一家、そして戦が出来る者は全て伊賀に集めよ」
老人の声は命じた。
「よいな」
「はい、では」
「その様に」
「織田信長が倒れればすぐに」
「すぐに兵を挙げましょうぞ」
「伊賀において」
他の者達も言いだ、そしてだった。
他の者達がだ、ここでさらに話した。
「それでは伊賀でお待ちしています」
「次はあの地で」
「あの国でお会いしましょう」
「ではな、わしは坊主にでも化けて明智光秀の陣中に入り」
そしてというのだ。
「あの者の軍勢を思いのまま操る」
「では」
「お任せしました」
「さすればな」
こうした話をしてだった、闇の者達は闇の中から消えてだった。そのうえで彼等自身が駒となり動くのだった。
天下の流れは織田家のものになろうとしていた、だが。
都に入った信長は傍らにいる信忠にこう言った。
「御主は二条城に入りじゃ」
「はい、そこを宿にしてですな」
「城の間取りはわかっておるな」
「全て」
信忠は父に確かな声で答えた。
「そのことは」
「ならよい、ではな」
「はい、まさかと思いまするが」
「そのまさかに備えるのじゃ」
これが信長の言葉だった、そして。
やはり己の隣にいる末弟の長益にもだ、こう告げた。
「御主は奇妙と共におるがな」
「何かあればですな」
「奇妙を縛ってても逃せ」
例え荒事をしてもというのだ。
「よいな」
「そこまでしてですな」
「助けよ」
信忠の命をというのだ。
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