| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

戦国異伝

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二百三十一話 怪しげな茶その二

「織田信長にな」
「よし、それでは」
「我等もです」
「兵を挙げる用意をします」
「これよりです」
「今以上に速めます」
「そうせよ、急ぐのだ」
 その兵を挙げる用意もというのだ。
「時はないぞ」
「はい、明智光秀達を操り」
「その軍勢を動かしてですな」
「都にいる織田信長を討ち」
「そこから一気に兵を挙げて」
「世を混沌に落としますな」
「そうする、だからじゃ」
 それが為にというのだ。
「兵を挙げる用意を急げ」
「畏まりました」
「では急ぎます」
「我等魔界衆の兵の全てを」
「それを動かす用意を」 
 周りの者達も応える、そしてだった。
 闇の者達は手筈を進めていた、彼等のことを起こす用意を。そのうえでだった。
 謎の茶人堂順は城の一室で座していた、だが。
 その彼にだ、共にいる茶人達即ち彼の同僚達が言って来た。
「あの堂順殿」
「幾ら何でもです」
「これまで病に伏せられていたのに」
「昨日ようやく出仕出来たではありませぬか」
「それでこれから殿に茶を淹れられるのは」
「無理では」
 彼の身体を気遣って声をかけるのだった。
「ですからここは」
「休まれては」
「養生されるのがよいかと」
「今は」
「大丈夫でござる」 
 だが、だった。堂順はこう彼等に返すのだった。
「身共は」
「いや、やつれておられますぞ」
「頬もこけて」
「それにお顔の色もです」
「どうもです」
 悪いというのだ。
「ですから我等がいきますが」
「ここは」
「いやいや、お気遣いは無用」
 こう言うばかりの堂順だった、そしてだった。
 彼は立ち上がり明智達が入る茶室に向かうのだった、その中谷堂順を見てだった。小姓達もこんなことを話した。
「何故あそこまで無理をされるか」
「わからぬな」
「どう見ても養生が必要だというのに」
「それでまた動かれるとか」
「わからぬな」
「殿への忠義故だろうか」
「召し抱えておられる」
 こう話すのだった、そしてだった。 
 そうした話をしてだった、彼等も堂順に妙なものを感じずにはいられなかった。だがだった。
 堂順は茶室に入った、そして明智達三人もだった。明智達は茶室の狭い入口を通ってその中に入ってだった。
 その中でだ、堂順を見た。すると。
 明智はすぐにだ、彼の痩せ色も悪い顔を見てこう問うた。
「養生はしておるか」
「はい」  
 堂順はこう彼に答えた。
「ご安心下さい」
「ならいいが」
「ではこれよりです」
「うむ、茶をじゃな」
「お淹れします」
 こう明智達に言ってだ、そのうえで。
 茶を淹れて三人に差し出した。三人はまずはだ。
 その茶を一杯飲んだ、そして見事な作法の後でだ。
 碗を置いた、そこからだった。
「結構なお手前で」
「いえ、ただ」
「ただ?」
「ただとは何じゃ」
「どう思われますか」
 茶を飲んだ三人に問うのだった、ここで。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧