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戦国異伝

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第二百三十一話 怪しげな茶その一

                  第二百三十一話  怪しげな茶
 闇の中でだ、老人の声は周りの者達に話していた。
「亀山の城に入る」
「これよりですな」
「あの城に」
「うむ、あの城に入り」
 そしてというのだ。
「明智光秀、そしてあの者を支える斎藤利三、明智秀満もじゃ」
「明智光秀だけでなく」
「あの者の両腕とされるあの二人もですか」
「共に、ですか」
「仕掛けますか」
「明智光秀だけでは駄目じゃ」
 彼一人にだけ仕掛けてはというのだ。
「ここはな」
「側近の二人にもですか」
「仕掛け完全にじゃ」
「明智光秀を操る」
「そうされますか」
「その軍勢もじゃ」
 彼が持っているそれをというのだ。
「そうする」
「では我等が兵を挙げるまでは」
「その明智光秀の軍勢で、ですか」
「ことを起こす」
「そうされるのですな」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「その兵を都に向ける」
「丹波は都からすぐ傍ですな」
「遮るものもありませぬ」
「では都にいる織田信長、織田信忠を」
「共にですか」
「討ちじゃ」
 そしてとだ、老人の声はさらに言った。
「そのうえで天下を混沌とさせてじゃ」
「その間に我等が兵を起こし」
「そして天下をさらに乱し」
「この国を血で覆い」
「我等の世にするのですな」
「ここで一気に変える」
 信長、彼を討ってというのだ。
「かなり危うかったがな」
「確かに。このままではです」
「天下は完全に収まるところでした」
「織田信長の下に」
「天下は泰平になるところでした」
「大和の天下が」
「大和の天下なぞいらぬ」
 老人の声はこの天下を忌々しげな声で否定した。
「全くな」
「はい、確かに」
「もうその様な天下なぞいりませぬ」
「神武の頃より長く続きましたが」
「泰平を尊ぶその様な天下なぞです」
「いりませぬ」
「それも全くです」
 周りの声も言う、そしてだった。
 老人の声はここでだ、こうも言った。
「ここで仕掛けねばだ」
「そしてそれが遅れれば」
「その時はですな」
「天下は最早完全にです」
「大和のものになりますな」
「長きに渡って」
「そうじゃ、織田信長の政によってな」
 まさにというのだ。
「天下は磐石のものとなりな、しかも」
「どうやらですか」
「我等にも気付いていて」
「それで我等にもですか」
「兵を向けてくることも考えられますか」
「だからじゃ、ここで一気に仕掛ける」
 まさにこの時にというのだ。 
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