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戦国異伝

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第二百三十一話 怪しげな茶その四

「討たれましたな、そして」
「そしてか」
「明智様はどうでしょうか」
 ここでだ、堂順はすぐにだった。明智達三人の目を見たのだった。
「一体」
「わしは、というのか」
「はい、既に佐久間様林様安藤様がです」
 この三人の名も出した。
「既に追放となっていますな」
「いや、あれは」
 明智は堂順の言葉を必死に否定にかかった。
「何かあるのじゃ」
「何かとは」
「上様にもお考えがある故じゃ」
「しかしどの方も織田家の天下統一に多大な貢献をされましたな」
「それは」
「しかし突如としてです」
「追放になったと申すか」
 明智の顔が強張ってきていた、そして。
 斎藤と秀満もだ、言葉がなくなってきていた。それでだった。
 堂順だけがだ、三人に語るのだった。
「左様です、特に佐久間様と林様はです」
「お二人はか」
「織田家の譜代、しかも家老衆の中でも重きを為していましたな」
「それはな」
 二人と平手、柴田で四大家老と言えた、平手を筆頭として佐久間と林も重きを為していた。その二人がだというのだ。
「その通りだが」
「ましてやです」
「わしはか」
「織田家に入って新しいですな」
「譜代ではない、美濃に生まれたが」 
 それでもというのだ。
「あまりよい家ではない」
「明智殿も功績が大きく前右府様から国まで頂いていますな」
「この丹波をな」
「韓信、黥布、彭越と同じですな」
 彼等と、いうのだ。その漢の高祖に滅ぼされた。
「では」
「わしはか」
「このままではです」
「牛助殿、新五郎殿の様に」
「そして安藤様の様に」
「やがてはか」
「今前右府様は都におられます」
 すかさずだ、堂順は囁きに入った。
「それではです」
「上様は都におられるなら」
「兵は何時でもです」
 すかさずさらにだった、堂順は囁いた。
「動かせますな」
「わしの持つ兵か」
「丹波の兵、明智様は四十万石です」
 その丹波のうちでだ。
「一万、この兵があれば」
「この兵で都に進めば」
「前右府様だけでなく秋田介様もおられますぞ」
 信長の嫡子である信忠もというのだ、信忠は朝廷から秋田介の官位を受けている、それで堂順は彼をこの官位で呼んだのだ。
「しかもお二人共軍勢は率いてはおられませぬ」
「では」
「はい、明智様が思われれば」
「それだけでか」
「ことは済みます」
「左様か、では」
「どうされますか」
 ここでだった、さらにだった。
 堂順の目が光った、そして言うのだった。
「やはり」
「やはりとは」
「ここは兵を挙げられて」
「上様を」
「それしかないかと」
「わしが上様をか」
「お命もわかりませぬが」
 あえて言うのだった。 
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