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戦国異伝

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第二百三十一話 怪しげな茶その三

 それまで光のなかった目が急にだ、不気味な鈍いがそれでいて異様に強く光っている目で三人を見た。そのうえでの問いだった。
「天下のことは」
「天下のことを」
「今の天下のことをか」
「前右府様は都に入られます」
 信長のことをだ、三人に問うのだった。
「そしてこれより天下を導かれますが」
「よいことじゃ」
「全くじゃ」
「これで天下は泰平となる」
 三人は抑揚のない声で答えた。
「これの何処が悪い」
「全く以てよいことじゃ」
「全てはな」
「果たしてそうでしょうか」
 堂順は三人にさらに問うた。
「天下が泰平になることが」
「よいと言わずして何と言う」
「こんなにいいことはない」
「戦がなくなるのだからな」
「しかし戦がなくなればどうなるか」
 堂順は三人を見据えつつ問うていく、その鈍い目で。
「それまで仕えていた方々は」
「?どういうことじゃ」
「何が言いたい」
「上様にお仕えしていた者達はとな」
「はい」
 さらに問うたのだった。
「一体」
「そう言われてもじゃ」
 斎藤が言葉を返した。
「このままであろう」
「うむ、我等はな」
 秀満も言う。
「このままな」
「丹波を治められる殿の下におってな」
「丹波を治められるだけ」
「そうなる」
「そうなるのではないのか」
「韓信はご存知ですな」
 ここでだ、堂順はこの者の名前を出した。
「漢の高祖の臣であった」
「あの名将か」
「そうです」
 今度は明智に答えた。
「あの英傑はどうなりましたか」
「殺された」 
 明智は韓信についてだ、一言で答えた。
「他ならぬ主である漢の高祖劉邦によってな」
「そうでしたな」
「韓信、黥布や彭越もそうであったが」
「どの者もでしたな」
「高祖に殺されたわ」
「それは何故でしょうか」
 堂順は明智にさらに問うた。
「何故韓信達は高祖に討たれたのでしょうか」
「叛意ありと見られたからじゃ」
「書にはそうありますな、しかし」
「しかしか」
「それだけでしょうか」
 堂順は明智だけでなく斎藤と秀満にも問うていた、その二人にも。
「彼等が討たれたのは」
「何が言いたい」
「韓信の功はどうだったでしょうか」
「まさに天下無双、高祖に天下を取らせた一人になった」
「そこまでのものでしたな、そして」
「そしてと申すか」
「その功故にです」
 まさにというのだ。
「韓信は高祖に多くのものを与えられましたな」
「王になってな」
「黥布、彭越もまた」 
 この二人もというのだ、韓信と共に討たれた彼等も。
「そうでしたな、その功は大きく多く褒美を与えられ」
「大きな力を持ったな」
「そしてその力故に」
 まさにというのだ。 
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